SSブログ

米軍の次世代戦闘機エンジン開発AETP契約 [米空軍]

AETP engine.jpg1日付Defense-Newsは、これまでの研究に基づき米軍の次世代戦闘機エンジン開発を推進する2021年9月までの5カ年契約が、米空軍とエンジン企業2社の間で結ばれたと報じています。

この計画はAETP(Adaptive Engine Transition Program)と呼ばれ、「General Electric Aviation」と「Pratt & Whitney」の2社にそれぞれ今後5年間で約1100億円を投資し、米空軍によれば「燃費25%改善、推進力10%向上、発熱管理の飛躍的向上」を目指すものです

AETPは当然、今後検討が進む米空軍の次期戦闘機や米海軍のFA-18後継機検討を意識したものですが、現在F-35に搭載されているP&W社製F-135エンジンの改良にも役立てられる模様です

過去数年にわたって検討してきた新技術を導入したエンジンの試作開発して調達につなげるような計画ですが、先日発表された米空軍の「Air Superiority 2030」検討が示唆しているように、機動性や速度より、航続性能や搭載量に次世代作戦機の焦点が移る方向性が出ている中で、焦点がズレていないか気になるところです

とりあえず、AETP(またはAETD)の概要を2015年10月10日のDefense-News記事で復習いたしましょう

昨年10月のAETP解説記事
AETP engine2.jpg米空軍研究所によるAETD計画の初期成果を取り込んで、GE社とP&W社は、(昨年)9月16日までに次の段階のエンジン開発AETPに関する提案を提出した。この提案をもとに、2016年初めには両社とAETP契約が結ばれる模様
近い将来にどちらか1社に絞り込まれるとは想定されていないが、今後数年先にはどちらかの提案計画を国防省が選択することが考えられる

●AETPは、米空軍研究所が両企業と数年かけて取り組んできた「adaptive three-stream engine technology」を推進するもので、従来のエンジンが2つの空気の流れを利用していたのに対し、第3の空気流をエンジン外側に加えるものである
●これにより、航空機がいかなる飛行状態にあっても、より最適なエンジンパフォーマンスが発揮可能になる。言い換えれば、従来のエンジンが燃費重視か最大推力重視かの選択を迫られたのに対し、AETPエンジンは「ギアチェンジするように」飛行状態に応じてパフォーマンスを切り替えられるのだ

両社は異口同音に、AETPエンジンにより「燃費25%、航続距離30%、推進力20%を向上できる」と語っている。「第3の空気流」に加え、セラミック材料や新素材を導入し、高温耐性を高めてエンジンの柔軟性向上を目指している
AETP engine3.jpg●P&W社はF-35用のF-135エンジンを製造しており、GE社は同社が製造するエアバスA320用やボーイング737MAX用のLEAPやGE9Xエンジンを基礎に提案している。

●また両社は、今後主要軍用機産業(LM、ボーイング、NG)と契約し、米空軍の次期戦闘機や米海軍のFA-18後継機などの次世代軍用機とのマッチングやトレードオフ検討も行う
●GE社の同エンジン責任者は、「作戦機に求められる様々な性能の取捨選択や優先順位を検討する参考になるよう、性能トレードオフのマトリックスを議論する」と語っている
//////////////////////////////////////////////////////

戦闘機エンジンの開発はその国の総合力を示す「バロメータ」とも言われ、中国もロシア製エンジンの模倣から入り、サイバー戦やあらゆる手段を用いて国産開発に取り組んでいますが、なかなか米国企業のレベルには達しません

日本は「心神」とか「国産戦闘機」とか形だけぶちあげ、ハイパワースリムエンジン(HSE)とか、15トン級の戦闘機用試作エンジンとか言いたい放題状態ですが、米国への口先介入だけで「中身はゼロ」が現状でしょうし、研究を進める原資もない状態だと思います

AETP engine4.jpg「1000億円レベルの5カ年計画」が必要なのが戦闘機エンジン開発ですが、日本の戦略環境と脅威の変化を考えればその方面に巨額の投資を行う余裕は日本にはないと思います。日本の場合、戦闘機は4世代機の能力向上と延命で十分だと思います

将来の空を制するために
「Air Superiority 2030計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-02
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2

「米空軍:小型無人機20年計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-18
「米海軍の無人機の群れで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10

「ロッキードは消極的」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17
「kill chain全体で考えよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-27

悲劇:国産ステルス戦闘機「F3」開発報道
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18

nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 1

コメント 1

ando

エンジンは
既に予算付いてるんですけど
by ando (2016-07-10 07:15) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0