F-35のエンジンブレードと整備性問題発覚 [亡国のF-35]
稼働率低調の2大原因の一つ
キャノピー問題は第2メーカー参入の5月まで辛抱か
12日付Defense-Newsが国防省筋の話として、F-35の稼働率低空飛行の当面の原因とされているF135エンジン問題について、エンジンブレード耐熱塗装の問題と、オーバーホール整備に想定以上の時間が必要となっている問題を取り上げ、国防省F-35計画室の対処方針を紹介しています
また、退任直前のLord前次官が明らかにしていたエンジン以外のもう一つのF-35稼働率低迷要因である「キャノピー」については、5月から新たなメーカーが製造や補修に参入して前線部隊を支える方向だと、同記事は紹介しています
退任前日の1月19日にLord前次官が明らかにしたF-35稼働率は、「複数ある任務の一つでも可能な機体は69%で、全ての任務が可能な機体は39%」との衝撃的なものでしたが、上記のエンジン整備やキャノピー問題だけに原因を集約するのは無理があり、兵站情報管理システム(ALISに代わりODIN)トラブルや部品確保サプライチェーンの混乱や想定以上の部品故障率や整備員の技量未熟等々・・・複数の大きな原因が背景にあります
ただ、当面の大きな課題であるF135エンジン問題とキャノピー問題の2つの状況をご紹介しておきます
12日付Defense-News記事によれば
●12日、国防省F-35計画室幹部が、F-35用のF135エンジンの問題は2つあり、一つはオクラホマ州Tinker空軍基地の「F135 Heavy Maintenance Center」で計画通りの時間でエンジン整備が終了しない問題で、もう一つはエンジンブレードのコーティングが想定より早く損傷する問題だと説明した
●同高官は「深刻な態勢維持上の問題だ」と述べ、上記問題により2022年まではF-35の5-6%の機体はエンジンが無い状態となり、2割のF-35が何らかの影響を受けることになる可能性があると述べた
●この状況を受け、米空軍はF-35の展示飛行チームに対し、2021年の展示飛行計画から8つの計画を削減し、エンジンへの負担を減らしてエンジン整備所要を抑制するよう指示した
●このエンジン問題に国防省F-35計画室が気づいたのは2020年初めで、同年夏には、上記エンジン整備センターで予定されていた年間60台のエンジン整備が遂行できないことが明らかになった
●整備センターでの遅れは多様な要因で発生しており、技術データ不足、整備工程管理の不具合、整備支援機材の不足、整備担当者の技量不足などなどが組み合わさって発生している、と同幹部は語った
●エンジン整備センターでの問題対処には、整備作業ラインをもう一つ6月までに立ち上げる方向で、また国防省とPratt & Whitneyが整備支援強化で契約を結び、作業員の技量向上訓練にも着手する予定である
●これら対策により、「現状200日以上必要としているエンジン整備を、122日程度で終了させたい」と同幹部は語った
●もう一つのエンジンブレードの問題は、耐熱コーティングが想定より早く劣化する問題である。
●本件に関しPratt & Whitney(Raytheon Technologiesの傘下:オースチン国防長官は関与できるのか?)は、2020年からエンジンブレード改良処理過程を導入開始し、製造ラインに投入していると声明を出している
●2月17日にTinker空軍基地が「F-35関連各級指揮官がF-35関連の種々の課題を議論する会議サミット」を開催し、F135エンジン問題に関する議論も行われた模様だが、国防省関係者は細部への言及を避けた
●唯一の良いニュースは、もう一つの稼働率関連の課題であるキャノピー問題で、現在唯一の「canopy transparencies」サプライヤーであるGKN Aerospaceがキャノピーのコーティングの表面剥離問題で製造・修理に苦しみ必要量の提供が滞っている中、第2のサプライヤーが参画する予定であることである
●PPG Aerospaceという第2のキャノピーサプライヤーは、5月から「canopy transparencies」を提供開始する予定である
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F135エンジンについては、F-35製造が始まる段階で「あの火災事故の原因対策は終了したのか?」、「本当に大丈夫か?」、「いろんな不具合データが出ており別のエンジンが良いのではないか」等々の意見が多く出されていたと記憶していますが、今になって・・・ではないことを祈ります
でも、最初に述べたように、エンジンとキャノピー問題はあくまで目の前の課題であり、その後ろや足元には、より大きな構造的な維持整備の問題が山積していることを忘れてはなりません。
米空軍でまもなく第2位の保有機数となるF-35ですが、維持整備問題で既に大きな「お荷物」となっています。量産前に・・・
2016年9月23日の火災事故記事
「日本用1番機の式典日に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24
「本当?:背風を受けF-35エンジン始動時に火災」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-07-13
2014年6月の火災事案
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「深刻:問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08
「F-35:2週間後も飛行停止」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-26
「P&W社がエンジン亀裂を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-24
