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米空軍が電動航空機Aliaの初号機で試験開始 [米空軍]

BETA Technologies社の「Alia」の通常離着陸型で
120㎞離れたTyndall基地との往復で各種確認開始
米国防省初の充電設備をフロリダのDuke飛行場に

BETA Alia.jpg11月16日付米空軍協会web記事が、米空軍が10月26日にBETA Technologies社からフロリダ州Duke飛行場で受領し、11月7日から同飛行場で飛行試験を開始している同社製電動航空機「Alia」通常離着陸型の様子を報じています(なお「Alia」には、垂直離着陸可能なティルローター形式の型もありますが、空軍は通常型を契約。末尾のYouTube映像参照)

11月7日の空軍初の飛行試験は、Duke飛行場と約120㎞(68nm)離れたTyndall空軍基地間で行われ、Dukeを離陸後、Tyndalに着陸して約1時間の充電を受け、Tyndalを離陸して再びDukeに戻る形で実施されたました。既に各所で同社デモンストレーション飛行を行っている機体なので、空軍機のチェイス無しで初飛行が実施されたとのことです

BETA Alia2.jpg初飛行後は、日に2回のペースで試験飛行を繰り返しており、様々な飛行諸元や飛行距離でのバッテリーの消費状況や飛行後の機材状況確認のほか、「Alia」のIR放射による敵からの被発見率低下度合いを見極めるため、機体の赤外線放射状況測定も行われているとのことです

BETA Technologies社の「Alia」は、幅約50フィート(15m)、航続距離250マイル(450㎞)、最大速度138ノット(時速250㎞)でペイロードは1000ポンド(約450㎏)、騒音レベルは通常ヘリの10%程度レベルとされていますが、以下で説明する「Agility Prime」計画に先立ち空軍研究所が2019年12月に機体購入契約し、機体の前に3基のシュミレータ(うち1台は移動可能型)と2機の充電設備を入手済で、10月に米国防省初の充電設備としてDuke飛行場に設置され話題となったところです

BETA Alia4.jpg米空軍は、空軍研究所AFWERXチームの「Agility Prime」計画に基づき、2020年2月から日進月歩の民生電動ヘリ&航空機を活用するプロジェクトを本格的に立ち上げ、今年9月には「電動ヘリeVTOL」として、トヨタ自動車も600億円出資しているJoby Aviation社から初号機を入手し、加州エドワーズ空軍基地でホバリング試験を開始しています。

また「無人機」開発の教訓から、民間主導の競争に任せすぎると価格競争になり、結果として中国製部品や中国企業がサプライチェーンに大きく絡んで米国防省が採用できなくなる問題再発を防ぐため、民間企業の競争や柔軟な発想を妨げない「ほどほど」の米国防省による関与で、米国内の電動ヘリ&航空機産業を成長させつつ、米国内サプライチェーンも育成する姿勢で取り組んでいるようです。

BETA Alia3.jpg更にこの分野は技術進歩が著しいことから、従来の国防省開発&調達プロセスに沿って進めていると時間がかかりすぎ、装備導入時点で「陳腐化」している可能性が高いことから、調達プロセス改革の先駆者となることも狙って様々な思考的取り組みも「Agility Prime」計画では行っているようで
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BETA Technologies社の「Alia」説明映像(4分半)


電動ヘリ&航空機の用途としては、従来型ヘリでは危険な特殊部隊員の侵入・帰還輸送や敵領域での救難救助、静粛性を活用した偵察、最前線の分散運用基地での使用、広大な演習や試験場での移動用など、66項目の将来想定任務がアイディアとして米空軍プロジェクトチーム内で検討されているとのことです。

電気自動車と同じで、部品点数が少なく構造がシンプルで、整備作業も単純化が予想されていますが、まずは米空軍内に「電動ヘリ&航空機」の特性を知ってもらうことから始まっているようです

空軍研究所AFWERXチームの「Agility Prime」計画
「Joby社電動ヘリ初号機を受領し本格試験開始」→https://holylandtokyo.com/2023/10/05/5076/
「米空軍が電動ヘリeVTOL導入検討に始動」→https://holylandtokyo.com/2022/06/29/3370/
「電動ヘリeVTOLでACE構想推進へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/13/105/

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初期CCAに空中受油能力搭載の可能性大 [米空軍]

試験運用部隊を立ち上げ細部を煮詰めて行く
空中給油受ける能力も(有力)オプション
連携相手(F/B/SOF毎)に段階的に導入

Lawhead CCA.jpg11月15日、米空軍省でCCA導入も担当のThomas J. Lawhead次官補代理がミッチェル研究所イベントに登壇し、今後6年間で約9000億円(未成立の2024年度予算では約110億円)の予算構想で進む無人ウイングマンCCA(Collaborative Combat Aircraft)計画について、予算成立後まず試験運用部隊(experimental operations unit)を立ち上げ、運用構想を具体的に煮詰めることから始めると語りました

