GAO指摘:米空母と潜水艦修理の75%が遅延 [Joint・統合参謀本部]
最近3000億円以上をかけ改善を企図も悪化の一途
最近5年間51隻の統計で平均145日遅延の惨状
21日付NavyTimesは、同週に米会計検査院GAOが発表した米海軍艦艇修理に関するレポートを取り上げ、2015年から2019年の間の米海軍艦艇と潜水艦の定期修理遅延が、最近3000億円以上を改善対策に投入しているにもかかわらず悪化しており、米海軍が2018年にまとめた改善計画も初期段階の状況把握の進捗さえ半分程度だと酷評している模様です
米海軍の艦艇や潜水艦修理は、「Portsmouth:Virginia州」、「Kittery:Maine州」、「Honolulu:Hawaii州」、「Bremerton:Washington州」の4か所で行われていますが、任務量が減らない中で艦艇数が減る中、アセットに負担がかかって要修理・補修箇所が増える中、修理予算や人材確保難などの要因も重なり、全く改善の見通しが立たない状況です
米海軍は、数年前から艦艇の衝突事故、海外での艦艇受け入れ業者関連の汚職事案、コロナ集団発生事案、強襲揚陸艦の大火災、加えて新型空母と戦略原潜の価格高騰などなど、「何をやってもダメな米海軍」の揶揄される状態にありますが、さらに追い打ちをかける厳しい状況が明らかになりました
21日付NavyTimes記事はGAO報告書を引用しつつ
●艦艇や潜水艦修理施設(shipyard)のパフォーマンス改善のため、米海軍は近年約3300億円を投入しているが、GAOが17日の週に発表した報告書は「修理施設の慢性的で改善傾向の見えない修理作業の遅延により、空母や潜水艦の即応体制を引き続き悪化させている」と厳しく指摘している
●2015年から19年の間に行われた空母と潜水艦51隻の修理作業は、全体で7425日遅延し、平均で1隻あたり145日の遅れとなっており、空母だけで見れば平均113日、潜水艦は平均225日の遅延を記録する深刻さで、修理の遅れは他の修理の遅延を招き、これが玉突き的に運用ローテーション計画や新装備の搭載試験や改修計画を雪だるま的に混乱させている
●この遅延の大きな要因には、修理施設の技術レベル低下、重要作業を担当する熟練作業員不足にあり、加えて計画修理終了後に発覚する不具合や計画外作業への対処が挙げられている
●人材不足問題に対し米海軍は、追加手当支給による「残業増」で遅延を取り返そうとしてきたが、GAOは、4つの修理施設すべてで労働時間増はすでに限界に達しており、一部の部門では過重労働により生産性が低下する事態にまで陥っていると指摘している
●米海軍は2018年、「Shipyard Performance to Plan initiative」をまとめて本格的に対処を始めたはずだが、遅延の状況や原因を把握するために準備するとしていた25の「指標」のうちの13個の指標が未着手であるなど、入り口段階でこの「initiative」の遂行に問題ありとGAOは指摘している
●また「initiative」は、「段階的目標や最終目標、その時程を示しておらず、遅延改善を把握するモニタリング方法についても不明確にしている」とGAOは指摘している
●特に潜水艦は、修理が遅れると「安全運航の証明期間」が切れ「使用不能」状態に陥るが、2015年以降、潜水艦の証明期間切れ「使用不能」期間が年々増加しており、米海軍幹部はこの期間が少なくとも今後2年間は増加し続けると認めるだけでなく、コロナの影響で更に伸びると見積もっている状況だとGAOは指摘している
●GAOは米海軍に対し、修理作業員不足対策としてこれ以上の「残業増」を避け、人材確保や計画外トラブル発生防止対策などの遅延改善に向けた目標設定、具体的実施事項を明確にするアクションプランや時程の設定、改善状況を把握する「指標」の整備を進めるよう勧告している
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この問題は、本ブログでも5年前から取り上げていますが、全く改善傾向がみられません。
艦艇等修理施設を取り巻く大きな環境から生じる構造的問題となっており、程度の差こそあれ、米空軍の航空機修理も同様の傾向にあります。
過去記事の「軍需産業レポート」もご覧いただき、米軍のアセット維持が様々な変化から難しくなっている様子をご確認ください。西側全体が同じ傾向とも言えます・・・
艦艇修理の大問題
「空母故障で空母なしで出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-16
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09
「優秀な横須賀修理施設」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-05
「空母確保困難でMQ-25給油機3年遅れか」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-11
「軍需産業レポート2019」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-28
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-1
ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
