米軍の「誘導工作:influence operations」の拠点完成 [サイバーと宇宙]
米陸軍の部隊ですが統合戦力として機能すると理解
海外の対象者を米国の国益に沿うように行動させる作戦
3日、南部ジョージア州の米陸軍Fort Gordon基地に、北部バージニア州から移転してきた米陸軍サイバーコマンドの新しい司令部施設が完成し、約400億円をかけた約32400平方m(縦横180m換算)の新施設では「攻撃的活動」や「誘導工作:influence operations」に重点を置くと、Stephen Fogarty米陸軍サイバーコマンド司令官(中将)がセレモニーで語りました
米陸軍の同基地内には既に「NSA Georgia支所」や米サイバーコマンド配下の「Army’s Joint Force Headquarters-Cyber」が所在していることや、同司令官は「今後はより直接的に攻撃的な任務や誘導工作関連任務を担っていくと」記者団に語り、米陸軍はここ数年でこの分野に勢力を注ぎ習熟・成熟してきたとも述べて自信を示していることから、米軍にとどまらず米国のその方面の任務を大きく担っていくものと勝手に推定しています
この種の話はガードが固く、勤務者の数や部隊の能力に関する話は一切報道に出てきていませんが、ジョージア州の米陸軍Fort Gordon基地に重要な「誘導工作」の新たな拠点ができたということをお知らせしておきます
忘れてました・・・。「誘導工作:influence operations」の定義は、RAND研究所の「Foundations of Effective Influence Operations」との研究レポートによれば、「外国の対象者が、米国の国益や目的に資する態度や行動や決定を行うように、外交、情報、軍事、経済その他の手段を巧みに組み合わせて働きかける作戦」(かなり短縮して紹介)となっています
また「誘導工作」との訳は、末尾に紹介する読売新聞・飯塚恵子さんの著書から拝借いたしました。米軍の定義は確認していませんが、そんな雰囲気の作戦だとご理解ください
4日付C4isrnet記事によれば
●同司令官は、「我々は、より進んだ活動や防御を行い、状況のモニターを行い、毎分ごとにネットワーク環境の変化を把握することができる状態になった」、「我々は、情報戦や電子戦の全ての要素の融合により焦点を当てることが可能になり、更に商用のデータや情報が全て使用可能になったことが極めて重要である」と述べ、
●更に、「今回の司令部の移転で可能になった部分もあるが、活動の柔軟性が非常に増したという面も大きい」と変化を強調した
●また、(新施設内に新たに完成した)新たなInformation Warfare Operations Centerは、かつてなかったレベルで、米陸軍部隊が接続している世界中の情報環境(information environment)をリアルタイムで把握する能力を提供することになる
●同センターはまた、伝統的な軍情報機関による商用メディア情報の提供任務も併せて担うことになる。最近陸軍サイバーコマンドは商用インテリジェンス(commercial intelligence)を最大限に活用することを追求している
●同司令官はかつて、「米陸軍サイバーコマンド」との名称を、「米陸軍Information Warfare Command」との名称に変更するだろうと述べていたが、3日記者団に、名称変更の正式なタイミングは流動的だが、手続きは進めていると説明している
●ただ同司令官は、名称の変更のあるなしにかかわらず、米陸軍サイバーコマンドの10年ビジョンに沿い、より「情報戦:information warfare」に焦点を当てるべくシャープにシフトしていく方向にあり、戦術サイバー戦、電子戦、情報戦の専門部隊の立ち上げや融合を行う計画だと説明した
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「情報戦:information warfare」と「誘導工作:influence operations」の関係や、「サイバー戦」や「電子戦」と「情報戦:information warfare」との関係を整理せずにご紹介して頭が混乱されていると思いますが、「情報戦:information warfare」が、「サイバー戦」や「電子戦」を広く包含し、「誘導工作:influence operations」は「情報戦」より大きな概念だと思います。
以下の新書の66ページ参照
ちなみに以前ご紹介した、読売新聞の飯塚恵子さんによる新書「ドキュメント誘導工作 情報操作の巧妙な罠」の48ページに、「influence operations」は米軍の中でよく使用される用語で、訳として確立されていないが、「一番しっくりくる」のが新書のタイトルでもある「誘導工作」だと紹介し、前述のRANDの定義を厳密に引用されています
また同新書は「情報戦:information warfare」との言葉について、ロシアや中国でよく使用される用語で、ロシアの軍事ドクトリンから大雑把にまとめると、「コンピュータネットワーク上の作戦や、電子戦、心理作戦、情報作戦、などを含む包括的な行動で、軍事力を使わずに政治的目的を達成する戦い」となり、「軍事力を使わず」との点が注目だと説明しています
なお同新書は、「自分の意見が、知らずに誰かに操られている。それが情報工作だ」と記しています
「ドキュメント誘導工作」を読む
→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1
関連がありそうな記事
「ハイブリッド情報戦に備えて」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-05
「NATOが選挙妨害サイバー演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13
