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露企業が米軍事衛星打ち上げのアキレス腱に恫喝 [サイバーと宇宙]

2014年のウクライナ危機で表面化した驚きの状況
米国の大型軍事衛星打ち上げが露製エンジン依存の現状に恫喝
露製ロケットエンジンRD-180の輸出停止・支援停止
米空軍長官は「今のところ問題ない」と語る・・・

RD-180 Rogozin3.jpg3月3日、ロシア企業で大型衛星打ち上げ用ロケットエンジン「RD-180」を製造するRoscosmos社Dmitry Rogozin社長が、現下の状況に鑑み、米国への同エンジン輸出と輸出済エンジンへの技術サポートを停止すると明らかにし、同エンジンを使用する米国の「Atlas Vロケット」に大型軍事衛星打ち上げを依存している米国関係者を恫喝しました

これに対し3月4日Kendall空軍長官は、「今のところ、関連の懸念事項の報告は受けていない」、「2022年中にロシア製エンジンに依存しない態勢を構築するとの(2016年制定の)国防省戦略に沿い、目標を達成できると思う」、「SpaceXが代替手段開発に名乗りを上げ、ULAも取り組んでいる」と強気の姿勢を示しました

RD-180 5.jpg米国の安全保障を支える大型衛星打ち上げ(米ULA社製 Atlas Vによる)が、ロシア製ロケットエンジンに依存しているという信じがたい「アキレス腱」が明らかになったのは2014年ウクライナ危機の際で、米露関係が悪化し、ロシア国防相がRD-180の米国輸出打ち切りを示唆して米国内が大騒ぎになりました

2014年当時、数年分のRD-180在庫はあったのですが、米国産の新ロケットエンジン開発は容易ではなく、「米国の威信をかけて短期間で完成させろ。できるはずだ」派と、「リスクは受け入れがたく、屈辱に耐え、ロシアにRD-180追加緊急購入依頼をすべき」派の論争が続きました

RD-180 Rogozin2.jpg結果的に2016年、「できるはず派」の議会が、「屈辱受け入れ派」の米空軍や一部企業の要求を退け、8基程度のRD-180在庫でしのげるギリギリの2022年までに米国産ロケットエンジン&ロケットを開発する事となりました

その後2021年6月時点では、SpaceX社の「Falcon Heavy rocket」や Blue Origin社の「BE-4ロケット」が成熟度を高め、ULA社も新ロケット「Vulcan Centaur」初打ち上げ試験を2022年に行って「Atlas V」を2025年に引退させる計画を明らかにするなど米国製開発が進み、米宇宙軍幹部が議会で「あと6回のRD-180使用で依存を脱却可能」と証言していました

RD-180 Rogozin5.jpgSpaceXやULA社「Vulcan Centaur」で、「Atlas V」の代替が完全に確保できたというレベルにあるのか、Kendall空軍長官の発言ぶりからは「ぼんやり感」がぬぐえませんが、購入済のRD-180でしのげる時間を活用して米国製ロケットの信頼性を高めて正式承認するのでしょう

後は、購入済RD-180使用に際し、ロシア側からの「技術支援」が得られなくて大丈夫かですが、これに関しULAのTory Bruno社長は「ロシア側技術者の支援が得られなくても、予期せぬトラブルに対応可能なレベルの技術的ノウハウを蓄積してきた」と一応語っています

Kendall SASC.jpgKendall空軍長官は、2014年にRD-180依存問題が表面化した際、国防省の調達&技術開発担当次官を務めていた人物で、「米国製推進派」か「屈辱甘受・露に土下座派」のどちらであったかは不明ですが、議会の指示に従い「2022年までに露製依存脱却」戦略をまとめた次官ですので、その手腕に期待いたしましょう

