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イスラエルが4機のKC-46購入契約間近と発表 [安全保障全般]

米国以外では日本に続きやっと2か国目
米国からの軍事支援で購入するボーイング支援の側面も
イラン核合意再興に大反対のイスラエルをなだめる側面も

Gantz KC-46.jpg9月1日付Defense-Newsが、イスラエルが2年前に導入を発表していた4機のKC-46空中給油機について、イスラエル国内政治や米国との価格交渉等のゴタゴタを経て、2025年と26年に受領する計画でまもなく契約可能になったとイスラエル国防相が発表したと報じています。

何度もご紹介してきたように、KC-46空中給油機は米空軍の最優先事業の一つとして期待された事業ですが、2017年に1番期納入予定が開発が不調で2019年まで遅れ、その後も様々な不具合や要求性能を満たせない状態が続き、米空軍が導入予定の計179機の1/3に当たる60機以上を既に受領済なのに、給油を遠隔操作する確認する映像システムRVSの不具合(最高度レベルの重大不具合)解消が2024年以降になるとのグダグダ状態にあります

Gantz KC-46 4.jpg「固定価格契約」でボーイングが受注したKC-46ですが、この開発トラブルでボーイングの自腹開発費が膨らみ、コロナで航空機産業絶不調の中で7000億円もの「自社持ち出し」が発生している惨状に、kendall空軍長官が「ボーイングの言い分を信じて固定価格契約にしたのは誤りだった」と率直に吐露(6月1日)して物議を醸しているところです

世界の空中給油機市場を見れば、KC-46のライバルであるエアバス社A330型給油機が、豪州6、英国14、UAE3、サウジ6、シンガポール1、韓国2、フランス1機が既に納入済みで、他にチェコ、インドネシア、インド、カタール、スペイン、スウェーデン等が興味を示している状況で、「勝負あった」感が漂っていますが、なぜか日本は受け入れ空港施設等の状況等を理由に、米国以外で唯一KC-46を導入している国になっています

Gantz KC-46 3.jpgそんな孤立無援なKC-46運用国仲間に、イスラエルが加わってくれたのは日本として嬉しいことなのでしょうが、イスラエルは米国から提供される年数千億円にも及ぶ軍事支援費を利用してKC-46を4機購入することになっており、実質的には米国政府による「ボーイング支援」とも見なせる契約です。

更に契約文書には、イスラエルが追加で4機購入するオプションも記載されているようで、ボーイングを支援する米国政府による「カンフル剤注射」の仕組みが組み込まれている・・・ともまんぐーすは考えています。

Gantz KC-46 2.jpegもう一つの視点として、トランプ前政権が破棄した「イランとの核合意」の再構築を目指すバイデン政権は、この合意再締結に大反対のイスラエルをなだめる為、イスラエルがイラン攻撃準備のために導入を急ぐ新型空中給油機導入に便宜を図っているとの見方もでき、国際政治のドロドロな裏側の一側面とも考えられます

航空自衛隊の無人高高度偵察機RQ-4や、陸上自衛隊のオスプレイなど、日米関係の大きな枠組みの中で導入せざるを得なかった装備が日本の防衛予算を圧迫するのは「見るに忍びない」のですが、導入したからにはしっかり使うしかないので、数少ないKC-46仲間イスラエルと航空自衛隊は仲良くして、運用ノウハウを共有してほしいです

KC-46などの関連記事
「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤りだった」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「グローバルホーク日本導入の悲劇」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-22

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民間衛星の軍事利用が進む中で民間衛星を守る国際規範を [サイバーと宇宙]

ウクライナ侵略が示した民間衛星の重要性
国家間紛争時に民間衛星を守る「国際規範」を考察
今のロシアや中国を見るに、極めて困難とも思うが

Space debris2.jpg8月23日、宇宙政策を研究する米シンクタンク「Center for Space Policy and Strategy」が、ますます国家安全保障分野での重要性を高める民間衛星システムを、軍事紛争発生時に守るための「国際規範」のようなものを準備する必要性を指摘し、「特に宇宙ゴミ等の影響が、衛星の用途に関わらず急速に無差別に拡散すること等」から、民間衛星会社も関与して検討すべきだと主張するレポートを発表しました

ウクライナ侵略開始の緒戦において、ウクライナにインターネットや通信サービスを提供していたSpaceX社の「Starlink」やViasat社の衛星通信サービスに大規模妨害行為が行われた現実がありながら、例えば米宇宙軍は宇宙状況把握(space domain awareness)能力や同能力の強靭性を高めるため、西側諸国の「大きなアドバンテージだ」として米国や同盟国の民間衛星サービス利用を積極的に推進しています。

