また米空軍研究所が無人ジェット機開発 [米空軍]
何がやりたいか見えません
先日紹介のXQ-58A Valkyrieとの違いは?
3月末、米空軍省の調達責任者であるWill Roper氏が、昨年10月から検討を開始したという米空軍研究所AFRLの「Skyborg」 との名前の無人機コンセプト図を公開し、関係企業の保有技術で何が実現可能か情報提供を募るRFI(request for information)を発出しました。
各種航空メディアは、この3本脚のずんぐりステルス形状のような機体を「無人ウイングマンのコンセプト図だ」とか、安価な無人戦闘機開発の原型だとか紹介していますが、3月5日に初飛行した同じく空軍研究所AFRLが開発を主導する「XQ-58A Valkyrie」もあることから、「米空軍は何をしようとしているのだ?」との疑問がくすぶっている状態です
もちろん一般的なイメージ理解としては、「XQ-58A Valkyrie」がMQ-9の発展形の無人機で、長時間在空のISR+攻撃能力を備え、ステルス形状で強固に防御された敵空域での戦いにも投入可能な方向を追及し、「Skyborg」が無人ウイングマンタイプで、例えばF-35が10機の「Skyborg」を引き連れて強固に防御された敵空域で行動するイメージだと思います
しかし両方の関係者はそれぞれに、「何ができて、何ができない、との縛りはない。AIや電子戦やサイバーも絡め、幅広い可能性を探っていく」との姿勢で現状を語っており、技術先行で運用コンセプト後回し状態が感じられます
このような状態に米議会からは、航続距離が短く搭載量も少ない従来型戦闘機の延長であるF-35に資源と労力の多くを費やしている米空軍は、戦闘機パイロットが支配する米空軍は、今生まれつつある最新技術を生かせないのではないか・・・との疑念も生まれつつあるようです(前からあった疑念が、いよいよ表面化したともいえますが・・・)
とりあえず本日は「Skyborg」の状況を、「XQ-58A Valkyrie」と絡めてご紹介し、無人機研究から垣間見えるコンセプトの混迷を垣間見たいと思います
4日付米空軍協会web記事によれば
●3月末、米空軍は2023年までに運用態勢確立を目指す「Skyborg」のイメージ図を公開したが、米空軍自身がどのような無人機にするのか、すべきなのか決めていない。計画公表時には、悪天候でも自動で離着陸でき、他機や山や障害物との衝突を回避できるもの程度の解説だった。
●また「Skyborg」の方向性を検討するため発出されたRFIには、複雑なAI技術開発の機会となる「modular, fighter-like aircraft」で、「ここでのAI技術とは、単純な飛行制御から複数の主任務とサブ任務を自律的に遂行する技術までも含まれる」と狙いが記されている
●一方で3月5日に初飛行した「XQ-58A Valkyrie」も、今後半年間の5回の飛行で飛行特性などの確認試験飛行を行うが、「(基本的に長距離攻撃とISRを念頭に設計されているが、)高い亜音速飛行能力と高G旋回飛行が可能な飛行特性を備えており、何が可能で、何をすべきではないとの制限は設けていない」とプロジェクト報道官が語るように、将来に柔軟性や発展性を持たせている
●また価格的には、100機以内製造の場合は1機3億円で、それ以上だと2億円程度に抑えられる見積もりがあり、様々な応用アイディアが議論されている
●約20年前に登場したMQ-1プレデターは近代戦を大きく様変わりさせ、作戦面、法規面、文化面にまで議論が及ぶことになったが、開発が進む2機種はその性能で活動領域や任務を拡大させ、戦い方を大きく変える可能性を秘めている。しかし具体的な姿は見えていない
●2009年に米空軍は「2009 Air Force UAS flight plan」を発表して無人機の将来構想を示したが、その検証や見直し議論は聞こえてこず、未だにF-35やF-15EXやFA-18などの従来戦闘機の議論が日々を賑わしている現状である
●専門家は、「基本的にF-35, F-22, and B-21で構成される米空軍が一般的にイメージされている。従来の発想の中での議論から抜け出せておらず、これだけ無人機技術が進歩し、実際の役割も拡大してるいる中でも、本質的な変化が見られない」と懸念している
●退役米空軍中将であるDeptula氏は、有人機と無人機の両方が必要で、無人機だけで多様で複雑な任務を全て遂行することは不可能と語っており、これは一般的にも理解される考え方であろうが、有人機と無人機の融合やミックスを整理するには「一世代」必要だと言われると複雑な思いも感じる
●つまり、米空軍を支配する戦闘機パイロットが、無人機の活用やその活用法議論の障害となっているのではないか・・・との疑念がそこにある
●3月20日、下院軍事委員会の小委員長は「I love leather jackets and fighter pilots, but that’s not the future」、「無人機がこの世界ではますます重要になっている」と語っている
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それから、これら無人機を表現する際の新たな用語として、英和辞書にはない「attritable」との言葉が使用され始めています。
これは、使い捨てとまではいわないが失っても打撃にならない程度に安価で、一方でそれなりの性能を供えた無人機を表現する形容詞の様です。今後使われるでしょうからご注意ください
久しぶりに「leather jackets」への愚痴が出てしまいました・・・
関連の記事
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
「豪州とボーイングが共同で」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-2
「空母搭載の小型無人機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-03
「空軍研究所が関連映像公開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-3
先日紹介のXQ-58A Valkyrieとの違いは?
