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米陸軍2万名が私物スマホ等で陸軍ネットに接続可 [サイバーと宇宙]

「Hypori」社の「Halo」とのアプリ使用で
「very, very, very secure」だと陸軍IT部長が力説

hypori halo army.jpg8月15日付Defense-Newsが、同日実施されたIT電子技術関連イベントでのJohn Morrison米陸軍ITサイバー部長(中将)の発言を取り上げ、米陸軍が過去1年以上の検討&検証を経て、許可された私物スマホや私物タブレット等を陸軍ネットワークに接続可とする「BYOD構想:bring-your-own-device initiative」を実現し、約2万名の陸軍勤務者(正規兵、予備役、州軍、文民職員)が柔軟かつ迅速な情報共有や指揮統制に活用していると紹介しています

同中将は、許可された勤務者と私物デバイスに小規模ベンチャー企業「Hypori」社提供のアプリ「Halo」を使用させることで、「陸軍ネットワークに私物デバイスをroot アクセスさせることなく、かつ私物デバイスに情報を保存させることなく、端末に情報をリモート送信することを実現」していると説明し、この仕組みが「very, very, very secure」だと語っています

hypori halo army2.jpgまた同陸軍ITサイバー部長は「我々はクラウド技術が実現可能な情報提供能力の最先端を目の当たりにしている」、「(陸軍用と私物の)2台の端末を持ち歩く必要はもうない。信頼性が極めて高い」、「週末に仕事の連絡があるときは、私物スマホに連絡をくれと指示している」と述べ、

Kenneth McNeill州軍CIOは「私物デバイスを業務に活用できることで、行動の柔軟性と重要事項に対する対応時間を改善できている」、「州軍の全員に官製スマホなど端末を支給することは不可能だが、これで職場に全員が出勤して情報を確認する必要がなくなった。米国政府や国防省の未来の活動様式を示すものだ」とBYODを高く評価しています
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hypori halo army3.jpg私物スマホ等でどのレベルの秘密情報までアクセス&使用可能なのか?、どのような私物デバイス承認プロセスを踏んでいるのか?、許可された私物デバイスを紛失して悪意ある第3者の手に渡って大丈夫なのか?・・・等々、いろいろ気になるところ山盛りですが、米陸軍だけでなく民間分野でも大いに需要がありそうな技術で気になります

それにしても2万人が使用中とは、展開の速さに驚きます。世の中の動きの速い事早い事・・・

HYPORI社の関連webページ
https://www.hypori.com/

サイバー関連最近の記事
「Eメール「.MIL」と「.ML」の誤送信で情報流出」→https://holylandtokyo.com/2023/07/19/4861/
「豪が能力大拡大の10年計画推進中」→https://holylandtokyo.com/2022/11/16/3911/
「ウ支援衛星ネット費用を米国防省に要求」→https://holylandtokyo.com/2022/10/18/3770/

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空自宇宙部隊と米宇宙軍の本格協議SETスタート [サイバーと宇宙]

イスラエルとブラジルに続く3か国目のSET開設
アジア太平洋諸国とは初のSET開始

Japan SET.jpg7月13日、米宇宙軍が諸外国との協力関係強化のために行っているSET(Space Engagement Talks)が、イスラエルとブラジルに続き、アジア太平洋諸国で初めて日本の航空自衛隊との間で開始され、東京市ヶ谷の航空幕僚監部で将官級協議(SET)や作業部会に分かれての部門別協議が行われました

米側は米宇宙軍計画部長のPhilip A. Garrant中将とアジア太平洋宇宙軍(昨年10月創設)司令官のAnthony J. Mastalir准将が率いるアジア太平洋宇宙軍スタッフで構成され、日本側は空幕防衛部長の坂梨弘明空将補(パイロットでない防衛部長!)を筆頭に、2022年3月創設の宇宙作戦群(2020年5月創設の宇宙作戦隊が拡大)スタッフが参加した模様です

Japan SET3.jpg自衛隊とのSET開始は、今年1月の「2+2」で合意された「宇宙での状況認識・相互運用性・作戦面での協力を更に深化&強化し、有事にそれぞれが攻撃を受けた際は相互に防御行動をとる新たなコミットメント確認」を受けたもので、

昨年3月の宇宙コマンド司令官James Dickinson大将や同10月の宇宙軍参謀総長(正確には作戦部長)Raymond大将の訪日から更に前進し、具体的協力関係強化に向けた実務的協議を推進するものです

Japan SET5.jpgSETについてアジア太平洋宇宙軍の報道官は、「宇宙ドメイン状況認識、宇宙情報、教育訓練、部隊構築、能力向上、アジア太平洋宇宙軍との調整要領などなど、SETで取り上げられた項目について、作業部会(Space Working Group)で具体的なアクションアイテムの設定や時程等を議論した」と説明し、

またMastalirアジア太平洋宇宙軍司令官はアジア太平洋地域国との初のSET創設に当たり、「SETは、同盟国等との新たな協力を推進するメカニズムであり、地域の安定と宇宙環境の長期的な維持に大きく貢献するものだ」と表現しているところです
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Japan SET2.jpg米国から見て地球の裏側に存在する自衛隊部隊は、宇宙監視面で米軍を補完可能な地理的メリットを持っていますが、宇宙関連のアセットが極めて限定的な自衛隊に、米軍との協力で何が可能なのか、さっぱりイメージアップできませんが、

パイロットでない空幕防衛部長・坂梨空将補の采配に、大いに期待したいと思います!!!

米宇宙軍関連の記事
「宇宙輸送企業の選定へ」→https://holylandtokyo.com/2023/07/10/4819/
「衛星への軌道上補給に企業活用へ」→https://holylandtokyo.com/2023/03/01/4320/
「衛星のSM&L重視」→https://holylandtokyo.com/2023/01/18/4130/
「有志が民間企業大量導入訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/09/16/3609/

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Eメール「.MIL」と「.ML」の誤送信で米軍情報流出 [サイバーと宇宙]

「.MIL」のつもりが「.ML」へメール送信
「.ML」はロシアと近いアフリカのマリ共和国のドメイン名
秘密情報の送信記録はないと報道も数百万通のメール

mali5.jpg7月17日付Defense-News記事は、米国防省や米軍勤務者が誤ってメール送信先アドレスに、「.MIL」のつもりで「.ML」と誤タイプ入力したために、秘密指定の内容は含まれていないと報道されているようですが、外交文書、納税申告書、パスワード、幹部の渡航詳細等の情報が誤発信されていたと報じています。(最初に報じたのはフィナンシャル・タイムズ紙FT紙の模様)

FT紙によれば、誤タイプの性格から、誤送信は相当以前からあったと想像され、誤送信メール総数は数百万通とも報じられていますが、「.ML」ドメインを管理するオランダ人起業家のJohannes Zuurbier氏がこの誤送信メールの存在に最初に気付いたらしく、同氏は同紙に対し「このリスクは現実のものであり、米国の敵対者によって悪用される可能性がある」と語っているようです

mali.jpgまた同氏は本件を受け、「.ML」ドメインの管理権をマリ政府に移譲するとしており、最近ロシアとの接近が話題になっているマリから、ロシアに関連情報が流出する可能性が指摘されているようです

