米陸軍の将来C2「Project Convergence」5つの教訓 [Joint・統合参謀本部]
国防省&統合レベルのJADC2実現に
海は「Project Overmatch」、空は「ABMS」
そして陸は「Project Convergence」
12月2日、米国防省が目指す次世代指揮統制JADC2(Joint All-Domain Command and Control)の一環として、米陸軍が取り組む「Project Convergence」の状況について担当陸軍准将が講演し、2021年に実施した各種実験演習を通じて得た「5つの教訓」について語りました
米国防省が目指す次世代指揮統制JADC2は単純化すると、全ドメイン全軍種のセンサーデータや部隊状況を強靭なネットワークで迅速に共有&融合し、人工知能AIで処理して作戦運用&意思決定を支援し、中国との本格紛争で少しでも優位に立とうとの構想です
米空軍がその戦い方から先陣を切って2018年頃から「ABMS:先進戦闘管理システム」構想を打ち出し突っ走って国防省や統合のJADC2を引っ張り、2020年頃から海も「Project Overmatch」構想を負けじと打ち出し、陸も「Project Convergence」との名の下にJADC2の流れに乗ろうとしているところです
ABMSやJADC2をけん引していた米空軍省のRoper次官補が政権交代で退任して沈滞ムードでしたが、新政権のHicks国防副長官が6月に、各メジャーコマンドに施策促進チームを派遣して演習訓練を同構想に沿って支援し、教訓を束ねて全米軍にフィードバックするAIDAイニシアチブ(Artificial Intelligence and Data Acceleration Initiative)開始を発表しましたが、すっかり報道も少なくなり、今は何がどうなっているのかよくわかりません。
そんな中での米陸軍の動きですので、極めて断片的ながら、12月8日付Defense-News記事から「5つの教訓」をご紹介しておきます
教訓1
●「data fabric:データを共有するネットワークの意味か?」の必要性。これなしでは分散したセンサーと兵器発射システムを切れ目なくリンクさせることができない
●「Project Convergence」関係者に、必要な「data fabric」の構築をより一層加速するよう求めている
教訓2
●強靭な広帯域衛星通信確保の重要性。官民両方の衛星通信網を活用し、高性能で待機時間が少ない衛星通信を利用することの重要性を再認識した
●ただし上級指揮官レベルには、有事にこの衛星通信が無傷で継続利用可能だとみなしてほしくない。敵も我のネットワーク粉砕を狙っているから
教訓3
●「Project Convergence」における空中中継アセットの重要性。上空で20-26時間連続在空する航空アセットが提供するネットワークの拡大が、どれだけ重要かを認識した
●将来的には48時間連続哨戒する空中アセット確保を狙いたい。また、陸軍の「Future Vertical Lift team」が、発見されにくく撃墜されにくい機体を獲得できるよう支援する必要がある
教訓4
●現在は旅団レベル以下で実験演習を行っているが、師団レベルにまで能力を付与して取り組まないと、適切な作戦指揮統制を目指すのは難しい
●旅団レベル以下が作戦するには、師団レベルに配分されているセンサーなどのアセットが不可欠であり、全体を把握していない師団司令部の下で、旅団以下が能力を発揮することが難しいとの基本事項を再認識した
教訓5
●統合作戦運用での軍種間の作戦状況共有の重要性。2021年には「Project Convergence」構想演習を、全ての軍種を交えて初めて行ったが、海軍機や海兵隊F-35との演習でも、米陸軍が構築してきたCPCE(Command Post Computing Environment)を活用して作戦ピクチャーを提供することができた
●ただ今後も、CPCEに様々な陸軍作戦システムやプログラムを融合し、データやセンサー情報融合が可能な態勢を強化していかなければならない
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断片的な情報であれこれ言うのも気が引けますが、ネットワークや衛星通信や空中中継アセットの重要性を改めて認識したとか、旅団レベルではだめだとか、統合運用に向け要改善事項アリとか、知識として知っていたが、実際やってみて身に染みて分かったとのご感想です
重要な一歩ではありますが、「道遠し」の印象を持ちました
Project Convergenceについて
「陸軍と海兵隊F-35が情報共有演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-13
全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMS関連
「国防副長官がAIDA開始発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-23
「具現化第1弾でKC-46に中継ポッド」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「3回目はアジア太平洋設定で」→https://holylandtokyo.com/2020/10/05/425/
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holylandtokyo.com/2020/09/09/476/
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「今後の統合連接C2演習は」→https://holylandtokyo.com/2020/05/14/671/
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
米海軍と海兵隊は我が道なのか
「米海軍の戦術ネットワークProject Overmatch」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-15
「米空軍の課題:他軍種はABMSに懐疑的」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-12
「統合にデータフォーマットの壁」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-12
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