3月末、米空軍省の調達責任者であるWill Roper氏が、昨年10月から検討を開始したという米空軍研究所AFRLの「Skyborg」 との名前の無人機コンセプト図を公開し、関係企業の保有技術で何が実現可能か情報提供を募るRFI(request for information)を発出しました。
各種航空メディアは、この3本脚のずんぐりステルス形状のような機体を「無人ウイングマンのコンセプト図だ」とか、安価な無人戦闘機開発の原型だとか紹介していますが、3月5日に初飛行した同じく空軍研究所AFRLが開発を主導する「XQ-58A Valkyrie」もあることから、「米空軍は何をしようとしているのだ?」との疑問がくすぶっている状態です
もちろん一般的なイメージ理解としては、「XQ-58A Valkyrie」がMQ-9の発展形の無人機で、長時間在空のISR+攻撃能力を備え、ステルス形状で強固に防御された敵空域での戦いにも投入可能な方向を追及し、「Skyborg」が無人ウイングマンタイプで、例えばF-35が10機の「Skyborg」を引き連れて強固に防御された敵空域で行動するイメージだと思います
しかし両方の関係者はそれぞれに、「何ができて、何ができない、との縛りはない。AIや電子戦やサイバーも絡め、幅広い可能性を探っていく」との姿勢で現状を語っており、技術先行で運用コンセプト後回し状態が感じられます
このような状態に米議会からは、航続距離が短く搭載量も少ない従来型戦闘機の延長であるF-35に資源と労力の多くを費やしている米空軍は、戦闘機パイロットが支配する米空軍は、今生まれつつある最新技術を生かせないのではないか・・・との疑念も生まれつつあるようです(前からあった疑念が、いよいよ表面化したともいえますが・・・)
とりあえず本日は「Skyborg」の状況を、「XQ-58A Valkyrie」と絡めてご紹介し、無人機研究から垣間見えるコンセプトの混迷を垣間見たいと思います
4日付米空軍協会web記事によれば
●3月末、米空軍は2023年までに運用態勢確立を目指す「Skyborg」のイメージ図を公開したが、米空軍自身がどのような無人機にするのか、すべきなのか決めていない。計画公表時には、悪天候でも自動で離着陸でき、他機や山や障害物との衝突を回避できるもの程度の解説だった。
●また「Skyborg」の方向性を検討するため発出されたRFIには、複雑なAI技術開発の機会となる「modular, fighter-like aircraft」で、「ここでのAI技術とは、単純な飛行制御から複数の主任務とサブ任務を自律的に遂行する技術までも含まれる」と狙いが記されている
●一方で3月5日に初飛行した「XQ-58A Valkyrie」も、今後半年間の5回の飛行で飛行特性などの確認試験飛行を行うが、「(基本的に長距離攻撃とISRを念頭に設計されているが、)高い亜音速飛行能力と高G旋回飛行が可能な飛行特性を備えており、何が可能で、何をすべきではないとの制限は設けていない」とプロジェクト報道官が語るように、将来に柔軟性や発展性を持たせている
●また価格的には、100機以内製造の場合は1機3億円で、それ以上だと2億円程度に抑えられる見積もりがあり、様々な応用アイディアが議論されている
●約20年前に登場したMQ-1プレデターは近代戦を大きく様変わりさせ、作戦面、法規面、文化面にまで議論が及ぶことになったが、開発が進む2機種はその性能で活動領域や任務を拡大させ、戦い方を大きく変える可能性を秘めている。しかし具体的な姿は見えていない
●2009年に米空軍は「2009 Air Force UAS flight plan」を発表して無人機の将来構想を示したが、その検証や見直し議論は聞こえてこず、未だにF-35やF-15EXやFA-18などの従来戦闘機の議論が日々を賑わしている現状である
●専門家は、「基本的にF-35, F-22, and B-21で構成される米空軍が一般的にイメージされている。従来の発想の中での議論から抜け出せておらず、これだけ無人機技術が進歩し、実際の役割も拡大してるいる中でも、本質的な変化が見られない」と懸念している
●退役米空軍中将であるDeptula氏は、有人機と無人機の両方が必要で、無人機だけで多様で複雑な任務を全て遂行することは不可能と語っており、これは一般的にも理解される考え方であろうが、有人機と無人機の融合やミックスを整理するには「一世代」必要だと言われると複雑な思いも感じる
●つまり、米空軍を支配する戦闘機パイロットが、無人機の活用やその活用法議論の障害となっているのではないか・・・との疑念がそこにある
●3月20日、下院軍事委員会の小委員長は「I love leather jackets and fighter pilots, but that’s not the future」、「無人機がこの世界ではますます重要になっている」と語っている
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それから、これら無人機を表現する際の新たな用語として、英和辞書にはない「attritable」との言葉が使用され始めています。
これは、使い捨てとまではいわないが失っても打撃にならない程度に安価で、一方でそれなりの性能を供えた無人機を表現する形容詞の様です。今後使われるでしょうからご注意ください
久しぶりに「leather jackets」への愚痴が出てしまいました・・・
関連の記事
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
「豪州とボーイングが共同で」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-2
「空母搭載の小型無人機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-03
「空軍研究所が関連映像公開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-3
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