米空軍が新たなStand-off兵器開発に情報収集 [米空軍]
企業に提案依頼し、9月27日の軍事産業デイに質疑&面談
要求射程距離は非公開で、2030年頃からの調達を目途に
専門家は中射程のJASSM-ERより安価なものと推定
9月1日付米空軍協会web記事が、米空軍が2030年以降からの調達を想定した新たなスタンドオフ兵器導入を目指し、8月23日に企業に対し提案依頼文書を発刊し、9月27日にエグリン空軍基地で実施される軍需産業が集まるイベントで提案企業と議論する計画だと報じました
米空軍が求める射程距離が「非公開」となっている新スタンドオフ兵器は、SoAW(Stand-off Attack Weapon)との名称で、「一つのデザインで多様な作戦運用コンセプトに対応可能で、デジタル設計技術を活用して開発され、仕様が定まった後は複数企業がベンダーとして製造を担当する」との考え方で開発&製造が進められる構想になっています
提案依頼文書では、2025予算年度からプロトタイプ製造やデモ試験等を開始し、開発進捗状況を確認しながら2030年から33年ごろに初期調達が行われる予定と記されているようです
提案を希望する企業は、提案SoAWの大きさ、使用するセンサー、推進装置、弾頭、管制装置、飛行制御装置、データリンクとセンサー等の使用周波数帯、機動性、機体とのインターフェイス、更に実証済技術部分と今後要開発部分の区別を提案に含めることが求められ、デジタル設計とオープンアーキテクチャーであることが前提とされています
新スタンドオフ兵器開発の背景として、米空軍は対中国を念頭に、様々なWar-Gameやシミュレーションを通じて作戦運用や必要な兵器の分析を進めていますが、膨大な数の攻撃目標を強固な防空網を突破して攻撃する兵器の確保に苦慮していることがあります
スタンドオフ兵器としては、既に配備されている射程1000㎞超の対地攻撃用JASSM-ERや対艦攻撃型のLRASMがありますが、高価であるため大量の目標をスタンドオフ兵器だけで攻撃する数量確保は困難であり、米空軍はステルス機に搭載して「スタンドイン攻撃」する新たな兵器SiAW(Stand-in Attack Weapon)導入検討を5月から3社(L3 Harris, Lockheed Martin, and Northrop Grumman)と開始しているところです
このような状況下での新スタンドオフ兵器開発開始に専門家も「?」な状態で、陸海軍がスタンドオフ兵器導入や開発ばかりに注力していることや、空軍の輸送機からの長射程兵器の投下発射検討を非難して、スタンドオフとイン兵器数の適度なバランスを主張しているMark Gunzinger(ミッチェル研究所・元空軍大佐)氏も、「ミステリアスな計画だ」とコメントしています
それでもGunzinger氏は米空軍のこれまでの動きから、「SoAWは、ステルス機が多数搭載可能な、生存性の高い中射程兵器のニーズを満たすものではないか」、「米空軍は多数存在する目標を攻撃可能な手頃な価格の兵器を求めており、JASSM-ERより(射程は短くても)安価な兵器を追求しているのではないか」とSoAWについて推測しています
米空軍は9月27日の「industry day」において、SoAWに関して公開の場で質疑応答を参加企業と行って情報を産業界と共有し、更に各提案企業と個別面談も行って疑問点を可能な限り解消し、企業側が協力しやすい環境を提供したいと説明しています
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スタンドイン兵器のSiAW検討を5月から8月25日まで実施していたと思ったら、8月23日から今度はスタンドオフ兵器SoAWの検討開始です。様々な検討を行う過程での検討でしょうが、搭乗員の救難救助態勢が不十分な中、安価と言えども「スタンドイン」兵器依存度を下げなければ作戦目的達成は困難との方向でしょうか
鳴り物入りで米海兵隊が出した「スタンドイン戦力で頑張る構想」も、よく読めば、遠方攻撃部隊に敵の位置を知らせる事が主任務になりそうな偵察部隊の色が濃く、対中国における西太平洋地域の現実を突きつけられた気分です
そういえばBrown空軍参謀総長が先日インタビューで、「同盟国が我々にとってのスタンドイン戦力であり、そのような状態で米軍がスタンドオフ戦略を追求するとは言えない。我々はスタンドwithだ」との趣旨の発言をしていますが、本音だと思います
スタンドインとスタンドオフ関連の記事
「米海兵隊スタンドイン部隊準備」→https://holylandtokyo.com/2022/08/19/3546/
「米海兵隊のstand-in force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holylandtokyo.com/2020/09/11/478/
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「Stand-inとStand-offの適切バランスが不可欠」→https://holylandtokyo.com/2020/07/01/562/
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
Brown空軍参謀総長は言葉を選びつつ
「スタンドwithだ」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/