「サイバーとISR部隊が統合して大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「ナカソネ初代司令官が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
海外の対象者を米国の国益に沿うように行動させる作戦
3日、南部ジョージア州の米陸軍Fort Gordon基地に、北部バージニア州から移転してきた米陸軍サイバーコマンドの新しい司令部施設が完成し、約400億円をかけた約32400平方m(縦横180m換算)の新施設では「攻撃的活動」や「誘導工作:influence operations」に重点を置くと、Stephen Fogarty米陸軍サイバーコマンド司令官(中将)がセレモニーで語りました
米陸軍の同基地内には既に「NSA Georgia支所」や米サイバーコマンド配下の「Army’s Joint Force Headquarters-Cyber」が所在していることや、同司令官は「今後はより直接的に攻撃的な任務や誘導工作関連任務を担っていくと」記者団に語り、米陸軍はここ数年でこの分野に勢力を注ぎ習熟・成熟してきたとも述べて自信を示していることから、米軍にとどまらず米国のその方面の任務を大きく担っていくものと勝手に推定しています
この種の話はガードが固く、勤務者の数や部隊の能力に関する話は一切報道に出てきていませんが、ジョージア州の米陸軍Fort Gordon基地に重要な「誘導工作」の新たな拠点ができたということをお知らせしておきます
忘れてました・・・。「誘導工作:influence operations」の定義は、RAND研究所の「Foundations of Effective Influence Operations」との研究レポートによれば、「外国の対象者が、米国の国益や目的に資する態度や行動や決定を行うように、外交、情報、軍事、経済その他の手段を巧みに組み合わせて働きかける作戦」(かなり短縮して紹介)となっています
また「誘導工作」との訳は、末尾に紹介する読売新聞・飯塚恵子さんの著書から拝借いたしました。米軍の定義は確認していませんが、そんな雰囲気の作戦だとご理解ください
4日付C4isrnet記事によれば
●同司令官は、「我々は、より進んだ活動や防御を行い、状況のモニターを行い、毎分ごとにネットワーク環境の変化を把握することができる状態になった」、「我々は、情報戦や電子戦の全ての要素の融合により焦点を当てることが可能になり、更に商用のデータや情報が全て使用可能になったことが極めて重要である」と述べ、
●更に、「今回の司令部の移転で可能になった部分もあるが、活動の柔軟性が非常に増したという面も大きい」と変化を強調した
●また、(新施設内に新たに完成した)新たなInformation Warfare Operations Centerは、かつてなかったレベルで、米陸軍部隊が接続している世界中の情報環境(information environment)をリアルタイムで把握する能力を提供することになる
●同センターはまた、伝統的な軍情報機関による商用メディア情報の提供任務も併せて担うことになる。最近陸軍サイバーコマンドは商用インテリジェンス(commercial intelligence)を最大限に活用することを追求している
●同司令官はかつて、「米陸軍サイバーコマンド」との名称を、「米陸軍Information Warfare Command」との名称に変更するだろうと述べていたが、3日記者団に、名称変更の正式なタイミングは流動的だが、手続きは進めていると説明している
●ただ同司令官は、名称の変更のあるなしにかかわらず、米陸軍サイバーコマンドの10年ビジョンに沿い、より「情報戦:information warfare」に焦点を当てるべくシャープにシフトしていく方向にあり、戦術サイバー戦、電子戦、情報戦の専門部隊の立ち上げや融合を行う計画だと説明した
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「情報戦:information warfare」と「誘導工作:influence operations」の関係や、「サイバー戦」や「電子戦」と「情報戦:information warfare」との関係を整理せずにご紹介して頭が混乱されていると思いますが、「情報戦:information warfare」が、「サイバー戦」や「電子戦」を広く包含し、「誘導工作:influence operations」は「情報戦」より大きな概念だと思います。
以下の新書の66ページ参照
ちなみに以前ご紹介した、読売新聞の飯塚恵子さんによる新書「ドキュメント誘導工作 情報操作の巧妙な罠」の48ページに、「influence operations」は米軍の中でよく使用される用語で、訳として確立されていないが、「一番しっくりくる」のが新書のタイトルでもある「誘導工作」だと紹介し、前述のRANDの定義を厳密に引用されています
また同新書は「情報戦:information warfare」との言葉について、ロシアや中国でよく使用される用語で、ロシアの軍事ドクトリンから大雑把にまとめると、「コンピュータネットワーク上の作戦や、電子戦、心理作戦、情報作戦、などを含む包括的な行動で、軍事力を使わずに政治的目的を達成する戦い」となり、「軍事力を使わず」との点が注目だと説明しています
なお同新書は、「自分の意見が、知らずに誰かに操られている。それが情報工作だ」と記しています
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→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1
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