最近5年間51隻の統計で平均145日遅延の惨状
21日付NavyTimesは、同週に米会計検査院GAOが発表した米海軍艦艇修理に関するレポートを取り上げ、2015年から2019年の間の米海軍艦艇と潜水艦の定期修理遅延が、最近3000億円以上を改善対策に投入しているにもかかわらず悪化しており、米海軍が2018年にまとめた改善計画も初期段階の状況把握の進捗さえ半分程度だと酷評している模様です
米海軍の艦艇や潜水艦修理は、「Portsmouth:Virginia州」、「Kittery:Maine州」、「Honolulu:Hawaii州」、「Bremerton:Washington州」の4か所で行われていますが、任務量が減らない中で艦艇数が減る中、アセットに負担がかかって要修理・補修箇所が増える中、修理予算や人材確保難などの要因も重なり、全く改善の見通しが立たない状況です
米海軍は、数年前から艦艇の衝突事故、海外での艦艇受け入れ業者関連の汚職事案、コロナ集団発生事案、強襲揚陸艦の大火災、加えて新型空母と戦略原潜の価格高騰などなど、「何をやってもダメな米海軍」の揶揄される状態にありますが、さらに追い打ちをかける厳しい状況が明らかになりました
21日付NavyTimes記事はGAO報告書を引用しつつ
●艦艇や潜水艦修理施設(shipyard)のパフォーマンス改善のため、米海軍は近年約3300億円を投入しているが、GAOが17日の週に発表した報告書は「修理施設の慢性的で改善傾向の見えない修理作業の遅延により、空母や潜水艦の即応体制を引き続き悪化させている」と厳しく指摘している
●2015年から19年の間に行われた空母と潜水艦51隻の修理作業は、全体で7425日遅延し、平均で1隻あたり145日の遅れとなっており、空母だけで見れば平均113日、潜水艦は平均225日の遅延を記録する深刻さで、修理の遅れは他の修理の遅延を招き、これが玉突き的に運用ローテーション計画や新装備の搭載試験や改修計画を雪だるま的に混乱させている
●この遅延の大きな要因には、修理施設の技術レベル低下、重要作業を担当する熟練作業員不足にあり、加えて計画修理終了後に発覚する不具合や計画外作業への対処が挙げられている
●人材不足問題に対し米海軍は、追加手当支給による「残業増」で遅延を取り返そうとしてきたが、GAOは、4つの修理施設すべてで労働時間増はすでに限界に達しており、一部の部門では過重労働により生産性が低下する事態にまで陥っていると指摘している
●米海軍は2018年、「Shipyard Performance to Plan initiative」をまとめて本格的に対処を始めたはずだが、遅延の状況や原因を把握するために準備するとしていた25の「指標」のうちの13個の指標が未着手であるなど、入り口段階でこの「initiative」の遂行に問題ありとGAOは指摘している
●また「initiative」は、「段階的目標や最終目標、その時程を示しておらず、遅延改善を把握するモニタリング方法についても不明確にしている」とGAOは指摘している
●特に潜水艦は、修理が遅れると「安全運航の証明期間」が切れ「使用不能」状態に陥るが、2015年以降、潜水艦の証明期間切れ「使用不能」期間が年々増加しており、米海軍幹部はこの期間が少なくとも今後2年間は増加し続けると認めるだけでなく、コロナの影響で更に伸びると見積もっている状況だとGAOは指摘している
●GAOは米海軍に対し、修理作業員不足対策としてこれ以上の「残業増」を避け、人材確保や計画外トラブル発生防止対策などの遅延改善に向けた目標設定、具体的実施事項を明確にするアクションプランや時程の設定、改善状況を把握する「指標」の整備を進めるよう勧告している
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この問題は、本ブログでも5年前から取り上げていますが、全く改善傾向がみられません。
艦艇等修理施設を取り巻く大きな環境から生じる構造的問題となっており、程度の差こそあれ、米空軍の航空機修理も同様の傾向にあります。
過去記事の「軍需産業レポート」もご覧いただき、米軍のアセット維持が様々な変化から難しくなっている様子をご確認ください。西側全体が同じ傾向とも言えます・・・
艦艇修理の大問題
「空母故障で空母なしで出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-16
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09
「優秀な横須賀修理施設」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-05
「空母確保困難でMQ-25給油機3年遅れか」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-11
「軍需産業レポート2019」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-28
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-1
ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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