数日前の13日には、Kendall空軍長官がCCAについて「コストはF-35価格の1/4~1/3を想定」と語り、最新米空軍F-35価格$75 million(約112億円)からすると30-40億円レベルを示唆したようですが、Lawhead次官補代理は、CCAが連携する相手(戦闘機か、爆撃機か、特殊作戦支援かなど)により搭載装備や能力が異なる可能性があり、様々な選択肢が今後検討&精査され、用途ごとにCCAが段階的に導入されるイメージを示唆しました

15日付米空軍協会web記事によれば同次官補代理は
CCA NGAD4.jpg●まだ暫定予算段階で最終承認が得られていない2024年度予算(承認に2か月程度必要か)には、米空軍として12個の新規事業を盛り込んでおり、CCAもその一つだが、予算の成立が本格検討には不可欠である

●連携相手がFかBかSOFかにより、搭載センサーや通信装置やnon-kinetic効果兵器等の選択が異なり、まずは試験運用部隊(experimental operations unit)を本格的に立ち上げ、CCAの任務をどうするかに関する現検討の精度を高めていく
●CCA価格がF-35並みに高騰するようなことがあれば、CCAではなくF-35を購入すべきであり、要求性能とそのコストから費用対効果をよく精査して、連携相手や用途毎に段階的CCA導入機数増を考えている(CCAs as coming in various “increments” or “tranches”)

XQ-58A 4.jpg●立ち上げる試験運用部隊では、まず滑走路に依存するかどうか(ランチャー発進か短距離滑走路離陸かの検討?)や、どんな任務を担うか、どんな搭載品を乗せるかをまず絞り込む必要があろう。更に戦闘機部隊の中にCCAを配属するかCCA独立部隊を編制するかの検討に資するデータ見積もりも行うことになろう
●様々な状況を想定した検討の中では、航続距離は現在の戦闘機程度もしくは戦闘機より少し長いものを追求することになりそうだ。将来の戦闘環境を考えると空中給油受油能力は極めて重要で、初期のCCAにも受油能力を求める可能性が高い。
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Lawhead CCA2.jpg未だに理解できません。航続距離が戦闘機より少し長い程度の無人ウイングマン機は、用途別にコストを見据えつつ段階的にしても、どこに展開して、誰が維持整備を担当して運用可能になるのでしょうか? 最も重要なこの点を曖昧にしたまま、2020年代後半にCCAを実現するつもりなのでしょうか?

有人機である第5世代機のF-35でさえ対中国の展開先確保(場所と生存性確保の両面で)が難しい中、どうするつもりなんでしょう? その手掛かりが得られるかとチマチマと取り上げていますが、全く理解できません

CCA関連の記事
「あと6年で実用化する試験準備」→https://holylandtokyo.com/2023/11/08/5153/
「AIアルゴリズム集大成試験」→https://holylandtokyo.com/2023/08/08/4922/
「2020年代後半導入へ」→ https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「長官:NGAD 200機、CCA 1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
「関連技術を23年から本格開発へ」→ https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/

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B-21初飛行から観察されたこと12個 [米空軍]

初飛行で撮影された映像で専門家が分析
専門的内容で理解不十分もとりあえずご紹介
ご興味のある方は原文でご確認を

B-21 FirstFlightFront.jpg11月22日付米空軍協会webサイトが、同協会月刊誌「Air&Space Force Magazine」のJohn A. Tirpak編集長まとめによる「B-21爆撃機初飛行から学んだ12点」との記事を掲載しましたので、「概要の概要」をご紹介したいと思います。ただ、機体形状や装備に関する極めて専門的な内容もあり、まんぐーすの理解範囲を超えている部分は省略&推定していますので、ご興味のある方は原文をご確認ください

米空軍が初飛行に関する公式な画像や映像を現時点で公開していないため、あくまで「一般マニア」が撮影してネット上に出回っている映像や画像から分析した記事ですが、ご参考にどうぞ。また、関連する機体写真を何枚かご紹介していますが、「B-21 First Flight」でググって頂くと、大量に玉石混交でネット上に流布していますので、ご興味のある方はそちらもご覧ください

1 機体形状全般から
B-21 FirstFlightBELOW.jpg●B-2爆撃機は、地形に沿った低高度飛行も可能にするため「のこぎり型機体形状」に途中で機体形状を変更し、再設計等で数千億円と数年の追加を必要としたが、B-21は単純な「W字形状」で、低高度飛行を想定せず高高度運用を前提としていると考えられる
●B-2は夜間運用を前提とした「暗いグレー色」塗装だったが、B-21は「明るいグレー色」塗装であり昼間運用を想定していると考えられる