2014年当時に米国へのRD-180禁輸をちらつかせたロシア国防相も、結局のところ、(恐らく)ロシア軍需産業の苦境を目の当たりにしてRD-180禁輸に踏み切れなかった過去があり、ロシアにとっても痛みを伴う措置でしょうが、国防省や米空軍内も強気の姿勢を示しつつも、「ついに来る時が来たか・・・」と不安が広がっているのではないでしょうか・・・・

ロシア製ロケットエンジン依存で窮地
「あと6回でロシア製依存から脱却」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-04-1
「露製エンジンRD-180無しでロケット開発へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-10-07
「混迷の露製エンジンめぐる論争」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-24
「10年ぶり米軍事衛星打上げに競争導入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-03
「国産開発が間に合わない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-29-1
「露製エンジンを何基購入?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-2
「米国安堵;露製エンジン届く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-22
「露副首相が禁輸示唆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-22

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南シナ海海没のF-35Cを僅か37日で回収完了 [Joint・統合参謀本部]

第7艦隊が総力を挙げ、中国に盗まれないよう早期回収
水深約4000mの深海から無人水中艇を使用し
昨年の地中海でのF-35B回収経験も活かした模様

F-35C Sink2.jpg3月3日付米海軍協会研究所web記事等は、1月24日に空母カールビンソンへの着艦に失敗してフィリピン沖の南シナ海に海没したF-35C型機を、米海軍第7艦隊や海軍システムコマンドが総力を挙げ、3月2日に水深約4000m(12,400 feet)の海底から引き揚げることに成功したと報じました。

同機はカールビンソンが空母リンカーンと同海域で共同訓練中に着艦に失敗したもので、同空母乗員(士官1名、下士官4名)が流出させ処分を受けた事故時の映像や写真によれば、高度不足で着艦アプローチに失敗して空母端に胴体を接触させ、甲板上を180度回転しながら滑って海中に落下したようです

F-35C salvage.jpg回収作業は、第7艦隊の水中特殊任務を担当する「CTF75:Task Force 75」と、海軍Sea Systems Commandのサルベージ専門官のチームで行われ、水中作業支援船「Picasso」から発進した約3トンの遠隔操作水中作業艇「CURV-21」が海底のF-35に引き揚げ用ワイヤーを取り付け、支援船「Picasso」のクレーンで引き揚げたようです

同様の引き揚げ作業は、昨年、地中海で英空母エリザベスからの離陸に失敗して海没した英軍F-35B型機にも行われた様で、米英伊軍の協力で実施されたその際のノウハウも、南シナ海での迅速な引き上げ作業につながったようです

めでたし・めでたしですが、本件絡みで要観察事項2つ

Carl Vinson.jpg●1月24日の海没事故の際、短期間で5件連続事故続きだった空母カールビンソン艦長が「わずか45分で着艦を再開できた。共に訓練していた空母リンカーにも一部艦載機を緊急着艦させるなど、不足事態への乗員の対応は素晴らしかった」と強気の発言を行っていましたが、
●「空母艦載機増加で運用リスク増」「緊張を強いられる対中国示威任務」「コロナ対策で乗員のストレス蓄積」などが事故多発や、乗員による事故映像リークの背景では・・・と、米空母の将来を勝手にまんぐーすは心配しております

「対中国特化米空母の苦悩」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15

F-35C Sink4.jpg●もう一つ気になっているのは、この引き上げ成功を最初に報じた3月3日付米海軍協会研究所web記事が、「米海軍は中国やロシアへの情報漏洩を恐れ、F-35Cの海没&改修作業場所を非公開としていたのに、日本の海上保安庁が公示した」と批判的に報じている点です
●海上保安庁は、国際機関から当該海域における航海注意情報を世界に発信する役割を命じられており、「淡々と」サルベージ作業地点情報を事務的に世界に向け公示しただけですが、「配慮不足」を指摘される形となっています。海上保安庁が日本政府と事前に相談したとは思えず、このあたりの対応には今後注意が必要かもしれません

