沿岸警備隊司令官候補に初の女性推挙 [Joint・統合参謀本部]
米国の6軍トップに初の女性誕生へ
1985年沿岸警備隊アカデミー卒の現副司令官
娘さんも沿岸警備隊の若手士官とか
4月5日、米国政府は次の沿岸警備隊司令官に、現在副司令官を務めるLinda Fagan沿岸警備隊大将を推挙すると発表しました。5月に退官するKarl Schultz現司令官の後任者として上院で承認されれば、女性初の米6軍(陸海空宇宙軍、海兵隊、沿岸警備隊)トップとなります
ただ、沿岸警備隊司令官は5軍のトップの一人ですが、「Joint Chiefs of Staff:統合参謀本部」構成員ながら完全な「投票権」を保有していないメンバーです。また6軍の中では唯一、国防省ではなく、国土安全保障省(Department of Homeland Security)管轄の組織トップとの位置づけになります
近年の米本土安全保障の重要性と任務増大から、沿岸警備隊司令官を投票権のある正式な「Joint Chiefs of Staff」にするべく法改正案が昨年超党派の議員団から提出され、残念ながら成立しませんでしたが、法改正は時間の問題だろうとの雰囲気にあるようです
以下では、推挙発表が国土安全保障省からあったLinda Fagan沿岸警備隊大将について、ご紹介します
4月5日付Military.com記事から候補者をご紹介
●1985年沿岸警備隊士官学校卒(推定60歳)(現司令官は83年卒)で、2021年7月に女性として初めて沿岸警備隊大将に昇進し、同時に副司令官に就任。女性として副司令官に就任したのは3例目(沿岸警備隊の任務拡充等により、5年前に副司令官ポストが大将に格上げ)
●沿岸警備隊では「Marine Safety Officer」としてキャリアをスタートさせ、海上事故調査、商用洋上交通の監視監督、航海支援設備管理、海洋運航者へのライセンス付与、海洋安全施策推進などの業務で若手から中堅時代の経験を積む
●また、40年近いキャリアの中で海洋監察官職を15年勤め、大型砕氷艦Polar Starでの勤務も経験している。末尾の経歴表によれば、東京勤務もある模様
●副司令官就任時に「CBS This Morning」に出演して沿岸警備隊の任務説明した際は、「homeland security」, 「maintaining a global presence」, 「supporting and training the coast guards of other countries」, 「enforcing drug laws and fishing regulations」,「protecting the supply chain」を上げている
●そして特に強調して、「沿岸警備隊は世界中で活動している。人々は誤解している。沿岸警備隊は沿岸でのみ活動していると考えがちだ。米海軍の仲間がプレゼンスを示し、法を執行するために武器使用を議論するのと同じように、我々は米本土防衛のために存在している」と表現している
●Fagan大将は同インタビューで沿岸警備隊の変革にも触れ、「diversityとinclusion」や「女性の活躍」について語り、「我々が使える米国社会を表現するような人的戦力構成を目指し、女性の登用などdiversityとinclusionに焦点を当てて変革に取り組んでいる」と述べ、マイノリティー採用を増やしていると説明している。
●ちなみにFagan大将の娘の一人であるAileen Faganは、沿岸警備隊の士官(少尉)としてキャリアをスタートさせている
●現司令官のKarl Schultz大将は次期司令官候補のFagan大将を表し、「沿岸警備隊の作戦運用、政策策定、他軍種との統合運用や他政府機関との連携経験が豊富で、歴史的転換点にある沿岸警備隊をリードするにふさわしい人物だ」と語っている
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米国の沿岸警備隊について取り上げたことがほとんどありませんが、「グレーゾーン」事案への対応がより重要になる最近の安全保障環境の中で、「平時の第一線」であることは間違いありません。
また、ほとんど顧みられなかった「砕氷船」が北極海の氷減少でにわかに脚光を浴びる中、実質的な稼働席数が「わずか1隻」との厳しい現実にも向き合っていただくことになるのでしょう。ご検討を祈念申し上げます
Linda Fagan沿岸警備隊大将のご経歴
→https://www.uscg.mil/Biographies/Display/Article/1391225/admiral-linda-l-fagan/
女性徴兵制度がある国
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等目指し:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉業務選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22
沿岸警備隊関連(砕氷艦)の記事
「唯一の大型稼働砕氷艦が火災で運行不能」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-26
「大統領が米砕氷艦計画の再評価指示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-15
「トランプ:空母削って砕氷艦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02
軍での女性を考える記事
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-05
「技術開発担当国防次官に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-23
「初の女性月面着陸目指す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-20
「黒人女性が初めて米海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
1985年沿岸警備隊アカデミー卒の現副司令官
娘さんも沿岸警備隊の若手士官とか
