米空軍がF-22能力向上近代化の1兆円契約発表 [米空軍]
全ての契約完了予定は2031年10月末
F-22は2030年から退役開始との構想との関係不明
11月5日、米空軍はロッキード社と、約1兆2000億円規模のF-22能力向上近代化プログラムARES(Advanced Raptor Enhancement and Sustainment)契約を結んだと発表しました。
国防省発表によれば、契約はF-22製造企業であるロッキード社単体と結ばれ、F-22の能力向上、アップグレード、改修修理が含まれ、関連する兵站支援や関連パーツの調達も同社に依頼する形になっているようです
機体の改修はテキサス州Fort Worth工場で実施され、全ての契約事項が履行されれば、2031年10月31日までに完了することになっているとのことです
ただ、2021年5月頃にBrown空軍参謀総長などの主要幹部が語っていた、2022年度予算要求の背景にある「近未来戦闘機構想」によれば、次期制空機NGADが導入開始となる2030年頃からF-22は退役開始することとなっており、現在186機を保有するF-22の何機に対しどの程度の能力向上改修を行うのか不明です
単純に1兆2000億円を186機で割ると1機あたり約64億円を投入することとなり、米議会の理解が得られているのか等、色々な「?」が浮かぶところです
今年5月にBrown参謀総長は「F-22はNGADが導入&運用されるまでの橋渡し役(bridge)だ」と表現し、同時期にClinton Hinote空軍司令部計画部長は「F-22は1991年に開発が始まった機体で、増大しつつある中国脅威から台湾や日本やフィリピン等を守るには適切な装備ではなくなるだろう」と語っていたところです
高価になると言われているNGADの開発&導入タイミングや、米国防省全体での予算配分優先順位に左右される将来の戦闘機体系構想ですが、以下では背景として押さえておくべき5月時点での近未来の戦闘機構想を、5月に米空軍協会が報じた記事から復習しておきます
米空軍2022年度予算要求を説明するための「論点ペーパー」の内容抜粋として報じられた、米空軍の描いている「近未来の戦闘機構想」です
2021年5月14日付米空軍協会web記事
●米空軍が旧式アセット早期引退を急ぐ背景
--- 航空アセットの44%が当初の運用寿命オーバーで使用中
--- 米空軍航空機の平均年齢は28.6歳 老朽化
--- ちなみに米陸軍は15.3歳、海軍は14.4歳
--- 豪空軍は8.9歳、英空軍は16.6歳
●以下の早期引退進め、近代化加速でも、年間7-8千億円資金不足
●米空軍が2026年までに退役させたい戦闘機421機
(以下の退役規模は2010年初頭の250機以来の規模)
--- F-15C/Dを234機、F-16を124機(残り812機に)
--- A-10を63機 (ただし2023年までに:現281機)
●一方で2026年までに新規導入希望304機
--- F-35Aを220機、F-15EXを84機
●F-22は2030年から退役開始
--- NGADが後継となる方向
--- 今も近代化改修中も、20年後はハイエンドで戦えない
●F-15EXの方向性
--- 2022年に11機、23年に14機、その後年19機導入
--- 遠方からハイエンド紛争に参画、それ以外では制空任務も
--- 極超音速兵器や、空対地ミサイルAGM-183A・ARRW搭載へ
--- また中国の長射程空対空ミサイルPL-15に対抗
長射程空対空ミサイルAIM-260搭載か
●維持費高止まりのF-35調達ペースは
--- 2022年度は48機要求も、以後2023-26年は年43機ペースに落とす
--- これにより2023-26年調達機数を240機から220機に削減
--- 当初の年間1機維持費見積4.5億円だったが、現時点では2036年でも8.5億円
--- F-16とA-10全ての後継機のはずが、維持費下がらず方向転換へ
--- 一応空軍は「Block4」が完成したら調達ペース上げると言い訳
●2035年頃から導入MR-X(malti-role Fighter)
--- 約600機のF-16後継をイメージ。6-8年後から検討開始
--- デジタル設計技術導入で、開発期間短く、短期間使用で維持費抑制
--- 早いサイクルで次世代機導入で陳腐化避ける
--- ハイエンド紛争には限定的役割も、多用途で任務あり
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ご紹介した5月頃の米空軍幹部の発言や構想報道以後、戦闘機族のボスと言われるKelly空軍戦闘コマンド司令官が9月に、「高度に情報管理されたNGADについて、何時、どの程度まで情報を公開できるかは私にもわからない。その要求性能や能力について広く知ってもらえれば、より多くのご支援やご理解を頂けると思っているが、その段階にはない」、
また「今我々は欧州戦線思考や80-90年代思考やシングルバンドセンサー思考を超える必要がある。ロシアは依然として脅威だが、我々は新たな脅威に直面しており、NGADはアジア太平洋地域における距離克服やより広い電磁スペクトラム活用や対処の課題に向き合う必要がある。より遠方を監視し、戦い、勝ち抜く必要があるからだ」と語っていますが、他の戦闘機との関係にまで言及していません
今後の展開を引き続き生暖かく見守りましょう
戦闘機構成検討TacAir study関連
「近未来の戦闘機構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-16
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/
F-22の次?:次期制空機NGAD関連の記事
「戦闘機族ボスが再び現状を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-07
「戦闘機族ボスがNGADへの危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/05/154/
「SCIF使用困難で戦闘機開発危機」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-12
「次期制空機のデモ機を既に初飛行済」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-16
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
