米空軍が兵士確保に「刺青」規制緩和 [米空軍]
2月1日付で米空軍が、空軍兵士の人材確保を理由に、腕や胸などの「刺青:いれずみ」規制を緩和すると明らかにし、従来の「外部から見える部分の25%以下」制限を撤廃することになりました。
カーター長官が様々な形で取り組んだ人材確保策「Force of the Future」の、米空軍としての政策の一つとも位置づけられますが、入隊希望者の約1/5を「刺青」が理由で「門前払い」している現状に危機感を感じ、「間口を広げる」決断に至ったようです
米国特有の問題かもしれませんが、軍隊と一般市民の乖離が進み、募集が厳しくなる西側世界全体の傾向を眺める事例の一つでもあり、Mattis次期国防長官も大きな懸念事項としている「募集難」「軍隊と一般社会の分断」を見る一つの側面ですので、これを期に米空軍の「刺青規則」をご紹介します
加えて、まんぐーす「一押し」のキュート系「女性将軍」Gina Grosso人的戦力部長のご活躍ぶりもご紹介したいと思います
10日付Military.com記事によれば
●6日、米空軍の人的戦力部長Gina Grosso中将はMilitary.comの独占インタビューで、「米空軍の職務と世界中に展開する任務特性を勘案した上で、更なる人事制度変革の一環として、刺青の露出を緩和することにする」と語った
●米空軍報道官は「これまで、制服で覆われない身体の25%以上を覆う刺青を禁じていたが、その規則を撤廃する」と説明し、服装及び身だしなみ規則を変更すると語った
●Grosso中将によれば、従来どおり、刺青は胸、背中、腕、足に許されるが、その大きさに対する制約は無くなる。ただし、引き続き、頭部、顔、首、唇、舌への刺青は許されない
●またこれまで通り、人種差別、宗教差別、性的表現、暴力的表現などの不適切な刺青も許可されない。また、過激思想やギャングや排他的組織のシンボルなど、米空軍が不適切と見なす刺青も許可されず、米空軍特別捜査局(AFOSI)やFBI等が「hate groups」との関連を認めた刺青も許されない
●「腕」は手首までで、「手」に許されるのは指1本に対する結婚指輪の刺青だけで、指1本だけに許可される。
●現在の規則で許される範囲の刺青は、新規則でも当人に限り引き続き許される。これには、各部隊指揮官の裁量で許可してきた「25%以上の刺青」もこれに該当する
●引き続き各部隊指揮官は、式典参加兵士全員が統一した制服を着用することが望ましい軍式典において、不適切と考える刺青を隠すように要求したり、刺青を取り除くように要求できる。
●ただし指揮官は、刺青を除去することを強要はできない。Grosso中将は本規定について「状況に応じて各指揮官が適切に対応してくれるものと確信している」と述べている
刺青緩和の背景は・・・
●米空軍は4年毎に服装や身だしなみ規則の見直しを行っているが、今回はカーター長官の方針である才能ある多様な人材を確保活用できる組織をめざす「Force of the Future」政策の方針も踏まえ、才能ある若者へのアクセスを拡大することに配慮した
●同時に、他の軍種と同レベルの刺青への許容度を取り入れることにも配慮した。本分野では海兵隊が最も厳しい規則を維持している
●2016年春に空軍兵士の刺青実態調査チームを立ちあげて実態把握を開始し、また8月にJames空軍長官は他軍種の規則状況にも関心を持っているとし、「刺青の実態を把握せずに、優秀な入隊希望者を失うようなことをしたくない」と語っていた
●Grosso中将は兵士募集事務を担当する職員への聞き取りを数ヶ月かけて行い、「兵士に応募又は問い合わせしてくる若者の1/4が刺青をしており、1/5が現行規定を超える刺青を持っている」実体を把握したと説明した
●そして同中将は、明確な数字を把握しているわけではないが、これまでの調査や聞き取りから、明らかに我々は有能な人材を刺青で門前払いしていると語った
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米国社会での「刺青」の一般受容度を肌感覚で承知していませんが、何となく、基準を緩めてでも頭数を揃えたい・・・との「ゴールポストずらし」に思えてなりません。
議会ヒアリングがドタ延期になったMattis次期国防長官ですが、今回の「規制緩和」の背景にある「軍隊と一般社会の分断」が背景にある募集難の克服は、「偉大なアメリカを取り戻す」ための重要要素の一つとも考えられます
米国は日本や欧州諸国と異なり、少子化が問題になっているわけではなく、募集難は「軍と一般社会の分断遊離」そのものを反映したものとも考えられており、特に都市部で募集が厳しくなっている現状が関係者の危機感となっています
このあたりに関するトランプ&Mattisラインの考え方も聞いてみたいものです。それにしても、服装や身だしなみに関する空軍内の規則とは言え、話題になりそうな件だけに、政権交代直前での発表が何を意味するのか気になります