4月5日、米国政府は次の沿岸警備隊司令官に、現在副司令官を務めるLinda Fagan沿岸警備隊大将を推挙すると発表しました。5月に退官するKarl Schultz現司令官の後任者として上院で承認されれば、女性初の米6軍(陸海空宇宙軍、海兵隊、沿岸警備隊)トップとなります
ただ、沿岸警備隊司令官は5軍のトップの一人ですが、「Joint Chiefs of Staff:統合参謀本部」構成員ながら完全な「投票権」を保有していないメンバーです。また6軍の中では唯一、国防省ではなく、国土安全保障省(Department of Homeland Security)管轄の組織トップとの位置づけになります
近年の米本土安全保障の重要性と任務増大から、沿岸警備隊司令官を投票権のある正式な「Joint Chiefs of Staff」にするべく法改正案が昨年超党派の議員団から提出され、残念ながら成立しませんでしたが、法改正は時間の問題だろうとの雰囲気にあるようです
以下では、推挙発表が国土安全保障省からあったLinda Fagan沿岸警備隊大将について、ご紹介します
4月5日付Military.com記事から候補者をご紹介
●1985年沿岸警備隊士官学校卒(推定60歳)(現司令官は83年卒)で、2021年7月に女性として初めて沿岸警備隊大将に昇進し、同時に副司令官に就任。女性として副司令官に就任したのは3例目(沿岸警備隊の任務拡充等により、5年前に副司令官ポストが大将に格上げ)
●沿岸警備隊では「Marine Safety Officer」としてキャリアをスタートさせ、海上事故調査、商用洋上交通の監視監督、航海支援設備管理、海洋運航者へのライセンス付与、海洋安全施策推進などの業務で若手から中堅時代の経験を積む
●また、40年近いキャリアの中で海洋監察官職を15年勤め、大型砕氷艦Polar Starでの勤務も経験している。末尾の経歴表によれば、東京勤務もある模様
●副司令官就任時に「CBS This Morning」に出演して沿岸警備隊の任務説明した際は、「homeland security」, 「maintaining a global presence」, 「supporting and training the coast guards of other countries」, 「enforcing drug laws and fishing regulations」,「protecting the supply chain」を上げている
●そして特に強調して、「沿岸警備隊は世界中で活動している。人々は誤解している。沿岸警備隊は沿岸でのみ活動していると考えがちだ。米海軍の仲間がプレゼンスを示し、法を執行するために武器使用を議論するのと同じように、我々は米本土防衛のために存在している」と表現している
●Fagan大将は同インタビューで沿岸警備隊の変革にも触れ、「diversityとinclusion」や「女性の活躍」について語り、「我々が使える米国社会を表現するような人的戦力構成を目指し、女性の登用などdiversityとinclusionに焦点を当てて変革に取り組んでいる」と述べ、マイノリティー採用を増やしていると説明している。
●ちなみにFagan大将の娘の一人であるAileen Faganは、沿岸警備隊の士官(少尉)としてキャリアをスタートさせている
●現司令官のKarl Schultz大将は次期司令官候補のFagan大将を表し、「沿岸警備隊の作戦運用、政策策定、他軍種との統合運用や他政府機関との連携経験が豊富で、歴史的転換点にある沿岸警備隊をリードするにふさわしい人物だ」と語っている
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米国の沿岸警備隊について取り上げたことがほとんどありませんが、「グレーゾーン」事案への対応がより重要になる最近の安全保障環境の中で、「平時の第一線」であることは間違いありません。
また、ほとんど顧みられなかった「砕氷船」が北極海の氷減少でにわかに脚光を浴びる中、実質的な稼働席数が「わずか1隻」との厳しい現実にも向き合っていただくことになるのでしょう。ご検討を祈念申し上げます
Linda Fagan沿岸警備隊大将のご経歴
→https://www.uscg.mil/Biographies/Display/Article/1391225/admiral-linda-l-fagan/
女性徴兵制度がある国
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等目指し:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉業務選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22
沿岸警備隊関連(砕氷艦)の記事
「唯一の大型稼働砕氷艦が火災で運行不能」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-26
「大統領が米砕氷艦計画の再評価指示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-15
「トランプ:空母削って砕氷艦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02
軍での女性を考える記事
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-05
「技術開発担当国防次官に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-23
「初の女性月面着陸目指す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-20
「黒人女性が初めて米海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11
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ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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