F-22は2030年から退役開始との構想との関係不明
11月5日、米空軍はロッキード社と、約1兆2000億円規模のF-22能力向上近代化プログラムARES(Advanced Raptor Enhancement and Sustainment)契約を結んだと発表しました。
国防省発表によれば、契約はF-22製造企業であるロッキード社単体と結ばれ、F-22の能力向上、アップグレード、改修修理が含まれ、関連する兵站支援や関連パーツの調達も同社に依頼する形になっているようです
機体の改修はテキサス州Fort Worth工場で実施され、全ての契約事項が履行されれば、2031年10月31日までに完了することになっているとのことです
ただ、2021年5月頃にBrown空軍参謀総長などの主要幹部が語っていた、2022年度予算要求の背景にある「近未来戦闘機構想」によれば、次期制空機NGADが導入開始となる2030年頃からF-22は退役開始することとなっており、現在186機を保有するF-22の何機に対しどの程度の能力向上改修を行うのか不明です
単純に1兆2000億円を186機で割ると1機あたり約64億円を投入することとなり、米議会の理解が得られているのか等、色々な「?」が浮かぶところです
今年5月にBrown参謀総長は「F-22はNGADが導入&運用されるまでの橋渡し役(bridge)だ」と表現し、同時期にClinton Hinote空軍司令部計画部長は「F-22は1991年に開発が始まった機体で、増大しつつある中国脅威から台湾や日本やフィリピン等を守るには適切な装備ではなくなるだろう」と語っていたところです
高価になると言われているNGADの開発&導入タイミングや、米国防省全体での予算配分優先順位に左右される将来の戦闘機体系構想ですが、以下では背景として押さえておくべき5月時点での近未来の戦闘機構想を、5月に米空軍協会が報じた記事から復習しておきます
米空軍2022年度予算要求を説明するための「論点ペーパー」の内容抜粋として報じられた、米空軍の描いている「近未来の戦闘機構想」です
2021年5月14日付米空軍協会web記事
●米空軍が旧式アセット早期引退を急ぐ背景
--- 航空アセットの44%が当初の運用寿命オーバーで使用中
--- 米空軍航空機の平均年齢は28.6歳 老朽化
--- ちなみに米陸軍は15.3歳、海軍は14.4歳
--- 豪空軍は8.9歳、英空軍は16.6歳
●以下の早期引退進め、近代化加速でも、年間7-8千億円資金不足
●米空軍が2026年までに退役させたい戦闘機421機
(以下の退役規模は2010年初頭の250機以来の規模)
--- F-15C/Dを234機、F-16を124機(残り812機に)
--- A-10を63機 (ただし2023年までに:現281機)
●一方で2026年までに新規導入希望304機
--- F-35Aを220機、F-15EXを84機
●F-22は2030年から退役開始
--- NGADが後継となる方向
--- 今も近代化改修中も、20年後はハイエンドで戦えない
●F-15EXの方向性
--- 2022年に11機、23年に14機、その後年19機導入
--- 遠方からハイエンド紛争に参画、それ以外では制空任務も
--- 極超音速兵器や、空対地ミサイルAGM-183A・ARRW搭載へ
--- また中国の長射程空対空ミサイルPL-15に対抗
長射程空対空ミサイルAIM-260搭載か
●維持費高止まりのF-35調達ペースは
--- 2022年度は48機要求も、以後2023-26年は年43機ペースに落とす
--- これにより2023-26年調達機数を240機から220機に削減
--- 当初の年間1機維持費見積4.5億円だったが、現時点では2036年でも8.5億円
--- F-16とA-10全ての後継機のはずが、維持費下がらず方向転換へ
--- 一応空軍は「Block4」が完成したら調達ペース上げると言い訳
●2035年頃から導入MR-X(malti-role Fighter)
--- 約600機のF-16後継をイメージ。6-8年後から検討開始
--- デジタル設計技術導入で、開発期間短く、短期間使用で維持費抑制
--- 早いサイクルで次世代機導入で陳腐化避ける
--- ハイエンド紛争には限定的役割も、多用途で任務あり
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ご紹介した5月頃の米空軍幹部の発言や構想報道以後、戦闘機族のボスと言われるKelly空軍戦闘コマンド司令官が9月に、「高度に情報管理されたNGADについて、何時、どの程度まで情報を公開できるかは私にもわからない。その要求性能や能力について広く知ってもらえれば、より多くのご支援やご理解を頂けると思っているが、その段階にはない」、
また「今我々は欧州戦線思考や80-90年代思考やシングルバンドセンサー思考を超える必要がある。ロシアは依然として脅威だが、我々は新たな脅威に直面しており、NGADはアジア太平洋地域における距離克服やより広い電磁スペクトラム活用や対処の課題に向き合う必要がある。より遠方を監視し、戦い、勝ち抜く必要があるからだ」と語っていますが、他の戦闘機との関係にまで言及していません
今後の展開を引き続き生暖かく見守りましょう
戦闘機構成検討TacAir study関連
「近未来の戦闘機構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-16
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/
F-22の次?:次期制空機NGAD関連の記事
「戦闘機族ボスが再び現状を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-07
「戦闘機族ボスがNGADへの危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/05/154/
「SCIF使用困難で戦闘機開発危機」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-12
「次期制空機のデモ機を既に初飛行済」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-16
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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