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CSBAが米海軍に提言:大型艦艇中心では戦えない [安全保障全般]

大型レーダー搭載の巡洋艦や駆逐艦中心ではダメ
現在指向の「分散運用」だけでは到底戦えない

CSBA taking back sea.jpg12月31日、シンクタンクCSBAが「海を取り戻せTaking Back the Seas: Transforming the U.S. Surface Fleet for Decision-Centric Warfare」とのレポートを発表し、米海軍が現在指向している大型艦艇の分散運用だけでは中国の対艦攻撃能力には耐えられないので、平時は有人で運用する(optionally manned)な中小型無人艦艇を活用し、また防空ミサイルの代わりにエネルギー兵器に投資してVLSスペースを攻撃兵器搭載用に変更して打撃力アップを図るべき等々を提言しています

米海軍は目立つ大型艦艇の脆弱性を克服するため、現在の空母周辺にイージス艦(巡洋艦・駆逐艦クラス)を集めて作戦する形から、海上アセットを分散してネットワークで結ぶ「分散型海上作戦:distributed maritime operations」を追求して敵のターゲティングを困難にしようと考えているようですが、とてもそれだけでは太刀打ちできない・・・とCSBAは指摘しています

先日は、米海軍が無人艦艇の導入を急いでいるが、米議会から無人艦艇運用コンセプトの詰めが不十分だと指摘を受け、9月までに運用構想をまとめる検討を始めたとご紹介しましたが、CSBAはさらに突っ込んで、現在の脆弱で目立つ大型イージス艦を中心の水上艦艇編成では平時にも極めて非効率で、根本的な考え方の変革が必要だと主張しています

具体的に、どの様な米海軍の艦艇数構成を考えているのかはっきりしないのですが、いつものようにつまみ食いで、適当にさわりだけご紹介しておきます。米海軍も変革を迫られています

8日付Defense-News記事によれば

CSBAの問題認識
CSBA taking back sea2.jpg米海軍首脳は繰り返し、「分散型海上作戦:distributed maritime operations」を追求して敵のターゲティングを困難にし、敵を攻撃する機会を増やすと主張しているが、現代のセンサーやミサイル技術の拡散等を踏まえれば、「分散型作戦」だけでこれに対応することは不可能である
●米海軍イージス艦が搭載する 防空&BMD用のSPY-6レーダーのような装備は、フラッシュを点灯するように敵に発見されやすく極めて脆弱なにもかかわらず、、米海軍の将来計画を含めても、水上戦力の3/4は大型の防空及びミサイル防衛用のレーダーを装備した脆弱な艦艇で、投資効率上でも大きな問題である

●またそれら大型艦艇は防空やBM対処用や多用途を目指して極めて高価にも拘わらず、平時の大部分の時間は、潜水艦対処やISR、海洋プレゼンス、対テロ策棟に対応し、艦艇寿命の縮め、大きな維持経費を発生させており、極めて非効率な運用となっている
●またこれら大型イージス艦は、防空やミサイル防衛用迎撃ミサイルのために大きなスペースをVLSに食われており、真に必要な敵攻撃兵器が限定される結果となっている

CSBAの提言する対応策概要
CSBA taking back sea3.jpg米海軍は大胆に水上艦艇の攻撃力や電子戦能力を増強する必要があり、エネルギー兵器による対艦ミサイル対処能力を増強して防空ミサイルを格納したVLSを攻撃兵器に置き換える必要がある。
●また米海軍は、大型の目立つアクティブレーダーへの依存を減らし、よりパッシブセンサーを活用する方向にシフトする必要がある

米海軍が導入を検討している有人艦艇と行動を共にするミサイルを多数搭載した大型無人艦艇LUSV(防御ミサイルを打ち尽くすと再充填のために帰港し、攻撃用艦艇の防御負担を軽減)ではなく、平時は少数(20名程度)で有人運用し、有事には無人運用可能なコルベット級DDCにパッシブセンサーや電子戦装備を搭載する。

●この平時有人艦艇DDCは、平時には対潜水艦作戦や海洋安全確保や諸国との訓練を通じての関与作戦に従事し、兵員の訓練にも貢献する。そして有事には無人運用し高い脅威下での作戦に投入する。
●なお平時有人を前提の無人艦艇DDCは、完全無人艦艇より低コストである。また、現在は機能過剰な大型艦艇を平時の作戦に投入して非効率に艦命を縮めている現在の運用よりは効率的である

CSBA taking back sea4.jpg●またこのDDCはパッシブセンサーや電子戦装備を搭載して敵により接近することが大型艦艇よりは容易で、攻撃兵器を搭載して遠隔操作でリスクある作戦にも投入が容易である
DDCは無人運用が可能であるが、有事においても有人運用も可能で、秘匿度の高い装備や兵器を搭載する場合は紛争参加時でも有人運用が好ましい場合も多い

●米海軍にはコルベット級(DDC?)が96隻必要で、中型無人艦が110隻必要である
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基礎知識不足から米海軍が現在誅求しているLUSV(大型無人艦艇)と、CSBAが提唱するDDCの違いがぼんやりとしか説明できていません
また現在主力の大型イージス艦の防空やBMD能力の代替や、エネルギー兵器の能力をどの程度に想定しているかなど、メディアの記事からはよくわかりません

ただ、現在主力の大型イージス艦が、有事に極めて脆弱で期待できない事への危機感や大部分の平時の任務において過剰な装備だとの問題認識は無視できません
また、少数の人員で平時有人運用する「optionally manned」なるDDCの発想は、非常に斬新で、作戦面と維持費面でも興味深い発想です

いずれにしても、今の中国軍を前にして、現在の西側戦力では太刀打ちできないとの危機感は強烈で、その度合いは米国発の各種情報から急速に高まっています

CSBAの当該レポートwebページ
https://csbaonline.org/research/publications/taking-back-the-seas-transforming-the-u.s-surface-fleet-for-decision-centric-warfare

最近のCSBAによる対中国作戦提案
「CSBAの海洋プレッシャー戦略」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13

米海軍関連の記事
「9月までに無人艦艇運用構想作成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-04
「新編第2艦隊はロシア潜水艦対処に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-03
「冷静後でロシア潜水艦が最も活発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21-1
「代打の次期米海軍トップ」 →https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-19
「空母1隻削減案に揺れる」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-29
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24

「空母フォード3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「攻撃原潜に新たな形態BlockⅤ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-07
「NKのおかげSSBNに勢い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-2
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