米国防省報道官は、事態を深刻に受け止めて対応しているとし、米国防省のメールアドレスから「.ML」ドメインアドレスに送信されたメールは、誤送信とシステムが認識して「返送:Bounce」される仕組みになっていると説明していますが、個人アドレスを使用して「.ML」アドレスに送信した場合は対応できないと認めています。

mali2.jpgもちろん国防省や米軍は、個人アドレスでの業務内容を含むメール送信を許可していませんが、「.MIL」のつもりで「.ML」に誤送信したメールには、X線写真と医療データ、身分証明書情報、船舶の乗組員リスト、基地の職員リスト、施設の地図、基地の写真、海軍査察報告書、契約書、いじめに関する内部調査、公式旅行日程などが含まれていた模様です

特にFT紙は、今年5月のマコンビル陸軍参謀総長とその代表団のインドネシア訪問旅行計画が含まれていたことを例に挙げ、高官の移動日程は通常公開されるべきものではないはずだと指摘しているようです

mali3.jpgこの他にも、オランダのドメインを示す「.NL」と「.ML」を間違え、オランダ国防省やオランダ軍宛てを意図していたメールがマリのドメインに配信されたこともあったようですが、Defense-Newsからの問い合わせに対し、在米オランダ大使館から返答はない模様です。
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個人のアドレスで業務上の内容を含む情報をメール送信した「誤り」が根本にありますが、「.MIL」のつもりで「.ML」へ誤送信する可能性は誰にでもありそうなことで、「他山の石」としたいと思います。

mali4.jpg誤送信されたメールは、誰かが閲覧できるような状態にあるのでしょうか? デジタルデータのことですから、エラーメッセージが出たメールでも、どこかのサーバーに残されているんでしょうねぇ・・・

それにしても、どこの国にもありそうな案件ですねぇ・・・。日本の「.jp」に似たドメインには、「.je 英国のジャージー代官管轄区」、「.jm ジャマイカ」「.jo ヨルダン」「.kp 北朝鮮」「.np ネパール」なんかが挙げられます。
関係者の皆様は、連休明け早々から「暑い夏」をお過ごしのことでしょう・・・

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国防省革新推進部署が宇宙輸送企業選定へ [サイバーと宇宙]

地球と宇宙と宇宙間の3タイプ輸送提案募集
2年後に具体的契約目指す構想
2018年からの実現性検討から1歩踏み出す

Space Delivery.jpg6月30日、米国防省のDIU(Defense Innovation Unit)が、「Novel Responsive Space Delivery」コンセプトを煮詰めるため、地上から宇宙、宇宙から地上、宇宙の軌道間輸送の3タイプの貨物輸送に関する企業提案募集を開始しました

「Novel Responsive Space Delivery」コンセプトは2年後に具体的な事業契約締結を目指し、契約前半では選定された提案の実現可能性をより精査し、具体的な貨物輸送ロケット打ち上げ要領を煮詰め、契約後半では貨物の精密輸送技術の成熟と、救命救助や災害対処宇宙空輸運用を煮詰めることを狙いとしているとのことです

Space Delivery2.jpgこの計画は、2018年頃から段階的に国防省や米軍内で進められてきた検討を1歩進めたもので、2018年から国防省が開始した「運用構想と調達戦略検討」、同時期に米輸送コマンドがSpaceXや Blue Origin等々と共同検討を開始した成果や、

2021年に米空軍研究所が開始した「Rocket Cargo」計画に基づき、2022年にSpaceX社と約150億円で結んだ「(ロケットでの人員貨物のピンポイント輸送も狙う)Starship rocket開発データの入手」契約に基づく検討の成果、更に宇宙軍が2026年までに米本格公式始動を狙う宇宙輸送検討の結果等々を踏まえたものと考えられています

Space Delivery3.jpgちなみに、3つのタイプの宇宙貨物輸送(地上から宇宙、宇宙から地上、宇宙の軌道間輸送の3タイプ)のどのタイプの提案でもOKで、また、DIUが発出した提案要請には、費用対効果の高さや商用ベース展開可能性が高い事、更に宇宙ゴミの最小化の追求も含まれているようです
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Starship SpaceX2.jpgSpaceX社の「Starship」の打ち上げ試験が4月20日に行われ、打ち上げ後にロケットが回転したり、1段目と2段目の切り離しに失敗したりで素人的には「失敗」でしたが、SpaceX的には最大空気抵抗速度を超える目的は達成したとのことで、管制室が対照的に「大喜び状態」の面白い光景が見られました

ロケットによる貨物輸送も、まだ基礎的な技術確認段階でしょうが、この面でもSpaceXとイーロンマスク氏には大いに期待したいと思います

米輸送コマンド司令官が2020年10月に語る
「物量輸送を宇宙経由で世界中に1時間以内で」→https://holylandtokyo.com/2020/10/23/439/ 

SpaceXによるウクライナ支援
「国防省がウクライナ提供用にStaralink契約」→https://holylandtokyo.com/2023/06/21/4776/ 
「露の電子戦に迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/ 

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宇宙軍が衛星への軌道上補給に企業活用へ [サイバーと宇宙]

必要性に迫られ、懸命に民間企業との連携模索
昨年立ち上げた専門部署中心に、議会の理解も得て

MEV.jpg2月22日付Defense-Newsは、米宇宙軍で衛星の延命や機動性確保が喫緊の課題となる中、軍内に専門部署を立ち上げ、民間企業が進める衛星への燃料補給や維持整備提供サービスの情報を収集しつつ、軍内受けれ体制整備構築や具体的手順等を宇宙軍が思案中だと報じています

末尾にご紹介している様々な過去記事で、宇宙ゴミや敵衛星を避けるために衛星に機動性を持たせるニーズの高まりや、搭載装備は健全でも電源切れで機能停止に至る高価な衛星が多いこと等を課題としてご紹介し、民間通信衛星や地上観測衛星とドッキングして燃料補給や軌道修正や維持整備を行う民間企業が生まれつつある様子も取り上げてきましたが、ニーズに迫られた宇宙軍が「救いの手」を関連企業に求め始めたということです

MEV2.jpg具体的には、昨年8月に宇宙軍内に衛星軌道&維持支援(director of operations for servicing and maneuver)部署に大佐が任命され、監督する少将も指名されています。そして昨年9月には衛星支援関連の企業を集めたイベントを開催し、民間企業が持つ技術の情報収集を行っています

担当少将はインタビューで事の緊急性に触れ、「対処を早急に迫られている課題であり、何が必要で、利用可能などのような技術が存在し、どのように宇宙軍に導入するかを至急見分ける必要がある」、「宇宙軍内の担当人員の確保や企業との各種契約に至るまでの調整体制構築」、「衛星に軌道上で燃料や維持整備支援を受けられるハード面での整備も必要」等々と語り、予算を確保出来次第取り掛かりたいと述べています

MEV3.jpg予算面では、米空軍時代から宇宙軍創設当時は、国防省内や米議会の理解を十分得ることができなかったが、最近やっと米議会の応援を得られるようになり約40億円の追加予算を獲得し、NASAや国防省DIUとも協力しつつ、衛星維持整備技術や宇宙ゴミ対処技術を有する一般企業との連携を模索しているとも説明しています

