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国防省が大型水上離着陸輸送機の候補1社に絞る [Joint・統合参謀本部]

対中国作戦の輸送力不足補填に「Liberty Lifter」構想
どの軍種が運用を担うか不透明なまま
ビーチに接岸して荷下ろし構想で
2028年初頭の初飛行目指し2社から1社に
C-17級の搭載力と「地面効果」低空飛行可な機体
エンジン8基とかの巨大機体です

liberty lifter Aurora.jpg5月9日、米国防省の研究機関DARPAが(対中国を想定して)提案募集し、2023年2月に2社に候補を絞り込んでいた海面離着陸とビーチ接岸可能な大型輸送機(Liberty Lifter Seaplane Wing-in-Ground Effect)について、「Phase 1」契約(10億円程度)で1年半の検討で煮詰めた技術成熟や機体設計やデモ機製造の計画を審査し、「General Atomics」と「(ボーイング傘下の)Aurora Flight Sciences」の候補2社から、Aurora社を継続検討契約対象とすることを発表しました。

今後は約15億円程度の「Phase 2」契約に進んで更に機体設計や細部仕様を煮詰め、その後搭載量C-130程度のデモ機製造を行い、最終的には搭載量がC-130の約4倍のC-17輸送機レベルの機体として、米軍の「どこかの軍種」と連携し、2025年には設計審査を終え、2027年末から28年初の初飛行に向け開発を進める予定になっているようです

まず大型水上離着陸輸送機(通称Liberty Lifter)とは
liberty lifter Aurora2.jpg●(細部要求レベル未確定も、報道によれば、)対中国作戦での西太平洋上の分散拠点への輸送力強化策を狙いとした、海面離着陸可能でビーチ接岸して荷下ろし可能な、全く新タイプの革新的な輸送機で、C-17輸送機並みの搭載量100トン程度(M1戦車69トン、フル装備空挺兵士100名、担架上の患者34名)を追求
●荒れた海での運用も目指し、小型ボートの運用限界である「sea state 3(波高4 feet)」より厳しい、「sea state 4(波高8 feet)」で離着水可能で、補給艦から戦闘艦への海上補給が困難になる「sea state 5(波高13 feet)」でも海上活動が可能なレベルを追求

Liberty Lifter2.jpgまたこのLiberty Lifter構想は、以前ご紹介したMC-130米空軍特殊作戦機用に水上離着陸可能なフロートを開発するプロジェクトや、GPS誘導JDAMを艦艇攻撃用に改良するプロジェクトと同じ流れで、対中国作戦を想定し、従来空軍が活用してきた作戦能力を、海と島々で構成される西太平洋戦域で活用するための検討(adapt traditionally air-related capabilities to a maritime environment)の一つだ・・・、とも報道では紹介されているようです

今回Aurora Flight Sciences案の方向が採用されましたが、DARPA担当責任者は、「我々は効率的に革新的なものを生み出そうとしており、攻めた厳しいスケジュールや技術目標を掲げ、迅速に戦力化することを追求しているが、General Atomics案はこのような野心的な目標レベルに到達しなかった」との極めてストレートな表現の声明で選定結果を説明しています

ちなみに2社の提案概要(概念図も参照)は・・・、
Aurora Flight Sciences社の提案
・単胴、高位置翼、幅広い水平尾翼
・8つのターボプロップエンジン
・機体尾部に開いて貨物積み下ろし
・Gibbs & Cox社&ReconCraft社と設計協力

General Atomics社の提案
・海上での安定を2つの胴体と翼で確保
・12基のターボシャフトエンジン
・機体前方が上に開いて貨物積み下ろし
・Maritime Applied Physics社と設計協力
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Liberty Lifter.jpg2023年2月に候補2社との「Phase 1」契約が発表された際に、DARPAが検討の進捗をみて「少なくと一つの軍種とチームを組んで」と微妙な表現で説明していたように、運用担当軍種が海か空かぼんやりした、つまり、陸上飛行場が母基地になるのか、湖や海に面した港が母基地になるのかが判然としない、今後大いに議論が紛糾しそうな輸送アセットです。

また、機体が完成したとしても、目的地での荷下ろしや陸揚げ後の輸送運用などが相当に難しい印象の機体で、「革新」を追求と言われても、現時点では実際の運用の担い手も判然としない「実行可能性」が「?」なアセットのような気がしてなりません。裏を返せば、対中国作戦がそれほど兵站面、つまり物資輸送面で難しい問題を抱えており、あらゆるアイディアを試行錯誤で試している段階だ・・・とも見ることができます

Liberty Lifter Seaplane Wing-in-Ground Effec構想
「国防省が大型水上離着陸機の候補2社発表」→https://holylandtokyo.com/2023/02/15/4268/

Liberty Lifter構想と同じ流れの検討
「艦艇攻撃用に改良のGPS誘導JDAM試験」→https://holylandtokyo.com/2022/05/13/3219/
「対中国にC-130用水上着陸フロート開発」→https://holylandtokyo.com/2021/10/13/2296/

西太平洋では兵站確保が重要
「ウのアジア太平洋への教訓は兵站支援」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「ウは世界初の防空兵器の消耗戦に」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「台湾は非対称戦術を」→https://holylandtokyo.com/2023/01/16/4160/

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昨年のグアム島直撃台風被害は超甚大だった模様 [米空軍]

復旧に年間の国防省施設関連予算の約3倍
米空軍だけで1兆3千億円で過去最大級被害の2倍

Andersen Tyhoon5.jpg5月1日に開催された米上院予算小委員会で、米空軍施設兵站部長Tom D. Miller中将や国防省施設担当次官補Brendan Owens氏などが、2023年5月24日にグアム島を直撃し最大風速70mと650㎜の短時間豪雨をもたらした台風「Mawar」の空軍基地や国防省施設全体への影響について説明し、

規模分類で最大級「5」のハリケーン直撃や豪雨で当時過去最大の基地機能壊滅の被害と言われた、2018年のフロリダ州Tyndall基地や2019年のOffutt基地の復旧費用の「約2倍」の施設建設(MILCON)や施設復旧(FSRM)が必要と見積もられ、グアム島の米海軍や海兵隊施設関連の復旧費用を合計すると、年間の国防省施設建設予算の3倍規模に相当する莫大な額となり、到底通常の国防省や各軍種関連予算枠には収まらず、「特別補正予算」編成が必要だと訴えました

Andersen Tyhoon4.jpg言うまでもなくグアム島は対中国作戦の米海空軍海兵隊の一大拠点基地であり、例えば米ミサイル防衛庁MDAは、グアム島の防空&ミサイル防衛体制整備を2026年までに完成させることを至上命題として最優先課題で取り組んでおり、サンゴ礁基盤の利用が困難な島内の、利用可能な極めて限定された土地利用に関する住民同意を得る努力から開始していますが、

そんな米軍内で最も重要な基地の一つであるグアム島の米軍施設に、これまで「隠されていた」甚大な台風被害が発生していたことが、被害発生から1年後に、復旧予算要求過程で極めて断片的に明るみになったということです

施設等の復旧経費見積もりは・・・
Guam Mawar7.jpg●台風「Mawar」通過直後に緊急派遣された空中給油部隊関係者は当時、「アンダーセン空軍基地内は瓦礫だらけで、板金などの金属板が紙切れのように散乱し、電線はあらゆる場所で寸断され、信号機はあらゆる方向を向いていた。熱帯雨林の密集したジャングルだった場所でも、木々は剥ぎ取られ地面がむき出していた」と証言

●前述のMiller空軍施設部長によれば、グアム空軍基地内で90以上の施設が大規模な修復や再建が必要な被害を受け、42の施設建物の再構築に1兆2千億円、他の被害建物に対する修復や施設強化費に2000億円必要だと述べ、「被害を受けた60年代から80年代に建設された施設は、当時の不十分な強度設計で再建されるべきではなく、将来の災害と基地のニーズに対応した施設として再建される必要がある」と説明

Andersen Tyhoon3.jpg●米空軍施設以外でも、米海軍がグアム港に設置していた「防波堤:breakwater」が崩壊し、グアム港への各種施設建設物資搬入が制約を受けている状況復旧費に900億円、海軍ヘリ部隊格納庫復旧費に850億円など、国防省全体では約7兆5千億円規模の復旧予算が必要だと前述のOwens施設担当国防次官補は説明しており、その額は年間の国防省関連予算約2兆6千億円の約3倍と天文学的数字であることから、「特別補正予算:supplemental bill」編成を米議会に要請
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台風「Mawar」通過時に、グアムの空軍基地の各種通信を支える最重要施設である基地「Data Center」を、当直勤務だった上等兵3名が72時間にわたり不眠不休で、土嚢・ガムテープ・モップ・バケツ&着用していたシャツを総動員して「雨漏りや暴風による施設破損による通信インフラへの被害」を懸命に防ぎ、昨年10月の米空軍協会のイベントで紹介され拍手喝さいを得たとの報道を以前ご紹介し、

Guam Mawar.jpg「巨大台風の直撃とは言え、そんな重要な施設が簡単に台風の影響を受ける施設だったのか?」との素朴な疑問をお伝えしていましたが、今回断片的に明らかになった「60年代から80年代に建設された」グアムアンダーセン基地の脆弱な実態と、台風「Mawar」による「隠された甚大な被害」の一端からも、対中国作戦の一大根拠基地の極めて心配な実態が表面化しています。今後も本件関連の(ほとんど公開されないであろう)公開情報には注意していきたいと思います

2023年5月巨大台風「Mawar」グアム直撃関連
「グアム米空軍基地に被害も細部非公開」→https://holylandtokyo.com/2023/05/29/4688/
「重要通信施設を死守の上等兵3名がヒーロー」→https://holylandtokyo.com/2023/10/27/5149/