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要求射程距離は非公開で、2030年頃からの調達を目途に
専門家は中射程のJASSM-ERより安価なものと推定
9月1日付米空軍協会web記事が、米空軍が2030年以降からの調達を想定した新たなスタンドオフ兵器導入を目指し、8月23日に企業に対し提案依頼文書を発刊し、9月27日にエグリン空軍基地で実施される軍需産業が集まるイベントで提案企業と議論する計画だと報じました
米空軍が求める射程距離が「非公開」となっている新スタンドオフ兵器は、SoAW(Stand-off Attack Weapon)との名称で、「一つのデザインで多様な作戦運用コンセプトに対応可能で、デジタル設計技術を活用して開発され、仕様が定まった後は複数企業がベンダーとして製造を担当する」との考え方で開発&製造が進められる構想になっています
提案依頼文書では、2025予算年度からプロトタイプ製造やデモ試験等を開始し、開発進捗状況を確認しながら2030年から33年ごろに初期調達が行われる予定と記されているようです
提案を希望する企業は、提案SoAWの大きさ、使用するセンサー、推進装置、弾頭、管制装置、飛行制御装置、データリンクとセンサー等の使用周波数帯、機動性、機体とのインターフェイス、更に実証済技術部分と今後要開発部分の区別を提案に含めることが求められ、デジタル設計とオープンアーキテクチャーであることが前提とされています
新スタンドオフ兵器開発の背景として、米空軍は対中国を念頭に、様々なWar-Gameやシミュレーションを通じて作戦運用や必要な兵器の分析を進めていますが、膨大な数の攻撃目標を強固な防空網を突破して攻撃する兵器の確保に苦慮していることがあります
スタンドオフ兵器としては、既に配備されている射程1000㎞超の対地攻撃用JASSM-ERや対艦攻撃型のLRASMがありますが、高価であるため大量の目標をスタンドオフ兵器だけで攻撃する数量確保は困難であり、米空軍はステルス機に搭載して「スタンドイン攻撃」する新たな兵器SiAW(Stand-in Attack Weapon)導入検討を5月から3社(L3 Harris, Lockheed Martin, and Northrop Grumman)と開始しているところです
このような状況下での新スタンドオフ兵器開発開始に専門家も「?」な状態で、陸海軍がスタンドオフ兵器導入や開発ばかりに注力していることや、空軍の輸送機からの長射程兵器の投下発射検討を非難して、スタンドオフとイン兵器数の適度なバランスを主張しているMark Gunzinger(ミッチェル研究所・元空軍大佐)氏も、「ミステリアスな計画だ」とコメントしています
それでもGunzinger氏は米空軍のこれまでの動きから、「SoAWは、ステルス機が多数搭載可能な、生存性の高い中射程兵器のニーズを満たすものではないか」、「米空軍は多数存在する目標を攻撃可能な手頃な価格の兵器を求めており、JASSM-ERより(射程は短くても)安価な兵器を追求しているのではないか」とSoAWについて推測しています
米空軍は9月27日の「industry day」において、SoAWに関して公開の場で質疑応答を参加企業と行って情報を産業界と共有し、更に各提案企業と個別面談も行って疑問点を可能な限り解消し、企業側が協力しやすい環境を提供したいと説明しています
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スタンドイン兵器のSiAW検討を5月から8月25日まで実施していたと思ったら、8月23日から今度はスタンドオフ兵器SoAWの検討開始です。様々な検討を行う過程での検討でしょうが、搭乗員の救難救助態勢が不十分な中、安価と言えども「スタンドイン」兵器依存度を下げなければ作戦目的達成は困難との方向でしょうか
鳴り物入りで米海兵隊が出した「スタンドイン戦力で頑張る構想」も、よく読めば、遠方攻撃部隊に敵の位置を知らせる事が主任務になりそうな偵察部隊の色が濃く、対中国における西太平洋地域の現実を突きつけられた気分です
そういえばBrown空軍参謀総長が先日インタビューで、「同盟国が我々にとってのスタンドイン戦力であり、そのような状態で米軍がスタンドオフ戦略を追求するとは言えない。我々はスタンドwithだ」との趣旨の発言をしていますが、本音だと思います
スタンドインとスタンドオフ関連の記事
「米海兵隊スタンドイン部隊準備」→https://holylandtokyo.com/2022/08/19/3546/
「米海兵隊のstand-in force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holylandtokyo.com/2020/09/11/478/
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「Stand-inとStand-offの適切バランスが不可欠」→https://holylandtokyo.com/2020/07/01/562/
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
Brown空軍参謀総長は言葉を選びつつ
「スタンドwithだ」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/
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