海は「Project Overmatch」、空は「ABMS」
そして陸は「Project Convergence」
12月2日、米国防省が目指す次世代指揮統制JADC2(Joint All-Domain Command and Control)の一環として、米陸軍が取り組む「Project Convergence」の状況について担当陸軍准将が講演し、2021年に実施した各種実験演習を通じて得た「5つの教訓」について語りました
米国防省が目指す次世代指揮統制JADC2は単純化すると、全ドメイン全軍種のセンサーデータや部隊状況を強靭なネットワークで迅速に共有&融合し、人工知能AIで処理して作戦運用&意思決定を支援し、中国との本格紛争で少しでも優位に立とうとの構想です
米空軍がその戦い方から先陣を切って2018年頃から「ABMS:先進戦闘管理システム」構想を打ち出し突っ走って国防省や統合のJADC2を引っ張り、2020年頃から海も「Project Overmatch」構想を負けじと打ち出し、陸も「Project Convergence」との名の下にJADC2の流れに乗ろうとしているところです
ABMSやJADC2をけん引していた米空軍省のRoper次官補が政権交代で退任して沈滞ムードでしたが、新政権のHicks国防副長官が6月に、各メジャーコマンドに施策促進チームを派遣して演習訓練を同構想に沿って支援し、教訓を束ねて全米軍にフィードバックするAIDAイニシアチブ(Artificial Intelligence and Data Acceleration Initiative)開始を発表しましたが、すっかり報道も少なくなり、今は何がどうなっているのかよくわかりません。
そんな中での米陸軍の動きですので、極めて断片的ながら、12月8日付Defense-News記事から「5つの教訓」をご紹介しておきます
教訓1
●「data fabric:データを共有するネットワークの意味か?」の必要性。これなしでは分散したセンサーと兵器発射システムを切れ目なくリンクさせることができない
●「Project Convergence」関係者に、必要な「data fabric」の構築をより一層加速するよう求めている
教訓2
●強靭な広帯域衛星通信確保の重要性。官民両方の衛星通信網を活用し、高性能で待機時間が少ない衛星通信を利用することの重要性を再認識した
●ただし上級指揮官レベルには、有事にこの衛星通信が無傷で継続利用可能だとみなしてほしくない。敵も我のネットワーク粉砕を狙っているから
教訓3
●「Project Convergence」における空中中継アセットの重要性。上空で20-26時間連続在空する航空アセットが提供するネットワークの拡大が、どれだけ重要かを認識した
●将来的には48時間連続哨戒する空中アセット確保を狙いたい。また、陸軍の「Future Vertical Lift team」が、発見されにくく撃墜されにくい機体を獲得できるよう支援する必要がある
教訓4
●現在は旅団レベル以下で実験演習を行っているが、師団レベルにまで能力を付与して取り組まないと、適切な作戦指揮統制を目指すのは難しい
●旅団レベル以下が作戦するには、師団レベルに配分されているセンサーなどのアセットが不可欠であり、全体を把握していない師団司令部の下で、旅団以下が能力を発揮することが難しいとの基本事項を再認識した
教訓5
●統合作戦運用での軍種間の作戦状況共有の重要性。2021年には「Project Convergence」構想演習を、全ての軍種を交えて初めて行ったが、海軍機や海兵隊F-35との演習でも、米陸軍が構築してきたCPCE(Command Post Computing Environment)を活用して作戦ピクチャーを提供することができた
●ただ今後も、CPCEに様々な陸軍作戦システムやプログラムを融合し、データやセンサー情報融合が可能な態勢を強化していかなければならない
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断片的な情報であれこれ言うのも気が引けますが、ネットワークや衛星通信や空中中継アセットの重要性を改めて認識したとか、旅団レベルではだめだとか、統合運用に向け要改善事項アリとか、知識として知っていたが、実際やってみて身に染みて分かったとのご感想です
重要な一歩ではありますが、「道遠し」の印象を持ちました
Project Convergenceについて
「陸軍と海兵隊F-35が情報共有演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-13
全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMS関連
「国防副長官がAIDA開始発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-23
「具現化第1弾でKC-46に中継ポッド」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「3回目はアジア太平洋設定で」→https://holylandtokyo.com/2020/10/05/425/
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holylandtokyo.com/2020/09/09/476/
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「今後の統合連接C2演習は」→https://holylandtokyo.com/2020/05/14/671/
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
米海軍と海兵隊は我が道なのか
「米海軍の戦術ネットワークProject Overmatch」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-15
「米空軍の課題:他軍種はABMSに懐疑的」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-12
「統合にデータフォーマットの壁」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-12
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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