ロシアの飛び地「Kaliningrad」への陸路遮断 [安全保障全般]
露の同盟国ベラルーシからリトアニア経由の陸路封鎖
NATO加盟国リトアニアがEU加盟国義務として淡々と
ロシアは猛反発でリトアニアに報復示唆も
6月21日付Defense-Newは、EUが定めたロシアのウクライナ侵略に対する制裁措置に従う形で、リトアニアがリトアニア領土を通過するロシアの飛び地領土「Kaliningrad」へのロシア製品の移動を禁止する措置をとったと報じています
この措置に先立ち、EUは4月に空路によるロシア航空会社のEU通過を禁止して、「Kaliningrad」へのロシア製品の空路を絶ちましたが、今回は「Kaliningrad」への物資輸送の半分を担う陸路(露の同盟国ベラルーシと飛び地を結ぶ「Suwalki Gap」を通る鉄道が地上輸送の大部分を担う)を絶ち、更にロシアから石油を輸送する唯一のパイプライン(「Suwalki Gap」近傍を通過)も今回の措置で封鎖されます
この結果、ロシアから約680マイル(約1100㎞)、露の同盟国ベラルーシから約90㎞離れた「飛び地:Kaliningrad」へロシア製品を輸送する手段は、公海を使用する「海路」だけとなり、ロシアにとっては痛烈な一撃となります
リトアニアはNATOメンバーであり、ロシアがリトアニアに手を出せば、「NATO憲章5条」によりNATOとしてロシアに反撃するトリガーとなります。バイデン大統領も年頭教書で「一インチでもNATO領内に入ったら・・・」と明言しており、約1000名の米軍兵士を3月に同国へ派遣して覚悟を示しているところです
リトアニア外務省は、EUの一員として、EUの定めたロシアへの制裁措置を実行しただけ・・・との淡々したスタンスですが、地図でご覧いただく「Kaliningrad」の位置や、以下の紹介するその重要性からすると、NATOや西側の「かなり大きな一手」ですのでご紹介しておきます
ロシアと同飛地Kaliningradの歴史と重要性
●WW2終結時にソ連が占領していた同地域を、ポスダム会談においてソ連領と承認。1991年のソ連崩壊時も、同地域の周辺国は独立して西側との関係を深めていくが、同地域は飛び地としてロシア領として引き継がれる。
●同飛び地の南部で国境を接するポーランド、及び東部と北部で国境を接する今回封鎖を宣言したリトアニアは、共にその後NATOに加盟した
●Kaliningradはバルト海に面するロシア唯一の港を有し、同港は不凍港である点でロシア艦隊の重要拠点。またNATO最前線に位置する海軍拠点としての意味を持つ
●ロシア本土から約680マイル(約1100㎞)NATOに食い込んだ位置にあることから、ロシアは核弾頭搭載可能な短&中距離弾道ミサイルを核弾頭と共にKaliningradに配備しているとリトアニアは主張しており、ウクライナ侵攻開始当初に核部隊の即応態勢を高めた際にも、西側はKaliningradを配備戦力を警戒している
リトアニアの地上ルート封鎖へのロシアの反応
●リトアニアは今回の措置を、単にEUの一員として露のウクライナ侵略に対する制裁を実行したまでだと淡々と主張し、「リトアニアを経由する人や制裁対象外の物資の往来は問題なく継続されている」、「EU決定の制裁を実施しているだけで、リトアニア独自の措置は一切ない」とリトアニア外務省は主張している
●しかしロシアは強く反発し、国際法違反の「blockade」だと主張し、リトアニアが痛みを感じる装置を講ずると訴えている(効果ある具体策を提示することに失敗しているが・・・
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6月21日付Defense-News記事は、リトアニアの措置(EUの措置)にロシアが有効な「痛みを感じる報復措置」を執れないでいると紹介していますが、決して油断はできませんし、年月を経て報復を企てることも十分に考えられます。
ウクライナ東部や北部で、ロシア軍がじわじわと態勢を立て直して反転攻勢に転じ、ウクライナ軍を過去数か月間支えたドローンや通信傍受を基にした攻撃も効果が低下し始めているところですが、今回の飛び地「Kaliningrad」を巡る西側の動きが、ロシアをどのように刺激してどのような影響を与えるのかが注目されるところです
ウクライナ関連の記事
「ロシア侵略の第一撃は衛星通信に」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「アジア太平洋への教訓は兵站能力」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「陸軍訓練センターに教訓反映」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/
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NATO加盟国リトアニアがEU加盟国義務として淡々と
ロシアは猛反発でリトアニアに報復示唆も