Mattis氏の優先事項の一つは、市民と軍の分断を埋めること
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-02
Mattis次期国防長官の関連
「副長官はどんな人に?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-15
「トランプ氏がMattis氏と面談」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-21
Force of the Future関連の過去記事
「更に追加策:昇任制度や中途採用」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-10
「追加策:体外受精支援まで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-29
「全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「企業等との連携や魅力化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「施策への思いを長官が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
ロバート・ゲーツ語録86
→徴兵制で冷戦時に米軍は世界最大規模となった。この規模拡大により、当時は多くの有望な若者が軍務の経験をした。1957年にはプリンストン大出身者が4万人軍務に付いており、ハーバード大にも700人規模のROTC制度が→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10
ロバート・ゲーツ語録87 →このため、冷戦終了時で全米の学生の約4割が両親や身近な親戚に軍務経験者を有していたが、現在ではその比率は18%に低下、近い将来1割以下になるのは確実である→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10
ロバート・ゲーツ語録88
→米国の北西部、西海岸や大都市近郊は志願者が減少している。これら地域で大きな基地の閉鎖再編が進んでいることも一因であるが、同時に軍務のような国家の仕事が他人事にと考えられる風潮が背景にある→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10
カーター長官が様々な形で取り組んだ人材確保策「Force of the Future」の、米空軍としての政策の一つとも位置づけられますが、入隊希望者の約1/5を「刺青」が理由で「門前払い」している現状に危機感を感じ、「間口を広げる」決断に至ったようです
米国特有の問題かもしれませんが、軍隊と一般市民の乖離が進み、募集が厳しくなる西側世界全体の傾向を眺める事例の一つでもあり、Mattis次期国防長官も大きな懸念事項としている「募集難」「軍隊と一般社会の分断」を見る一つの側面ですので、これを期に米空軍の「刺青規則」をご紹介します
加えて、まんぐーす「一押し」のキュート系「女性将軍」Gina Grosso人的戦力部長のご活躍ぶりもご紹介したいと思います
10日付Military.com記事によれば
●6日、米空軍の人的戦力部長Gina Grosso中将はMilitary.comの独占インタビューで、「米空軍の職務と世界中に展開する任務特性を勘案した上で、更なる人事制度変革の一環として、刺青の露出を緩和することにする」と語った
●米空軍報道官は「これまで、制服で覆われない身体の25%以上を覆う刺青を禁じていたが、その規則を撤廃する」と説明し、服装及び身だしなみ規則を変更すると語った
●Grosso中将によれば、従来どおり、刺青は胸、背中、腕、足に許されるが、その大きさに対する制約は無くなる。ただし、引き続き、頭部、顔、首、唇、舌への刺青は許されない
●またこれまで通り、人種差別、宗教差別、性的表現、暴力的表現などの不適切な刺青も許可されない。また、過激思想やギャングや排他的組織のシンボルなど、米空軍が不適切と見なす刺青も許可されず、米空軍特別捜査局(AFOSI)やFBI等が「hate groups」との関連を認めた刺青も許されない
●「腕」は手首までで、「手」に許されるのは指1本に対する結婚指輪の刺青だけで、指1本だけに許可される。
●現在の規則で許される範囲の刺青は、新規則でも当人に限り引き続き許される。これには、各部隊指揮官の裁量で許可してきた「25%以上の刺青」もこれに該当する
●引き続き各部隊指揮官は、式典参加兵士全員が統一した制服を着用することが望ましい軍式典において、不適切と考える刺青を隠すように要求したり、刺青を取り除くように要求できる。
●ただし指揮官は、刺青を除去することを強要はできない。Grosso中将は本規定について「状況に応じて各指揮官が適切に対応してくれるものと確信している」と述べている
