タイ軍が中国製潜水艦に続き戦車を追加購入へ [安全保障全般]

朝鮮戦争当時に開発された現有の「米国製軽戦車M41」を更新するモノで、当初はウクライナ製の「T-84 Oplot戦車」200両を購入する方向で、2011年時点で49両を受領していたものの、その後のウクライナ情勢混乱で供給が不能となり、代替戦車として輸出を目的に設計製造された中国製戦車購入にタイが動いているモノです

本日はこの戦車の戦力的な意味合いでは無く、2014年のタイ軍事クーデター以降、米国から冷たくされているタイが、2015年7月に中国製潜水艦3隻(2000トン級のType 039A Yuan級攻撃潜水艦)購入の発表(最終決定は2016年末)した流れを受け、ますます全方位外交(米国離れ)に傾く現状としてご紹介します
4日付Defense-News記事によれば

●この他にもタイ軍は、同海軍が中国製のフリゲート艦や沿岸警備艇を既に使用している。これは中国製兵器の価格が安いことに要因がある事は確かだが、IISSアジア部のTim Huxley上級部長は、タイが中国武器に傾きつつあるのは政治的な影響も受けていると語っている

●米国は2003年12月にタイを非NATOである主要同盟国と位置づけたが、クーデター以降に軍事援助や諸協定をキャンセルした。回復基調にあるものの
●一方で中国は、タイのクーデター後、主要国で最初に軍事政権を承認し、それ以降はタイの主要貿易相手国となり、タイにとって2番目に大きな投資受け入れ先としてインフラ施策を担っている
2015年7月の中国潜水艦導入発表時の記事
●「単に中国との接近なら理解出来るが、ドイツやスウェーデン製の選択肢がある中での中国潜水艦の購入は、より強い意味を持つ」と専門家は語った
●バンコクの大学の安全保障講座長は、「タイ政権から米国に対する、タイの価値観や国益を注意深く扱うべきとの警報」であり、中国潜水艦の購入決定が米タイ関係を悪化させると見ている。

●シンガポールの専門家も、米国がクーデターや軍事政権の存在でタイに罰を与えることが、米国に害を及ぼすことをタイは示そうとしていると分析している。米国がアジアでの同盟強化に努力する中で、タイは中国との関係強化も可能だと示そうとしていると。
●冷戦間、米タイ軍事関係は堅強で、「Cobra Gold演習」も1982年に開始されている。一方で、80年代以降のタイ海軍の艦艇調達先は世界に分散し、中国、イタリア、シンガポール、スコットランド、スペイン、米国である
●90年代に入ると、中国から2隻のフリゲート艦と4隻のJianghu III級ミサイルフリゲートを購入している。しかし両艦とも、第3国装備の融合に関する技術的問題に問題を抱えている
●タイはまた、90年代にスペインから空母を調達したが、維持整備の問題で9機のハリアーは運用不能で、空母も大部分の時間はドックに係留されている
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この点、トランプ政権がどう考えているのかが気になります。実業家らしく、タイ内政の混乱を回復させた軍事政権を認め評価し、実利を重んじる姿勢でタイと仲良くやって頂きたいものです
最近、ホワイトハウスが国務省の政治任用ポスト(主席次官補代理など)50あまりを意図的に空席にし、「クシュナー氏ら」が直接外交を指示するような動きを見せていると報じられており、「人権外交」の流れがどうなるか気になります。
その試金石の一つであるタイとの関係に、今後も生暖かく注目したいと思います
米タイ関係を考える記事
「2015年7月の中国潜水艦導入発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-13
「米タイ軍事関係50年ぶりの仕切り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-16
シャングリラ会議記事
「2016年会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
「2015年会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-28
「2014年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
「2013年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
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