6月21日付Defense-Newは、EUが定めたロシアのウクライナ侵略に対する制裁措置に従う形で、リトアニアがリトアニア領土を通過するロシアの飛び地領土「Kaliningrad」へのロシア製品の移動を禁止する措置をとったと報じています
この措置に先立ち、EUは4月に空路によるロシア航空会社のEU通過を禁止して、「Kaliningrad」へのロシア製品の空路を絶ちましたが、今回は「Kaliningrad」への物資輸送の半分を担う陸路(露の同盟国ベラルーシと飛び地を結ぶ「Suwalki Gap」を通る鉄道が地上輸送の大部分を担う)を絶ち、更にロシアから石油を輸送する唯一のパイプライン(「Suwalki Gap」近傍を通過)も今回の措置で封鎖されます
この結果、ロシアから約680マイル(約1100㎞)、露の同盟国ベラルーシから約90㎞離れた「飛び地:Kaliningrad」へロシア製品を輸送する手段は、公海を使用する「海路」だけとなり、ロシアにとっては痛烈な一撃となります
リトアニアはNATOメンバーであり、ロシアがリトアニアに手を出せば、「NATO憲章5条」によりNATOとしてロシアに反撃するトリガーとなります。バイデン大統領も年頭教書で「一インチでもNATO領内に入ったら・・・」と明言しており、約1000名の米軍兵士を3月に同国へ派遣して覚悟を示しているところです
リトアニア外務省は、EUの一員として、EUの定めたロシアへの制裁措置を実行しただけ・・・との淡々したスタンスですが、地図でご覧いただく「Kaliningrad」の位置や、以下の紹介するその重要性からすると、NATOや西側の「かなり大きな一手」ですのでご紹介しておきます
ロシアと同飛地Kaliningradの歴史と重要性
●WW2終結時にソ連が占領していた同地域を、ポスダム会談においてソ連領と承認。1991年のソ連崩壊時も、同地域の周辺国は独立して西側との関係を深めていくが、同地域は飛び地としてロシア領として引き継がれる。
●同飛び地の南部で国境を接するポーランド、及び東部と北部で国境を接する今回封鎖を宣言したリトアニアは、共にその後NATOに加盟した
●Kaliningradはバルト海に面するロシア唯一の港を有し、同港は不凍港である点でロシア艦隊の重要拠点。またNATO最前線に位置する海軍拠点としての意味を持つ
●ロシア本土から約680マイル(約1100㎞)NATOに食い込んだ位置にあることから、ロシアは核弾頭搭載可能な短&中距離弾道ミサイルを核弾頭と共にKaliningradに配備しているとリトアニアは主張しており、ウクライナ侵攻開始当初に核部隊の即応態勢を高めた際にも、西側はKaliningradを配備戦力を警戒している
リトアニアの地上ルート封鎖へのロシアの反応
●リトアニアは今回の措置を、単にEUの一員として露のウクライナ侵略に対する制裁を実行したまでだと淡々と主張し、「リトアニアを経由する人や制裁対象外の物資の往来は問題なく継続されている」、「EU決定の制裁を実施しているだけで、リトアニア独自の措置は一切ない」とリトアニア外務省は主張している
●しかしロシアは強く反発し、国際法違反の「blockade」だと主張し、リトアニアが痛みを感じる装置を講ずると訴えている(効果ある具体策を提示することに失敗しているが・・・
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6月21日付Defense-News記事は、リトアニアの措置(EUの措置)にロシアが有効な「痛みを感じる報復措置」を執れないでいると紹介していますが、決して油断はできませんし、年月を経て報復を企てることも十分に考えられます。
ウクライナ東部や北部で、ロシア軍がじわじわと態勢を立て直して反転攻勢に転じ、ウクライナ軍を過去数か月間支えたドローンや通信傍受を基にした攻撃も効果が低下し始めているところですが、今回の飛び地「Kaliningrad」を巡る西側の動きが、ロシアをどのように刺激してどのような影響を与えるのかが注目されるところです
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「ロシア侵略の第一撃は衛星通信に」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「アジア太平洋への教訓は兵站能力」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「陸軍訓練センターに教訓反映」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/
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→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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