ただ、いずれの取り組みも宇宙軍の具体的ニーズや企業への要求事項をしっかり固める段階にも至っておらず、2月21日の関連イベントで宇宙軍幹部は正直に、「世にある技術を取り組むには時間がかかるだろう:will likely take slow steps toward embracing these capabilities」、「我々はまだまだよちよち歩きの段階:We are taking baby steps.」とも語っています
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MEV4.jpg末尾の過去記事でもご紹介しているように、2020年2月末に、民間企業がインテルサット通信衛星に別の衛星をドッキングさせ、地球周回軌道の高度を上げる等して通信衛星寿命を約5年延命する画期的手法に成功したとご紹介しましたが、米軍衛星へのこのような技術導入はまだまだ時間が必要なようです

2022年年9月には、国防省・宇宙軍・空軍や関連企業の関係者有志250名が一堂に会し、「日進月歩の民間技術を迅速に大規模に導入可能にすべき」との提言をまとめていますが、予算制約や官僚機構や法令面での難しさ等も多く立ちはだかっているのでしょう。

衛星に機動性を求める米国防省の取り組み
「宇宙軍は衛星のSM&L重視」→https://holylandtokyo.com/2023/01/18/4130/
「国防省宇宙軍有志が民間企業大量導入訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/09/16/3609/
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holylandtokyo.com/2021/09/28/2233/
「核熱推進システム設計を3企業と」→https://holylandtokyo.com/2021/04/20/111/

衛星の延命や機動性付与技術
「衛星用の熱核推進システム推奨」→https://holylandtokyo.com/2022/01/27/2622/
「衛星延命に企業と連携」→https://holylandtokyo.com/2021/11/10/2350/
「画期的:推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holylandtokyo.com/2020/02/28/839/
「米国防省が国防宇宙戦略を発表」→https://holylandtokyo.com/2020/06/23/629/

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ドローンのサイバー安全性診断「BlueとGreen UAS」制度 [サイバーと宇宙]

米国防省DIUが2020年開始の「Blue UAS」認証基礎に
軍用以外のドローン認証Green UASを民間団体が開始
ドローン部品からの情報漏洩リスク診断で安全を

Green UAS.jpg2月23日、民間団体AUVSIが市販ドローンのサイバー情報漏洩リスクを診断して安全なドローンに認証を与える「Green UAS」プログラムを開始したと発表し、米国防省や米軍以外の米国省庁、法執行機関、緊急事態対処帰還、交通機関、エネルギー・通信・農業・食料・製造業などなど、多様なドローン利用関係者の要請に応えていく事になりました

この「Green UAS」プログラムは、2020年に米国防省DIUが既に開始している、国防省&米軍用に米国製市販ドローンのセキュリティー面を検証する制度「Blue UAS」を、国防省以外のユーザー用に展開したもので、「Blue UAS」を運用する国防省DIUと連携し、非営利団体AUVSI(Association for Uncrewed Vehicle Systems International)が開始したものです

Blue UAS.jpg元祖である「Blue UAS」との制度をまんぐーすは今回初めて知りましたが、米国防省や米軍が導入する米国製ドローンに、中国製など外国製部品が組み込まれて使用されることによる情報漏洩リスクの有無を診断し、心配の無い市販ドローンを認証する制度です。

公式Webサイトや関連報道等によると、2020年8月に第一弾「Blue UAS 1.0」として認証した5機種を発表し、2021年10月に第2弾「Blue UAS 2.0」、そして現時点では15機種が「Blue UAS Cleared List」に掲載されています。

関係者が語る「Blue UAS」(約30分)


「Blue UAS」認証は国防省や米軍に採用されるための唯一の道ではありませんが、その手続き等の明確さや官僚制の鈍重さを極力排除した仕組みで高評価を得たことから、他の政府機関や公的機関、更に社会インフラを担う民間企業からも同様の認証制度を求める声が高まり、「Blue UAS」関係者の支援も受けて「Green UAS」制度がスタートしたということです

Green UAS2.jpgAUVSIの幹部は、「Green UASはドローンセキュリティー認証分野における新たな革新であり、日進月歩で進化を続ける市販ドローンが、様々な分野で多様な役割を果たすことを期待する使用者に供するものである」、「この新制度は、ドローンセキュリティーやサプライチェーン確認課題への対応であり、市販ドローン提供者とユーザーと連邦政府のためのものである」、

更に、「安全でセキュリティーが確保されたドローンの提供により、ドローンへの高まる社会の期待と健全な競争環境育成への期待に応えるもの」とその意義を語っています

Blue UAS2.jpgなお、国防省や米軍での使用を想定した「Blue UAS」と、それ以外を対象とした「Green UAS」では多少認証の基準が異なるようですが、双方の関係者は、「Green UAS」認証を受けた市販ドローンが「Blue UAS」認証を受けるための追加基準を明確にし、セキュリティー上の問題がない優れた市販ドローンが有効に活用される仕組みづくりに貢献したいとの姿勢を示しています
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具体的な「Blue UAS」や「Green UAS」の認証基準や手続きについて全く把握していませんが、ご興味のある方は、以下に示す関連webサイトやYouTube映像で細部をご確認ください。

国防省組織DIUによる「Blue UAS」制度
https://www.diu.mil/blue-uas

「Blue UAS」により診断され使用承認されたドローン15機種
(2023年2月25日現在で)
https://www.diu.mil/blue-uas-cleared-list

「Blue UAS」プロジェクト解説記事(英語)
https://advexure.com/blogs/news/everything-you-need-to-know-about-the-blue-uas-program

情報共有と漏洩防止のはざまで
「開発担当次官が課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/ 
「外国製ドローン購入規制」→https://holylandtokyo.com/2021/09/21/2240/
「軍需産業との情報共有に乗り出す」→https://holylandtokyo.com/2021/01/18/300/
「半導体での米国巻き返しを討論」→https://holylandtokyo.com/2021/09/14/2168/
「中国製部品排除に時間的猶予を」→https://holylandtokyo.com/2020/08/15/524/
「上院による偽部品レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-23-1
「米国製兵器は偽物だらけ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-29
「中国製にせ部品との戦い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-10

危機に乗じた中国資本の米軍需産業への浸潤を警戒
「再びLord次官が警戒感」→https://holylandtokyo.com/2020/05/11/668/
「米国防次官:中国資本の浸透警戒」→https://holylandtokyo.com/2020/03/27/791/

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レポート:宇宙軍は衛星のSM&L(機動とロジ)重視を [サイバーと宇宙]

衛星のSM&L:Space Mobility and Logistics
機動:衛星能力を維持しつつ宇宙での位置を変える
ロジ:機能点検、修理、給油、機能増強など

Space SM&L.jpg1月5日Aerospace Corporationが米宇宙軍への政策提言レポートを発表し、宇宙軍も重要性を当初から理解しているものの、技術的な壁等から実質未着手の「衛星のSM&L:Space Mobility and Logistics」分野、つまり「衛星や宇宙船に機動性を持たせ、状況対応力や強靭性を高める」ための軌道上の衛星の機動性確保(つまり移動用燃料補給)や衛星への補給支援(軌道上での点検、修理、給油、能力向上)に、民間活用と民間サービス応用導入と軍独自投資開発等の複数アプローチを選択して取り組むべきと提言しています

