米軍衛星が地上局とのLink-16通信試験に成功 [サイバーと宇宙]
低高度軌道上の小型衛星3基とFive Eyes国の地上局が
衛星収集戦術データの即時ネットワーク共有へ大きな一歩
米SDAのProliferated Warfighter Space Architectureで
11月28日、米国防省の宇宙開発庁SDA(Space Development Agency)が、11月21-27日の間で実施したデモ試験で、高度1200マイル上空の低高度軌道上を周回する小型衛星3基と地上通信局間で、戦術データ情報リアルタイム共有用に航空機・艦艇・地上施設間で使用中の「Link-16」による通信テストに成功したと発表しました
「Link-16」は、例えば空飛ぶレーダーE-3やE-7や海軍のE-2Dが補足追尾する敵機情報を、リアルタイムで戦闘機に送信して戦闘機のレーダー画面に表示し、一刻を争う最前線での敵情報共有を支えるデータ通信手段で、弾道ミサイル防衛でもイージス艦補足の敵弾道ミサイル情報を、BMDシステムを経由して地上配備のパトリオットPAC-3ミサイル迎撃部隊と即時共有することにも利用されている最前線の情報命脈です
従来の衛星センサー情報の地上システムへの送信要領をまんぐーすは説明できませんが、現在の航空機・艦艇・地上部隊の戦術データ共有の中核を担っている「Link-16」を人工衛星が利用可能になることで、既存の航空機・艦艇・地上部隊の戦術データネットワークに、衛星情報をスムーズに取り込むことが可能となることから、「a significant milestone」とSDAトップのDerek Tournear氏が歓喜の声明を発表するのも理解できます
まだ基礎的な技術実証の段階で、「Link-16」信号を衛星軌道上から米本土地上に向け送信することに関し、連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)の承認が得られておらず、今回のデモ試験は、米国以外のFive Eyes国(英豪加NZ)のどこかの地上局(非公開)を使用して行われたとのことです。なおFive Eyesは、米英豪加NZの5か国のみで構成される高度秘密情報共有のグループです
担当する宇宙開発庁SDAは2019年に創設された組織で、既存の大型&多機能&少数&高価な衛星で構成される衛星ネットワークに、小型&機能限定&安価&多数(hundreds)な低高度軌道衛星を加えて迅速に強化して「Proliferated Warfighter Space Architecture」を構築するための組織ですが、
現在までに「transport satellites」19機、「missile tracking satellites」8機で構成される「Tranche 0」の小型衛星網を構成し、今回のデモ試験もこの衛星の一部(Transport Layerの衛星)を使用したとのことですが、2024年から打ち上げを開始する「Tranche 1」では、「transport satellites」126機、「missile tracking satellites」35機を軌道投入する予定とのことです
前出のSDA長官Derek Tournear氏(SDA創設時から4年以上同ポスト)は声明文で、「今後もSDAはその任務であるProliferated Warfighter Space Architecture構築に尽力し、同Space Architectureが最前線の兵士たちに既存の戦術データネットワークを通じて兵器管制情報(fire control information)を提供可能なことを検証していく」と、衛星による「Link-16」使用技術の成熟への決意を新たにしています
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正直なところ、「Link-16」が衛星とのデータ通信に使用できていなかったことを初めて知りました。航空機・艦艇・地上部隊間の通信距離が長くても数百㎞のところ、衛星と地上の距離が1200マイル(約2000㎞)ともなれば、小型衛星で実現するには技術的ハードルも高いのでしょう。またコッソリFive Eyes内で協力して進めている辺りに、この技術の重要性や機密性を感じます
Tournear長官は2019年10月の米陸軍協会総会で、「SDAは3分野に注力しており、一つは超超音速兵器や弾道ミサイルの追尾、2つ目は宇宙状況認識を高める取り組み、そして3つ目が一刻を争う地上脅威目標の探知追尾である」と語っており、3つ目の米陸軍と連携して進める衛星からの地上目標情報提供「Kestrel Eye計画」が「Link-16」と関連が深いものです。
E-8 JSTARS(退役間近)、E-3やE-7早期警戒管制機の役割の引継ぎが期待されている、衛星からの地上目標情報提供技術に関する取り組みのお話でした
米宇宙開発庁SDA関連の記事
「Kestrel Eye計画:衛星で目標情報をリアルタイムに地上部隊へ」→https://holylandtokyo.com/2019/11/05/2967/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