グアム島のミサイル防衛強化
「MDシステム本格試験を2024年開始」→https://holylandtokyo.com/2023/08/22/4937/
「MDA長官がグアム防衛語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/

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異常気象下でハリケーン観測WC-130J部隊の活躍 [米空軍]

25年使用のWC-130気象観測機10機で異常気象
予備役のみ20名の搭乗員が米沿岸からグアム島付近まで
膨れ上がる政府機関からの観測要請に

wc-130j hurricane3.jpg5月6日付米空軍協会web記事が、ハリケーン観測を中心とした気象測定を担うミシシッピ州Keesler空軍基地(初耳!)母基地の第403航空団第53気象偵察飛行隊(Weather Reconnaissance Squadron)を取り上げ、異常気象でハリケーンの影響範囲や発生時期が拡大する中、1990年代から実質変化のない編制で増大する任務に立ち向かう同飛行隊の活動を紹介しています

同飛行隊は米空軍所属で米空軍基地運用に必要な気象データ観測を行うほか、米政府機関であるNOAA(米国海洋気象庁)や国立ハリケーンセンターの要請を受け、ハリケーンに突入して様子を観測するほか、ハリケーンの進路や発達予測に資する基礎データ収集のため、米本土沿岸のみならずカリブ海やグアム島付近までの太平洋上の気象観測も担っている部隊で、

wc-130j hurricane.jpg1999年の導入開始当時は最新型だったC-130Jをベースとた、10機のWC-130Jと20名の搭乗員(10名はフルタイム予備役で、他10名はパートタイム予備役)と推測100数十名の整備員(指揮官大佐)で1990年代から任務に当たっていますが、異常気象に伴う観測需要の増加や気象モデルの発達に伴う観測データ種類の増加などで飛行任務が増加し続ける中でも、1996年から変わらぬ機材数と人員で対応しているとのことです

任務の増加傾向を記事からご紹介すると、1990年代はハリケーン観測のために夏を中心に6か月間のみの飛行任務だったようですが、最近は10か月間のハリケーン観測と2か月間の基礎気象データ観測遠方遠征の年中無休体制となっているそうで、特に米本土西海岸に影響を与える太平洋上の基礎気象観測飛行ニーズが2018年以降6倍に拡大し、飛行隊全体の飛行時間が同年以降2割増で、2023年は過去10年で最大となり、2024年も前年を上回るペースとなっているようです

wc-130j hurricane7.jpg同飛行隊整備部隊指揮官(大佐)は、保有10機は、機体維持のため8機を運用可能態勢に維持しつつ、2機を定期整備に回す運用がベースだと説明していますが、既に様々な観測ニーズ全てに対応できない状況が続いており、(現在程度の要請対応レベルを維持するとすれば)最近のペースで任務飛行ニーズが拡大すれば、2年毎に1機保有機数を増加させないと対応できなくなると語っています

記事によれば、同飛行隊の気象観測における貢献度は、ハリケーンの進路予想や警戒地域予想の精度を20%向上させており、暴風雨の警報対象予報地域が1マイル広がれば約1.5億円様々な対処経費が発生する現代社会においては、計り知れない経費節減効果を生んでいる紹介されており、また2016年から始まったグアム島への派遣で得られた、米西海岸での気象現象を72時間早期に察知するための観測飛行により、緊急対応チームや非常用物資の事前派遣や配分が可能となり、600件以上のケースで被害極限に貢献したと評価されているようです

wc-130j hurricane4.jpgなお、米政府機関であるNOAA(米国海洋気象庁)もハリケーン観測機を保有しているようですが、米空軍WC-130Jの存在を前提として、異なる観測データを対象とした観測機器を搭載していることから、米空軍第53気象偵察飛行隊は唯一無二の存在となっている模様です

以上のような異常気象や気象予想モデルの発達に伴う観測ニーズの増大にもかかわらず、米軍の予算不足の影響は同飛行隊にも及んでおり、また他の政府機関にも経費負担をしてもらっていることから、予算要求調整が極めて複雑な手続きや承認決済を必要としており、老朽化しつつあるWC-130J部隊の機体や装備の更新はニーズに追い付いていませ

wc-130j hurricane2.jpg具体的な予算ニーズでは、機体老朽化を受けた母機C-130の後継検討や、高度な観測機器を搭載するために必要な「電力」確保が大きな視点での要検討事項ですが、喫緊のニーズとしては、搭載レーダーデータの国立ハリケーンセンターへのリアルタイム伝送能力付与や高解像度のドップラーレーダ搭載、更に任務により取り換え可能な観測機器搭載ポッドの取得を同飛行隊幹部は上げています

更に言えば、母基地から遠方基地への派遣観測が急増する中、1機あたり搭乗員と整備員35名チームでの出張形態のようですが、予備役兵でありながら出張頻度が激増しており、このあたりの不満や負担に対する給与面や福利厚生面でのケアも緊急の課題だと記事は紹介しています
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wc-130j hurricane5.jpeg日本の気象庁と米国の政府機関(NOAAや国立ハリケーンセンター)との運用要領の違いを把握していませんが、対中国作戦に備え、WC-130Jがグアム島派遣の際は、西太平洋地域の基礎気象データ収集にも活躍していると想像をたくましくしています

作戦運用の基礎の基礎である天象気象の情報共有にも、日米のみならず、地域の同盟国等の連携が求められています

特殊なC-130の話題
「AC-130から105㎜砲取外し検討」→https://holylandtokyo.com/2023/11/10/5219/
「MC-130で飛行中航空機のサイバー対処」→https://holylandtokyo.com/2021/12/23/2548/
「AC-130用のレーザー兵器開発」→https://holylandtokyo.com/2021/10/21/2332/
「MC-130に海面着陸フロートを」→https://holylandtokyo.com/2021/10/13/2296/
「MC-130からミサイル投下発射」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/

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働き方改革を考える:ニューギニア海産の挑戦 [ふと考えること]

職場の概念を変えるエビ加工事業所「ニューギニア海産」
パート従業員24名が好きな日に出勤し休むことができ、
休む場合には無断欠勤がルールで連絡禁止&理由説明不要で、
月20時間以上の縛りはあるが、1日や週の勤務時間縛りがなく、
それでも、出勤した人には必ず仕事を用意する態勢を整え、
1つの共通業務を除き、申告した嫌な仕事はやらない職場で
他人の仕事を助けることを求めない職場を基本とし、
その結果、3年間でパート退職者なしで、かつ作業効率向上

Papua NG2.jpg2022年9月25日(日)朝7時30分から放送のTBS「ガッチリマンデー」が、冒頭紹介のような職場を、試行錯誤しながら約10年で作り上げた「ニューギニア海産」とのエビ加工&販売業を取り上げたのですが、その社長さんの考え方や現場の様子が「目からうろこ」の驚き満載だったので、いつもとは全く異なる話題ですが、社長さんの「note」等からご紹介いたします

ご紹介する「ニューギニア海産」は、社長以下社員4名とパート約25名の輸入エビを「むきエビ」や「エビフライ(揚げる前段階)」に加工して販売する会社で、武藤北斗さん(1975年生:47歳)が社長兼工場長を務められていますが、冒頭にご紹介したような働き方を2013年6月から段階的に導入して成果を上げ、大きな注目を集めている会社です

Papua NG4.jpg武藤さんは大学卒業後(金属工学科)、築地市場勤務を経てパプアニューギニア海産に就職しましたが、東日本大震災で会社・工場(宮城県石巻市)がほぼ全壊し、大阪への移住を決意。震災による二重債務を抱え大阪府茨木市で再出発し、2020年に大阪府摂津市に工場を拡大新設した苦労人です。

大震災で「生きる」「死ぬ」「働く」「育てる」などを真剣に見つめ考えるようになり、2013年から従業員が自分の生活を大事に働ける職場への取り組みを開始し、「好きな日に働ける」「嫌いな作業はやる必要はない」など、固定概念に囚われず人が持ち得る可能性を引き出すことに挑戦している方です。

Papua NG.jpg水産加工業と言う「不人気」「人材の定着率が低い」「人間関係で人が辞める」との悪循環が「常態」である職場を改めるため、冒頭紹介の勤務体制の他、従業員間の人間関係の摩擦を取り除き、子供や家庭を抱えるパートさんの動機づけを極限まで考え、社員とパートさんが最大限にその能力を発揮することを追求する同社長の柔軟な勤務体制づくりから、まんぐーすは大きな刺激を受けました

武藤さんの「note」からいくつか紹介すると
●(会社の)重要なルールとして初期からあるのが「従業員同士で陰口や悪口を言ってはならない」。休憩室などで「その場にいない人の話をしないでください」とお願いしている。一方で、工場長である私には他の従業員への不平不満もすべて話してくださいとお願いしている。
Papua NG6.jpg●職場にとって一番大切な争いをなくすことのために、細かなルールをたくさんつくった。「助けあってはいけない」など変わったルールが沢山ある。パート長廃止、お土産禁止なども好評

●雇用人数は繁忙期も変更はなく、『繁忙期だけ短期のパートさんを雇用』は一切考えていない。短期間のパートさんが一緒に仕事をした場合、単純な作業が多くなり、不平や不満がたまり勝ち。今いる従業員の皆さんに出勤を少し増やしてほしいと柔らかくお願いをするだけ。ミーティングで全体に向かってお願いするというのもポイントで、一人一人に対して個人的にお願いはしない

Papua NG3.jpg●どんな仕事であっても、職場環境がよければ面白さややりがいというのは自分で見つけられる気がする。争いがない安心できる場所で何かに一生懸命取り組み続けることができると考えると、何だかワクワクしてくるのは私だけではない。結論を誤解を恐れずに言うと『人間が働く中で大切なものって実は仕事の内容ではなく、人間関係』なんだと、今では考えている。
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この工場の作業は大きく5つ(エビの加工、パッケージ包装梱包、荷造り発送、冷凍庫での製品&材料管理、事務作業)で、「だから可能なんだ・・」と見ることはできますが、経営学の原点ともなった1932年加州ホーソン工場での作業効率改善実験から導かれた「人間関係論」の現代版とも言えます