Space debris3.jpg一方でこれら宇宙アセットは官民の別を問わず、「無人アセットであり、攻撃に関する政治的敷居が低い」、「誰が攻撃したのか把握するのが困難」等の地上アセットとは異なる特徴を持つことから、サイバー攻撃と同様に民間宇宙アセットが無差別な攻撃を受けやすく、かつ影響も大きい点で、抑止を含めた概念の整理が難しい分野です

また、今の南シナ海での中国やウクライナでのロシアの動きを見ていると、「国際規範」との言葉のむなしさを感じざるを得ず、またが国際社会からの厳しい非難を浴びつつも、中国やロシアが軍民両方の衛星を危険にさらす「宇宙ゴミ」を生む衛星破壊兵器実験で強行してきた経緯を考えると、発表された「Commercial Normentum: Space Security Challenges, Commercial Actors, and Norms of Behavior」とのレポートの意義に疑問を感じる方がいても当然だと思います

Dickey Space.jpg避けて通れない宇宙アセットが直面する課題であることから、基礎的な思考の枠組み案の一つとして、全体像を把握していないながら同シンクタンクレポートの概要の概要の概要のさわり部分を、26日付米空軍協会web記事よりご紹介します。(同記事を読んでも良くわかりませんが・・・)

同レポートでは、まず過去に陸海空ドメインで、民間アセットが軍事紛争に巻き込まれて攻撃を受けた例を3カテゴリーに分けて紹介し、宇宙アセット攻撃に関する「国際規範」確立の思考枠組みとして同レポートは準備しています

陸海空ドメインで民間アセットが攻撃を受けるケース3つ
Space debris4.jpg●地上での「地雷」敷設のケース。軍民を問わず影響を与える点で、衛星攻撃兵器で生じる宇宙デブリと類似。なお国際宇宙ステーションが特別警戒対象とした2022年の宇宙デブリ681個の内、505個が露の2021年11月のASAT試験で生じたもの

●民間航空機が軍事紛争絡みで撃墜されるケース。確認できた範囲で、少なくとも6機。いずれも関連紛争では民間機の安全確保に関する「国際規範」は確立していなかった
●商船が、軍需物資を運搬したり、軍事活動を支援しているとの理由で攻撃目標となるケース

Space debris.jpgそして、宇宙での「国際規範」に考える場合、宇宙では物理的破壊だけでなく、巧妙な電子妨害、衛星へのサイバー攻撃、衛星センサー等へのエネルギー兵器(レーザー等)攻撃でも大きな影響を与えられる点を考慮することが重要で、「衛星システムへの攻撃」の定義を明らかにしておくことも重要だと指摘しています

また当然のことながら「国際規範」は、関連プレーヤーである全ての国家や団体に「受け入れられ」「行動枠組みとして機能する」ことが大前提で、そのためには最低限2つの条件、つまり軍事活動を行う官側と民間衛星企業とのやり取り情報の公開・共有、更に宇宙アセットを運用する全ての団体との公式な意思疎通ラインが確保されていることが満たされる必要があるとも議論を展開しています

そしてレポート筆者のRobin Dickey女史は、3つの「国際規範方針」候補をレポート内で議論しているようです(細部は確認していません)
Dickey Space CNAS.jpg●全ての民間衛星を保護する。軍事行動に利用されているか否かに関わらず、全てを保護し、全ての衛星システムへの攻撃を禁止する。この際、前述の「攻撃の定義」も重要な論点
●緊要な民間衛星のみを保護する。この場合、多くの民間衛星は「国際規範」上で保護される対象から外れるが、「規範」として国際的に受け入れられるハードルは低くなる
●軍事とかかわりのない民間衛星のみを保護する。他国に「軍事と関係ない衛星」について、用途や目的を明確に示して誤解を防止することが重要
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space awareness4.JPG2020年6月にCSISが、宇宙兵器を制限するための議論を促進する基礎の基礎として、「宇宙兵器の6分類」を提案するレポートを発表していますが、それと同様に、如何にその道が難しく険しかろうと、重要だと思う分野の道を切り開く地道な取り組みとしてご紹介しました

このような地道な取り組みを前にすると、「平和」と目指すにあたっての基本姿勢として、以下の言葉を思い出します。
「人間の本性における突然の革命にではなく、人間の制度の漸進的な進化に基礎を置く、もっと実際的でもっと達成可能な平和に我々の焦点を合わせよう。人間の制度の漸進的な進化がそれである」・・・。平和平和と口うるさく叫ぶのではなく、地道な取り組みを大切にして・・・