「日本の海保がF-35C海没場所公示」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-01

3月13日の北京冬季パラリンピック終了までは、南シナ海や東シナ海は少し静かでしょうが、その後には不安しかない今日この頃です・・・

事故続発・米空母カールビンソンの苦しい航海
「対中国特化米空母の苦悩」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15
「南シナ海の米空母でF-35着陸失敗等事故5件相次ぐ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-26
「日本の海保がF-35C海没場所公示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-01

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ウクライナ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍 [安全保障全般]

シリアで見られたロシア軍の強固な防空網は存在せず?
ロシアはアルメニアでの大敗北を忘れたか?
緒戦でのウクライナ軍航空基地破壊を過信か?
ただロシアがその気になれば脆弱な小規模戦力

TB2.jpg3月1日付Defense-Newsはツイッター映像を紹介しつつ、ウクライナ軍保有のトルコ製無人攻撃機(Bayraktar TB2)がわずか20機程度の戦力ながら、ロシア軍の戦闘車両や地対空ミサイルや補給列車への攻撃で成果を上げる一方で、ロシア軍部隊の防空部隊が全く機能していない状況を「信じられない説明不能なレベル」と報じています

TB2 5.jpg同記事は、ロシアが支援するアルメニア軍が、2020年秋にアゼルバイジャン軍の同型無人機から大打撃を受けた戦訓が生かされず、シリア展開ロシア軍が通常戦闘単位である防空ミサイルや無人機対処兵器や電子戦部隊を備えた「BTG:battalion tactical groups」で強固な防空網を構築しているのとは全く対照的だと、ウクライナ侵攻ロシア軍の混乱ぶりを米専門家の意見として紹介しています

ドローン使用作戦の一里塚
「アゼルバイジャン軍大勝利」https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/

TB2 2.jpgただ、公開情報で確認できる範囲で、トルコ製TB2無人攻撃機によりロシア軍車両32両が先週(2月28日の週)破壊されたと記事は伝えていますが、ロシア軍もウクライナ軍飛行場への攻撃や「TB2狩り」作戦を遂行するであろうから、TB2による攻撃がその後も有効かは予断を許さないようです

専門家は約20機のTB2だけでは戦果は限定的だろうと示唆し、「ロシア軍はTB2の脅威を明確に認識したはずで、仮にロシア軍が態勢を再構築し、BTG編成の基本構成を整え、適切な防空装備を展開し、電子戦部隊と共に運用すれば、TB2の運用は困難になろう」と述べています

TB2 3.jpgまた、ウクライナ領内に不思議とロシア軍戦闘機や爆撃機の姿が見えない点から、ロシア軍のミサイル攻撃による制空権確保への過信があったのでは・・・と示唆しつつ、ロシア軍による「TB2狩り」が本格化する可能性に言及しています

一方で米国の専門家は、この動画が100万回再生を超えている状況から、情報戦に自信を持つロシアを上回って、「ウクライナは情報戦で勝利しつつある」ともコメントしています
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これだけの情報化社会で、相当程度近代化が進んでいるウクライナでの紛争に関わらず、戦況についてまとまった報道が出てこないことに報道の限界を感じるとともに、「にわか軍事専門家」がいい加減な情報をばらまいている日本の状況を危惧します

TB2 Turkey.JPGそんな中でも、女性や子供を国外に避難させつつも、60歳以下の男性は国内にとどまってロシアに対抗するよう命じたウクライナ政府と、それにこたえるウクライナ国民の姿勢があればこそ、国際社会の支援が集まるのだとしみじみ思います

日本政府が、日本国民が、そして日本のメディアが「その時」どう対応するかによって、国際社会の風向きが変わることを肝に銘じる必要がありましょう

ウクライナ軍のトルコ製無人機で攻撃される侵攻ロシア軍部
ツイッターで100万回再生。“バイラクタル”との無人機名が頭に残る
https://twitter.com/i/status/1498692841526251526