Papua NG5.jpgパート従業員が対象の試みと見ることも出来ましょうが、流動性が激しく人の確保が難しいながら、極めて重要な役割を担う最前線従業員を如何に活性化して有効し、組織全体の満足度を高めるためのアプローチに他ならず、普遍的な側面が大いにあると思います。

現在的な人材管理の限界を感じ始めている皆様に、一つの「刺激」としてご紹介いたしました。詳しくは武藤社長の「note」をご覧ください

武藤社長の「note」
→ https://note.com/hokutomuto

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宇宙監視も成功:次期イージスレーダーの日米共同試験 [Joint・統合参謀本部]

2028年3月就航の海自イージス艦から搭載予定
米宇宙軍がアラスカ設置のレーダーLRDRの小型版

SPY-7(V)1 2.jpg4月12日付Defense-Newsは米ミサイル防衛庁MDA等の発表を受け、宇宙物体の監視追尾も可能な開発中の弾道ミサイル等監視用の新しいイージス艦用レーダーAN/SPY-7(V)1に関し、3月28日にMDAが主導して米海軍と海上自衛隊関係者も立ち会う中、ニュージャージー州のロッキード社試験センターでハードとソフトの初融合試験が行われ、宇宙空間物体の探知&追跡を含む所望の成果を得たと報じました

この新型SPY-7レーダーは、米宇宙軍が弾道ミサイル等の防空監視と宇宙空間物体の監視の両方を同時並行的に行って米本土防衛強化につなげるため、アラスカのClear宇宙軍基地に2021年に設置して開発試験中のLRDRレーダー(Long Range Discrimination Radar)と同じ技術を用いた小型版と言われ、2028年と2029年に就航予定の海上自衛隊イージス艦2隻の他、スペイン海軍のF-110フリゲート艦やカナダの水上戦闘艦にも派生版を搭載予定とのことです

SPY-7(V)1.jpg3月28日の試験は、実際に海自イージス艦に特化したハードとソフトの組み合わせ初のライブ試験で、搭載時は4面搭載するレーダーの1面だけをまずテストした試験の第1歩だったようですが、宇宙空間物体の探知&追跡にも成功し、更にそのデータを戦闘システムに伝達&処理させることまで初めて行ったとのことです

海自イージス艦に搭載するハードを日本に輸送するまでに、レーダー面4面全てを使った地上試験までを同地で実施する予定とのことですが、宇宙軍のアラスカ設置レーダーよりは小型ながら、従来の艦載レーダーより大型のSPY-7(V)1は、基本的に従来のイージスレーダーと基礎的部分を共有しており、新ハードと新ソフトの融合作業のほとんどは完了しているとロッキード社は自信たっぷりのようです

LRDR radar.jpgSPY-7(V)1の原型である宇宙軍のLRDRは、全クラスの弾道ミサイルなど複数の小型物体を同時捜索&探知&追尾可能で、地上のミッドコースミサイル防衛指揮統制システムと連接可能な仕様となっており、NKやイランを含む潜在的なICBM脅威から米本土を防衛するように設計されていますが、MD能力に加え、軌道上の衛星や宇宙デブリを監視追尾可能にすることで宇宙軍の宇宙ドメイン認識向上にも供されます。

なお宇宙軍が2021年アラスカに設置のLRDRは、2023年末までに試験を終え宇宙軍に引き渡される予定でしたが、コロナによる試験中断の影響や試験用模擬弾道ミサイルの不調等の影響を受け、2024年末まで1年延期されています

なお現時点での要求には含まれていないようですが、ソフトのアップグレードで、極超音速兵器の探知&追尾能力の付加も可能とされているようです
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SPY-7(V)1 3.jpg岸田総理が4月10日の日米首脳会談で合意し、日米「2+2」で細部が煮詰められる予定の日米軍事協力強化の一端を担う、イージス艦レーダー開発事業についてご紹介しました。

既に様々な作戦運用や兵器研究開発における日米協力の「芽」が出ているものと思いますが、少しづつ取り上げていきたいと思います。元気があれば・・・

イージス艦やLRDR等の関連記事
「アラスカに巨大LRDR完成」→https://holylandtokyo.com/2021/12/15/2505/
「極超音速兵器迎撃GPIの日米協力」→https://holylandtokyo.com/2024/04/11/5732/
「MDAがGPI日米協力前のめり」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/

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航空機ゼロ州軍誕生へ:A-10からサイバー専従州軍へ [米空軍]

北東部の豊かなメリーランド州軍が飛行任務無しに
近傍NSAやサイバー軍や空軍ISR航空団と連携支援
24年後半からのA-10退役開始に伴い

Warfield ANG2.jpg3月7日米空軍は、米本土北東部に位置するメリーランド州の州空軍そのものであるA-10攻撃機を運用するWarfield州軍基地の第175航空団が、2024年後半から始まるA-10退役に伴い、部隊改編に伴う環境影響調査が終了する2025年秋頃を待って、第175サイバー航空団に改編されると発表しました。改編が完了すれば、米国の各州に設置されている州空軍で、航空機を保有しない初めての州空軍がメリーランド州に誕生します

Maryland.jpgメリーランド州は、特別行政区であるワシントンDCが実質的に位置し、最大の都市はボルティモアで、州都は海軍士官学校のあるアナポリスとなっており、面積は51州の中で42番目と小さいながら、人口密度は5番目の高さで、世帯当たりの収入は全州の中で最も高い「豊かな州」です

この決定は今年1月には同州に伝えられ、今回の発表は対外的な公式発表ですが、Kendall空軍長官が2023年5月に議会で、「A-10退役に伴い、可能なら他の航空機任務を当該基地には担ってもらうが、米空軍には、例えば電子戦やサイバー戦やISR任務など今後ますます重要性を増す拡大中の任務があり、一般には航空機が無くなる基地では、それら任務を含めた長期的視点での任務アサインが検討されることになる」と説明しており、航空機からEW/サイバー/ISR強化への流れに沿った大きな流れの一つと捉えられます

Warfield ANG4.jpgメリーランド州の特殊性としては、同州内にはNSA(National Security Agency)や米サイバーコマンド司令部や米空軍第70ISR航空団が所在する「電子戦・サーバー戦・ISR任務のメッカ」であるFort Meade陸軍基地がWarfield州空軍基地から僅か35マイルの近傍に所在し、ますます拡大する関連業務を行う場所に適しており、更に2016年には同州空軍基地内に「Cyberspace Operations Group」が創設され、「A-10から電子戦・サーバー戦・ISR任務へ」の素地ができている点があります

Warfield ANG3.jpgもちろん地元メリーランド州知事は「同州空軍基地でサイバー任務が拡大されることは喜ばしいことだが、飛行任務の喪失は残念であり、国家安全保障及び飛行任務関連兵士やその家族の将来への不安、更に地元雇用喪失の観点から、地元選出議員や連邦政府関係者と協力し、米政府や議会に対し、異なる飛行部隊の配備を要請していく」と訴え、Warfield基地幹部も飛行部隊誘致を働き掛けていくと、(一応は地元有力者と足並みをそろえて)語っています

Warfield ANG.jpg「電子戦・サーバー戦・ISR任務のメッカ」であるFort Meade基地に近いからとか、全米で最も豊かな州の州空軍だから地元経済への影響も限定的で反対勢力は弱いとか、色々背景的な理由はありますが、「空を飛ぶ」だけが最重要な任務ではなくなってきているのが米空軍の実態であり、このような変化を端的に示す象徴的な出来事として「航空機ゼロ州軍誕生」発表報道をご紹介いたしました

サイバー関連の記事
「米大統領選挙で米サイバー軍が20回以上作戦」→https://holylandtokyo.com/2021/04/01/96/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
「サイバーとISR部隊統合で大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「初代格上げ司令官は日系3世」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17
「NATOが選挙妨害サイバー演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13
「過去最大のサイバー演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-22

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米空軍改革の柱「Integrated Capabilities Command」を語る [米空軍]

2024 年末までに米空軍改革の中核として創設
当面は数百名が現勤務場所からリモート勤務
メジャーコマンド縦割り排除&知見融合を目指し

Allvin18.jpg5月1日、Allvin 米空軍参謀総長が記者団に、2月中旬に発表された米空軍大改革アクションの目玉、「2024年末までに Integrated Capabilities Command 創設」について現在の検討状況を語り、当面は発足時約 5-800 名の同コマンド配属兵士が前所属の各コマンドや部隊所在地から「リモート勤務」する形とし、前所属部隊との橋渡しをしつつ、空軍内の「縦割り」問題を解消に取り組む方向であることなどを明らかにしました

この「2024年末までに Integrated Capabilities Command」を創設する件は、Kendall 空軍長官の2年半に渡る長官経験と、50年近くの国防省での装備要求構想作成や兵器開発管理経験を踏まえた集大成的改革であり、兵器開発における要求性能取りまとめと開発管理を、戦闘・空輸・GS コマンドから切り離し、長期的視点から専従で行う新設コマンドに権限集中して実施させる決断です。

言葉を換えれば、装備品の導入構想や要求性能や開発管理専従の「将来体制を検討する専門コマンド」を中将トップで創設し、戦闘・輸送・GS コマンドは日々の作戦運用とそのための即応態勢維持に集中させ、戦闘機や輸送機や爆撃機の将来構想検討の中心から距離を置かせることを狙いとしています