同シンクタンクのレポート紹介ページ
→ https://csps.aerospace.org/papers/commercial-normentum-space-security-challenges-commercial-actors-and-norms-behavior   
同レポート原文(33ページ)
→ https://csps.aerospace.org/sites/default/files/2022-08/Dickey_CommercialNormentum_20220819.pdf 

宇宙兵器問題への取り組み
「国防宇宙戦略を発表」→https://holylandtokyo.com/2020/06/23/629/
「提案:宇宙兵器の6分類」→https://holylandtokyo.com/2020/06/01/611/

宇宙軍が商用衛星利用を加速
「宇宙軍がまず民間衛星企業利用を考える」→https://holylandtokyo.com/2022/07/27/3454/
「第一撃は民間衛星通信会社へ」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「地上移動目標探知技術を求め」→https://holylandtokyo.com/2022/06/09/3309/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/

ロシアの宇宙兵器関連
「ウクライナの第1撃は宇宙で?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/18/2732/
「衛星破壊兵器でデブリばらまく」→https://holylandtokyo.com/2021/11/17/2435/
「ロシア衛星が謎の物体射出」→https://holylandtokyo.com/2020/07/30/584/
「4月中旬のロシア衛星破壊兵器試験を批判」→https://holylandtokyo.com/2020/04/22/732/
「怪しげなロシア衛星問題提起」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-04

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米潜水艦の最先任軍曹に初の女性 [Joint・統合参謀本部]

米潜水艦への女性乗艦は2011年に士官でスタート
戦略原潜ルイジアナの先任軍曹に海軍勤務20年の女性が
潜水艦内で女性シャワー室を盗撮する事案等問題も発生する中

Koogler.jpg8月29日付米国防省広報サイトdvids記事は、女性初の潜水艦先任軍曹(COB:Chief of the Boat)に、8月22日付で「Angela Koogler」Master Chief Information Systems Technicianが就任したと報じました。

米海軍の潜水艦に女性の乗艦が認められたのは、士官が2011年、下士官は2016年であり、2002年に米海軍に入隊したKoogler先任軍曹は、女性下士官潜水艦搭乗員の第1期として巡航ミサイル潜水艦USS Michiganに2016年5月に乗り込み潜水艦勤務を始め、戦略ミサイル原子力潜水艦USS Louisianaで潜水艦先任軍曹「COB」としての勤務を開始したということです。

USS Louisiana2.jpg同記事によれば、Koogler先任軍曹の潜水艦乗艦経験は「36か月間」と言うことで、2016年にUSS Michigan乗艦を開始後、継続して潜水艦に乗艦していたわけではなく、今回戦略原潜USS Louisianaに勤務を命ぜられる直前は、USS MichiganとLouisianaの両潜水艦を保有する「Submarine Squadron 19」で地上勤務をしていますが、計20年の海軍勤務実績から今回の女性初の任命に至ったと記事は報じています

ご本人は同記事で、母親が米空軍Wright-Patterson基地で33年間文民職員として働き、その姿を見て成長する過程で米軍人として勤務したいと思うようになり、高校卒業後すぐに米軍に入隊したかったが、高校時代にサッカーで足首を痛めて一度は断念し、大学卒業後に23歳で再びチャレンジして海軍に下士官として入隊して軍人キャリアをスタートしたとのことです

Koogler2.JPGその後2016年に女性下士官に潜水艦乗艦の道が開かれた際は、同僚からの勧めもあり、迷いなく潜水艦乗員に手を上げたとのことです。

Koogler先任軍曹は初の女性「COB」就任に当たり、「与えられた仕事を成し遂げたものは誰でも、組織の一員として一体的で融合された扱いを受けるべきである」、「我々は継続して見えないバリアーを崩し、全ての海軍兵士がその恩恵を受けるようになるべきだ」と述べ、

USS Louisiana.jpg更に今後の目標は、「米海軍に入隊した時に接した最初のCMO(所属コマンドの先任軍曹:command master chief)であったFloyd O’Neill氏であり、彼のように部隊の下士官たちが何をしたいか、何を言いたいかを理解して兵士に接し、彼らの成長を応援するような存在を目指し、更に自分を成長させるため新たな任務に挑戦していきたい」と力強く語っています

このような生い立ちと、純粋な思いで米海軍での勤務に邁進するKoogler先任軍曹の今後の活躍を、心から祈念して応援したいと思いますが、女性に潜水艦勤務の門戸が開かれた2011年以降の受け入れが、順調だったわけではありません。

Koogler3.jpg8月31日付Military.com記事によれば、2014年にはUSS Wyomingで女性士官がシャワーを浴びる様子を盗撮した水兵が逮捕されたり、2019年にはUSS Florida乗員女性兵士の名前が入った卑猥なコメント入りレイプ対象候補リストが艦内で出回ったことで艦長等が更迭される事態も発生しており、閉鎖社会である潜水艦での女性受け入れがそう単純でないことを物語っています
 