トルコ製ドローン大活躍でロシア大恥
「アゼルバイジャン軍大勝利」https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/

ウクライナ侵略に関する記事
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-02
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-01
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-27
「ウ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-17
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08

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空母フォードの初任務航海はフル体制ではなく [Joint・統合参謀本部]

どうやら艦載機部隊が間に合わない模様
地域コマンド指揮下でなく、海軍指揮下でお披露目航海に

Ford CV.JPG2月3日付Defense-Newsは米海軍幹部の発言から、6年遅れで各種不具合修復が完了した新型空母フォードの2022年後半の初任務航海について、地域コマンド司令官の指揮下に投入する通常の作戦任務航海でなく、米海軍(第2艦隊)管理下の能力お披露目航海になるだろうと報じ、艦載機数も完全な数量を確保できないだろうと厳しい米海軍の台所を紹介しています

新型フォード級空母の一番艦空母フォードは、昨年末に最後まで残っていた兵器運搬エレベータの不具合改修を終了し、現在は残った装備品の搭載作業と各種試験後の艦艇修理に入っています

Ford CV2.jpg今後について同記事は関係幹部の話を総合し、2022年後半に本格任務投入ではなく、約3か月ほどのお披露目初任務航海を大西洋からカリブ海エリアで行って沿岸各国軍との連携確認を行い、その後再び修理&訓練期間を経て、2023年末または2024年上旬から、地域コマンド指揮下の本格任務行動に投入されることになりそうだと分析しています。

6年も遅れてまだ「よちよち歩き」かよ・・・と突っ込みたくなりますが、どうやら背景には、米海軍全体で空母戦闘群を支える艦載機部隊を十分用意できないほどの予算や維持整備上の問題があるようです

Meier.jpg例えば、大西洋海軍航空部隊司令官John Meier少将は、「空母フォードでは2020年から21年にかけ8200回の離発着訓練を行い、艦載機部隊の態勢は出来つつあるが、弾薬搭載を含む最終段階訓練を含めると、必要な艦載航空団を完全に準備できていない」と現状を語り、

「2022年秋ごろからの初任務航海は、短期間に濃縮した要員要請も兼ねた任務展開となる」、「完全な空母艦載航空団より小ぶりな態勢とならざるを得ない。コストと配分可能な資源のバランスを考慮した上での現状である」と説明しています

そして同少将は、空母フォードにどれだけ資源配分するかについて、米海軍全体で統合部隊からのニーズを踏まえて議論が行われているとも説明しています

Kitchener5.jpgまた1月に米海軍水上艦艇司令官のRoy Kitchener中将は、地域統合コマンドのニーズや保有資源や予算を総合的に勘案し、米海軍として艦艇を何隻運用可能な態勢で提供するかを「賢明に」判断していく必要がある。その際準備する艦艇には、完全な態勢の艦艇と低レベルの態勢の艦艇が混在することも前提として考えねばならない、と台所の厳しさを示唆していたところです

それでも2022年秋の3か月間程度の仮運用初任務展開(@大西洋)に向け、担当する第2艦隊は準備を進めており、同盟国との共同訓練招待状を出したり、同空母の能力を示す機会を作為する準備に忙しいようです。

本当に米海軍の今後は多難です。

フォード級空母関連の記事
「6年遅れ空母フォード不具合修復完了」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-26
「新型空母フォードの計画責任者更迭」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-08
「お披露目演習でEMALS故障」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-12
「空母フォード:3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「米海軍真っ青?トランプ「EMALSはだめ」」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-13
「空母を値切って砕氷艦を!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「解説:電磁カタパルトEMALS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

空母の存在意義を巡る議論
「対中国専従空母の厳しさ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇案!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「半年かけて空母の将来像を至急検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-12
「レーザー兵器搭載に自信」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-05
「国防次官が空母1隻とミサイル2000発の効果比較」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-20

艦艇建造&修理の大問題
「空母や艦艇修理の3/4が遅延」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「空母故障で空母なしで出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-16
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09