Allvin 米空軍参謀総長が1日記者団に
Allvin19.jpg●人員数については細部検討中だが、発足当初は500-800名の所属兵士が米空軍組織の各所、つまり「satellite locations」からリモート勤務することを想定している。新コマンド創設は慎重のあまりスローすぎては逆戻りする恐れもあり、年末までの創設にむけ検討を進めているが、新司令部をどこに配置するかの決定は急がない。
●数百名の人間が一度に大規模移動することは、地域経済への影響もあり政治マター化する恐れがある。また今回の空軍改革が、当面既存予算の範囲で遂行することを前提としていることもその背景にある

Allvin22.jpg●新コマンド構成員の多くは他のメジャーコマンドから差し出されることになるが、詳細を現在煮詰めている。ただ差出元である各コマンドとの連携低下を避けるため、皆が一つの新コマンド施設に集まって勤務することは想定していない。Kendall 空軍長官が2月に発表したように「縦割り」を避けつつ、連携強化を図りたい
●テンポが加速している技術進歩に追随し、空軍内各所に分散している知見を集約し、将来装備体系の検討や具体的装備品の要求性能決定に生かし、既存装備品のアップグレード改修を迅速に行える体制を整えたい。この際、現在は戦闘・輸送、GSコマンド等が各使用装備品だけのことを考えて突猛進しがちだが、今後は新コマンドが空軍全体を見渡して適切に資源配分や装備導入判断を行う体制としたい

Allvin9.jpg●例えば「Rapid Dragon program」計画では、パレタイズされた長射程巡航ミサイル JASSMを輸送機から「投下&発射」したが、これは輸送コマンドとGSC の垣根を超えた試みであり、予算的制約が厳しさを増す中で米空軍が開拓追及すべき手法である
●新コマンド司令官となる少将は、米空軍でも最も重要な役割を担うポストの一つになるが、具体的 人選は今後の検討事項でもある
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Allvin 空軍参謀総長は、大きな発言力を持つ戦闘機や爆撃機パイロットではなく、輸送機パイロット出身のテストパイロットとしてC-17 開発等に従事した経歴を持ち、その後は戦闘機パイロット昇進コースでない多様なキャリアの中で「実務家」「仕事人」としての評価を高め、現ポストに上り詰めた人物です

Kendall 8.jpg「Integrated Capabilities Command 創設」のほか、「戦闘・輸送・GS コマンドの即応体制強化」や「ACE 構想に対応可能な人材養成」などを柱とする空軍大改革(以下の過去記事参照)は、Kendall 空軍長官の剛腕が原動力となり打ち出された改革ですが、大統領選挙以降は長官の交代が予期され、実質的に改革は、輸送機パイロット出身 AlIvin 空軍参謀総長と特殊作戦機MC-130 操縦者出身のSlife 副参謀総長の手腕にゆだねられることになります

米空軍が大改革アクションを発表
「大改革の概要発表」→https://holylandtokyo.com/2024/02/16/5579/
「前段階:米空軍総レビュー実施」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/

この改革に向けた米空軍首脳の推薦図書など
「米空軍制服トップが推薦図書等を公表」→https://holylandtokyo.com/2024/01/31/5473/
「Kendall空軍長官の推薦図書19冊」→https://holylandtokyo.com/2023/06/19/4736/

輸送機からの兵器投下検討
「巡航ミサイル投下&攻撃試験」→https://holylandtokyo.com/2021/12/20/2550/
「Rapid Dragonを本格検証へ」→https://holylandtokyo.com/2020/11/06/380/
「兵器投下に反対」→https://holylandtokyo.com/2020/07/01/562/
「空軍計画部長が語る」→https://holylandtokyo.com/2020/06/09/619/
「MC-130からパレタイズ兵器投下試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-01

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嘉手納ローテーション戦闘機がちょっと判明&追加 [米空軍]

ハワイF-22に加え、VA州からのF-22も
F-16は派遣元の2州の州空軍が判明
相変わらず各機種の機数は非公開

F-22 Kadena.jpg5月1日、米空軍嘉手納基地報道官が老朽化で撤退&退役するF-15C戦闘機の短期穴埋めローテーション派遣戦闘機について、4月11日に実施された航空戦力アピールのために滑走路上に各種航空機42機を並べたイベント「Elephant Walk」時点から、当時のハワイ所属F-22に新たに追加でバージニア州Langley-Eustis統合基地からF-22が派遣され、また4月上旬には「派遣元非公開」だったF-16が、South Dakota州とMinnesota州の州空軍(第114戦闘航空団と第148戦闘航空団)からの派遣戦力だと明らかにしました

ただし依然として、各機種の派遣機数については「作戦運用上の非公開情報」だとして言及はなく、4月11日の戦力誇示イベントに参加していた11機のF-22と8機のF-16が、その機数を5月1日時点でも総計で維持しているのかは「?」で、疑い深いまんぐーすは、「Elephant Walk」から数週間経過した現在では、各派遣元から2~6機程度のミニマム派遣規模になっているのでは?・・・と推測しています

F-16 Kadena3.jpg2022年10月に米空軍が突然、老朽化により維持困難になった沖縄配備 40年のF-15C型戦闘機40機を、「今後2年間で」段階的に米本土へ撤退&退役させると発表し、恒久的なF-15の後継配備機は今後検討し、当面は「穴埋め戦闘機ローテーション派遣」で戦力の空白を防ぐ方針を示し、以降のローテーション配備の経緯は記事末尾に列挙する通りですが、 まんぐーすが邪推する米空軍の本音は、「沖縄のような、有事に敵攻撃で即機能停止が予期される場所に戦闘機を置きたくないから、F-15Cの後継に別戦闘機を配備する考えは全くないが、急に戦闘機を撤退すると言うと世間体が悪いから、当面は戦闘機のローテーション派遣と後釜の戦闘機配備は検討中・・・で誤魔化しておこう」だと思います

Kadena Elephant 2024.jpg最終的には、「嘉手納へのローテーション派遣への注目が低下して忘れられかけた頃に、嘉手納への後継戦闘機配備を検討の結果、西太平洋地域への配備戦力全体で代替することとし、嘉手納基地での戦闘機運用については、今後戦力運用上の非公開事項として言及しない」と、コッソリ「2+2」合意文書の説明用資料の添付資料の地図の端っこに、小さな小さな文字で補足説明されて終わりの様な気がしています。でも、根拠の全くない邪推ではありません・・・

米空軍関係者は嘉手納に期待していません(過去記事参照)

Holmes3.jpg●2021年2月、当時の米空軍戦闘コマンド司令官(Mike Holmes 大将)が米空軍主要幹部や軍需産業関係者を前に、「今の戦闘機の航続距離、搭載兵器、展開距離等は、欧州線域ではそのまま将来も通用するが、太平洋線域では距離の問題が克服できない」、「太平洋戦域では、次世代制空機(NGAD)検討において従来の戦闘機のような装備のニーズは必ずしも生まれない」と課題の本質を明確に述べたり、

●2022年11月、関連ウォーゲームに何度も関与しているミッチェル研究所長のデプチューラ退役空軍中将が、嘉手納F-15C/D撤退開始発表時に「嘉手納は対中国有事の際、疑いなく数百の中国軍の精密誘導ミサイル攻撃を受けるので、嘉手納基地の航空機は危機が迫れば他基地に避難する可能性が高い」、「前方プレゼンス維持、同盟国への関与維持、ISR活動の必要性等から嘉手納を捨てることはないだろうが・・」と隠すことなく軍事的合理性を基に語っています

Allvin18.jpg●更に2023年5月の Defense-News は、Allvin米空軍参謀総長とSlife副参謀総長は、統合参謀本部議長にご栄転の前空軍参謀総長と共に、維持費のかさむ F-15やA-10の早期退役を加速し、(アジア太平洋戦域では足が短く活動拠点確保も困難で犠牲も懸念される)F-35 の調達機数も計画より削減し、先端無人機や指揮統制能力強化への投資を推進する案を練って推進している・・・と紹介しているとの情報が数多く出ています

●この流れの原点を遡れば、2009年1&2月号のForeign Affairs 誌に掲載された当時のゲーツ国防長官による「A Balanced Strategy」との論文にたどり着き、中国やロシアや新興脅威国の台頭を念頭に「足の短い戦闘機の役割は小さくなる」喝破した表現に至ります。そしてその頃からチマチマと「戦闘機命派」を批判してきたのですが、力及ばず今日に至るまんぐーすです
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F-22 Kadena2.jpgそれでも米空軍が嘉手納基地への戦闘機部隊のローテーション派遣を定期的にアピールのため報じるのであれば、まんぐーすはしっかり取り上げ、「皆様の注目度が下がらないように(米空軍がコッソリ嘉手納戦力を空洞化させないように)」微力ながらご紹介し続けたいと思います

【ご参考:嘉手納F-15C/D撤退と代替機派遣の経緯】
●2022年11月4-5日にかけ、アラスカ配備の8機のF-22が手納に展開
●2022年12月1日、第一弾として(恐らく)8機のF-15が米本土に帰還
●2023年1月17日、ドイツの米空軍基地から 16機のF-16が展開

●2023年3月28日、アラスカ Eielson 基地第 355戦闘飛行隊所属のF-35が展開(この時点で、各機種の機数は不明ながらF-22やF-16も嘉手納に所在)
●2023年4月8日 F-22アラスカへ帰還、同10日F-16ドイツへ帰還
●2023年4月8日、米本土からF-15Eが嘉手納に展開

●2023年 10月3日、加州とルイジアナ州の州空軍F-15Cが展開
●2023年 11月20日、ユタ州HiII基地からF-35展開

●2024年4月11日、ハワイの2個飛行隊からF-22展開
(5月1日に VA州ラングレー基地のF-22追加配備と発表)
●2024年4月日時非公開、派遣非公開でF-16展開
(5月1日に州空軍SD 州114航空団とモンタナ州148航空団から派遣と公表)

Holmes大将やミッチェル研究所の「極東で戦闘機無力発言」
(非常にアクセス数の多い記事です)
「嘉手納F-15撤退を軍事的合理性から考察」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/
「米軍F-35調達機数削減の予兆を指摘」→https://holylandtokyo.com/2023/07/18/4823/
「新空軍2トップはF-35調達数削減派」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/

