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国家防衛戦略:対テロから中露対処へ [マティス長官]

公表部分は11ページ足らずですが・・・

NDS.jpg19日、マティス国防長官が国家防衛戦略(NDS:National Defense Strategy)を発表しました。
12月19日に発表された国家安全保障戦略NSSを受け、NSSを遂行するための米国防省としての戦略を語るのがこのNDSであり、統合参謀本部議長がNDSを受け、軍事面での展開を示すのがNMS(国家軍事戦略)で、NMSは今年後半に公表が予期されています

非公開部分を含めて約50ページで全体の分量が大幅に縮小された模様で、少なくとも公開部分には具体的な数値目標はなく、全体としても「まず戦略」の姿勢で作成されたようですが、強制削減法案下で政府機関閉鎖が話題の米国で、具合的な姿を数字で示せない現実が背景にあるとも言われています

「対テロから中露対処へ」、「アジア、欧州、中東を重視」「同盟国等の育成、破壊力強化、国防省の業務要領改革を重視」等々が打ち出されているようですが、背景には「過去の教訓を踏まえ、厳しい選択を行いつつ、生存のために必要な投資を行う」と国防長官が表現する予算制約が重い縛りのNDSとなっているようです

全文を見てはいませんが、コンパクトにまとまっているDefense-News記事でNDSの概要をご紹介します

19日付Defense-News記事によれば
NDSM.jpg●19日にJohns Hopkins大学でマティス長官はNDSの発表会見を行い、 世界における米国の軍事的位置づけを「曇りのない目で評価したものだ」とNDSを表現した。
●そして、「過去の教訓を踏まえ、米国が生存のためになしうることを、厳しい選択をして絞り込むことをもとめる文書である」と語った

●NDS発表に先立ち、Elbridge Colby戦略担当国防次官補代理は、「中心的な国防省の課題は、中露に対しての軍事的優位性が失われつつあること」、「ただし対立のための戦略ではなく、現実を認識し備えるための戦略だ」と語っている
●また「決して対テロから離れるわけではなく、対テロは長いスパンで対応すべき課題である。また費用対効果が重要だとの共通認識が必要だ」と説明した

●マティス長官が打ち出したNDSは、3つの重視事項「同盟国等の育成、破壊力強化、国防省の業務要領改革を重視」を打ち出し、鍵となる地域を「アジア、欧州、中東」の3つと打ち出している。
●当然Colby次官補代理は、アフリカや南米を見捨てるわけではないと事前説明していたが、現実として最も必要としている地域に資源を重点投入することになると語っている。

最善でも暫定予算CR、最悪は政府機関閉鎖の危機の中
NDS3.jpgNDS発表の同日、議会は政府機関閉鎖を回避するため、土壇場の議論が行われていた。それでも、期待できる最善対応でも昨年ベースの暫定予算CR確保で、最悪は政府機関閉鎖の危機である
●こんな予算状況の中でのNDSについてCSISのTodd Harrison研究員は、「資源の裏付がない戦略など実行不可能な戦略だ」と切り捨て、「多くの文字を並べ、全く具体的数字を含まず、何がどれだけできるのかも不明確で、コストにも触れない、疑問が疑問を呼ぶものだ」と厳しく評価している

●一方で同盟国等への要求は増しており、NDSは「共通の防衛責任をシェアするため資源をプールする」よう求めている。
●最近国防省幹部が、同盟国に対して装備品を迅速に提供できるようにとか、優先順位をつけて迅速な事務手続きで米国製品を輸出し、同盟国等の早期軍備近代化に加速しようとも合致している

技術革新や装備導入の迅速化
NDS2.jpg国防省の業務要領改革や、最新技術を前線兵士に迅速に提供する取り組みもNDSに含まれている。
●このため国防長官は、従来のように飛躍的画期的な新装備を長時間かけ高価格で許容する仕組みから脱却し、優先順位をつけ迅速に提供し、頻繁で継続的に能力向上で最新技術を取り込む達への変革を掲げている

●装備品開発の設計段階で、価格と性能のトレードオフを吟味し、前線と情報機関の最新情報を調達過程に生かし、新たな企業参入を歓迎し、プロトタイプや実験で要求性能を洗練し、費用対効果に優れた市販品を活用することも追及するとしている
●また国際的な協力関係を装備開発や投資に生かし、米国製ばかりを売り込むと不満を持っている関係国も協力関係に招き入れる。
技術的な焦点としては、「抗たん性残存性がある強固なネットワーク」、「中央集中型のインフラや弾薬保管ではなく、小型分散強固な兵站システム」、「人工知能への投資」などがうたわれている
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NDS3.jpg非公開部分に何が書かれているのか気になりますが、恐らく具体的な装備数や数値目標ではなく、日本にはこれを要求するとか、この任務は日本に圧力をかけて引き受けさせるとか、外交上の機微な情報も書かれているような気がします

予算的な見通しが全く立たない(夢が描けない)中、米国の負担を各国に振りまくことが唯一の具体的な目標設定になりそうですから・・・

NDSの原文
https://news.usni.org/2018/01/19/2018-department-defense-national-defense-strategy

NDSの上位戦略となるNSS
「国家安全保障政策を概観」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23-1  

NDSの下位戦略となる
「リーク版NPR」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13 
「露が長射程核魚雷」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13-1

NMS関連記事
「見込み2016年NMS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06
「2015年版の国家軍事戦略発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-02
(何と2011年以来4年ぶりの発表)



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