「衛星のSM&L」は、宇宙軍が2020年6月発表の最初の文書「Spaceopower」でも、核となる5つの重要分野の一つと記述しているテーマですが、打ち上げ重量の制約の中で技術的ハードルも高く、宇宙軍創設から現在までの数年間は「運用部隊も運用部隊も関連取得計画もなかったし、機会もなかった」と認める状況にある分野だと、「Enabling a New Space Paradigm: Harnessing Space Mobility and Logistics」とのレポートは表現しています。

Space SM&L2.jpg衛星や宇宙船に機動性を持たせ、状況対応力や強靭性を高めるに必要不可欠な要素の「衛星のSM&L」ですが、現在の衛星は限定的な推進燃料しか搭載されておらず、かつ燃料補給を受ける設計にもなっていないため、慎重な推進燃料使用を心がけているようですが、衛星が搭載する高価な機材が機能しているのに、推進燃料を使い果たして軌道上に浮かんでいるだけの状態になるのが大部分のもようです

もちろん推進燃料の搭載量を増やす検討もあったようですが、打ち上げ重量制約の範囲で、厳しい宇宙環境に耐える主任務機材の信頼性を確保するために重量がかさみ、燃料搭載量は抑えざるを得なかったのが現在の状況です

Space SM&L3.jpg「SM&L」の「SM:Space Mobility」に直結する推進燃料補給以外にも、「SM&L」の「L:Logistics」に該当する衛星への補給支援(軌道上での点検、部品確保、修理、能力向上)も取り残された重要課題であり、同レポートは「SM&L」の課題を以下の6つに整理し議論しています

なお、「Materiel Logistics」は「衛星等の維持に必要な部品等を宇宙空間に事前集積&保管すること」、「Client Augmentation」は「軌道上の衛星のアップグレードと修理」、「Active Debris Mitigation」は「デブリを破棄するために軌道変更すること」と説明されています

• Inspection
• Orbit Modification
• Materiel Logistics
• Refueling
• Client Augmentation
Active Debris Mitigation

Space SM&L4.jpgレポート執筆者はこの「SM&L」改善を通じて「衛星や宇宙船に機動性を持たせ、状況対応力や強靭性を高める」ために、上記6つの各項目の特性や民間市場での自律的発展可能性を踏まえ、4つのアプローチ(参加Participant, 既存サービス調整導入Customized, テナント参加Anchor Tenant, and 自立開発運用Owner)を米宇宙軍は選択して取り組むべきと提言しています

6日付米空軍協会web記事のまとめによれば、6項目の最初の4項目については、民間衛星での需要もあることから、民間企業が進める技術開発とサービスから、打ち上げ能力、宇宙での事前配置されたリソースとデポなど、資材ロジスティクス能力を活用でき、また衛星ライフサイクルのさまざまな段階で衛星軌道を変更することが可能だと同レポートは分析しています

Space SM&L5.jpg一方で、デブリの軽減とクライアント増強 (軌道上衛星の能力向上や修理) には、そのような機能開発や展開に、宇宙軍による多くの特設投資が必要になる場合もあると主張し、いずれにしても、米宇宙軍を21世紀の戦略環境にふさわしい宇宙戦闘部隊に発展させるには、「SM&L」検討&導入が不可欠だと同レポートの筆者3名は訴えています
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Aerospace Corporationの同レポート紹介webページ
https://csps.aerospace.org/papers/enabling-new-space-paradigm-harnessing-space-mobility-and-logistics

引き続き、宇宙ドメインについては基礎知識不足を「露呈しぱなっし」のまんぐーすですが、「SM&L」との用語など、小さなことからコツコツと学んでいきたいと思います。

末尾に紹介しております、ブログ「東京の郊外より」支援の会へのサポートについても、年初に当たり改めてご検討をお願い申し上げます

衛星に機動性を求める米国防省の取り組み
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holylandtokyo.com/2021/09/28/2233/
「核熱推進システム設計を3企業と」→https://holylandtokyo.com/2021/04/20/111/
衛星の延命や機動性付与技術
「衛星用の熱核推進システム推奨」→https://holylandtokyo.com/2022/01/27/2622/
「衛星延命に企業と連携」→https://holylandtokyo.com/2021/11/10/2350/
「画期的:衛星が推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holylandtokyo.com/2020/02/28/839/

「米国防省が国防宇宙戦略を発表」→https://holylandtokyo.com/2020/06/23/629/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
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https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

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米軍が宇宙空間で初の生物学的な実験実施 [サイバーと宇宙]

NASAの月面探査計画の「アルテミス」宇宙船を利用し
チェルノブイリ原発跡で発見された放射線に強い真菌の特性調査
将来の宇宙活動に備え放射線防護の仕組みを菌から学ぶため

NRL Artemis3.jpg12月11日、NASAによる50年ぶりの月探査計画の第1弾準備宇宙船「Artemis I」が、25日間の宇宙飛行を終えて大西洋上に帰還しましたが、この宇宙船に国防省として初の生物学的実験用のサンプルが搭載されていたとして話題になっています

「生物学的実験用のサンプル」と聞くと、生物兵器のような印象を与えて身構えますが、チェルノブイリ原発事故現場で見つかった強い放射線環境の中でも繁栄し続けている「Aspergillus Niger」との「黒化した真菌」から、放射線防護の仕組みや放射線から人間を守るヒントを得られないか、米海軍研究所(NRL)が取り組んでいる研究のための実験です

NRL Artemis.JPGこの「Aspergillus Niger」は地球上で身近にある真菌(fungus)ですが、1986年に発生したチェルノブイリ原発事故後の高レベル電離放射線 (紫外線、X、およびガンマ線) が存在する環境でありながら、同原発の損傷した原子炉壁を覆いつくして繁殖を続けており、これまでの国際宇宙ステーション(ISS)での実験でも、宇宙放射線を苦にすることなく、むしろ放射線の恩恵を受けて発芽と成長を続けることが確認されています

海軍研究所の同研究プロジェクト担当Zheng Wang 博士は、将来米軍が巻き込まれる可能性がある「核戦争」や「核降下物:nuclear fallout」から兵士や国民を守る方法を探るため、更に米軍宇宙船の宇宙放射線環境での耐性を高めるために、「Aspergillus Niger」の放射線からの自己防御の仕組みを解明し、人間や宇宙船を保護するためのコーティング材など作りたいと考えています

Artemis NASA2.jpg今回の宇宙船「Artemis I」による25日間の宇宙滞在は、ISSのような地球周回低高度軌道での滞在とは異なり、2回月に接近する宇宙飛行から、同じ期間でも2倍の放射線を浴びる環境が得られることから、海軍研究所の研究者にとって貴重な実験データが得られると期待されています

チェルノブイリのような場所での放射線は宇宙放射線とは異なりますが、どちらも人間に危険をもたらす点で同じ放射線であり、宇宙船「Artemis I」での搭載実験は環境の違いも踏まえつつ10年の準備期間を経て実現したものだそうです

NRL Artemis2.jpg具体的には、「Aspergillus Niger」の自己防御機能の秘密は「メラニン」にあると推定されていることから、同真菌のメラニン欠乏症タイプやDNA 修復メカニズムが欠損したタイプも「Artemis I」で宇宙に送り込んで、通常の「Aspergillus Niger」との影響の出方等を比較観察した模様です

