欧州米空軍がACE構想の準備状況確認演習 [米空軍]
ギリシャ空軍基地を中心に
Operation Castle Forgeとの多国間演習で
米本土からF-15E部隊を受け入れ
10月6日、細部は不明ながら欧州アフリカ米空軍は、米本土からF-15E部隊をギリシャ空軍基地に招き、欧州アフリカ米空軍のACE構想(agile combat employment)準備体制を確認するための演習「Operation Castle Forge」を実施すると発表しました
ACE構想(agile combat employment)とは、航空戦力を従来のような設備が整った大規模航空基地(敵からの攻撃に極めて脆弱)から運用するのではなく、戦力を小規模単位で分散し、設備不十分な多数の拠点から運用することで敵の対処を困難にさせつつ、味方の戦力発揮を可能にする構想で、対中国を強く意識した作戦運用構想ですが、太平洋軍だけでなく全世界の米空軍部隊が有事に備えACEに取り組んでいます
Brown空軍参謀総長は、ACE構想の約6-7割は全世界の米空軍で共通だが、地域特性により細部の必要要件が異なることから、米空軍としてACEに関するIOC(初期運用態勢)確立基準は定めず、各地域空軍司令官に任せるとの考えを示しており、Jeffrey L. Harrigian欧州アフリカ米空軍司令官も地域任務を踏まえた体制構築に取り組んでいるところです
ACEについては末尾の過去記事のように約4年前からフォローしていますが、太平洋空軍隷下ではグアムやその周辺のサイパン・テニアンなどマリアナ諸島で、日本では三沢部隊や岩国基地で、欧州ではポーランドの基地で、また中東のUAE展開先でもACE構想を念頭に置いた訓練が各種レベルで確認されています
ただ、航空戦力を設備不十分な基地で分散運用することは特に兵站支援面で困難が伴い、2020年11月に米空軍の若手士官が研究論文で示したように、「輸送力の確保」「装備や燃料弾薬の事前調達と集積」「少人数で部隊運用を支えるための多能兵士化」などなど課題が山積みで、例え部隊司令官が初期運用態勢確立を宣言しても、その実情は心もとない点が多いのが現状でしょう
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-13
それほど単純でないACE構想ですが、欧州アフリカ米空軍の取り組みをご紹介しておきます
6日付米空軍協会web記事によれば
●4日、ノースカロライナ州Seymour Johnson空軍基地所属のF-15E部隊が、欧州アフリカ米空軍主催で計画されている演習「Operation Castle Forge」に参加するため、ギリシャのLarissa空軍基地に到着した(展開規模は不明)
●Harrigian欧州アフリカ米空軍司令官は演習の狙いを、黒海地域の集団安全保障とダイナミックな多国間パートナーシップ構築強化に焦点を当てたものだと説明し、体制準備を進めてきたACE構想遂行の在り方を確認する機会でもあると語った
●同司令官は9月の米空軍協会のイベントで講演し、「最初は米空軍兵士がコンセプトに沿って動きを見せ、徐々にパートナー国も含めて同構想を温め、共に革新的な対応手法を導き出していきたい」と語っていたところである
●ただ今回の演習に参加する欧州アフリカ空軍部隊についは明らかにされておらず、またACE構想に沿った態勢確立に何が必要かについても同空軍は言及していない
●欧州アフリカ空軍報道官は、隷下のいくつかの部隊は既にACEに関するIOC確立宣言を行っているが、欧州アフリカ空軍としてIOC宣言を行っていないと述べる一方で、近い将来にHarrigian司令官が判断することになろうとコメントしている
●同司令官は9月の講演で、演習を通じて前線部隊が革新的なアプローチを確立することで、米空軍要求レベルに達することができるだろうと述べており、本演習の意義は大きい
●Brown空軍参謀総長は、過去約30年間に渡り中東を中心とした設備十分な大規模基地での作戦運用に慣れてきた米空軍兵士には、設備不十分な場所での自律的な運用経験が乏しいと認めてつつ、
●「例えば大尉レベルには、アジア太平洋地域で極めて重要な役割を担う(マリアナ諸島の)テニアン島で任務を担う知見が不足しているが、彼らの潜在能力は高く、訓練の機会を与えることが大切だ」と語っている
///////////////////////////////////
Harrigian司令官の発言には、「particularly in coordination with our partners」とか、「focused on a dynamic partnership」とか、ACE構想の体制準備や遂行には、同盟国の協力が不可欠だとの思いがあふれています
もちろん分散運用する展開先は米本土ではありませんから、新たな根拠基地となる飛行場保有国には大いにお世話になる必要があり当然ですが、日本も当然一役買う必要があろうと推測いたします
以下の過去記事もご参考に、大いに日本の役割をご想像いただければと思います
米空軍のACE構想関連
「F-22が岩国展開訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-13
「電動ヘリeVTOLで構想推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-02
「F-15EにJDAM輸送任務を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-04
「GuamでF-35とF-16が不整地離着陸」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-28
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-13
「中東派遣F-35部隊も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「三沢で訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
