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専門家が新米空軍トップに迫る課題を語る [米空軍]

Willson前長官、Carlile元司令官、Todd Harrison氏(CSIS)
そして美人のMackenzie Eaglen女史(AEI)などの声をご紹介

Brown4.jpg11日付Defense-Newsが、14日の米空軍協会航空宇宙サイバー会議で、初めて大々的に公の場で所信を語ることになる8月6日就任のCharles Brown空軍参謀総長の人柄と、その前に立ちはだかる課題を、信頼できる専門家へのインタビューから紹介しています

まんぐーすが「信頼のおける専門家」と申し上げたのは、米空軍士官学校卒業生として初めて空軍長官となったWillson前長官(女性)と、Brown大将の上司などで30年以上の付き合いがあるCarlile元大将(太平洋軍司令官やACC司令官経験者)、そしてシンクタンクからは米軍予算の専門家Todd Harrison(CSIS)と日本でもおなじみAEIのMackenzie Eaglen女史(美人!)の4人です

Brown.jpg黒人への差別が厳然として存在する米国社会、そしてその縮図でもある米空軍の中で、地道に実績を積み上げて来たBrown大将の人柄について異論をはさむ人はなくWillson前長官は「その広く深い経験に裏付けられた思慮深さ」と「決して会議で最初に発言する人ではないが、彼が発言すると皆が注目し、尊敬されているのがすぐわかる」と表現しています

またCarlile元大将は、Brown大将が「静かな巨人」「戦略的思考家」「見たことがない大きな名刺ホルダーを持つ人物」で、同様に「彼が話始めると、皆が注目して話に耳を傾ける人物」と表現し、また「彼が何か支援を願い出るときは、本当にそれが必要な時」だと信頼感を語っています

そんな実直で実力を備えたBrown大将ですが、本日は上記4名の専門家の声から、「老朽装備早期退役に対する議会調整」、「宇宙軍への支援」、「核抑止関連予算の別枠化」、「他軍種との遠方攻撃や指揮統制近代化を巡る争い」の視点で、同大将の前に立ちはだかる課題をご紹介いたします

11日付Defense-News記事によれば
Harrison.jpg厳しい予算見通しについてTodd Harrison氏は、「Goldfein前参謀総長時代には、まだわずかでも予算の伸びに対する期待があり、飛行隊数を現状の312から386個に2030年までに増強すべきと打ち出して米議会に危機感を訴える作戦に出ていたが・・・」と述べ
「今は386個飛行隊など可能性ゼロである。そんな夢物語は過去の話だ」と切り捨て、「成長を語る余裕などない。トレードオフの時代だ」と述べ、「今の米空軍は今の予算枠の中でどのように資源配分するかを考えているだろう」と状況を説明した

このような情勢を受けWillson前長官は、「Brown大将の課題は米空軍内よりもワシントンDCにあり、国防長官や空軍長官や統合参謀本部のメンバーと連携し、最も難しい米議会対応にあたる必要がある」と述べ、米空軍が何度も議会に拒否されてきた「旧式アセットの早期退役」問題が重要と語った
Wilson2.jpgWillson前長官は、A-10、U-2、RQ-4を早期退役させようとした米空軍の動きをことごとく米議会が阻止してきたことを振り返り、選挙区の基地アセットが削減されて経済面で打撃を受ける議員が中心となる反対運動は根強いが、最近のKC-135やKC-10、B-1の一部早期退役案には比較的反対が少ないことに触れつつ、何としても大きな国益を議員や選挙民に理解させ、米空軍の計画を進める必要があると語った

一方で米空軍と議会の関係についてMackenzie Eaglen女史は、「議会で米空軍は厄介な話ばかり持ち込む問題児と見られており、話の進め方が下手で議会に応援者がいない」と現状を述べつつ、「Brown大将はこれまでとは異なる風を持ち込み、利害関係者との関係改善を図る期待がもたれている」と述べた
Carlisle-FB3.jpg部下として各種予算編成を担当していたBrown大将を見ていたCarlile元大将は、困難な事業の説明を説得力あるプレゼンで進めていたBrown大将の能力に期待を寄せつつ、米議会やワシントンDC政界の魑魅魍魎の世界で、如何に立ち回るかにかかっているとコメントしている

Willson前長官は宇宙軍についても触れ、「誕生したばかりの宇宙軍は当面今のように小さく、組織的にも制度面でも強くない。私が恐れるのは、今は新生で輝いて見えるが、遠くない将来に各方面に支援を得るために奔走する可能性があることだ」と述べ、米空軍にその負担が重くのしかかる可能性を示唆した
また前長官はBroun参謀総長任期中に重くのしかかる課題として、核抑止にかかわるB-21爆撃機と新型ICBM(Ground Based Strategic Deterrent)の事業推進予算確保だと述べ、米空軍予算枠でこれを収めるには無理があることから、米海軍戦略原潜コロンビア級建造を「National Sea-Based Deterrence Fund」として別枠扱いにしたような措置が不可欠で、議会には理解者もいることから、協力を得て実現してほしいと語った

Eaglen AEI3.jpgMackenzie Eaglen女史は米空軍と他軍種の「つばぜり合い」ポイントとなっている「遠方攻撃」と「将来指揮統制」について述べ、Brown大将は前任者の方向を引き継ぐ姿勢を見せているが、「遠方攻撃」に関し、近い将来に米空軍は米陸軍などと予算争いをすることになろうと見ている
また積極的に米空軍がJADC2追求でABMSを推進し、統合の「将来指揮統制」をけん引する姿勢を見せている一方で、他軍種はこれを冷ややかに見ており、「お手並み拝見します。関与はしておいて成功したら便乗させてもらうが、失敗した時に備えて自前で検討も進めさせてもらうから」との斜に構えた姿勢だと現状を表現している。しかし現実として、米空軍が失敗したら、別の選択肢の予算はないのが現実だとも同女史は付け加えた

Brown大将は先日発表した小冊子「今変化しなければ勝てない」の中で、4軍の任務と役割の見直しを希望すると明言しており、今後これに関して国防省を巻き込んで議論の口火を切る可能性があるが、CSISのHarrison氏は「各軍種でスクラップ&ビルドを決断するためには、率直な任務分担に関する4軍間の議論が前提として不可欠だ」と述べている
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Brown2.jpg米空軍協会航空宇宙サイバー会議での「初の公の場での所信表明」(14日)をお伝えする気力が残っていないのですが、先日ご紹介したBrown大将の所信を明示した8ページの小冊子「今変化しなければ勝てない」と、本日の「Brown参謀総長を取り巻く課題」記事で、米空軍の今後を見る参考にしていただければと思います 14日の講演は小冊子の内容を改めて語るものと予想します

地元への利益誘導を図る議員の説得や、他軍種との戦いという、かつての日本の「英米と戦う前に、海軍(陸軍)と戦う」状態に暗い気分になりますが、Carlile元大将が「静かな巨人」と呼んだBrown大将に期待いたしましょう

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