宇宙船「Artemis I」に搭載されたサンプルの分析は今後進められますが、2023年3月にはSpaceXのロケットで異なる同真菌サンプルをISSに持ち込む実験が予定され、翌2024年には南極で寒さ等が同真菌に与える影響の確認実験が計画されているとのことです

また、NASA関連宇宙ミッションの活用だけでなく、拡大を続ける米宇宙軍の宇宙アセットを活用した関連実験も海軍研究所Wang 博士は検討していると語っています
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Artemis NASA.jpgチェルノブイリ原発の残骸でたくましく増殖する「Aspergillus Niger」に自然界の奥深さを感じるとともに、自然の中に放射性物質の半減期を早める力が備わっていないか? そんな研究をやってるところは無いのか?・・・などと妄想してしまいました

このような地道で興味深い研究が、宇宙環境を利用してますます推進されんことを祈るばかりです。きな臭い宇宙兵器のことばかりでなく・・・

ここで実験されているかも・・・
謎の宇宙事件船X-37B関連
「908日宇宙滞在後に帰還」→https://holylandtokyo.com/2022/11/24/3952/
「宇宙滞在記録を更新中」→https://holylandtokyo.com/2022/07/29/3458/
「6回目:少し情報公開?」→https://holylandtokyo.com/2020/05/15/672/
「ちょっと明らかに?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-11

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米宇宙軍の戦術演習Space Flagに同盟3か国が参加へ [サイバーと宇宙]

統合国家演習に格上げされ、12月に豪加英が参加
今年2月に「7か国宇宙作戦ビジョン2031」を発表した仲間から
「Black」「Red」「Blue」Skies演習も目的を絞って実施へ

Space Flag.jpg11月14日付米空軍協会web記事が、米宇宙軍が主催して12月予定の演習「Space Flag 23-1」に、今年2月に「7か国宇宙作戦ビジョン2031」を米国と共に作成発表した仏、独、英、加、豪、NZの中から、豪加英3か国軍が参加することになったと紹介しています

「Space Flag」演習は、宇宙軍が編成される前から米空軍宇宙コマンドによって2017年から実施されてきた戦術レベルの技量向上を目指す演習ですが、2022年から他軍種を参加させることを条件に「Joint National Training Capability」レベルの演習に格上げされた演習で、担当の宇宙訓練&即応態勢コマンド(STARCOM)が、サイバーと情報関係者がより多く参加するよう準備しているとアピールしている演習です

Space Flag4.jpg「Space Flag」のほか米宇宙軍訓練コマンド(STARCOM)は、「Black Skies」、「Red Skies」、「Blue Skies」との色の名前を冠した訓練分野を絞り込んだSkies演習を開始しており、「Black Skies」演習は実兵器の発射を伴う電子戦演習、「Red Skies」演習は衛星軌道上での戦い、「Blue Skies」演習はサイバー戦と宇宙を扱った訓練に取り組んでいます
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Space Flag2.jpg2010年代には、米宇宙軍の前身の米空軍宇宙コマンドが主催する「Schriever Wargame」との演習をよくご紹介しましたが、国防省以外の米国政府機関や同盟国からも広い分野から参加を受け入れ、宇宙が軍事以外にも社会経済活動とどのようにかかわっているかを「実感」してもらうことが主眼のような演習だったとの印象を持っています。

「Schriever」演習など地道な活動の成果もあり、2021年7月には米宇宙軍No2が同盟国等の姿勢の急変に言及し・・・

Thompson4.jpg・最近数年間で同盟国の宇宙ドメインへの関心が急速に高まったことにより、以前は米国活動への協力に消極的だった同盟国も含め、米宇宙軍活動への協力や資金協力申し出が急増している
・過去数年間の変化はドラマチックで、背景には潜在的敵対国による宇宙活動活発化への危機感があり、効果的な協力が得られなかった国々からも、協力できる分野は無いか? 我々は何をすべきだろうか? などの問い合わせをいただいている・・・・と語っていたところです

対中国最前線の日本も、早く「Space Flag」演習演習に参加できるようになりたいですね。・・・このように言うと、「大っぴらにはできないが、実は・・・」とのコメントを頂戴することもありますが・・・

米宇宙軍と同盟国との連携強化
「7か国で宇宙作戦ビジョン2031」→https://holylandtokyo.com/2022/02/25/2753/
「米宇宙軍に同盟国からの申し出急増中」→https://holylandtokyo.com/2021/08/04/2064/

Schriever Wargame関連記事
「2019年は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-18
「日本初参加の2018年の同演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-25
「米国が日本を誘う・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-3
「日本は不参加:米軍宇宙サイバー演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-14-1
「欧州を主戦場に大規模演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-11
「Schriever Wargame」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19
「サイバーと宇宙演習の教訓1」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「サイバーと宇宙演習の教訓2」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02

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X-37Bが記録更新の908日宇宙滞在後に帰還 [サイバーと宇宙]

従来の780日間をさらに更新
2010年から運用開始の同機の後継は民間企業製か

X-37B 908.jpg11月12日、米宇宙軍が運用する再利用可能な実験無人宇宙船X-37Bが、記録更新の908日間の宇宙飛行を終えフロリダ州Cape Canaveral宇宙センターに無事帰還しました。2020年5月17日に打ち上げられた同機6回目の飛行で、5回目に記録していた780日間の宇宙滞在記録を更新しました

X-37Bは「9m×4.5m×3m」とマイクロバス弱程度の大きさで、ロケットの先端に取り付けて打ち上げられ、帰還時は滑走路に着陸する無人宇宙船です。OTV(Orbital Test Vehicle)が正式名称の実験船ですが、、宇宙でどんな実験を行っているのか非公開部分が多く「謎の宇宙船」とも言われ、追跡マニアが「中露の衛星を追跡している」等々の「噂」や「推測」を流して時に話題になったりしていました

X-37B 908 4.jpg2010年4月に最初の打ち上げられた1回目の宇宙滞在が224日間、2回目が468日間、3回目が675日、そして2017年5月に帰還の4回目は718日間、2019年10月に帰還した5回目は780日で、この記録が今回6回目の飛行で908日に更新されたわけです。

「謎の宇宙船」と呼ばれながらも少しずつ情報公開の動きも見られ、6回目のフライトでは以下のような試験・実験を実施していると「ほんの一部分」ながら公開されています

●米空軍士官学校の教授や学生が運用している実験小型衛星「FalconSat-8」の運搬放出
●米海軍研究所の太陽光発電エネルギーを電磁波送信するアンテナ試験
X-37B 908 5.jpg●NASAによる素材研究実験「METIS-2」→耐熱コーティング、放射線シールド素材等の試験と、「植物の種子実験」→宇宙環境が植物の種子に与える影響を、将来の惑星間飛行や他惑星への移住計画に備え確認
●帰還のための大気圏再突入の際、「リング形状」の装置を機体後方に付けて飛行し、着陸前に切り離す空力特性試験を実施

