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米陸軍と海兵隊F-35が情報共有演習 [Joint・統合参謀本部]

陸軍と海兵隊F-35が敵情報を双方向で共有し攻撃
sensor-to-shooter時間を20分から20秒へ短縮

Project Convergence2.jpg12日付C4ISRnetが、9月末に米陸軍がアリゾナ州Yumaで行った戦術ネットワーク演習「Project Convergence」に海兵隊F-35Bが参加し商用衛星情報を陸軍AI技術で分析した敵目標情報をF-35に伝えたり、逆にF-35センサー情報で陸軍砲兵部隊が敵を攻撃する訓練を行い成功したと報じています

先日、米陸軍と空軍の間で、2年もかけてJADC2(統合全ドメイン指揮統制)の「もっとも基礎的な」コンセプトを定める議論を開始することになったとお伝えし、同時に米空軍が陸軍や海兵隊の長射程攻撃重視を快くみておらず、両参謀総長が丸一日協議して「基礎的」検討合意にとどまった壁の厚さを邪推しましたが、陸軍は同じ地上部隊仲間の海兵隊からF-35活用を学び始めたようです

米陸軍Army Futures CommandのWillie Nelson担当部長が、「滅多に使用しない言葉だが、あえて使用したい。前例のない、画期的な試みで、皆が興奮した」と米陸軍にとってのインパクトの大きさを表現しています。ただF-35の参加は偶然から生まれたチャンスだったようで、「今頃初めてかよ・・・」との声も聞こえてきそうですが、「大きな一歩」には違いないのでご紹介しておきます

12日付C4ISRnet記事によれば
Project Convergence3.jpg統合での戦いを追求する米軍の中にあって、米陸軍にとって戦術ネットワーク演習「Project Convergence」は極めて大きな意味を持つビックプロジェクトだが、F-35を実験演習に組み込む計画までには至っていなかった
しかし9月の「Project Convergence」演習場から道路一本隔てた海兵隊航空基地にF-35Bが多数配備されていたことから、とんとん拍子に話が進み、1機の海兵隊F-35の演習参加が決定した。ただ、調整にはRyan McCarthy陸軍長官までかかわっていた模様で、「チャンスがあったので強く追及した。握手して了解を得て、離陸したF-35はすぐ演習場の上に現れたんだ」と振り返っている

Project Convergence4.jpg急に話がまとまったので、Nelson担当部長のチームは、どのようにこのチャンスを生かして、F-35を演習内の目標情報共有の流れの中でリアルタイムに活用するかを考えた
一つはF-35への目標情報提供である。商用衛星画像がワシントン州にあるTITAN地上施設で受信され、そこで米陸軍開発のAI目標情報抽出システム「Prometheus」により敵情報が生成・整理される。そのデータはYuma演習場の地上施設に衛星通信で提供され、そこからF-35にLink-16経由で提供され、敵の脅威情報として、また攻撃目標情報として活用された

逆にF-35センサーからの情報を米陸軍が活用する手法も検証された。F-35Bがとらえた潜在的脅威はLink-16を通じて陸軍に提供され、陸軍部隊は「FIRESTORM:FIRES Synchronization to Optimize Responses in Multi-domain Operations」システムを用いて最適な陸軍攻撃手段を選択、演習では「Extended Range Cannon Artillery」が指定され、見通し外攻撃を行った

Project Convergence.jpgNelson担当部長は、「我々は宇宙アセット、航空プラットフォーム、そして地上装備を結び付け、目標情報を異なったコミュニティー間でやり取りして作戦行動につなげた。素晴らしいことだ」、「事前の検討にはなかった挑戦に、各方面の専門スタッフが知恵を出して取り組んだ成果が新たなものを生み出した」と喜びを表現している
海兵隊F-35参加によって生まれたこの大きな成果は、2021年の「Project Convergence」計画に極めて大きな示唆を与え国防省全体が取り組む5世代戦闘機と他プラットフォームとの連接への取り組みを加速することにつながるだろう
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米陸軍にとって極めて重要と思われる戦術ネットワーク演習「Project Convergence」に、第5世代機であるF-35やF-22の活用が含まれていない時点で「米軍は大丈夫なのか?」、「中国やロシアと戦う前に、陸海空海兵隊が相互に戦っているのでは・・・」と心配になりますが、これを契機として前進していただきたいと思います

Project Convergence5.jpgしかし・・・中東ではどうしていたんでしょうか? A-10とかF-16とかF-15Eとか・・・。情報共有に20分かかっていたんでしょうか???

余談ですが、陸軍Army Futures CommandのWillie Nelson担当部長は、同姓同名のカントリー界の大御所とは全く関係なさそうです・・

「米陸軍と空軍がJADC2コンセプト共同開発にゆるく合意」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-06

全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMSとJADC2関連
「突然前倒し?第3回目は太平洋で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-29
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-05
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23

「今後の統合連接C2演習は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-08-1
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28

米陸軍の長射程兵器導入など
「米陸軍は長射程兵器で2023年から変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「射程1000nmの砲開発の第一関門間近」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
「射程1000nmの砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「極超音速兵器の開発状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米空軍の課題:他軍種はABMSに懐疑的」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-12
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

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