嘉手納基地F-15撤退と代替戦力派遣
「F-35とF-15C→F-22とF-16へ」→https://holylandtokyo.com/2024/05/02/5803/
「ユタ州からF-35派遣」→https://holylandtokyo.com/2023/11/24/5271/
「加州とルイジアナ州空軍F-15C到着」→https://holylandtokyo.com/2023/10/10/5113/
「F-15E展開、F-22とF-16が帰還」→https://holylandtokyo.com/2023/04/12/4511/
「空軍F-35が嘉手納基地に展開」→https://holylandtokyo.com/2023/04/04/4482/
「ドイツからF-16展開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/19/4178/
「第1陣の8機米へ帰還」→https://holylandtokyo.com/2022/12/06/4021/
「米空軍幹部発言から大きな流れを学ぶ」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/
「衝撃、11月1日から段階的撤退」→https://holylandtokyo.com/2022/10/31/3817/

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無人ウイングマンCCAは2029年までに100機 [米空軍]

Kendall 空軍長官が議会証言で
2023年代後半までに 1000-2000 機導入の構想も
100機後は2年単位で契約更新し順次改良を

CCA NGAD4.jpg4月30日 Kendall 空軍長官が米下院の予算関連小委員会で、24日に第一弾企業選定「increment 1」で Anduril 社と General Atomics 社を選び、ロッキードやボーイングを敗者とする発表をしたばかりの無人ウイングマン機CCA(Collaborative Combat Aircraft)に関し、2030年代後半までに 1000-2000機導入の構想を持ってはいるが、当面5か年計画最終年の2029年までに約 100機を導入する計画だと説明しました

また、同長官は「CCAの最終的な調達機数は、1機のコストやCCAの能力達成度や他の装備品の成熟度などの要因により影響を受ける」と述べ、「F-35戦闘機の1/3程度の1機35-45 億円程度で、繰り返しの使用を前提とするが、ある程度のリスクを甘受し損耗は想定した上で、現有戦力では実現できない多様な戦術や戦法を使用可能にするアセットとなる」との表現で証言しています

CCA NGAD.jpg更にKendall氏は、「有人戦闘機1機が行動を共にするCCAは、2-5機の範囲と現時点では想定しているが、全ての有人機がCCAと行動を共にすることを前提とはしていない。少なくともCCA 導入当初は」とも語り、今後 CCA 開発と並行して作戦運用法も検討を深化させる必要があることを示唆しています

24日の第一弾企業選定「increment 1」の後に予定される、第2弾企業選定「increment 2」の決定時期は 2025年から 26 年が予定されていますが、最近のウォーゲームでは「アジア太平洋戦域では、それほど高性能のCCAは必要とされておらず、low-end CCAを多数準備したほうが良い」との教訓が得られているとの報道や空軍高官発言もあり、

MQ-28 Ghost Bat4.jpgKendall 長官も議会では、「本プロジェクトは、約2年毎の複数の段階(multiple increments)を経て進化していく手法を考えており、increment 1では迅速な生産を目指すが、これら初期のCCA運用を通じて空軍が多くを学んで、2-3年後の次の increment に生かしていく」と語り、「走りながら考える」風の成長過程をCCAで設定しているようです

また米空軍はCCA開発において同盟国との開発協力を重視しており、豪州がボーイングと取り組むモジュラー性を重視した無人機「MQ-28 Ghost Bat」や、英国軍や他同盟国のプロジェクトとの協力 追求姿勢を強く打ち出しています

MQ-28 Ghost Bat2.jpgKendall 長官と共に議会証言した AIlvin 空軍参謀総長は、数か国の同盟国と関連議論を行っており、「公言できない秘密の他国の開発案件や技術と、我々のCCA プロジェクトを組み合わせることで期待されるシナジー効果や、(機体や搭載装備&兵器の)相互運用性確保によって生じる効率性により、大きな飛躍が得られると期待している」と語っています
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CCA NGAD3.jpg4日に Anduril 社とGeneralAtomics 社が選ばれた第一弾企業選定「increment 1」で、何が要求されているのかも全く「非公開」状態で、CCA に求めるレベルが揺れている様子が感じられる記事であり、 2029年までに約 100機との具体的数字が出る議会証言とのギャップを感じます

少なくとも 1000機との大風呂敷ですが、「どこに展開し、だれが維持整備し、どのように兵站を確保して運用するのか」がさっぱり見えないCCAであり、今後も引き続き「生暖かく」見ていきたいと思います

CCA 関連の記事
「大手3社がCCA一次選考漏れ」→https://holylandtokyo.com/2024/05/17/5851/
「F-16改良AI無人機でCCA ソフト開発試験に」→https://holylandtokyo.com/2024/04/26/5788/
「CCA 原型候補 XQ-67 が初飛行」→https://holylandtokyo.com/2024/03/21/5652/
「第1弾候補企業を2-3社に」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/5595/
「あと6年で実用化する試験準備」→https://holylandtokyo.com/2023/11/08/5153/
「AIアルゴリズム集大成試験」→https://holylandtokyo.com/2023/08/08/4922/
「2020年代後半導入へ」→ https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「長官:NGAD 200機、CCA 1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
「関連技術を23年から本格開発へ』→ https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/

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若手研究者による「デジタル権威主義」解説 [サイバーと宇宙]

防研のNIDSコメンタリーが部外者の論考掲載
37歳の上智卒&自治体職員後&防大大学院博士が執筆
超苦手な学術論文風ですが・・・

digital authoritarianism2.jpg4月17日付で公開の防衛研究所「NIDSコメンタリー」に、愛知学院大学准教授 大澤傑氏による実質4ページの論考「デジタル技術が促進する新たなたたかい---流動化する国際秩序とデジタル権威主義」が掲載され、デジタル技術が独裁者に乱用される、いわゆるデジタル権威主義の状況や脅威について解説していますのでご紹介します

失礼ながら、論考の前半部分の多くを割いて記載されている、言葉の定義というか、権威主義国家の捉え方等々についての部分は、若手研究者として致し方ないのでしょうが、結果的に一般の読者を遠ざけるような「学術的色付けのためのこねくり回し」となっており、この部分はバッサリ無視させていただいて、まんぐーすが理解できそうな部分だけ、記載事項の並び替えや解釈も交え、適当につまみ食いで取り上げます

大澤准教授の論考によれば
Oosawa2.jpg●米国同時多発テロや世界金融危機、新型コロナの広がりなど、連続する危機との直面で各国の政治体制は動揺し、民主主義国家の体制に対する信頼が低下する一方、(中国やロシアなどの)権威主義はデジタル技術を用いてそれを乗り切った。むしろ権威主義国家では、その危機を梃子として体制を強化する傾向が見られる。かつては民主主義を促進させると考えられたデジタル技術も、今となっては権威主義との相性の良さが浮き彫りとなありつつある

●権威主義の至上命題は体制維持で、その手段として3つの要素「抑圧」、「懐柔」、「正統化」を用いる(抑圧を除けば、民主主義においても一定程度見られる統治手法)

digital authoritarianism3.jpg抑圧→反対派や体制の脅威になる者を排除して体制の安定化を図る「ムチ」。デジタル技術抑圧とは、ネットのシャットダウンや、監視による反対派の補足などが好例

懐柔→親体制派が体制から離反しないよう、また人々が体制を支持するように特権や利益を与える「アメ」。独裁者はアメとムチを利用した統治を行う。デジタル技術による便利で安心安全な社会の構築が一例

正統化→体制の正統性を担保し、人々が自発的に体制を支持するように仕向ける方法。個人崇拝化や業績のアピールなど。デジタル技術懐柔による生活環境の改善だけでなく、体制を賛美する言説の流布や、フェイクニュースやディスインフォメーションを用いた認知の誘導などが該当

●中国の統治手法が一例
digital authoritarianism.jpg人々の様々な特性を指標化した「社会信用スコア」は抑圧のツールにもなるが、行儀が良い人々が様々な特権を得られることから懐柔のツールにもなる一方、それによって構成された便利な社会は体制を支持する人にとっての正統化の手段ともなる。

中国のデジタル権威主義の抑圧的な側面を強調する論調がある一方で、これまで与信を得ることができなかった人々が「社会信用スコア」の導入によって権利を獲得することができたとの指摘もある。

中国では「五毛党」200 万人以上がネット上に共産党政権の正統性を高める書き込みを行っている模様。デジタル技術を利用し、独裁者は権威主義的な統治を効果的に行うことが可能となったといえる。 一方、民主主義国家においても同様にデジタル化によって便利な社会構築が進められたが、それに伴う情報集積はハイブリッド戦での脆弱性につながった

●ただ、デジタル権威主義の未来は明るくない
digital authoritarianism4.jpgロシア→政治体制の個人化を進め、高い抑圧で難局突破を狙うが、それを維持できるかは軍や警察にいかに懐柔できるかに依存し、先行きは不透明

中国→少子高齢化や新型コロナ蔓延などに伴う経済停滞で、懐柔、正統性がともに低下しつつある。戦狼外交や野心的対外政策で国民のナショナリズムを喚起して体制を維持しているが、この先は不透明

●そこで中露が陰の「たたかい」ハイブリッド戦に注力
Oosawa.jpg両国はサイバー攻撃や影響力工作や選挙介入を通じ、自国に有利な国際環境を「戦わずして」構築すべく企図
抑圧や懐柔維持が困難になりつつある両国は、「西側諸国による覇権主義的な国際秩序への対抗」という言説で、「民主主義対権威主義」を語り、外部批判で自国の正統性を際立たせる正統化に力を

