下院軍事委員長が再びF-35に噛みつく [亡国のF-35]
生存性は期待ほど高くなく、維持費が高止まり
エンジン問題で稼働率上がらず→AETP早期導入要望
無人機の群れの方が有効な投資先だ
2025年の維持費を見て調達数上限を決める
8月31日、Brookings主催のイベントにAdam Smith下院軍事委員長が登場し、来年度予算を決定する2022年国防授権法の議論について語り、特に同議長が問題視するF-35問題について、維持費が高止まりすれば調達機数を制限する規定や次世代エンジンAETPをF-35に導入する可能性検討を命ずる案を含めたいと語りました
また、F-35設計当時に想定されていたより脅威環境が厳しくなり、同機の生存性が低下していると指摘し、最近の事例も踏まえて「無人機の群れ」に優先投資すべきとの考え方を示しました
Adam Smith下院軍事委員長は3月に同じくBrookingで、「どぶに金を捨てるようなF-35への投資を止めさせたい」、「金食い虫のF-35に今後35年も頼らなくてよいような道を探るべき」と訴え大きな話題になりましたが、その第2弾をぶちかましています
このイベントの内容を一番早く報じたのが、米空軍応援団の米空軍協会webサイトですので、恐らく米空軍内外にも同委員長意見に賛同する者が多数存在すると推測いたします。
31日付米空軍協会web記事によれば同委員長は
●F-35の維持費が高止まりしていることを米議会でも多くの議員が問題視しており、2022年国防授権法の下院軍事委員長案には、2025年度の同機の年間維持費が米空軍が目標とする1機年間約4.5億円以下に低下しなかったら、米空軍が何機F-35を維持できるかを見積り、調達予定機数1763機を削減する条項を盛り込んだ
●また、F-35のPratt & Whitney社製 F135エンジンの整備時間や整備コストが膨らんでいる問題に関連し、維持整備費削減策の一つとして、GE社とPratt & Whitney社が開発を競い合っている次世代エンジン計画AETP(Adaptive Engine Transition Program)を活用できないかと考えている
●AETPは一般に、次世代制空機NGAD計画(Next-Generation Air Dominance program)用とされているが、F-35に導入する可能性があると考えており、2社が競い合う体制であることも好ましいことから、2022年国防授権法の下院軍事委員長案に、調達担当国防次官にAETPをF-35に導入する開発&融合戦略を策定するよう規定を含めている
●全く別の視点だが、F-35の戦闘空域での生存性が、敵の防空ミサイル等の迎撃能力向上により、F-16など第4世代機の生存性レベルに低下し始めていると懸念している。脅威の変化については細部に言及できないが
●このような厳しい脅威環境では、F-35は機体が大きすぎて敵に発見されずに侵攻することが難しい。そこで、より小型で生存性が高い無人機に投資するのが好ましいと考えている
●最近目にした、シリアやアルメニアとアゼルバイジャンの戦いが示すように、探知困難なドローンの群れは強烈なパンチを見舞うことができる。探知できず、探知しても迎撃することが短時間で困難な点など、大型アセットが不可能な役割を果たしてくれると期待でき、今後の投資先にふさわしいと考えている
緊急追記:Brown参謀総長もF-35調達数制限に同意
(維持整備費が低下しなかった場合の措置として)
●9月8日、Brown米空軍参謀総長はDefense-News主催イベントで、米議会からの提案は私の考え方と同一線上にあると語り、維持整備費が計画の2倍程度の高止まりしている状況が改善されなければ、調達機数1763機の削減を考えざるを得ないと述べた
●同大将は「米議会からの意見や提案は、米空軍が検討している方向と同じである」、「我々はF-35計画を資金的に維持可能なものにすることに目標を定めており。それが焦点となっている」と表現した
////////////////////////////////////////
同イベントの模様(約1時間)
Smith下院軍事委員長が3月5日に「どぶに金を捨てるようなF-35への投資を止めさせたい」と口火を切り、6月23日には英国防相が英議会で「維持費を下げなければ、支払い不可能な請求書に縛られるつもりは無い」、「F-35を計画通り買ってほしければ、コストを抑えろ」、「白紙の小切手を渡すつもりは毛頭ない」と米国と米企業を非難する事態に至っています
なぜF-35反対の先頭に立つSmith下院軍事委員長までが、2025年度の維持費実績が出るまで調達機数削減判断を先延ばしする案を出しているのか不明ですが、国内産業政策とか、海外の調達契約国との関係とか、整理するにはそれぐらいの期間が必要なのかもしれません。
F-35のエンジン問題
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-15
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「F-35エンジン改良検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-01-2
「AETPの開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-07-02-1
最近のF-35
「酸素生成装置問題を解決せよ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-03
「海兵隊C型が完全運用態勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-08
「スイスが14番目の購入国に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-01
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-24-1
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「伊軽空母に海兵隊F-35B展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-14-1
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-06
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「F-35稼働率の状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「新型戦術核搭載飛行試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-28
「5月の事故対策改修は秘密」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-24
「中東でかく戦えり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07
「B型とC型が超音速飛行制限甘受」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-27
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
エンジン問題で稼働率上がらず→AETP早期導入要望
無人機の群れの方が有効な投資先だ
2025年の維持費を見て調達数上限を決める
