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米議会が希少金属アンチモン国防備蓄増に動く [安全保障全般]

太平洋戦争時に日本が中国産を米に禁輸した悪夢再び
レアメタル一時は5兆円備蓄も、今や1千億円程度に
米国が国家備蓄や国内リサイクル強化に乗り出すも
2025年には備蓄が破産状態の危機感

antimony.jpg6月8日付Defense-Newsは、米国製兵器や国防装備品に不可欠な希少金属を中国やロシアからの輸入に大きく依存している現状に、米議会や国防省がウクライナ侵略を契機に動き始めた状況を報じ、特に太平洋戦争時に日本も中国産の米国への禁輸措置を行ったアンチモン(antimony)に危機感が高まっていると紹介しています

もちろん、チタンやタングステンやコバルトやリチウムにも危機感が高いようですが、貫通弾や爆弾から暗視眼鏡や核兵器まで、多様な国防装備品に不可欠なアンチモンへの危機感が高い模様で、下院軍事委員会が6月8日に関連法案を提出し、政府担当部署に対し、10月までに米議会に国防装備関連のアンチモン備蓄状況と、今後5年間の希少金属やレアアース(希土類)調達先に関する見通し説明会開催を要求したようです

antimony2.jpgまた米国防省に対しても、使用済み装備品やバッテーリーからの希少金属やレアアース(希土類)をリサイクルする政策立案を要求する法案になっている模様で、法案は6月末には国防授権法に組み込まれる予定となっているようです

法案提出に際し下院軍事委員会は、「委員会は、最近のロシアや中国を巡る地政学的な動向から、アンチモンの調達ルートが混乱・断然することをを懸念している」と記載したレポートを添付し、国防関連に不可欠な希少金属やレアアーズがこのままだと2025年度までに「破産状態」に陥ると危機感を訴えているようです

antimony5.jpgこのようなアンチモンへの危機感の背景には、太平洋戦争時に日本が中国産アンチモンの米国輸出を閉ざした歴史があり、米国がその当時はアイダホ州の鉱山からアンチモン抽出を行ったものの、同鉱山が1997年に閉鎖されて米国内で産出ゼロの現実もあるようです

また米国は、冷戦期にも希少金属やレアアース不測の危機感を持ち、1952年時点では合計5兆円規模の戦略備蓄を確保していたようですが、その後危機感が薄れるにつれ関連備蓄予算は削減され、2021年時点では備蓄総額が1千億円規模に大幅縮小している現実も危機感を増長しています

antimony6.jpg過去記事でもご紹介していますが、米議会が動く以前から、米国防省は5月に300億円規模の関連備蓄増強予算を要求し、超党派の議員グループが国防省の動きを支援する活動を議会内で開始しています。

ご参考まで、2020年の米政府機関報告書によると、アンチモン市場は中国が供給量一位で、ロシアとタジキスタンが2位と3位で続いているが、ロシアとタジクの追い上げで中国が車を奪われつつある状況にあるようです

ロシアによるウクライナ侵攻は、改めて様々な方面に潜む「国家の脆弱性」をあぶりだす形になっていますが、日本でも当然、このような問題がいくつもあるはずです・・・

希少金属レアアース関連記事
「中国依存脱却に米国企業への投資強化」→https://holylandtokyo.com/2021/02/25/269/ 
「レアアース確保に米国が大統領令:中国依存脱却へ」→https://holylandtokyo.com/2020/10/07/427/
「中国がレアアース輸出規制へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-06

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