ただただ、Koogler先任軍曹の「武運長久」を願う次第です

軍での女性を考える記事
「米海軍Blue Angelsに初の女性パイロット」→https://holylandtokyo.com/2022/07/21/3484/
「沿岸警備隊司令官に女性が」→https://holylandtokyo.com/2022/04/07/3112/
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holylandtokyo.com/2022/01/07/2587/
「技術開発担当国防次官に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/
「初の女性月面着陸目指す」→https://holylandtokyo.com/2021/07/05/1935/
「黒人女性が初の海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11

女性徴兵制度がある国
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等目指し:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉業務選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

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次世代制空機エンジン開発を機体メーカー含め契約 [米空軍]

AETPエンジン開発のGE社とP&W社に加え
おなじみの機体開発企業3社もエンジン開発に参画契約
NGADとAETPコンビは技術的飛躍なので・・・

NGAD9.jpg8月22日付米空軍協会web記事は、同19日に米空軍が発表した次世代制空機NGAD用エンジンであるAETP(Adaptive Engine Transition Program)開発に関する契約に、AETPをそれぞれ開発しているGE 社(XA100エンジン)とPratt & Whitney社(XA101エンジン)に加え、競い合っているはずの機体開発3企業ボーイング、ロッキード、N-グラマンも含まれたことが話題になっていると報じています

この新エンジン開発契約は2032年までを対象とし、NGAD用プロトタイプAETPエンジン開発を約1300億円上限で契約するもので、新エンジンの「設計・分析・基礎試験・プロトタイプ試験・機体等との融合試験を通じて、新エンジンの技術的成熟や開発リスク低減」、「デジタル設計開発への転換」を狙いとしています

AETP XA-100.jpgなお、最近AETP関連で空軍長官等が発言して騒ぎとなっているのは、“F-35のエンジンを現F135からAETPに換装するのか、F135を改修して継続使用するかどうか?”に関してであり、当初から次世代制空機NGAD用に開発されていたAETPとNGADとの関係に問題が発生しているわけではなく、今回の契約はNGAD開発の状況を知るための貴重な情報としてお知らせするものです

ちなみに米国の第5世代機用エンジンは、1980年代後半から検討が開始された先端戦闘機開発(ATF)計画のなかで開発が進められ、F119とF120が試作され、F-22にはPratt & Whitney社製のF119エンジンが採用されました。そしてその後開発されたF-35には、F119を改良したF135が採用されています

AETP XA-101.jpg今回のAETPエンジンは、一世代先を行く次世代制空機用に新たに開発される新世代エンジンで、「第三の空気の流れ:third stream」等との新たな発想を取り入れていることから、まだNGAD主契約企業も決まっていない段階でのエンジン開発契約に、可能性のある全ての主契約候補企業を含めた模様です。

このあたりの背景について記事は、軍需産業連盟・先端技術研究所の上級研究員(元米空軍チーム科学者)Mark J. Lewis氏の見方を紹介し、「AETPは例えば、推力重視か航続距離重視かの2者択一の問題に対し、両方のニーズを柔軟に反映することが可能なエンジン技術に立脚しており、機体設計全体と当初から連携することでより能力を発揮できる」、「第三の空気の流れ導入により、機体内での配置を従来とは少し変える必要がある」等の点から、エンジン開発にNGAD主契約企業候補も当初から組み込まれたと推測しています

Kendall air.jpgNGADに関しては、2022年6月にKendall空軍長官が、「NGADはEMDフェーズ(engineering and manufacturing development phase)に入った」と発言し、基礎的な技術要素確認段階を終え、本格開発に向けた一歩を踏み出したことが明らかになりましたが、依然として主契約企業は競争段階にあると後に補足説明しており、まだまだ「謎」に包まれたままです

NGAD関連記事
「EMDフェーズに入った」→https://holylandtokyo.com/2022/06/03/3315/
「次期制空機NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/
「NGADの無人随伴機開発は」→https://holylandtokyo.com/2022/03/24/2938/
「NGADに発言相次ぐ」→https://holylandtokyo.com/2021/11/11/2376/
「戦闘機族ボスが少し語る」→https://holylandtokyo.com/2021/09/16/2211/
「戦闘機族ボスがNGADへの危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/05/154/
「次期制空機のデモ機を既に初飛行済」→https://holylandtokyo.com/2020/09/17/482/

F-35のエンジン問題
「空軍長官:AETP搭載を主張」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院でエンジンとODIN議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「民間監視団体が酷評」→https://holylandtokyo.com/2022/03/25/2933/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/

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