新空軍長官が着任しての思いを語る [米空軍]
4年ぶりの国防省復帰で中国脅威を再確認
老朽航空機の早期退役を議会に受け入れさせるために
8月13日、就任してまだ1月経過していないFrank Kendall空軍長官がDefense-Newsの独占インタビューに答え、オバマ政権時の調達&技術担当国防次官を離れて以来、4年ぶりのペンタゴン勤務の感想等を交えつつ、今後の取り組みについてその一端を語りました
まだ最新の状況説明を受けている段階のようで、あまり突っ込んだ内容に触れているわけではありませんが、前任の空軍長官Barbara Barrett女史(勤務1年半)は全く存在感がなく、就任後に仕事ぶりをご紹介したことが1回もない稀有な存在でしたので、剛腕のKendall新空軍長官に期待を込めつつ、インタビューの概要をご紹介します
中国が恐れるような非公開の新兵器開発が進んでいるとの話や、米空軍近代化における最大のネックとなっているA-10やRQ-4等などを米議会の反対で早期退役させられない問題への対処方法について、考えを語っていますのでご紹介しておきます
17日付Defense-News記事によればKendall新長官は
●ペンタゴンに戻り、長らく私の懸念事項である中国の状況についいて情報ブリーフィングを受けてみて、私が想像していた以上に中国の軍事力近代化が加速していることをお思い知らされた。我々にはやるべきことが多く残されている
●米空軍では、非公開で進めている中国を恐れさせるような(scare China)大きな技術的飛躍を含む兵器開発を進めているが、これらを進めるには資金確保が重要である
●(どのような技術で中国を恐れさせるのか?との問いに、)例えば、既に公になっているF-35のBlock 4 upgradeでは、搭載計算機の能力を向上させ、搭載可能兵器やセンサーを増強する。また少しだけ公にしているB-21爆撃機も、中国を大いに怖気付かせる装備と考えている
●非公開のものについては語れないが、2-3の案件が進行中であり、潜在的な将来の敵対国を威嚇するような案件が存在すると申し上げておく
●これら将来のための優先度の高い計画が存在するが、米空軍は横ばいの予算枠の他にも、大きく自由度を縛られている。米空軍がやるべきことを実行していくためには、老朽化した航空アセットを早期退役させる必要があるが、米議会の理解が得られず、優先度の高い事業が遂行できないのだ
●私がオバマ政権時に国防省次官勤務をしていたころから、米空軍は次世代航空機、人工知能、全ドメイン指揮統制、自動化無人システムなど新技術導入のため、旧式装備の早期退役に取り組んできたが、議会の反対によりA-10やU-2やRQ-4を全て退役させる案の一部しか実現できなかった
●これを受け米空軍は、細切れ退役案を持ち出し、議会との妥協を図って限定数のB-1やKC-10やRQ-4退役の承認を得てきた。しかし、こんなやり方では経費削減や新装備への再投資効果は不十分で、空軍にとっては「真綿で首を絞められる:death by a thousand cuts」ようなものだ
●財政的観点で見れば、特定機種すべてを退役させることが最も効果的である。少数でも特定機種を保有し続けていれば、基礎的な固定費を負担し続ける必要がある
●まだ煮詰まっていない段階だが、私は議会関係者と共に、老朽機の早期退役を細切れでなく一つのパッケージとしてまとめて提案できないか考えているところである。そうすることで空軍関係者が個別に関係自治体や利害関係者と交渉や説明したりする労度を、まとめて効率的に行うことができると考えている
●もちろん例外はあり、幾つかのケースではまとめての議論が不可能な場合があるだろう。しかし取り組んでみたい。国家安全保障がこの取り組みにかかっているともいえる。鈍重な手法では強い軍は生み出せない
●また、既に検討が進んでいる2023年度予算案について、私なりの軌道修正をいくつか加えたいと考えている。(本件に関しては、Brown空軍参謀総長も、米空軍が考える大胆な航空アセット近代化案を披露したいと語っている)
●全ドメイン指揮統制改革の鍵であるABMSについては、前線の作戦運用に変化をもたらす、また一定期間内に成果が得られる投資先を明確にして進めるべきだと考えている
●議会からも、ABMSの狙いや効果が不明確だとの指摘を受けており、投資と効果の関係を整理して示す必要があると考えている
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米空軍の各種装備開発が突っ込みどころ満載なのは否定できませんが、老朽機種早期退役に反対するのはその機種の安全保障上の必要性であることはまれで、配備基地の自治体に落ちる税金や雇用絡みです
秘密で開発中の新兵器の成熟と共に、Kendall新長官による老朽装備一括パッケージ退役案が成就することを祈念いたしております
オバマ政権で調達&開発担当国防次官を4年
陸軍士官学校卒で航空工学修士とMBAと法学博士
「Kendall氏が上院で所信を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-26-1
「空軍長官候補Kendall氏をご紹介」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-28