Operation Castle Forgeとの多国間演習で
米本土からF-15E部隊を受け入れ
10月6日、細部は不明ながら欧州アフリカ米空軍は、米本土からF-15E部隊をギリシャ空軍基地に招き、欧州アフリカ米空軍のACE構想(agile combat employment)準備体制を確認するための演習「Operation Castle Forge」を実施すると発表しました
ACE構想(agile combat employment)とは、航空戦力を従来のような設備が整った大規模航空基地(敵からの攻撃に極めて脆弱)から運用するのではなく、戦力を小規模単位で分散し、設備不十分な多数の拠点から運用することで敵の対処を困難にさせつつ、味方の戦力発揮を可能にする構想で、対中国を強く意識した作戦運用構想ですが、太平洋軍だけでなく全世界の米空軍部隊が有事に備えACEに取り組んでいます
Brown空軍参謀総長は、ACE構想の約6-7割は全世界の米空軍で共通だが、地域特性により細部の必要要件が異なることから、米空軍としてACEに関するIOC(初期運用態勢)確立基準は定めず、各地域空軍司令官に任せるとの考えを示しており、Jeffrey L. Harrigian欧州アフリカ米空軍司令官も地域任務を踏まえた体制構築に取り組んでいるところです
ACEについては末尾の過去記事のように約4年前からフォローしていますが、太平洋空軍隷下ではグアムやその周辺のサイパン・テニアンなどマリアナ諸島で、日本では三沢部隊や岩国基地で、欧州ではポーランドの基地で、また中東のUAE展開先でもACE構想を念頭に置いた訓練が各種レベルで確認されています
ただ、航空戦力を設備不十分な基地で分散運用することは特に兵站支援面で困難が伴い、2020年11月に米空軍の若手士官が研究論文で示したように、「輸送力の確保」「装備や燃料弾薬の事前調達と集積」「少人数で部隊運用を支えるための多能兵士化」などなど課題が山積みで、例え部隊司令官が初期運用態勢確立を宣言しても、その実情は心もとない点が多いのが現状でしょう
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-13
それほど単純でないACE構想ですが、欧州アフリカ米空軍の取り組みをご紹介しておきます
6日付米空軍協会web記事によれば
●4日、ノースカロライナ州Seymour Johnson空軍基地所属のF-15E部隊が、欧州アフリカ米空軍主催で計画されている演習「Operation Castle Forge」に参加するため、ギリシャのLarissa空軍基地に到着した(展開規模は不明)
●Harrigian欧州アフリカ米空軍司令官は演習の狙いを、黒海地域の集団安全保障とダイナミックな多国間パートナーシップ構築強化に焦点を当てたものだと説明し、体制準備を進めてきたACE構想遂行の在り方を確認する機会でもあると語った
●同司令官は9月の米空軍協会のイベントで講演し、「最初は米空軍兵士がコンセプトに沿って動きを見せ、徐々にパートナー国も含めて同構想を温め、共に革新的な対応手法を導き出していきたい」と語っていたところである
●ただ今回の演習に参加する欧州アフリカ空軍部隊についは明らかにされておらず、またACE構想に沿った態勢確立に何が必要かについても同空軍は言及していない
●欧州アフリカ空軍報道官は、隷下のいくつかの部隊は既にACEに関するIOC確立宣言を行っているが、欧州アフリカ空軍としてIOC宣言を行っていないと述べる一方で、近い将来にHarrigian司令官が判断することになろうとコメントしている
●同司令官は9月の講演で、演習を通じて前線部隊が革新的なアプローチを確立することで、米空軍要求レベルに達することができるだろうと述べており、本演習の意義は大きい
●Brown空軍参謀総長は、過去約30年間に渡り中東を中心とした設備十分な大規模基地での作戦運用に慣れてきた米空軍兵士には、設備不十分な場所での自律的な運用経験が乏しいと認めてつつ、
●「例えば大尉レベルには、アジア太平洋地域で極めて重要な役割を担う(マリアナ諸島の)テニアン島で任務を担う知見が不足しているが、彼らの潜在能力は高く、訓練の機会を与えることが大切だ」と語っている
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Harrigian司令官の発言には、「particularly in coordination with our partners」とか、「focused on a dynamic partnership」とか、ACE構想の体制準備や遂行には、同盟国の協力が不可欠だとの思いがあふれています
もちろん分散運用する展開先は米本土ではありませんから、新たな根拠基地となる飛行場保有国には大いにお世話になる必要があり当然ですが、日本も当然一役買う必要があろうと推測いたします
以下の過去記事もご参考に、大いに日本の役割をご想像いただければと思います
米空軍のACE構想関連
「F-22が岩国展開訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-13
「電動ヘリeVTOLで構想推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-02
「F-15EにJDAM輸送任務を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-04
「GuamでF-35とF-16が不整地離着陸」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-28
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-13
「中東派遣F-35部隊も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「三沢で訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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