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大統領&議会選挙を経て国防省改革(GN法改正)は? [カーター国防長官]

NDAA.jpg11月30日付Defense-Newsは、大統領&議会選挙を経て、両選挙で勝利を収めた共和党の国防省改革「急先鋒」であるマケイン上院議員(上院軍事委員長)が、5月に素案を公表していた大胆な国防省改革案を、2017年の国防授権法(NDAA)の最終案に盛り込んだと紹介しています

この国防省改革は、米軍の指揮系統やコマンド編制等も含めて定めた「Goldwater-Nichols法」を30年ぶりに改正しようとする動きの一つであり、この動きを強く警戒する国防省側も案を提示して「激突」の様相を呈しているものです。

これまでも様々な論点候補をご紹介(末尾の過去記事参照)してきましたが、本日紹介の記事は、「調達技術兵站次官の権限分割」「将軍ポストの削減」「統合参謀本部議長の任期延長」「NSC国家安全保障会議の定員削減」を論点として紹介しています

なおNDAAは、National Defense Authorization Actの略です

調達技術兵站次官の権限分割
McCain-NDAA.jpg●現在は豪腕Frank Kendall氏が務め、カーター国防長官も経験したことがある「調達Acquisition」「技術Technology」「兵站Logistics」を司る重要ポストであるが、マケイン議員らは装備品開発の遅延と経費高騰を強く問題視し、同時に中露に対する軍事技術優位を維持する重要性等から、3つの任務の分割を考えている
●一案としてマケイン氏ら上院では、調達と技術を新ポスト「研究開発次官USD(research and engineering)」に、兵站を新ポスト「管理支援次官USD(management and support)」が提案されている

●一方で下院は、技術を一人が、調達と兵站を別の一人が束ねる案を温めている。これはどちらかというと、カーター長官が進める「chief innovation officer」指名に近いとも言える
国防省側は反対しており、調達技術兵站を一人が束ねることによって、迅速な最新技術導入や研究開発、更に効率的な調達につながるとカーター政権下の取り組みを訴えている
●NDAA最終案でも、分割は2018年2月となっており、種々検討の期間はある

将軍ポストの削減
McCain-NDAA2.jpg米軍の規模がイラク・アフガン対処のピークから縮小を続ける中にあって、将軍ポストの削減は継続して議題に上がっている。現状は、大将が37ポスト、中将が138、少将が299、准将が411の計885ポストであるが、5月の案では1/4に当たる221ポストの降格や削減が提案されていた
NDAA最終案では、妥協が図られて110ポストまで対象ポストが削減提案がなされたが、これを2022年末までに達成する案となっている。例えば大将ポストは5個削減の案となっている。また最終案は、110ポスト削減の後に、更に1割削減の検討が必要だと提案している

●最終案は、「国防省は、膨れあがった司令部組織やスタッフを削減する事で効率性を改善し、部隊訓練や国家のために戦う部隊に必要な階級の必要なポストを設け、総合力を向上させるべきである」と提案している

統合参謀本部議長や副議長の任期延長
Goldwater-Nichols.jpg1986年の「Goldwater-Nichols法」で、それまでの任期を短縮し、同議長や副議長の任期は現在2年とされており、大統領が求めれば更に2年延長することとされている。

●しかし大統領の最高軍事アドバイザ-として、長期的な視点で任務を遂行するには、2年は短すぎる。NDAA最終案では、議長や副議長の任期を4年とし、同時期に二人が交代する現状を改め、時期をずらすべきだと提案している
●関係者の一人は、「30年前の時点では人事の新陳代謝の観点で2年に人気を縮小したが、誤りだった。4年にすべきだと統合参謀本部のスタッフも考えている」と語っている

NSC国家安全保障会議の定員削減
NSC-USA.jpgオバマ政権の肥大したNSC国家安全保障会議による、行政サイドへの「執拗な細部介入:micromanagement abundant」の再発を防止するため、NSCスタッフの人員上限を定めようとする動きがある
5月時点の案では、NSC国家安全保障会議の定員を150名以下にすべきとしていたが、NDAA最終案では200名となっている

●識者の間では、「スタッフの数に上限を設けても、細部介入を防ぐことには直接つながらない」との意見も多く、「問題認識は良いが、実現は夢物語だ」と評価する者もいる
●また報道によれば、トランプ政権はNSCスタッフを40-60名に制限すると伝えられており、この動向にも注目が集まっている
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NDAA2.jpg国防省側が4月に提案していた改革の論点は、「地域コマンドの再編」「サイバーコマンドの格上げ」「装備品や物資調達の権限委譲」「昇任資格と統合職経験の縛り緩和」「統合参謀本部議長の役割再定義」などでした

ちなみにその際マケイン議員は、「サイバーコマンドの格上げや統合参謀本部議長の役割強化など国防省意見と同じ部分もあるが、更に深く改革を進め、国防省が望まない提案も多く考えている」と牽制していたところです。

新政権の動向を見守る一つの視点として、今後の成り行きに注目したいと思います

GN法改正関連の記事
「マケイン議員の意気込み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-30
「階層縮小で人員削減」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-26-1
「先制:国防省がGN法改正案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-06

「国防省がGN法改正検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-05
「国防長官が同法改正に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
「統合参謀本部の削減検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16

地域コマンドの再編に関する記事
「地域コマンド改革私案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-24
「情報筋:コマンド再編案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-12

CIO:chief innovation officerの指名へ
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-01

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