他方、両国は民主主義的価値の流入や西側諸国の影響力が高まることによって体制が転覆する可能性を恐れている 

中国はグレート・ファイアウォールを構築し、ロシアは独立系メディアを締め出している 北朝鮮やクーデタ後のミャンマーでも同様の動きアリ。軍事的コストが低く、正統化を図ることができるハイブリッド戦は有効な選択肢である。
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Oosawa3.jpg防衛研究所の研究者のアピールの場である「NIDSコメンタリー」に、なぜ部外者である大澤傑氏の論考が掲載されたかは「?」ですが、上智大学院から一度は地方自治体に就職した大澤氏が、どのような経緯かは不明ながら防衛大学校総合安全保障研究科博士課程修了して博士(安全保障学)を取得した経緯か、または大澤氏の研究分野が、防衛研究所の研究者だけではカバーできない重要分野だったため、依頼して論考掲載の運びとなったものと推察いたします

省略した論考前半部分については、ご興味のある方はじっくり原文https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary310.pdfでご確認ください  

防衛研究所の最近の研究
「安全保障としての半導体投資」→https://holylandtokyo.com/2024/02/28/5534/
「サイバー傭兵の動向」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
「台湾への非接触型「情報化戦争」」→https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「中国の影響工作/概要解説」→https://holylandtokyo.com/2023/12/21/5362/
「異様な中国安全保障レポート2024」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/
「量子技術の軍事への応用」→https://holylandtokyo.com/2022/01/14/2577/
「先の大戦・あの戦争の呼称は」→https://holylandtokyo.com/2021/08/13/2103/

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大手3社が無人機ウイングマンCCA一次選考漏れる [米空軍]

新興Andurilと老舗General Atomicsを米空軍が選定
ロッキード・ボーイング・NGは外れる
ただし本格生産企業選定?の2次選考は別に

Anduril Fury.jpg4月24日、米空軍が無人機ウイングマンCCA(Collaborative Combat Aircraft)の基本設計やプロタイプ製造及び試験を担う候補企業2社を発表し、2017年創設のスタートアップ企業Andurilと、MQ-1 PredatorやMQ-9 Reaperを製造してきたGeneral Atomicsが選ばれ、大手3社(ロッキード、ボーイング、Northrop Grumman)は選外となりました。なお、新興Andurilと老舗General Atomicsから1社を選び、後に第2弾選定で量産型を最終決定するのは2025-26年とのことです

ただし米空軍は、「少なくとも1000機」導入との意向を示しているCCAに関し、引き続き多くの企業の知見を活かしたいとの意向を強く持っており、今回の2社選定はあくまでも「1次選考:Increment 1」で、細部を検討中の「2次選考:Increment 2」も予定しており、その「2次選考」には今回選外となった大手3社を含む関連20社にも参加機会がある、と強調しています。

具体的に24日米空軍は以下のように発表
General Atomics Gambit.jpg●米空軍は、Anduril とGeneral Atomicsが、detailed designs, manufacture, and testing of production-representative test articlesすることに関し、継続的に資金投入することを決定した
●ただし、今回production-representative CCA製造に選ばれなかった20以上の企業からなる「broader industry partner vendor」も、引き続き将来の本格生産契約を含むCCA将来事業の仲間である(continue to be part of)

Anduril Fury2.jpg「1次選考」と「2次選考」の違いがぼんやりしているのですが、「基本設計」と「本格製造」担当企業の分離とのニュアンスで米空軍幹部が語ることもあれば、「まずは無人ウイングマン機の基本能力確立」で「次の段階でより高度な能力追求」との流れで説明されることもあります。

最近は、アジア太平洋戦域対象のウォーゲームで「ステルス性が高く、高度な能力を持つCCAのニーズはそれほど高くない」との結果が出ているとの背景情報が報じられ、3月にRichard G. Moore空軍計画部長(中将)が「まずは兵器運搬アセットとしての基本固め」で「その他の部分は2次選考以降に」と表現するなど、CCAの要求性能や運用構想の揺らぎもあり、「基本設計」と「本格製造」との単純切り分けではない雰囲気となっています

選ばれた企業2社は
General Atomics Gambit2.jpg●Anduril → 2017年創設のシリコンバレーstartup企業。仮想敵機無人機「Fury」開発を手掛けていたBlue Force Technologies社を2023年秋に買収
●General Atomics → 1990年代から米空軍に無人機MQ-1 PredatorやMQ-9 Reaperを製造提供している。CCA関連では「Gambit」とのコンセプト機体を提案

米空軍は2社発表に際しKendall空軍長官がコメントを出し、「開始から僅か2年目なのに、本計画のスピードと質は素晴らしいい」、「計画の透明性と政府と企業間のチームワークがこの迅速性を可能にした」とこれまでの進捗に満足感を示すとともに、2社選定後も多くの企業を巻き込んでプロジェクトを推進したいとの意向を強く打ち出しています

ただし、選考から漏れた大手3社の反応は微妙で、
CCA3.jpg●Northrop GrummanはCEOが、「自立型無人機への我が社の戦力に現時点で変化はない」、「米海軍と多国が同様の計画を進めており、その機会を生かしてこの分野に取り組む」、「CCAの今後の進展をモニターしていく」との声明を出し、
●ボーイングも、「米海軍用の艦載無人給油機MQ-25 Stingrayや、豪州と取り組むMQ-28 Ghost Bat計画、その他非公開プロジェクトで、自立型無人機分野に取り組んでいく」、「現時点でのCCAに参画できなくなり残念だが、本分野への関与に変化はない」と、温度差はありつつもCCAへの継続関与方針を示していますが、

●ロッキードは、「CCAとF-35やF-22との融合に特に焦点を当てて取り組んでいく」とのみコメントし、CCAへの継続関与を明確にしなかったため記者団から確認質問が出たようですが、先ほどのコメント以上に申し上げることはないと回答し、CCAからの離脱を示唆しています
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General Atomics Gambit3.jpg「少なくとも1000機導入」との大ぶろしきを広げた米空軍・・・というよりKendall空軍長官の剛腕・・・との表現が正しいと思いますが、現在の予算状況や今後の中国を含む脅威の変化の中で、どこまで「1機45億円以下程度」を「少なくとも1000機」で突っ張れるのでしょうか?

更にCCAに関しては、対中国正面である西太平洋の、どこに展開場所を確保して、誰がどのように維持整備し、誰がどのようにコントロールして運用するのか・・・との大問題が残っていますので、その辺りを念頭に置きつつ、生暖かく引き続き見守っていきたいと思います

CCA 関連の記事
「F-16をAI無人機へ:CCA ソフト開発&試験用に」→https://holylandtokyo.com/2024/04/26/5788/
「CCA 原型候補 XQ-67 が初飛行」→https://holylandtokyo.com/2024/03/21/5652/
「第1弾候補企業を2-3社に」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/5595/
「あと6年で実用化する試験準備」→https://holylandtokyo.com/2023/11/08/5153/
「AIアルゴリズム集大成試験」→https://holylandtokyo.com/2023/08/08/4922/
「2020年代後半導入へ」→ https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「長官:NGAD 200機、CCA 1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
「関連技術を23年から本格開発へ』→ https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/

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米陸軍が50kwレーザー兵器試作品の導入断念 [Joint・統合参謀本部]

2022年からイラクで現場評価を行っていたが・
計画では試行運用経て2023年に量産業者選定予定も
更に別企業の50kw級2機種を来年から試験へ

Stryker 50KW2.jpg3月29日付Defense-Newsは、米陸軍の迅速能力技術評価室が主導し、2022年からイラクに試作品を持ち込んで試行運用を続けていた3台のレイセオン社製のStryker戦闘車両搭載50kw級レーザー防空兵器(DE M-SHORAD: Directed Energy Maneuver-Short Range Air Defense systems)について、追加1台を含めたデータ収集は継続するものの、部隊導入に向けた取り組みはあきらめ、別企業製の2機種の同クラス兵器の試行テストを計画することになったと報じています

Rasch.jpg米陸軍の同評価室(Rapid Capabilities and Critical Technologies Office)は、現在10-, 20-, 50- and 300-KW級のエネルギー兵器の開発に毎年約150憶円投入し続けており、この50kw級のSHORADシステムは、小型無人機やロケット弾や迫撃砲から戦闘車両を防御することを狙い2021年に企業体制を固めて開発を本格化し、現場試験運用を経て2023年には量産用の仕様を固め、改めて量産担当企業を募集&選定する予定でした

Stryker 50KW.jpg米陸軍同評価室長のRobert Rasch中将は、前線で試行運用したレイセオン社製のStryker戦闘車両搭載型の問題について具体的には言及せず、「この試作品を機動部隊装備に組み込んでいく試みは断念し、陸軍評価テストコマンド研究室に持ち帰って分析することにした」、「我々は試作品を評価し、量産に向けた要求書を仕上げたかったが出来なかった。もう少し時間を頂いて他の提案と競争させ、実現可能なものを仕上げたい」と苦しい説明を行い、

50kw級開発については、別の2企業の提案2機種を追加で評価したいと述べ、「別の2つの企業(ワシントン州の企業nLightとロッキード社)がそれぞれ開発中の2機種を来年入手し、異なった発想で設計された2機種のレーザービームの質や費用対効果や信頼性等を今後評価する予定で、結果の陸軍上層部への報告は2026-27年を想定している」と計画の3-4年遅れに言及しています

IFPC-HEL2.jpgちなみに、同評価室が50kw級と並行して開発中の300kw級は、ロケット、大砲、迫撃砲、無人機、巡航ミサイル等の脅威対処を狙ったシステムで、米陸軍が「IFPC-HEL:Indirect Fire Protection Capability-High Energy Laser」計画でロッキード社と2023年10月に開発契約を結び、500kw級へのグレードアップ研究も並行して製品名「Valkyrie」として2025年に試作品納入される予定となっています