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ウクライナによるロシア兵捕虜への「両親作戦」 [安全保障全般]

以前から準備していたのか?
あまりにもタイムリーな別名「お父さん、お母さん作戦」

ukraine UN.jpgウクライナに侵攻しているロシア兵の士気の低さを指摘する報道が相次ぎ、ウクライナ国連大使が国連総会の緊急特別会合で紹介した、戦死直前の若いロシア兵士が母親に送ったSNSメッセージが世の涙を誘っています。

ご存じの方も多いかと思いますがその内容は、

兵士:「ママ、もうクリミアにはいないんだ。演習はしていないんだ」
母親:「それならどこにいるの?パパが荷物の送り先を知りたがっているの」

兵士:「ママ、ウクライナにいるんだよ。本当の戦争が起きている。怖いよ。僕らは町中を爆撃している。市民でさえ標的にしている」
  「歓迎されるって聞かされていたのに、皆、自分を装甲車の下に身を投げ出して僕らを通さないようにしている。僕らのことをファシストと呼んでいる。ママ、本当にきついよ・・・」

そんな中、ウクライナ当局による「作戦」が注目を集めていると1日付雑誌Friday電子版が紹介しています。

Russian soldiers.jpgその作戦名は『お父さん、お母さん作戦(両親作戦)』
●ウクライナ当局によると、多くのロシア兵の装備は劣悪で、まともな訓練も受けていない兵士もいるそうだ。中には10代の若者もいたと発表している
●ウクライナ軍は捕虜となったロシア兵に、食事や水を与え極力丁重に接している。おびえる兵士に、優しい言葉をかけることもあるとか

●更に、ウクライナが徹底しようとしているのが、「お父さん、お母さん作戦(両親作戦)』。ロシア兵に対し、故郷の両親へ電話することも勧めている。
Russian soldiers2.jpg●戦地で父親や母親と話せば、自分たちがいかにツラい状況にあるかを伝え、早く帰りたい、会いたいと訴える。兵士たちとロシア国民に厭戦気分が広がるのも当然

●ウクライナ当局は、捕虜となったロシア兵を、ロシアの家族が検索できる特別なサイトも作っているという。
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「捕虜となったロシア兵をロシアの家族が検索できる特別なサイト」開設のような迅速な行動がとれるのは、2014年以降ロシアの「ハイブリット戦」と戦ってきたウクライナ当局の逞しさでしょうか

Ukrainian forces5.jpg上記のような報道が増えていますが、米国のシンクタンクは、ロシア軍側に立て直しの動きが見られることや、「制空権」がロシア側に完全に落ちる可能性も指摘もしており、ウクライナ側の補給路も先細りな中、油断を許さない状況のようです

例えば日本のメディアが2日付で、米国防省が「5日以内に首都・キエフが陥落する可能性が高い」と分析していると報じるなど、現実は甘くないようです。

ウクライナに関する軍事的な視点
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-01
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-27
「ウ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-17
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08

ロシアの電子戦に驚愕の米軍
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

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欧州諸国からウクライナへの武器提供 [安全保障全般]

携帯型SAMスティンガーが多数ウクライナへ
対戦車ミサイル、機関銃、迫撃砲、ロケット弾等
ハイブリッド戦とは異なる20世紀的戦いの様相

Stinger SAM.jpg2月28日付(3月1日更新)Defense-Newsが、欧州諸国からウクライナへの軍事援助(武器供与)についてまとめていますので、戦況を見る視点の一つとして、また欧州諸国の姿勢を見る意味でご紹介いたします

ちなみに、米国は約380億円相当の武器供与を2月最終週に表明し、その一環で初めて携帯型SAMスティンガー(射程4㎞)やJavelin対戦車ミサイル(射程2-4㎞)を直接供与することを決定しています