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キャノピー問題は第2メーカー参入の5月まで辛抱か
12日付Defense-Newsが国防省筋の話として、F-35の稼働率低空飛行の当面の原因とされているF135エンジン問題について、エンジンブレード耐熱塗装の問題と、オーバーホール整備に想定以上の時間が必要となっている問題を取り上げ、国防省F-35計画室の対処方針を紹介しています
また、退任直前のLord前次官が明らかにしていたエンジン以外のもう一つのF-35稼働率低迷要因である「キャノピー」については、5月から新たなメーカーが製造や補修に参入して前線部隊を支える方向だと、同記事は紹介しています
退任前日の1月19日にLord前次官が明らかにしたF-35稼働率は、「複数ある任務の一つでも可能な機体は69%で、全ての任務が可能な機体は39%」との衝撃的なものでしたが、上記のエンジン整備やキャノピー問題だけに原因を集約するのは無理があり、兵站情報管理システム(ALISに代わりODIN)トラブルや部品確保サプライチェーンの混乱や想定以上の部品故障率や整備員の技量未熟等々・・・複数の大きな原因が背景にあります
ただ、当面の大きな課題であるF135エンジン問題とキャノピー問題の2つの状況をご紹介しておきます
12日付Defense-News記事によれば
●12日、国防省F-35計画室幹部が、F-35用のF135エンジンの問題は2つあり、一つはオクラホマ州Tinker空軍基地の「F135 Heavy Maintenance Center」で計画通りの時間でエンジン整備が終了しない問題で、もう一つはエンジンブレードのコーティングが想定より早く損傷する問題だと説明した
●同高官は「深刻な態勢維持上の問題だ」と述べ、上記問題により2022年まではF-35の5-6%の機体はエンジンが無い状態となり、2割のF-35が何らかの影響を受けることになる可能性があると述べた
●この状況を受け、米空軍はF-35の展示飛行チームに対し、2021年の展示飛行計画から8つの計画を削減し、エンジンへの負担を減らしてエンジン整備所要を抑制するよう指示した
●このエンジン問題に国防省F-35計画室が気づいたのは2020年初めで、同年夏には、上記エンジン整備センターで予定されていた年間60台のエンジン整備が遂行できないことが明らかになった
●整備センターでの遅れは多様な要因で発生しており、技術データ不足、整備工程管理の不具合、整備支援機材の不足、整備担当者の技量不足などなどが組み合わさって発生している、と同幹部は語った
●エンジン整備センターでの問題対処には、整備作業ラインをもう一つ6月までに立ち上げる方向で、また国防省とPratt & Whitneyが整備支援強化で契約を結び、作業員の技量向上訓練にも着手する予定である
●これら対策により、「現状200日以上必要としているエンジン整備を、122日程度で終了させたい」と同幹部は語った
●もう一つのエンジンブレードの問題は、耐熱コーティングが想定より早く劣化する問題である。
●本件に関しPratt & Whitney(Raytheon Technologiesの傘下:オースチン国防長官は関与できるのか?)は、2020年からエンジンブレード改良処理過程を導入開始し、製造ラインに投入していると声明を出している
●2月17日にTinker空軍基地が「F-35関連各級指揮官がF-35関連の種々の課題を議論する会議サミット」を開催し、F135エンジン問題に関する議論も行われた模様だが、国防省関係者は細部への言及を避けた
●唯一の良いニュースは、もう一つの稼働率関連の課題であるキャノピー問題で、現在唯一の「canopy transparencies」サプライヤーであるGKN Aerospaceがキャノピーのコーティングの表面剥離問題で製造・修理に苦しみ必要量の提供が滞っている中、第2のサプライヤーが参画する予定であることである
●PPG Aerospaceという第2のキャノピーサプライヤーは、5月から「canopy transparencies」を提供開始する予定である
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F135エンジンについては、F-35製造が始まる段階で「あの火災事故の原因対策は終了したのか?」、「本当に大丈夫か?」、「いろんな不具合データが出ており別のエンジンが良いのではないか」等々の意見が多く出されていたと記憶していますが、今になって・・・ではないことを祈ります
でも、最初に述べたように、エンジンとキャノピー問題はあくまで目の前の課題であり、その後ろや足元には、より大きな構造的な維持整備の問題が山積していることを忘れてはなりません。
米空軍でまもなく第2位の保有機数となるF-35ですが、維持整備問題で既に大きな「お荷物」となっています。量産前に・・・
2016年9月23日の火災事故記事
「日本用1番機の式典日に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24
「本当?:背風を受けF-35エンジン始動時に火災」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-07-13
2014年6月の火災事案
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「深刻:問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08
「F-35:2週間後も飛行停止」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-26
「P&W社がエンジン亀裂を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-24
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