また細部フォローが出来ていませんが、20kw級では、歩兵部隊の車両「ISV:Infantry Squad Vehicle」搭載用を開発&導入する計画が進行中と聞いています
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米国防省2021年発表の「Directed Energy Roadmap」では・
●2022年までに、150-300KW級の兵器化
100Kwでドローン、小型ボート、ロケット、迫撃砲に対処可能
300kwで巡航ミサイルに対処可能
●2024年までに、500KW級の兵器化
●2030年までに、1GW級の兵器化

IFPC-HEL.jpg・・となっていますが、ロードマップ発表から3年で既に大幅に遅れており、エネルギー兵器・レーザー兵器が「いつまでたっても完成まであと5年」と揶揄され続けている理由がここにあります

西側前線部隊では、イランの支援を受けたフーチ派による西側艦船への巡航ミサイルや無人機攻撃対処で、エネルギー兵器・レーザー兵器による防御システム早期配備の要望が急速に高まっていますが、技術的にはまだまだ困難な道のりが待っている模様です

米陸軍の取り組み
「300KW級開発をロッキードと契約」→https://holylandtokyo.com/2023/10/18/5138/
「50KW級レーザー搭載装甲車3台導入」→https://holylandtokyo.com/2022/01/21/2623/

海軍や空軍の取り組み
「AC-130用試作兵器を部隊へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-12
「戦闘機防御用から撤退へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-01
「空軍が無人機用の電磁波兵器を試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24

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輸送機や給油機はFやBと共に開発すべき [米空軍]

次世代戦闘機やCCAと共に将来CやKCも検討すべき
将来給油機はFやBレベルではないがステルス性が必要
2025年までに25%のCやKCに通信やネット中継機能を

Minihan11.jpg3月28日、米空軍輸送コマンド司令官で「熱血漢」「改革派」とご紹介してきたMichael Minihan大将が講演で、次世代輸送機や空中給油機NGASの開発が戦闘機や爆撃機の「後追い」となる傾向に警鐘を鳴らし、対中国を意識すれば、戦闘機や爆撃機の活動に不可欠な次世代輸送機や給油機開発は、広い視野から新設される米空軍「Integrated Capabilities Command」で戦闘機や爆撃機開発構想と並行して進めるべきだと訴えました

また将来輸送機や給油機構成について、全てがそうである必要はなく、配合比率は現時点で固まっていないが、、一部はある程度のステルス性を有して高い脅威下で活動可能である必要があり、輸送や給油任務以外に、兵器や救命装備投射プラットフォームとして、また前線地上部隊への燃料弾薬やバッテリー輸送アセットとしてのニーズに対応する必要があるとの考えを示し、「垂直離着陸能力」の必要性にも言及したようです

Minihan12.jpg更に同司令官は「2025年までに25%のアセットに必要」「約250機を想定」との具体的目標付きで、輸送機や給油機に「connectivity upgrades」、つまり小額投資で実現可能な通信中継やネットプロバイダー機能を持たせ、統合戦力や同盟国等の戦力増強に貢献すべきだとの持論を展開しており、まんぐーすは「なるほどそうだな」と思いましたので、以下で具体的な表現等をご紹介します

Defense OneのウェビナーでMinihan大将は
●例えば1950年代のB-52爆撃機開発が、B-52の戦略的運用に欠かせないKC-135空中給油機開発と並行して実施されたように、米空軍は輸送機や給油機開発を、戦闘機や爆撃機開発の後回しにしてはならず、この点で2月に発表された(米空軍全体の新規開発事業を一元統制管理する)「Integrated Capabilities Command」創設計画は極めて重要で、FとBとCとKCを一体的に検討する役割を担う同新コマンドに輸送コマンドも必要な人員を送り込むことになる
NGAS 5.jpg●輸送コマンド保有戦力の多くが老朽化しており、我々へのニーズが拡大し続ける中で新たなプラットフォームへの投資が必要となっている。現状では将来の輸送や給油機の将来の能力別構成比率について語れる段階にはなく、同時に一つの機種で全てに対応できないのは自明で、現有アセットと同程度の能力のアセットで十分な任務も多くの残るだろうが、高い脅威下で活動可能なアセットを一定程度確保する必要が生じてい

●そこでは、ステルス性を持つ戦闘機や爆撃機の支援だけでなく、FやBによる兵器投射を支援するパレタイズ兵器や撃墜された搭乗員への救命装備の投下、最前線地上部隊への通信機器用バッテリーの投下などのニーズにもこたえる必要がある
●ハイエンドニーズに対応する輸送や給油アセットは「小規模smaller fleets」で、戦闘機や爆撃機レベルのステルス性は必要ないと思うが、低視認性は欲しいし「垂直離着陸能力」も追求したい

C-17 R11.jpg●また、2025年までに25%のアセット、つまり空軍輸送コマンド保有の輸送機や給油機約250機に、小規模な投資や改修工数で実現可能な「connectivity upgrades」で通信中継やネットプロバイダー機能を持たせ、空輸コマンドの為だけでなく、広く統合戦力や同盟国等の戦力増強に貢献したい
●以上述べたような将来への変革はリスクも伴うが、現状に留まるリスクは受け入れ難いし、過去2年半の作戦運用や各種演習を通じ、述べてきた改革方向が間違っていないことは証明済だと認識している
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NGAS4.jpg特に米本土から離れ、使用できる作戦拠点が限定的な西太平洋での対中国作戦運用ニーズを各種演習やウォーゲームで検討すれば、新しいアジア太平洋軍司令官が議会証言したように「給油や兵站が極めて重要」であることは明白で、同時に一朝一夕には解決できそうもない重い課題です

もはやウォーゲームの世界では、F-35など足の短い戦闘機タイプや脆弱な空母に搭載した艦載機が活躍できそうな場面が「皆無」に近いのでは・・・とも邪推していますが、何をするにしても輸送機や給油機の任務が減るとは考えにくく、CやKC開発は、FやBの後追いではだめだとのMinihan大将講演は、現役将軍としては精いっぱいの発言でしょう

Mike Minihan司令官関連の記事
「アジア太平洋でACE体制は未完」→https://holylandtokyo.com/2023/09/19/5048/
「米空軍史上最大の空輸演習を西太平洋で」→https://holylandtokyo.com/2023/07/13/4852/
「2025年に中国と戦う」→https://holylandtokyo.com/2023/01/31/4241/
「KC-46A空中給油機が36時間連続飛行」→https://holylandtokyo.com/2022/12/12/3974/
「KC-46を操縦者1人で試行運用」→https://holylandtokyo.com/2022/11/02/3881/
「不具合抱えたままKC-46運用開始宣言」→https://holylandtokyo.com/2022/09/21/3688/

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昨年9月AI無人戦闘機が有人F-16と本格空中戦 [米空軍]

半年後の4月19日に米空軍が曖昧ぼんやり発表
複数本格空中戦で何回勝利かなど細部には触れず
試験目的は「重要な戦闘局面でのAIの信頼性確認」と

Air Combat Evolution5.jpg4月19日、AIによる自立飛行試験用に改良されたF-16戦闘機VISTA(Variable In-flight Simulator Aircraft)を運用する部隊幹部等が、国防省研究機関DARPAとともに取り組んできた空戦革新プログラム(Air Combat Evolution (ACE))関連で、2023年9月にVISTAと有人F-16戦闘機の間で空中戦飛行試験を様々なパターンで実施し、AI搭載無人機が空中戦等で安全に確実に飛行できることの確認に向けた検証を行ったと明らかにしました

これまで米空軍は、F-35等の墜落を防ぐ「自動地上衝突回避システム(Auto Ground Collision Avoidance System)」導入等において、既存ルールを事故防止目的で徹底するため自立型AIを活用してきましたが、「操縦者が従事する最も危険で予測不可能な飛行形態」で「操縦者にとって最も難易度の高い能力の一つ」である「有視界飛行での空中戦」を自立型AIに実施させることで、米空軍内にAIへの信頼感向上を狙ったものだと関係者は説明しています

同日付Defense-Newsは空軍発表について
Air Combat Evolution6.jpg●4年前に開始した空戦革新プログラム(Air Combat Evolution (ACE))では、当初コンピュータシミュレーション上で、自立型AI搭載戦闘機と人間が操縦する戦闘機が相対することで自立型AIの成熟を図ってきた。自立型AIに実飛行時の安全ルール制限を付加していなかった状態での飛行対決も含め、当時の対戦成績は五分五分だった

●2022年12月と2023年9月にVISTAに自立型AIを搭載した実飛行を計21回行い、2023年9月には約2週間に渡り、有人F-16戦闘機と本格的な空中戦飛行試験を複数回実施した。ただし、本格空中戦試験で、VISTA(緊急時の安全確保のため操縦者搭乗)が有人F-16に何回勝利したかなど、細部については空軍関係者は明らかにしなかった
Air Combat Evolution4.jpg●本格的な空中戦飛行試験では、飛行安全上の確認や配慮から、最初はVISTAに防御的な空中戦機動が必要なVISTAに不利な状況設定から飛行試験をスタートし、段階的にVISTAによる攻撃的機動を伴う場面に設定を変えていき、有人F-16との「nose-to-nose passes」や垂直機動を伴う飛行や、相手との距離2000フィート以内や時速1200マイル(2150㎞)での攻撃的な機動も飛行試験も実施された

●本プログラムでのVISTAと有人戦闘機の対決飛行試験から得た教訓は順次AIの成熟改良に反映されており、今後も様々なシナリオ設定で有人機との対戦飛行試験が計画されている。試験は単にAIの空中戦能力向上を目指しているのではなく、無人ウイングマン機CCA実現などを含む「AI技術への空軍内の信頼度を高める」目的で、今後も継続すると空軍関係者は語っている
●しかし「将来の無人戦闘機部隊の編制につながるのか?」との質問に対しACEプロジェクト関係者は、そのような長期的計画に関する質問は空軍指導層にしてほしいと回答するにとどまっている
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X-62A 2.jpg末尾の過去記事では、空戦革新プログラム(Air Combat Evolution)開始の4年前は、シム環境でAIと現役バリバリ操縦者が2020年夏に対決して「5-0」でAIが圧勝とか、2021年7月には実機を用いてAI操縦者と人間操縦者の空中戦試験を予定との発表をご紹介していますが、当時の「盛り上がり」に比し、その後の米空軍関係者の本プロジェクトに関する「曖昧」「ぼんやり」「ロープロファイル」な姿勢に大きなギャップを感じています

「Air Combat Evolution」プロジェクトは2020年に開始され、3年計画で2023年春終了の予定だったと記憶していますが、この辺への言及がないのも不思議です。まんぐーすの邪推ですが、恐らく、2020年頃の盛り上がりに「有人戦闘機命派」が反発し、「世に誤解を与え、有人戦闘機不要論を高める懸念アリ」などと不満を訴え、現在のロープロファイルかつ半年遅れの対外発表になったものと考えます

Kendall VISTA.jpgただ、4月9日にKendall空軍長官が議会で、「(時期は未定ながら)VISTAに自ら搭乗して自立型AI開発状況を確認する」と宣言して大きな話題(5月2日に搭乗済!)になるなど、ロープロファイル希望の有人戦闘機命派にとっては、向かい風がますます強くなりそうで、メシウマです!

