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米海軍の「無人システム計画」が議会等から猛批判浴びる [Joint・統合参謀本部]

空虚な言葉や表現ばかりで中身がない
F級空母やLCSやZumwalt級などの反省がない
何をどうしたいのか全く見えない

Navy Unmanned Plan.jpg18日、米海軍&海兵隊が16日に発表した無人システム活用の将来構想「Unmanned Campaign Plan」に関する質疑が下院軍事委員会で開催され、退役海軍人を含む米議員から「空虚な言葉や表現ばかりで中身がない」、「今やっていることの説明ばかりで、具体的将来計画がない」、「最近の数々の米海軍研究開発の失敗事例との差が感じられない」等々、辛らつな言葉が相次ぎました

また、つい最近まで米海軍トップの補佐官だった元海軍大佐の著名専門家からも、「中身がない」、「なぜ無人システムに投資する必要があるのか理解するのは困難」、「具体的なマイルストーンもなく、米海軍が責任を持って取り組むと感じさせるものが何もない」、「兵器ネットワークへの熱意と対照的」と厳しい言葉が上がっています

Navy Unmanned Plan5.jpg残念ながら米海軍の装備品開発は、フォード級空母、沿岸戦闘艦LCS、Zumwalt級駆逐艦(たった2隻で終了)など「死屍累々」の状態で、「何をやってもダメな米海軍」(現海軍人トップの表現)とのレッテルを否定できない状態にあります

無人システム関連でも、LCSの汚名挽回を狙った無人機雷探知対処システムRMMV(Remote Multi-Mission Vehicle)が、800億円規模の投資を行いながら「爆発物を探知できない」との理由で2016年に計画中止となるなど、米海軍の装備開発は外部の不信感との戦いになっています

18日付Defense-News記事によれば
Navy Unmanned Plan2.jpg退役海軍人であるElaine Luria下院軍事委員(民主党)は、「具体的な内容に欠け、空虚な言葉や表現ばかりの中身に本当にガッカリした」、「最近の米海軍による複数の艦艇開発失敗を踏まえ、本委員会の委員は、新たな技術を前線部隊の戦力に変える米海軍の能力について懐疑的である」と言い放った
また、最近のRMMVの失敗等にも言及して共和党のRob Wittman委員は、「何かを長く続けていれば、良いことが起こるだろうとの甘い認識で失敗した(RMMVの)教訓を、十分生かしていないのではないか?」と、現在の取り組みばかりに言及し、将来の具体的な計画を打ち出せていない点を厳しく指摘した

元CSBA研究員で、昨年まで米海軍作戦部長の上級補佐官を務めていたハドソン研究所のBryan Clark上級研究員も、「どんな任務や作戦が無人システムに有効なのかに関する議論が全くなく、無人システムに予算厳しき中で投資すべきと訴える中身が見当たらない。理解困難な文書だ」と酷評した
そして、「また現在取り組んでいる無人システムの開発がなぜ重要なのか、どの開発の優先度が高いのか等に関する言及もなく、内容が薄い」とも表現している

Navy Unmanned Plan3.jpg更に、「米海軍はこの文書発表で、米議会や政府指導層に米海軍のシステム開発への信頼を取り戻す必要があったが、私が議会関係者だったら、“今何をやっているかの説明をしているだけで、それがなぜ重要で、なぜ次世代の戦いに向け投資が必要なのかがわからない。海軍は何がしたいのだろう”と思うだろう」
また「仮にこの文書が無人システムを巡る海軍の中心文書であるならば、海軍はどのようにシステムを成熟させていきたいのか説明する機会を失したと言える」、「海軍は説明したいと思ったのだろうが、何も説明できなかったと私には思える」とコメントしている

更に同研究員は、例えば無人システムのための特別組織を立ち上げるとか、既存組織を格上げして権限を付与するとか、そんなことでも姿勢が感じられるのだが何もなく、米海軍が西太平洋で兵器とセンサーとプラットフォームを結び付けることに勢力を注いでいるのと対照的だ、とも語っている

Navy Unmanned Plan4.jpg「Unmanned Campaign Plan」発表の際、米海軍担当幹部は公開可能ベースでの文書作成と、開発中の非公開レベルの試みを組み合わせる難しさを記者団に語りつつ、米海軍は有人と無人システムを組み合わせた「ハイブリッド」部隊編成にコミットしていると語った
また別の幹部は、今後の無人システム開発においては、複数のプロトタイプを作成して実現可能性を見極め、現場の意見を聞きながら改良を進めつつ、費用対効果を突き詰めて進めていくと、過去の開発装備との違いを強調した
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中国等の長射程精密誘導兵器が充実する中、米海軍は従来の空母や大型有人艦艇中心の編成の見直しを迫られており、改革の方向性を無人システムの活用構想である「Unmanned Campaign Plan」の中で示すことが期待されていたわけですが、具体的な成果や方向性が見えない「迷子」状態にあることを逆に世に知らしめてしまう結果となったようです

米海軍&海兵隊としては、これはあくまで公開版バージョンであり、非公開で進んでいる重要開発物もあると示唆していますが、それだけが理由でこれだけ厳しい批判を受けるとは考えにくく、連続して発生した事故や火災、現有艦艇や潜水艦の維持整備体制だけでなく、根が深い組織の問題を抱えているような雰囲気を醸し出しています

現物約40ページ
https://www.navy.mil/Portals/1/Strategic/20210315%20Unmanned%20Campaign_Final_LowRes.pdf?ver=LtCZ-BPlWki6vCBTdgtDMA%3d%3d 

米海軍関連web記事
https://www.navy.mil/Press-Office/Press-Releases/display-pressreleases/Article/2538616/navy-marine-corps-release-unmanned-campaign-plan/

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