衛星収集戦術データの即時ネットワーク共有へ大きな一歩
米SDAのProliferated Warfighter Space Architectureで
11月28日、米国防省の宇宙開発庁SDA(Space Development Agency)が、11月21-27日の間で実施したデモ試験で、高度1200マイル上空の低高度軌道上を周回する小型衛星3基と地上通信局間で、戦術データ情報リアルタイム共有用に航空機・艦艇・地上施設間で使用中の「Link-16」による通信テストに成功したと発表しました
「Link-16」は、例えば空飛ぶレーダーE-3やE-7や海軍のE-2Dが補足追尾する敵機情報を、リアルタイムで戦闘機に送信して戦闘機のレーダー画面に表示し、一刻を争う最前線での敵情報共有を支えるデータ通信手段で、弾道ミサイル防衛でもイージス艦補足の敵弾道ミサイル情報を、BMDシステムを経由して地上配備のパトリオットPAC-3ミサイル迎撃部隊と即時共有することにも利用されている最前線の情報命脈です
従来の衛星センサー情報の地上システムへの送信要領をまんぐーすは説明できませんが、現在の航空機・艦艇・地上部隊の戦術データ共有の中核を担っている「Link-16」を人工衛星が利用可能になることで、既存の航空機・艦艇・地上部隊の戦術データネットワークに、衛星情報をスムーズに取り込むことが可能となることから、「a significant milestone」とSDAトップのDerek Tournear氏が歓喜の声明を発表するのも理解できます
まだ基礎的な技術実証の段階で、「Link-16」信号を衛星軌道上から米本土地上に向け送信することに関し、連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)の承認が得られておらず、今回のデモ試験は、米国以外のFive Eyes国(英豪加NZ)のどこかの地上局(非公開)を使用して行われたとのことです。なおFive Eyesは、米英豪加NZの5か国のみで構成される高度秘密情報共有のグループです
担当する宇宙開発庁SDAは2019年に創設された組織で、既存の大型&多機能&少数&高価な衛星で構成される衛星ネットワークに、小型&機能限定&安価&多数(hundreds)な低高度軌道衛星を加えて迅速に強化して「Proliferated Warfighter Space Architecture」を構築するための組織ですが、
現在までに「transport satellites」19機、「missile tracking satellites」8機で構成される「Tranche 0」の小型衛星網を構成し、今回のデモ試験もこの衛星の一部(Transport Layerの衛星)を使用したとのことですが、2024年から打ち上げを開始する「Tranche 1」では、「transport satellites」126機、「missile tracking satellites」35機を軌道投入する予定とのことです
前出のSDA長官Derek Tournear氏(SDA創設時から4年以上同ポスト)は声明文で、「今後もSDAはその任務であるProliferated Warfighter Space Architecture構築に尽力し、同Space Architectureが最前線の兵士たちに既存の戦術データネットワークを通じて兵器管制情報(fire control information)を提供可能なことを検証していく」と、衛星による「Link-16」使用技術の成熟への決意を新たにしています
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正直なところ、「Link-16」が衛星とのデータ通信に使用できていなかったことを初めて知りました。航空機・艦艇・地上部隊間の通信距離が長くても数百㎞のところ、衛星と地上の距離が1200マイル(約2000㎞)ともなれば、小型衛星で実現するには技術的ハードルも高いのでしょう。またコッソリFive Eyes内で協力して進めている辺りに、この技術の重要性や機密性を感じます
Tournear長官は2019年10月の米陸軍協会総会で、「SDAは3分野に注力しており、一つは超超音速兵器や弾道ミサイルの追尾、2つ目は宇宙状況認識を高める取り組み、そして3つ目が一刻を争う地上脅威目標の探知追尾である」と語っており、3つ目の米陸軍と連携して進める衛星からの地上目標情報提供「Kestrel Eye計画」が「Link-16」と関連が深いものです。
E-8 JSTARS(退役間近)、E-3やE-7早期警戒管制機の役割の引継ぎが期待されている、衛星からの地上目標情報提供技術に関する取り組みのお話でした
米宇宙開発庁SDA関連の記事
「Kestrel Eye計画:衛星で目標情報をリアルタイムに地上部隊へ」→https://holylandtokyo.com/2019/11/05/2967/
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2023-11-30 05:00
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