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老朽航空機の早期退役を議会に受け入れさせるために
8月13日、就任してまだ1月経過していないFrank Kendall空軍長官がDefense-Newsの独占インタビューに答え、オバマ政権時の調達&技術担当国防次官を離れて以来、4年ぶりのペンタゴン勤務の感想等を交えつつ、今後の取り組みについてその一端を語りました
まだ最新の状況説明を受けている段階のようで、あまり突っ込んだ内容に触れているわけではありませんが、前任の空軍長官Barbara Barrett女史(勤務1年半)は全く存在感がなく、就任後に仕事ぶりをご紹介したことが1回もない稀有な存在でしたので、剛腕のKendall新空軍長官に期待を込めつつ、インタビューの概要をご紹介します
中国が恐れるような非公開の新兵器開発が進んでいるとの話や、米空軍近代化における最大のネックとなっているA-10やRQ-4等などを米議会の反対で早期退役させられない問題への対処方法について、考えを語っていますのでご紹介しておきます
17日付Defense-News記事によればKendall新長官は
●ペンタゴンに戻り、長らく私の懸念事項である中国の状況についいて情報ブリーフィングを受けてみて、私が想像していた以上に中国の軍事力近代化が加速していることをお思い知らされた。我々にはやるべきことが多く残されている
●米空軍では、非公開で進めている中国を恐れさせるような(scare China)大きな技術的飛躍を含む兵器開発を進めているが、これらを進めるには資金確保が重要である
●(どのような技術で中国を恐れさせるのか?との問いに、)例えば、既に公になっているF-35のBlock 4 upgradeでは、搭載計算機の能力を向上させ、搭載可能兵器やセンサーを増強する。また少しだけ公にしているB-21爆撃機も、中国を大いに怖気付かせる装備と考えている
●非公開のものについては語れないが、2-3の案件が進行中であり、潜在的な将来の敵対国を威嚇するような案件が存在すると申し上げておく
●これら将来のための優先度の高い計画が存在するが、米空軍は横ばいの予算枠の他にも、大きく自由度を縛られている。米空軍がやるべきことを実行していくためには、老朽化した航空アセットを早期退役させる必要があるが、米議会の理解が得られず、優先度の高い事業が遂行できないのだ
●私がオバマ政権時に国防省次官勤務をしていたころから、米空軍は次世代航空機、人工知能、全ドメイン指揮統制、自動化無人システムなど新技術導入のため、旧式装備の早期退役に取り組んできたが、議会の反対によりA-10やU-2やRQ-4を全て退役させる案の一部しか実現できなかった
●これを受け米空軍は、細切れ退役案を持ち出し、議会との妥協を図って限定数のB-1やKC-10やRQ-4退役の承認を得てきた。しかし、こんなやり方では経費削減や新装備への再投資効果は不十分で、空軍にとっては「真綿で首を絞められる:death by a thousand cuts」ようなものだ
●財政的観点で見れば、特定機種すべてを退役させることが最も効果的である。少数でも特定機種を保有し続けていれば、基礎的な固定費を負担し続ける必要がある
●まだ煮詰まっていない段階だが、私は議会関係者と共に、老朽機の早期退役を細切れでなく一つのパッケージとしてまとめて提案できないか考えているところである。そうすることで空軍関係者が個別に関係自治体や利害関係者と交渉や説明したりする労度を、まとめて効率的に行うことができると考えている
●もちろん例外はあり、幾つかのケースではまとめての議論が不可能な場合があるだろう。しかし取り組んでみたい。国家安全保障がこの取り組みにかかっているともいえる。鈍重な手法では強い軍は生み出せない
●また、既に検討が進んでいる2023年度予算案について、私なりの軌道修正をいくつか加えたいと考えている。(本件に関しては、Brown空軍参謀総長も、米空軍が考える大胆な航空アセット近代化案を披露したいと語っている)
●全ドメイン指揮統制改革の鍵であるABMSについては、前線の作戦運用に変化をもたらす、また一定期間内に成果が得られる投資先を明確にして進めるべきだと考えている
●議会からも、ABMSの狙いや効果が不明確だとの指摘を受けており、投資と効果の関係を整理して示す必要があると考えている
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米空軍の各種装備開発が突っ込みどころ満載なのは否定できませんが、老朽機種早期退役に反対するのはその機種の安全保障上の必要性であることはまれで、配備基地の自治体に落ちる税金や雇用絡みです
秘密で開発中の新兵器の成熟と共に、Kendall新長官による老朽装備一括パッケージ退役案が成就することを祈念いたしております
オバマ政権で調達&開発担当国防次官を4年
陸軍士官学校卒で航空工学修士とMBAと法学博士
「Kendall氏が上院で所信を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-26-1
「空軍長官候補Kendall氏をご紹介」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-28
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