米宇宙軍は、X-37Bが今後あと何回宇宙飛行実験を行うか等について明確にしていませんが、2年前から宇宙軍はX-37Bの後継検討の必要性を発信し始めており、折しも民間企業Sierra Spaceの「Dream Chaser」とのX-37Bとそっくりの宇宙船が、国際宇宙ステーションへの物資輸送を2023年夏に実施する予定となっており、有力後継候補と言われているようです
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X-37B 908 3.jpgこのX-37Bを最初にブログでご紹介したのが2010年4月で、あれから12年・・・。しみじみしております。

あまり深い付き合いはなく、道ですれ違って挨拶する程度ですが、昔から知ってるご近所の方・・・のようなX-37Bでした

X-37B関連の記事
「宇宙滞在記録を更新中」→https://holylandtokyo.com/2022/07/29/3458/ 
「2020年5月打上時:少しソフト路線に?」→https://holylandtokyo.com/2020/05/15/672/
「ちょっと明らかに?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-11
「中国版X-37B?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-15
「中国衛星を追跡?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-07
「Sシャトルの代替?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
「米が宇宙アセット防護計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-16
「関連小ネタ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-04
「X-37Bをご存じですか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-20

「Dream Chaser」解説のwikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%BC_(%E5%AE%87%E5%AE%99%E8%88%B9)

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豪州がサイバー能力大拡大の10年計画推進中 [サイバーと宇宙]

Australia China.jpg11月7日付Defense-Newsは、豪国防省の内部組織ASD(Australian Signals Directorate)が今後10年をかけ取り組むサーバー能力大増強計画Redspice(Resilience, Effects, Defence, Space, Intelligence, Cyber, Enablers)の概要文書を紹介し、約1兆円の予算で挑戦する計画の当初4年間で、予算を優先確保に動くなど豪州政府の動きを紹介しています

事柄の性質上から細部は不明な部分が多いのですが、10年計画で「サイバー攻撃能力」を3倍に、「継続的なデジタル界の捜索探知能力」を2倍に、「世界的な拠点数」を4倍にし、先進人工知能や機械学習能力開発に取り組み、そのために新たに1900名の人員を増強する意欲的な計画が、Scott Morrison前首相時の今年3月に発表され既に開始されているとのことです

Redspice2.jpg背景には、中国との対立姿勢を明確にする豪州の姿勢からか、豪州社会へのサイバー攻撃が激増していることがあり、9月には豪州2位の携帯電話会社から豪州国民の1/3に相当する個人情報が大量に流出し、10月26日には豪州最大手の医療保険会社から400万人の病歴や治療歴を流出されると恫喝する事件が発生して社会的な不安が高まっていることもあるようです

1900人の人員増も、2023-24年に400名、24-25年に600名、25-26年に500名、26-27年に200名と前のめりに行われる計画で、10年で約1兆円の予算の内、スターダッシュの4年間に4200億円を投入する計画で、うち3600億円は政府の国防優先予算(Integrated Investment Program)に割り当てられ優先扱いとなっているようです

Redspice.jpgそれでも経費ねん出のため、現国防装備計画からの削減が求められると言われており、無人偵察攻撃機機MQ-9を海上活動に改修したMQ-9B SkyGuardianを導入する約1300億円の計画がキャンセルされたり、450両導入が計画され機種選定が進んでいた歩兵戦闘車両の調達数が300両程度の圧縮されるとの報道が出たりしているようです。

同時に、豪州の国力に比し大規模過ぎとも言われるRedspice計画を精査すべきとの声もあるようですが、ASDトップのRachel Noble長官は、3本柱であるサイバー攻撃強化、情報収集分析能力強化、情勢認識&対応能力強化のどれもあきらめるつもりは無いと明言し、同国専門家もデジタル社会の変化速度を考えれば、極めて緊急性の高い課題だと本計画の推進に期待しているようです
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Redspice4.jpg日本のサイバー体制強化の現状は、先進国の中でも「極めて寂しい」状況にあると言われており、喫緊の最重要課題のはずです・・・

Twitterが少しは見られるようになって嬉しいのですが、「検討する」から「検討を加速する」に進歩したと言われる日本のリーダーは大丈夫なんでしょうか。

豪州国防省ASDによるRedspice計画説明文書13ページ
https://www.asd.gov.au/sites/default/files/2022-05/ASD-REDSPICE-Blueprint.pdf

最近のサイバー関連記事
「なぜ露は大規模サイバー攻撃やGPS妨害をしない」→https://holylandtokyo.com/2022/07/26/3497/
「ウ侵略は衛星通信へのサイバー攻撃で開始」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「ウのサイバー副首相」→https://holylandtokyo.com/2022/03/23/2942/

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米宇宙軍が少佐&大佐級の教育課程をSAIS内に設置へ [サイバーと宇宙]

中上級クラスの高等教育をJohns Hopkins大学と協力し
陸海空軍が軍内に教育機関を保有する中
DCに設置して卒業後の引っ越し負担の軽減も
たぶん他軍種の士官クラスは羨望のまなざしを・・・

SAIS Space forces.jpg10月26日、米宇宙軍とJohns Hopkins大学が、少佐&大佐クラス上級幹部の教育課程を、同大学内の著名なSAIS(School of Advanced International Studies:ワシントンDC)内に宇宙軍用に新設し、2023年夏から開講すると発表しました

米軍の各軍種は、中上級クラス幹部の教育課程を各軍種の大学内に設置しており、宇宙軍も現在は、米空軍がアラバマ州マックスウェル空軍基地「Air University」内で行っている教育課程で、米空軍少佐&大佐クラスらとカリキュラムを一部共有する形で教育を行っていますが、この宇宙軍課程と教官をSAISに移し、SAIS教授陣からの支援も受けて「ワシントンDC」で行うとのことです

SAIS Space.JPG宇宙軍が他軍種と異なる形で中上級クラス教育機関を軍外に独立して立ち上げるのは、宇宙軍の規模が他軍種に比して小さく独自の課程運営が難しいことが大きな理由の一つですが、同課程卒業生の多くがペンタゴン勤務になる現状から、家族も含めた引っ越し負担を軽減することも、結果として意味が大きいと宇宙軍の教育担当Shawn N. Bratton少将は正直に語っています

本件を報じる米空軍協会web記事は、例えば米空軍の同課程は前述のようにアラバマ州マックスウェル基地に所在するが、基地周辺の子弟用学校のレベルが低く、配偶者の就職口も限定されることから、課程を履修する大佐クラスから批判的な声が上がっており、また10か月の課程履修後に再び引っ越しをすることへの負担感も人事上の課題となっているようです

Bratton Space.jpgまた同課程履修で得られる上級ポスト昇進にも重要なJPME資格(Joint Professional Military Education)取得に関し、陸海空軍の場合、選抜され著名一般大学院で高等教育を受ける者は、各軍種の軍事知識を各軍種の教育課程の「通信教育」で並行履修する苦行を強いられますが、SAIS内新課程に配置される宇宙軍人教官からも教育を受ける宇宙軍課程卒業者は、「通信教育」なしでJPME資格を得ることができる点でも軍人学生のメリットが大きいようです

細かな「引っ越し負担」や「卒業時の資格」を最初に説明しましたが、何と言っても大きいのは、宇宙ドメイン問題が単に軍事だけに留まらず、国の経済や社会生活を支える基盤としてクローズアップされる中で、宇宙軍の近未来にリードする人材を、国際関係教育で世界第3位に位置づけられるSAIS教授陣の力も得て、ワシントンDCで行えることのメリットは計り知れないと思います

