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2回目のJADC2又はABMS試験演習 [米空軍]

昨年12月の1回目からコロナの影響で間隔があいたが
極めて断片的な情報ですが重要な取り組みなので

ABMS.jpg4日付C4ISRnetが、3日に実施された第2回目のJADC2(統合全ドメイン指揮統制)又はABMS(Advanced Battle Management System)試験演習を取り上げ、首謀者である米空軍Will Roper氏の「成功と失敗がバランスよく組み合わさった期待した演習になった」との言葉を引用しつつ、非公開部分が多く関係者も多くを語らない同演習の紹介を試みています

ABMS試験とか、JADC2(統合全ドメイン指揮統制)、時には「連接マラソン」とも呼ばれるこの実験演習は、米空軍の各種シミュレーションやウォーゲームの結果から、クラウド技術やAI技術を活用し、4軍の装備を有機的に連接して情報や指示を迅速に共有することが大きな戦闘能力向上につながることが判明したことを受け本格化した演習です

演習では宇宙、上空、地上、水上、水中の多様なセンサーやアセットを連接して指揮統制を迅速に行う各種検証を行っており、昨年12月の1回目は「米本土への巡航ミサイル攻撃対処」をテーマに大きな成果を上げ、その後も4か月に一度実施の方向で準備されていました

コロナの影響で4月に予定されていた第2回目の宇宙主体の実験演習は9月に延期されましたが、この期間を利用して演習内容の充実拡大を図ると米空軍省Preston Dunlap氏(Will Roper氏の部下)が5月に語っていたところです。なお第3回目については、アジア太平洋を対象に現地に出向いて12月頃実施予定とされています

ABMS2.jpg米国防省はエスパー長官をはじめとして米空軍のこの演習を強く推進しており、従来型のアセット予算を後送りし、老朽装備を早期退役させてまで「連接性向上」に投資する方向性が、米国防省2021年度予算案で打ち出されています。詳しくは末尾の過去記事でご確認ください

記事によれば、第2回目の本演習は北米コマンドと宇宙コマンドが中心となって準備と訓練をが行われましたが、アセットは沿岸警備隊を含む全米軍から参加し、F-16、MQ-9、駆逐艦、沿岸警備艇、陸軍の榴弾砲などなど伝統的アセットから、ロボット犬や5G通信タワーや巡航ミサイル探知センサータワーなどが、約1500名の米軍兵士のほか、60もの企業チームにより運用されたようです

宇宙軍をメインにとの事前情報でしたが、関係者のガードは固く、同演習取材ツアーに参加した記者による4日付C4ISRnet記事からは「宇宙軍がメイン」な様子がよくわかりませんが、今後の米軍の戦い方を左右する実験演習ですので、断片的な記事の概要をつまみ食いしておきます

4日付C4ISRnet記事によれば同演習は
ABMS3.JPG仮想敵国が米国に対して敵対的な行動をはじめ、最初はサイバー攻撃を、次に宇宙アセットへの敵対行動、そして米本土への巡航ミサイル攻撃にまでエスカレートするとのシナリオで演習は実施された
米本土に対する巡航ミサイル攻撃は、ヴァーチャル空間上の飛来ミサイル情報と共に、ニューメキシコ州ホワイトサンズ演習場で実際に6発のBQM-167無人標的機によって模擬された

理想的には、各軍種の様々な現有センサーや、Anduril Industries社が試験的に投入した巡航ミサイル探知センサータワーなどからの情報をネットワーク空間で融合し、その位置や脅威の度合いを全ての演習参加者がリアルタイムで共有し、脅威度を基に人工知能AIが即座に判断し提示した対処オプションの中から、北米コマンド司令官が最終判断を下して指示をABMS上で即座に伝達することが期待されている
これまでの司令部活動では、様々な情報をスタッフが各軍種のバラバラな情報ネットワークや電話から入手し、指揮官用のデータベースに入力しなおし、時にはパワポスライドにまとめて意思決定をサポートする・・・等の非常に時間のかかる幕僚活動で指揮統制を支援していた

ABMS4.JPG2回目の実験演習終了後、本演習の発案者で推進者である米空軍のWill Roper氏は、「成功と失敗がバランスよく発現した期待通りの演習だった」と振り返り、様々なアイディアを積極的に試す場としての本演習の意義を再度強調した
例えばRoper氏は、模擬巡航ミサイルを陸軍のM109榴弾砲から発射した「高密度のhigh-velocity projectile」または「“smart” bullet」によって撃墜できたことを大きな成果と紹介し、安価な迎撃体への道を開いたと紹介した

また様々な軍種や組織のネットワーク情報処理に関し、情報の融合処理や伝達や前線への配信、AI支援でオプション提示法を検討する「deviceONE」「OmniaONE」「FuseONE」「SmartONE」「CommandONE」「CloudONE」などのプロジェクトに精力的に取りくみ、改良が進められている点もRoper氏は紹介した
一方でRoper氏は多様なネットワーク連接について、通信プロトコルや周波数帯などの相違による課題が残っており、例えば秘密情報を扱うSIPR(ecret Internet Protocol Router Network)に他のネットワーク情報を取り込むことへの挑戦が続いていると表現している

ABMS5.jpg様々なアセットとの連接に関しても単純には事は進んでおらず、匿名の北米コマンド関係者は、演習の数日前から連接の予行練習を開始したがなかなかうまくいかず、部隊の通信技術者や企業関係者と悪戦苦闘しながら演習当日を迎えた様子などを語ってくれた

それでも演習部隊の指揮官として米本土の防御にあたったGlen VanHerck北米コマンド司令官は、人工知能AIの能力に感銘を受け、巡航ミサイルなど対処に時間的余裕のない状況におけるAIによる対処案提示が有効だと述べている
人口知能の活用についてRoper氏は、「人間が人工知能などに対し懐疑的であることは大切だと思う。一方で今回の試験演習を経て私は懐疑的でなくなったと申し上げられる」と語った
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12月に予定の3回目は、アジア太平洋を対象とし、実際にハワイのPACOM司令部が主な舞台になりそうな事前情報で、同盟国の参加も示唆されたいたように思います

豪州やシンガポールがまず手始めに・・・との推測ですが、日本も早く絡めるようになると良いですね

この記事の雰囲気からも感じていただけるように、12月の第1回目の同演習の時と比較しても、中国やロシアの対抗措置を警戒した米軍の情報管理は急速に厳しくなっています

全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMSとJADC2関連
「今後の統合連接C2演習は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-08-1
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「米空軍の夢をCSBAが応援!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「空軍資源再配分の焦点は連接性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-08
「マルチドメイン指揮統制MDC2に必要なのは?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24

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