5G巡り米議会でも国防省使用の周波数議論 [Joint・統合参謀本部]
ファーウェイに対抗する5Gを提供できない米国に焦り
周波数「共有」ならOKも「差出」は断固拒否の国防省
3日、米空軍長官と空軍参謀総長が揃って米議会の関連小委員会に出席し、通信産業界から5G通信において数千億円相当の価値があると言われる「Mid-Band spectrum」の差出を求められている件について、当該周波数帯の「混信の発生しない共有」はあり得るが、「差出」はあり得ないと、エスパー国防長官の姿勢を再度強調しました
「Mid-Band spectrum」の定義が明確には分かりませんが、数GHzの周波数帯で、米軍ではイージス艦やAWACSのレーダー、更に国防省が2021年度予算案で目玉として取り組んでいるABMS(先進戦闘管理システム)の通信ネットワーク等を支える最重要周波数帯らしく、国防省が簡単に妥協できる電波ではありません
一方で5Gに関して米国は、技術的に優位で安価な中国のファーウェイ(Huawei)製品を情報流出の懸念から世界各国に採用しないよう呼びかけながら、代替の製品をエリクソン、ノキア、サムスン等との協力体制でも打ち出せていない苦しい状況にあり、産業界からの電波使用要求を簡単に却下できない状況に追い込まれています
細かな周波数割り当て議論や影響については説明できませんが、陸海空軍の装備だけでなく、衛星との通信にも関連する周波数らしく米軍内の多方面から懸念の声が上がっている問題で、日本がどうなっているのも気になるところですので、今後も続く議論の一端をご紹介しておきます
4日付C4ISRnet記事によれば
●3日のAirland小委員会に出席したBarbara Barrett米空軍長官と Goldfein空軍参謀総長は、エスパー国防長官がこれまで主張してきたように、国防省が使用する電波への混信がない「fidelity:潔癖さ」が確認される範囲での関連周波数帯の共有使用(sharing)は議論できるが、当該周波数の明け渡しには応じられないと主張した
●同参謀総長は「我々は当該周波数で作戦を遂行しなければならない。特定の周波数を区分してSharingすることは検討対象だが、当該周波数帯の使用をやめることはできない。当該周波数を差し出せと要求する人がいるが、そのような要求は止めて頂きたい」と主張した
●米空軍は統合作戦の強力な能力向上策として、一部航空機を早期退役させてまでABMS(Advanced Battle Management System)に予算を投入する案を2021年度予算案で計上しているが、ABMSでは当該周波数帯を使用して各種プラットフォームが各種情報を同時にやり取りすることが柱となっており、当該周波数帯は、今後の米軍の戦い方の中核システムを支える基礎となる電波帯である
●米国内の周波数割り当てを行うFCC(Federal Communications Commission)は、5G導入に向け当該周波数帯の割り当て再検討に着手しており、ホワイトハウスには通信事業者から周波数開放の強い圧力が働いていると報じられている
●国防省に対しても、一部の議員や産業界から、直近の作戦ニーズと、5Gという通信技術が経済・技術面双方から国益全体に与える影響を良く勘案して周波数について再検討すべきとの要求がされている
●本件は、4日に開催される上院の通商技術運輸委員会で、複数の通信事業者の幹部を集めて議論される事になっており、同委員会の共和党John Thune委員長は、FCCは米国の競争力アップのため周波数確保に精力的に働いており、多くの周波数帯を使用している国防省にも周波数差出を求めていると述べている
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この議論は当面続くものと思われますが、米国で最終的にどのような力学が働いて決着するのか興味深いところです。
中国や諸外国での周波数割り当てや、軍事と商用使用の振り分けも気になるところです。ただ、国土が大きいところは有利でしょうねぇ・・・。それと、いざとなったら国家が強い権力を発揮して統制する国も強いでしょうねぇ・・・民間の犠牲を顧みず・・・
日本での議論も気になります。国土が狭く、国土とその近傍が作戦エリアとなる国ですから
5G関連の記事
「ファーウェイ5G使用は米国との関係に障害」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-17
「5Gと軍事レーダーの干渉確認「」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-05
「5G企業とGPS関係者がLバンド電波巡り激突中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22-2
「戦略コマンドが5Gとの電波争奪に懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-27
「5G試験のため民間に演習場提供案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-14