8月31日、Brookings主催のイベントにAdam Smith下院軍事委員長が登場し、来年度予算を決定する2022年国防授権法の議論について語り、特に同議長が問題視するF-35問題について、維持費が高止まりすれば調達機数を制限する規定や次世代エンジンAETPをF-35に導入する可能性検討を命ずる案を含めたいと語りました
また、F-35設計当時に想定されていたより脅威環境が厳しくなり、同機の生存性が低下していると指摘し、最近の事例も踏まえて「無人機の群れ」に優先投資すべきとの考え方を示しました
Adam Smith下院軍事委員長は3月に同じくBrookingで、「どぶに金を捨てるようなF-35への投資を止めさせたい」、「金食い虫のF-35に今後35年も頼らなくてよいような道を探るべき」と訴え大きな話題になりましたが、その第2弾をぶちかましています
このイベントの内容を一番早く報じたのが、米空軍応援団の米空軍協会webサイトですので、恐らく米空軍内外にも同委員長意見に賛同する者が多数存在すると推測いたします。
31日付米空軍協会web記事によれば同委員長は
●F-35の維持費が高止まりしていることを米議会でも多くの議員が問題視しており、2022年国防授権法の下院軍事委員長案には、2025年度の同機の年間維持費が米空軍が目標とする1機年間約4.5億円以下に低下しなかったら、米空軍が何機F-35を維持できるかを見積り、調達予定機数1763機を削減する条項を盛り込んだ
●また、F-35のPratt & Whitney社製 F135エンジンの整備時間や整備コストが膨らんでいる問題に関連し、維持整備費削減策の一つとして、GE社とPratt & Whitney社が開発を競い合っている次世代エンジン計画AETP(Adaptive Engine Transition Program)を活用できないかと考えている
●AETPは一般に、次世代制空機NGAD計画(Next-Generation Air Dominance program)用とされているが、F-35に導入する可能性があると考えており、2社が競い合う体制であることも好ましいことから、2022年国防授権法の下院軍事委員長案に、調達担当国防次官にAETPをF-35に導入する開発&融合戦略を策定するよう規定を含めている
●全く別の視点だが、F-35の戦闘空域での生存性が、敵の防空ミサイル等の迎撃能力向上により、F-16など第4世代機の生存性レベルに低下し始めていると懸念している。脅威の変化については細部に言及できないが
●このような厳しい脅威環境では、F-35は機体が大きすぎて敵に発見されずに侵攻することが難しい。そこで、より小型で生存性が高い無人機に投資するのが好ましいと考えている
●最近目にした、シリアやアルメニアとアゼルバイジャンの戦いが示すように、探知困難なドローンの群れは強烈なパンチを見舞うことができる。探知できず、探知しても迎撃することが短時間で困難な点など、大型アセットが不可能な役割を果たしてくれると期待でき、今後の投資先にふさわしいと考えている
緊急追記:Brown参謀総長もF-35調達数制限に同意
(維持整備費が低下しなかった場合の措置として)
●9月8日、Brown米空軍参謀総長はDefense-News主催イベントで、米議会からの提案は私の考え方と同一線上にあると語り、維持整備費が計画の2倍程度の高止まりしている状況が改善されなければ、調達機数1763機の削減を考えざるを得ないと述べた
●同大将は「米議会からの意見や提案は、米空軍が検討している方向と同じである」、「我々はF-35計画を資金的に維持可能なものにすることに目標を定めており。それが焦点となっている」と表現した
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同イベントの模様(約1時間)
Smith下院軍事委員長が3月5日に「どぶに金を捨てるようなF-35への投資を止めさせたい」と口火を切り、6月23日には英国防相が英議会で「維持費を下げなければ、支払い不可能な請求書に縛られるつもりは無い」、「F-35を計画通り買ってほしければ、コストを抑えろ」、「白紙の小切手を渡すつもりは毛頭ない」と米国と米企業を非難する事態に至っています
なぜF-35反対の先頭に立つSmith下院軍事委員長までが、2025年度の維持費実績が出るまで調達機数削減判断を先延ばしする案を出しているのか不明ですが、国内産業政策とか、海外の調達契約国との関係とか、整理するにはそれぐらいの期間が必要なのかもしれません。
F-35のエンジン問題
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-15
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「F-35エンジン改良検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-01-2
「AETPの開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-07-02-1
最近のF-35
「酸素生成装置問題を解決せよ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-03
「海兵隊C型が完全運用態勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-08
「スイスが14番目の購入国に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-01
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-24-1
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「伊軽空母に海兵隊F-35B展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-14-1
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-06
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「F-35稼働率の状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「新型戦術核搭載飛行試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-28
「5月の事故対策改修は秘密」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-24
「中東でかく戦えり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07
「B型とC型が超音速飛行制限甘受」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-27
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03
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→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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