Space guardian.JPG同時にJohns Hopkins大学のSAISにとっても、今ホットな宇宙問題に現場で立ち向かってきた優秀な30代前半と40代前半の米軍人を学内に毎年60~80名受け入れ、学界での理論研究と結び付ける機会を得ることは、「実践的な政策提案能力獲得」を目指すSAISにとっても大きなメリットと考えられます

現在少佐&大佐クラスの教育機関を、陸軍はペンシルバニア州に、海軍はロードアイランド州に、空軍はアラバマ州に設置していますが、陸海軍の今後同課程で教育を受ける可能性のあるエリートクラスは、宇宙軍のアイディアを「羨望のまなざし」で見ていることでしょう。

宇宙軍を取り巻く環境は、トランプ政権による強引な創設時の熱気が薄れかけており、陸海空軍との予算争いや人材面や政治力等々の側面から厳しさを増すと考えられ、決して明るい見通しはないと思いますが、本件に関しては「逆境をチャンスに変えた」好例としてご紹介しておきます

米宇宙軍関連の記事
「宇宙軍武官の派遣」→https://holylandtokyo.com/2022/08/10/3530/
「地上移動目標の情報を求め」→https://holylandtokyo.com/2022/06/09/3309/
「衛星を地上観測から宇宙監視用へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/22/2825/
「7か国で宇宙作戦ビジョン制定」→https://holylandtokyo.com/2022/02/25/2753/
「熱核推進システムを応援」→https://holylandtokyo.com/2022/01/27/2622/
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holylandtokyo.com/2021/09/28/2233/
「同盟国から協力申し出急増中」→https://holylandtokyo.com/2021/08/04/2064/
「核熱推進システム設計を3企業と」→https://holylandtokyo.com/2021/04/20/111/
「衛星延命に企業と連携」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-17

最近の宇宙関連記事
「早急な能力向上に民間衛星企業をまず活用」→https://holylandtokyo.com/2022/07/27/3454/
「露はなぜ大サイバー攻撃やGPS妨害しない?」https://holylandtokyo.com/2022/07/26/3497/
「第一撃は民間衛星通信会社へ」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「ウクライナ侵略最初の一撃は宇宙で!?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/18/2732/

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Musk氏が「ウ」支援衛星ネット費用を米国防省に要求 [サイバーと宇宙]

政府を支える民間衛星が被攻撃時、米国は防御してくれるか?とも
Musk氏が「ウ」大統領にクリミア半島はあきらめろとSNSで

Zelenskyy Starlink.jpg10月14日付Defense-Newsが報じる匿名情報(最初にCNNが報道)によれば、ウクライナの対ロシア軍事行動に不可欠な衛星インターネット通信を「自腹で」提供しているSpaceX社のElon Musk氏が米国防省に対し、同通信サービス料を国防省で負担するよう要求している模様です

Spacex社はロシアのウクライナ侵攻直後から、ウクライナ副首相(IT担当相兼務)からのSNS上での要請に数日で対応し、同社の「Starlink」サービスをウクライナに提供した約15万個の地上ステーション装置を通じて支えており、地上施設費用だけでも毎月30億円、これに低高度軌道に配置された衛星の製造や打ち上げ費用等を含めると数百億円規模(570億円との報道あり)とも推定されています

Elon Musk3.jpg14日の政府記者会見では、本件に関する質問が国防省や大統領府に多数向けられましたが、国防省報道官は「同リンクに関しSpaceX社とコンタクトしている」とのみ述べ細部には触れず、Sabrina Singh大統領府副報道官も「国防省はウ国防省と協議している。このネットサービスが必要で、ウクライナ軍とウクライナのために安定した通信環境を確保したいと考えている」と述べるにとどまっています

この問題を背景で複雑にしているのは、3日の週にMusk氏が「(露が占領した地域を)ウクライナに戻すべきか、露に支配させておくべきか」とのネット投票をツイッター上で呼び掛けたことに端を発する、Musk氏と「ウ」大統領の意見相違の表面化です

Elon Musk Zelenskyy2.jpgこのネット投票呼びかけツイートに対し「ウ」大統領が、「Musk氏は、ウクライナ支援者とロシア支援者のどちらが好きなのか?」と疑問を投げかけ、これに対しMusk氏が「ウクライナを強く支援しているが、これ以上の戦争エスカレーションは「ウ」や世界への影響が害が大きすぎる」とツイートして食い違いが表面化したことが、今回の米国防省への費用負担要求に関連しているとも言われています

このツイッターのやり取りでMusk氏は、クリミア半島のロシア支配をウクライナが認め、ウクライナによるNATO加盟申請を取り下げ、ウクライナは中立的政治姿勢を取るべきとまで主張しており、米国政府との意見の相違も明らかになっています

Zelenskyy Starlink3.jpg更にMusk氏は一連のツイートの中で、国家安全保障分野で宇宙ドメインの重要性が急速に増加し、かつ民間衛星事業者が軍事や安全保障分野で大きな役割を果たしている中で、「我々はサイバー攻撃や妨害と日々戦っているが、民間事業者が攻撃を受けたなら、米国は我々を守ってくれるのか?」との究極に重い課題をストレートにぶつけて話題となっているところでもあります。
//////////////////////////////////////////////////

SpaceXが提供している「Starlink」は、ウクライナ軍による軍事作戦の極めて重要なインフラとなっており、ドローン運用や目標照準や偵察活動などなど多方面に置いて不可欠で、米軍幹部が「system has proven exceptionally effective」と表現するものです

Tremper.jpgまたこのサービスを維持するSpaceXの努力も目を見張るものがあり、4月に国防省電子戦担当幹部が講演で、ロシアの電子戦やサンバー妨害から「Starlink」を守り維持しているSpaceX社の対応を「泣けるほど素晴らしい」と讃え、その迅速性と適切性から米政府は学ぶべきだと訴えた程です 

最近繰り返しご紹介しているように、国家安全保障分野の民間衛星事業者への依存度は急速に固まっており、「民間事業者が攻撃を受けたなら、米国は我々を守ってくれるのか?」は極めて重い問いかけです。宇宙に限らず、サイバー空間でも同様の問いが発せられていると認識すべきです

Elon Musk率いるSpaceX社の頑張り
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/

ウクライナ侵略が示した民間宇宙能力の重要性
「国防省有志が民間技術迅速活用求める」→https://holylandtokyo.com/2022/09/16/3609/
「民阿寒衛星を守る国際規範を」→https://holylandtokyo.com/2022/09/05/3601/
「米宇宙軍の能力向上に民間衛星をまず活用」→https://holylandtokyo.com/2022/07/27/3454/
「第一撃は民間衛星通信会社へ」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/

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宇宙監視望遠鏡SSTの米から豪への移設順調 [サイバーと宇宙]

2013年に米豪でSST移設合意
2027年にニューメキシコ州から移設後、試験経てIOC宣言
完全な運用態勢確立は2023年に
南半球への設置で切れ目ない宇宙監視網SSN構築へ

SST4.jpg9月末、2017年に米国ニューメキシコ州から豪州西部に移設されたDARPAとMITが共同開発した宇宙監視望遠鏡(SST:Space Surveillance Telescope)について、所要の調整や試験を経て初期運用態勢を確立したと米宇宙軍が発表しました。なお移設場所は西部豪州とのみ報道されており、細部位置は不明です