周波数「共有」ならOKも「差出」は断固拒否の国防省
3日、米空軍長官と空軍参謀総長が揃って米議会の関連小委員会に出席し、通信産業界から5G通信において数千億円相当の価値があると言われる「Mid-Band spectrum」の差出を求められている件について、当該周波数帯の「混信の発生しない共有」はあり得るが、「差出」はあり得ないと、エスパー国防長官の姿勢を再度強調しました
「Mid-Band spectrum」の定義が明確には分かりませんが、数GHzの周波数帯で、米軍ではイージス艦やAWACSのレーダー、更に国防省が2021年度予算案で目玉として取り組んでいるABMS(先進戦闘管理システム)の通信ネットワーク等を支える最重要周波数帯らしく、国防省が簡単に妥協できる電波ではありません
一方で5Gに関して米国は、技術的に優位で安価な中国のファーウェイ(Huawei)製品を情報流出の懸念から世界各国に採用しないよう呼びかけながら、代替の製品をエリクソン、ノキア、サムスン等との協力体制でも打ち出せていない苦しい状況にあり、産業界からの電波使用要求を簡単に却下できない状況に追い込まれています
細かな周波数割り当て議論や影響については説明できませんが、陸海空軍の装備だけでなく、衛星との通信にも関連する周波数らしく米軍内の多方面から懸念の声が上がっている問題で、日本がどうなっているのも気になるところですので、今後も続く議論の一端をご紹介しておきます
4日付C4ISRnet記事によれば
●3日のAirland小委員会に出席したBarbara Barrett米空軍長官と Goldfein空軍参謀総長は、エスパー国防長官がこれまで主張してきたように、国防省が使用する電波への混信がない「fidelity:潔癖さ」が確認される範囲での関連周波数帯の共有使用(sharing)は議論できるが、当該周波数の明け渡しには応じられないと主張した
●同参謀総長は「我々は当該周波数で作戦を遂行しなければならない。特定の周波数を区分してSharingすることは検討対象だが、当該周波数帯の使用をやめることはできない。当該周波数を差し出せと要求する人がいるが、そのような要求は止めて頂きたい」と主張した
●米空軍は統合作戦の強力な能力向上策として、一部航空機を早期退役させてまでABMS(Advanced Battle Management System)に予算を投入する案を2021年度予算案で計上しているが、ABMSでは当該周波数帯を使用して各種プラットフォームが各種情報を同時にやり取りすることが柱となっており、当該周波数帯は、今後の米軍の戦い方の中核システムを支える基礎となる電波帯である
●米国内の周波数割り当てを行うFCC(Federal Communications Commission)は、5G導入に向け当該周波数帯の割り当て再検討に着手しており、ホワイトハウスには通信事業者から周波数開放の強い圧力が働いていると報じられている
●国防省に対しても、一部の議員や産業界から、直近の作戦ニーズと、5Gという通信技術が経済・技術面双方から国益全体に与える影響を良く勘案して周波数について再検討すべきとの要求がされている
●本件は、4日に開催される上院の通商技術運輸委員会で、複数の通信事業者の幹部を集めて議論される事になっており、同委員会の共和党John Thune委員長は、FCCは米国の競争力アップのため周波数確保に精力的に働いており、多くの周波数帯を使用している国防省にも周波数差出を求めていると述べている
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この議論は当面続くものと思われますが、米国で最終的にどのような力学が働いて決着するのか興味深いところです。
中国や諸外国での周波数割り当てや、軍事と商用使用の振り分けも気になるところです。ただ、国土が大きいところは有利でしょうねぇ・・・。それと、いざとなったら国家が強い権力を発揮して統制する国も強いでしょうねぇ・・・民間の犠牲を顧みず・・・
日本での議論も気になります。国土が狭く、国土とその近傍が作戦エリアとなる国ですから
5G関連の記事
「ファーウェイ5G使用は米国との関係に障害」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-17
「5Gと軍事レーダーの干渉確認「」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-05
「5G企業とGPS関係者がLバンド電波巡り激突中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22-2
「戦略コマンドが5Gとの電波争奪に懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-27
「5G試験のため民間に演習場提供案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-14
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