無人機空中戦検討プロジェクト
「VISTAで自立AI総合検証試験へ」→https://holylandtokyo.com/2024/04/26/5788/
「22年12月コッソリAI無人機飛行試験」→https://holylandtokyo.com/2023/02/27/4326/
「8企業がAI空中戦で有人F-16に挑む」→https://holylandtokyo.com/2020/08/19/528/
「米空軍研究所は2021年に実機で」→https://holylandtokyo.com/2020/06/10/620/
「空中戦用AI開発本格化」→https://holylandtokyo.com/2020/05/22/678/

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宇宙技術開発の国際&企業協力強化に規格設定を [サイバーと宇宙]

米国防省の国防革新ボードによる聞き取り調査結果
装置の規格や基準がないと同盟国も企業も投資躊躇
共通のインターフェースやデータ形式なども
企業との連携や国際協力追求の宇宙分野で顕著な課題

PRM NG2.jpg4月17 日付 Defense-News は、同日開催された国防革新評議会(Defense Innovation Board)で、日進月歩の宇宙分野技術開発において、リーダーである米国が部品やインターフェイスの規格や基準を明確にしないことが、同盟国や関係企業群の開発投資や協力意欲を削ぎ、連携強化を阻害しているとの指摘がなされたと報じています

同評議会には国防、ビジネス、教育分野等々のリーダーが含まれ、今年のテーマである同盟国や企業とのイノベーション推進に関する「障壁」について取りまとめているようですが、昨年 12月から同評議会が数十回にわたり実施した同盟国や産業界への聞き取り調査結果から、上記が明らかになったようです

GPS IIIF 2.jpg例えば、宇宙空間での人工衛星への「燃料補給」に、米国防省と宇宙軍は複数企業や同盟国と連携して取り組んでいますが、企業各社は、自社が投資して開発するの給油インターフェースやポート機器が将来採用される製品と互換性があることを確保するため、事前に規格や基準を知りたがっており、早期に開発の方向性を明確にすることで投資を促進して同盟国や企業からの協力を得やすくすべき、との提言があるようです。

Victus Haze3.jpg同様に米国の同盟国も、米国がこれらインターフェースやポート機器の基準や規格を明確にするまでは、自国規格の決定を遅らせたり、国家予算投入を控える傾向があり、結果として企業も同盟国も「足踏み」期間が延び、人材や資金の投入が遅れて技術革新の阻害要因やブレーキになっていると、17日の評議会では指摘が相次いだようです

また評議会は、「米国防省が、知的財産権により生じる技術利用の制約が無い標準規格や基準を採用すべく、迅速に取り組むべき」との勧告案も提議され、「これにより、米国内イノベーションが促進されるだけでなく、同盟国の能力も強化されるだろう」との指摘がなされた様で、最終報告書で勧告される模様です
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PRM NG.jpg国防革新評議会(Defense Innovation Board)から勧告を受け取る国防省や米軍研究開発部門からすれば、よりよい規格や基準を早期に定めるために、最新の技術動向や開発状況を、企業や同盟国と早い段階から共有したいのだ・・・との声が聞こえてきそうですが、「開発最前線あるある」の悩みなのかもしれません

「卵が先か、鶏が先か?」を明確にする議論はあるとしても、このような課題をリーダーとフォロワーが共有することで、折り合いつけつつ前進していくのでしょう・・・期待しています

宇宙分野での企業との連携
「妨害に強い GPS衛星への取組」→https://holylandtokyo.com/2024/02/25/55711
「補給方式異なる2企業と並行連携」→https://holylandtokyo.com/2024/02/20/55541
「衛星の緊急打ち上げ技術開発」→https://holylandtokyo.com/2024/03/12/5622/
「衛星が地上局との Link-16 通信試験」→https://holylandtokyo.com/2023/11/30/53111

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やっと操縦者の飛行中身体データ測定装置ICS実用化か [米空軍]

機体センサーと身体センサーで操縦者の状態把握し事故防止
2022年デモ装置完成で23年初に部隊で試行使用
機体に連接し操縦者不調のアラームや機体機動に反映
「なぜ」今頃までこんな重要で安価な装置がなかったの?

ICS.jpg4月15日付米空軍協会web記事が、米空軍研究所AFRLがBAE Systems社と協力して開発中の、飛行中のパイロットの身体データや操縦者を支える酸素供給装置などのデータをリアルタイム測定し、操縦者が「低酸素症」や「脱水症」等々で正常な状態でない場合にアラームを発したり、最終的には機体の機動を強制的に制御したりする装置ICS(Integrated Cockpit Sensing (ICS) system)の開発状況を紹介しています

ICSは安価な装置で、機体側センサー(機内空気の温度・気圧・酸素等濃度等々のデータ測定)と操縦者センサー(ヘルメットや飛行服に装着された頭や耳や身体各所のセンサーで、血中酸素濃度、心拍数、体温、湿度、呼吸数、その他の指標を測定)からのデータを、操縦者が装着したスマホサイズのプロセッサーで処理して、何か問題が発生した場合にパイロット(最終的には機体にも)に警告する等する装置です

ICS2.jpg2022年にBAE社が空軍研究所と連携してプロトタイプを作成し、2023年に米空軍部隊で試験使用する許可を得たICSは、2024年1月から3月まで3つの空軍部隊(Edwards基地のテストパイロット学校、ネリス基地の第59試験評価飛行隊と第422試験評価飛行隊)でF-16操縦者が体験使用し、その声を空軍研究所はフィードバックして装置を改善し、出来るだけ早く実用化して多様な機種で飛行安全確保や操縦者のパフォーマンス向上に役立てたいと考えています

ICS 5.jpgICS装置開発の背景には、従来の航空事故調査では、航空機機体に装着されている数万のセンサー情報を活用して事故当時の状況を分析してきましたが、肝心の操縦者に関するデータがボイスレコーダーやフライトレコーダーに限定されていたため、軍の事故調査委員会から「国防省や軍は操縦者に関するデータ収集や分析が不十分で、事故防止や人的戦力最大活用の貴重な機会を逃している」、「研究者にとって根本原因を見つけることが非常に困難である」と厳しく明確に指摘され、ICS開発関係者から「事故報告書に『可能性がある』や『恐らく』と言った操縦者に関する表現が多いのは、操縦者用のセンサーがゼロだから」との現実があります。

またこのICSにより、例えば1月から3月に行われたテスト使用で、ある操縦者は機体に高い加速度Gが掛かった際に、脳内酸素レベルが他操縦者と比較して大きく低下したことが確認できましたが、これは当該操縦者が高G機動状態における「抗G緊張操作」、つまり呼吸と筋肉の緊張テクニックを改善して脳内酸素レベルを維持する技量を高めれば、操縦者としてのパフォーマンス向上できる可能性を示すものと期待されています

ICS 4.jpgこのように有効性や必要性が明確に指摘され、技術的にもシンプルで安価に実現可能で、飛行安全に直結する重要な装置の開発や配備が「なぜ」遅れたのかについて、米空軍協会web記事は一切触れていません。

ここはまんぐーすが「邪推」するしかありませんが(邪推ではなく、真実だと断言して良いと思いますが)、操縦者は一般に、低酸素症(低酸素)、脱水症、一時的な歪み、精神的疲労、空間見当識障害、過呼吸などに悩まされていても、操縦者としてのキャリアへの影響(昇任や飛行手当を失うリスク)を恐れて症状の報告をためらい、問題を研究するため機関との連携を避ける傾向が極めて強いことが米空軍医官の調査(末尾の過去記事参照)で示されていますが、

ICS 3.jpgパイロット自身の弱みを知られて空軍パイロットの地位や金銭的メリットを失うことを恐れて、空軍パイロットが組織ぐるみでこのような装置の導入を阻止してきたとしか考えられません。つまり飛行の安全をないがしろにしてまで、組織ぐるみでパイロットの「ステータス」と「収入」を死守してきたということです

多少乱暴な表現になりましたが、いくら言葉を足して柔らかく説明しても、本質は上記のとおりです。それがまかり通っているのが、世界の空軍の実態であり、当然変えるべき悪しき組織文化です。

ICS概要と部隊テスト状況説明(約17分間)


米空軍の2023年医学ジャーナルが警鐘
「操縦者は自らの心身不調を隠す傾向大」→https://holylandtokyo.com/2023/03/31/4463/

第5世代機でも重い低酸素症問題
「F-35着陸大事故の副因か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-24
「F-35で謎の低酸素症多発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-11
「F-22飛行再開・原因特定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-25

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