刺青緩和の背景は・・・
●米空軍は4年毎に服装や身だしなみ規則の見直しを行っているが、今回はカーター長官の方針である才能ある多様な人材を確保活用できる組織をめざす「Force of the Future」政策の方針も踏まえ、才能ある若者へのアクセスを拡大することに配慮した
●同時に、他の軍種と同レベルの刺青への許容度を取り入れることにも配慮した。本分野では海兵隊が最も厳しい規則を維持している
●2016年春に空軍兵士の刺青実態調査チームを立ちあげて実態把握を開始し、また8月にJames空軍長官は他軍種の規則状況にも関心を持っているとし、「刺青の実態を把握せずに、優秀な入隊希望者を失うようなことをしたくない」と語っていた
●Grosso中将は兵士募集事務を担当する職員への聞き取りを数ヶ月かけて行い、「兵士に応募又は問い合わせしてくる若者の1/4が刺青をしており、1/5が現行規定を超える刺青を持っている」実体を把握したと説明した
●そして同中将は、明確な数字を把握しているわけではないが、これまでの調査や聞き取りから、明らかに我々は有能な人材を刺青で門前払いしていると語った
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米国社会での「刺青」の一般受容度を肌感覚で承知していませんが、何となく、基準を緩めてでも頭数を揃えたい・・・との「ゴールポストずらし」に思えてなりません。
議会ヒアリングがドタ延期になったMattis次期国防長官ですが、今回の「規制緩和」の背景にある「軍隊と一般社会の分断」が背景にある募集難の克服は、「偉大なアメリカを取り戻す」ための重要要素の一つとも考えられます
米国は日本や欧州諸国と異なり、少子化が問題になっているわけではなく、募集難は「軍と一般社会の分断遊離」そのものを反映したものとも考えられており、特に都市部で募集が厳しくなっている現状が関係者の危機感となっています
このあたりに関するトランプ&Mattisラインの考え方も聞いてみたいものです。それにしても、服装や身だしなみに関する空軍内の規則とは言え、話題になりそうな件だけに、政権交代直前での発表が何を意味するのか気になります
Mattis氏の優先事項の一つは、市民と軍の分断を埋めること
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-02
Mattis次期国防長官の関連
「副長官はどんな人に?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-15
「トランプ氏がMattis氏と面談」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-21
Force of the Future関連の過去記事
「更に追加策:昇任制度や中途採用」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-10
「追加策:体外受精支援まで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-29
「全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「企業等との連携や魅力化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「施策への思いを長官が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
ロバート・ゲーツ語録86
→徴兵制で冷戦時に米軍は世界最大規模となった。この規模拡大により、当時は多くの有望な若者が軍務の経験をした。1957年にはプリンストン大出身者が4万人軍務に付いており、ハーバード大にも700人規模のROTC制度が→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10
ロバート・ゲーツ語録87 →このため、冷戦終了時で全米の学生の約4割が両親や身近な親戚に軍務経験者を有していたが、現在ではその比率は18%に低下、近い将来1割以下になるのは確実である→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10
ロバート・ゲーツ語録88
→米国の北西部、西海岸や大都市近郊は志願者が減少している。これら地域で大きな基地の閉鎖再編が進んでいることも一因であるが、同時に軍務のような国家の仕事が他人事にと考えられる風潮が背景にある→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10
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