この宇宙望遠鏡SSTの移設は、2012年の米豪2+2での議論を経て2013年に両国で合意されたもので、合意には宇宙望遠鏡移設のほか、カリブ海島国アンティグア(Antigua)の米空軍施設に配備していた宇宙監視レーダー「C-Band ground-based radar system」を2014年に豪州西部に移設することも含む、宇宙監視ネットワークSSN強化全体を目指したものです

SST7.jpgただSSTの性能については、2012年に初めて取り上げた時点から一貫して「従来宇宙望遠鏡に比し桁違いの能力を有し、広範な視野と小さな物体を遠方でも探知追尾でき、物体の写真撮影が可能である」とのみ公表されているのみで、細部は不明です。豪州に設置することにより、静止軌道上の宇宙物体をより多く監視できるようです

北米大陸から南半球への監視センサーの移動は、地球の裏側にセンサーを移して監視網を拡大充実させようとの試みですが、既に移設されている「C-Band」宇宙監視レーダーは、アジアからのロケットやミサイル発射を追尾することが可能な点で中国や北朝鮮への監視強化効果も期待されています

SST6.jpgこれら宇宙監視ネットワーク強化による宇宙状況認識能力への取り組みへの背景には、例えば4月に発表された「懸念する科学者連合:Union of Concerned Scientists」による推計によると、宇宙軌道上に存在する衛星の数が、2015年に1400個だったものが、2022年4月時点で5500個に急増し、今後10年間で58000個まで爆発的に増えるとの見積もりがあり、

また9月29日付の米会計検査院GAOレポートが、増加する衛星が通信やネットワーク接続性向上に大きく貢献する一方で、衛星や宇宙ゴミの増加による物理的衝突リスクの増加のほか、衛星や宇宙ゴミからの電磁波放射や太陽光反射の増加による通信や天文学への悪影響を強く懸念し、その影響には予測不可能なものもある現実があります

SST5.jpgまた関連で米宇宙軍No2のDavid Thompson副作戦部長は、機能停止した衛星の破棄等に関する国際的な基準やルールの設定の重要性を訴え、GAOも同様のルールや基準設定のオプションを4例示し、国際的な議論を活性化すべきと米政府や関係機関に呼び掛けています
/////////////////////////////////////////////////////

「機能停止した衛星の破棄等に関する国際的な基準やルールの設定」や「国際的議論の活性化」は、現在の国際情勢を見ると絶望的な感がしますが、「宇宙兵器の制限」と合わせ、このような問題に地道に取り組む米国には頭が下がります。

SST10.jpg引き続き「宇宙」に関しては基礎知識が絶対的に不足しているまんぐーすですが、日本のJAXAや航空自衛隊のレーダーで、宇宙監視に協力する検討があったと思うのですが、どの程度進んでいるのでしょうか・・・。最近は防衛省の概算要求資料を見るのもサボっていますので、反省しております

2012年当時の米豪協議関連記事
「米軍が豪に宇宙監視レーダー移設」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-11-15

宇宙兵器問題への取り組み
「民間衛星を守る国際規範を」→https://holylandtokyo.com/2022/09/05/3601/
「国防宇宙戦略を発表」→https://holylandtokyo.com/2020/06/23/629/
「提案:宇宙兵器の6分類」→https://holylandtokyo.com/2020/06/01/611/

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国防省有志が宇宙での大戦略や民間技術迅速活用求める [サイバーと宇宙]

「2022年宇宙産業基盤状況レポート」で
米国政府に官民をまとめる宇宙大戦略作成求める
日進月歩の民間技術を迅速に大規模に導入可能にすべきと

Space Industrial B4.jpg8月25日付Defense-Newsは、米国宇宙産業界約250名の意見も踏まえ、米国防省や空軍研究所や宇宙軍有志が取りまとめた「2022 State of the Space Industrial Base」の概要を取り上げ、同レポートが4年連続で「米国の官民宇宙活動を束ねる大戦略を早急に定めないと、窮迫する中国に戦略的にも技術的にも2032年頃までに追い越される」との危機感を紹介しています

例えば同レポートでは、国防省や米軍や西側同盟国が、規則に縛られ新技術や新手法導入を遅延させられている官僚機構問題を早期に解決し、米国民間企業で日進月歩で進む技術的進歩を、より迅速により大胆に獲得可能なプロセスを確立する必要があると訴え、

Space Industrial B5.jpg具体的に、少なくとも米宇宙軍は年間予算の20%を宇宙産業界から調達するよう規定すべきだとの昨年2021年レポートの要求を再び記載し、2023年度予算において大きな変化が見られなかったことへの宇宙産業界の落胆が示されているようです。

背景には、前述のように2032年頃までに宇宙分野で中国に追い越されるとの危機感があり、同時に宇宙への関心の高まりから、米産業界では2021年の宇宙への投資額が前年比倍増の約2兆円($15.4 billion)に達し、商用宇宙アセトを活用した画像・通信・分析能力が、ウクライナ侵略でもその実力を遺憾なく発揮している現状があります

SPACE INDUSTRIAL B.jpg米国防省の民間技術迅速導入担当部署であるDIU(Defense Innovation Unit)の宇宙担当部長のSteve Butow氏は、「米国政府としての大戦略は、今後10年と言ったスパンではなく、21世紀全体を見据えたものである必要があり、共通の長期ビジョンのもと、(官民が協力して)望ましい宇宙の将来を達成する道筋を描く必要がある」と訴えています
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繰り返しになりますが、このレポートは国防省DIUと空軍研究所と宇宙軍有志が、最近毎年春開催のworkshop(写真下)に参加した米国軍需産業界関係者約250名の意見も踏まえて取りまとめたもので、その狙いは、「大戦略」の必要性や調達改革を米国政府に対し求め、かつ米議会や米国民に現状を説明して改善に理解を求めるためのものと推測しています

SPACE INDUSTRIAL B2.jpg軍需産業基盤の現状レポートには、国防省がまとめて政府や議会や国民に窮状を訴えるものや、有識者によるものなどさまざまあるのですが、「宇宙軍予算の2割を民間からの調達に充てよ」との具体的な要望が、国防省や米軍有志によるレポートに含まれることに、最近注目を集めるこの分野への理解不足を反省しております

宇宙産業基盤レポートの現物(136ページ)
https://assets.ctfassets.net/3nanhbfkr0pc/3wpHArrpttx99gFk5vfymS/873bf925beb44e0cf30a07170927acf5/State_of_the_Space_Industrial_Base_2022_Report.pdf

米国軍需産業の分析レポート
「中国資本の浸透警戒」→https://holylandtokyo.com/2020/03/27/791/
「2019年世界の軍需産業TOP100」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-23
「2019年版 米国防省軍需産業レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-28
「2018年版レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-1

ウクライナ侵略が示した民間宇宙能力の重要性
「米宇宙軍の能力向上に民間衛星をまず活用」→https://holylandtokyo.com/2022/07/27/3454/
「第一撃は民間衛星通信会社へ」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「ウクライナ侵略最初の一撃は宇宙で!?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/18/2732/

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