2 ニックネーム
●B-2は20機全ての機体に「Spirit of New York」など州の名前を付与していたが、B-21初号機は機首車輪ドアに「Cerberus」とのギリシャ神話の「地獄の番犬」の名が記されており、2番機以降の名称が注目される

3 機体の大きさ
B-21 FirstFlightOr.jpg●初飛行でチェイスしていたF-16戦闘機の大きさと比較して測定したところ、空軍が説明してきたようにB-2より少し小さく、兵器搭載量もB-2より少ない模様だが、従来の専門家推定よりは少し大きく「翼幅140フィート(B-2は172)」「全長55フィート(B-2は69)」程度と推定される

4 ジェット噴射口
●B-2と似ているが、尾部より少し「Set Back」している。また「黒っぽいパネルによる熱放射削減措置:darkened panels indicate some kind of thermal reduction treatment」が確認できる

B-21 FirstFlightB-2.jpg5 エンジンへの補助空気取り入れ口
●地上滑走時にエンジンへの空気取り入れを補完する三角形の扉が開く「補助取入れ口」が2個機体左右に確認できるが、エンジンを4基搭載しているB-2には4個確認できることから、B-21の搭載エンジン数は2基と考えられる

6 兵器搭載庫
B-21 FirstFlightWEPBy2.jpg●胴体下部の写真から、エンジン整備時に使用すると考えられる扉2つと、兵器搭載庫と考えられる扉が中央のメイン扉1個と左右の小型の扉2つの計3つ確認できる
●これまでの米空軍発表によれば、少なくともB-21には3種類の兵器(B61-12 重量投下型核爆弾、通常型Stand-in Attack Weapon (SiAW)、核兵器搭載型AGM-181 Long-Range Stand-Off (LRSO) Missile)が搭載されるが、2つの小型扉の兵器庫は、扉が迅速に開閉可能なタイプで、敵防空網を制圧するSiAWが搭載されると推定される

7 ステルス機体の表面
●機体の上面はガラスのような滑らかな機体表面仕様となっているが、下部面はB-2爆撃機のように各構成部位のつなぎ目がテープ・パテ・コーティング等の「seam-sealing techniques」で処置されている。この手法は「技術というより芸術」とも表現される職人技であるが、B-2では非常に維持整備に時間と労力が必要で問題となっている点でもある

8 操舵翼
●B-2と同じく、8つの操縦翼面が確認できる

9 翼内の燃料タンク
●翼の膨らみ具合から、翼端まで相当程度の厚みのある燃料タンクが収納されていると推定できる

10 レーダーを搭載しているか?
B-21 FirstFlightBelUP.jpg●B-2爆撃機は、機体先端部分に搭載されているレーダーを維持整備する際に取り外し可能なパネルが機種部分に確認できたが、B-21にはそれらしいものが確認できない。最近のレーダーは信頼性が向上して維持整備工数も削減されていることから、機体の内側から搭載レーダーにアクセスして整備等を行う構造かもしれない
●一方で、米空軍は「family of systems」での運用を将来コンセプトとしていることから、B-21はレーダーを搭載しておらず、外部からセンサー情報をネットワーク経由で入手する選択をした可能性もある

11と12 レーダー反射装置装着と試験用装置
B-21 Raider1.jpeg●B-21初飛行や今後の試験飛行を通じ、敵国のスパイがB-21のステルス性能(RCS:電波反射率)を測定する可能性があることから、また他機との衝突回避のため、機体のレーダー反射を意図的に増幅する装置が機体に複数装着されて初飛行を行っている
●初飛行時には、飛行速度を計測するための装置を、機体からワイヤーでけん引して飛行していた
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今後も様々な分析が専門家から出ると思いますが、その一つとして提供いたします。繰り返しになりますが、機体形状や装備に関する極めて専門的な内容もあり、まんぐーすの理解範囲を超えている部分は省略&推定していますので、ご注意ください

B-21関連記事
「11月10日早朝の初飛行」→https://holylandtokyo.com/2023/11/13/5238/
「Taxi Tests開始」→https://holylandtokyo.com/2023/10/30/5180/
「エンジン稼働試験開始&屋外写真」→https://holylandtokyo.com/2023/09/15/5041/
「最近power on試験実施」→https://holylandtokyo.com/2023/08/03/4911/
「豪州も購入検討した」→https://holylandtokyo.com/2023/05/15/4588/
「B-21導入で米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「初披露のメディア扱い」→https://holylandtokyo.com/2022/12/14/4027/
「映像:B-21初披露式典」→https://holylandtokyo.com/2022/12/05/4015/
「10の視点で:NG社事前リリース」→https://holylandtokyo.com/2022/12/01/4004/
「12月2日に初披露」→https://holylandtokyo.com/2022/10/24/3796

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