なおEUは、ウクライナへの武器提供を行った国に、計約550億円の資金を援助すると表明しています

●ドイツ(紛争参加国に武器を供与しないとの国是を破り)
・1000セットの対戦車兵器
・500セットの携帯型SAMスティンガー

●スウェーデン
・5000セットの対戦車兵器

Stinger SAM3.jpg●フィンランド
・1500セットのロケットランチャ
・2500丁の狙撃銃

●ノルウェー(武器禁輸を国是としてきたが、ウクライナ情勢を受け方針転換)
・2000セットのM72対戦車兵器

●オランダ
・200セットの携帯型SAMスティンガー

●イタリア
・携帯型SAMスティンガー、迫撃砲、機関銃2種類
・対戦車ミサイル(イスラエル製Spikeはイスラエルとの関係で困難)
・仕掛け爆弾対処装備
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Stinger SAM2.jpgイタリアは、ポーランドやルーマニアに持ち込み、そこからウクライナとの国境でウクライナ側に提供するルートのようです

ロシアが「航空優勢」を握っているが、「制空権」確保には至っておらず・・・と言われていますが、脆弱な飛行場インフラが大きな被害を受けているようですので、ウクライナ西部国境付近からウクライナの主要都市への輸送ルートが課題でしょうか

ウクライナに関する軍事的な視点
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-27
「ウクライナ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-17
「ウクライナで戦闘機による制空の時代は終わる?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08

小泉悠氏によるウクライナ情勢分析
2月2日→https://holylandtokyo.com/2022/02/07/2698/
12月中旬→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-22

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6機製造中B-21とE-3後継選定の動き [米空軍]

FacebookとTwitterもご活用ください!
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Twitter→https://twitter.com/Mongoose2011
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B-21 B-2.jpg2月9日付米軍事メディアが、模範的な「モデル開発案件」として2022年中には初飛行を予定する「B-21ステルス爆撃機」の開発状況と、老朽化で稼働率が急落するE-3早期警戒管制機の後継選定の動きを報じていますのでご紹介いたします

F-35やKC-46のようなトラブル満載の航空アセット開発ばかりをご紹介する機会が多いのですが、寒さ厳しき折、少しは明るそうな話題を提供させていただきます。少なくとも現時点では、2件とも特に問題の無い調達案件です

B-21次期爆撃機を6機製造中で2022年に初飛行へ

B-21 artistic.jpg9日付米空軍協会web記事は、同日米空軍Global Strike コマンド計画部長の「核抑止サミット」での発言を取り上げ、現在6機のB-21次期ステルス爆撃機を順調に製造中で、模範的な「モデル開発案件」として2022年中には初飛行を行うと報じています

B-21開発については、2019年7月には当時の米空軍副参謀総長が「初飛行は863日後だ(2021年12月3日)」と語り開発の順調さをアピールしていましたが、その後関係者の発言はトーンダウンし、2021年1月には2機試験機製造中、2021年9月にはKendall空軍長官が「合計5機製造中」と明らかにし、時々シルエット写真が公開されたりして期待感をあおっているところです

B-21 bomber.jpg講演したJason R. ArmagostGSC計画部長(少将)は、「私には初飛行予定日に言及する権限はないが、今年の何時かに機体を披露し、その後速やかに初飛行を行うことになる」、「模範的なモデル開発案件となっているB-21開発は、デジタル技術を生かして迅速な開発を実現している」と説明しています

また同少将は、「デジタルモデルを基礎とした開発とソフトのオープンシステム化で、例えば燃料管理システムは、まだ初飛行前にもかかわらず燃料システムモデルを用いてソフト試験を重ね、複雑なソフト開発を完了している」と説明し、このような手法はB-52爆撃機エンジン換装における翼の強度確認等でも使用され実績を残していると自信たっぷりに説明しています。

さすがに2021年12月の初飛行予定は「大ぶろしき」だったようですが、開発全体は順調なようで、今年中の「機体お披露目」と「初飛行」は大きなニュースになりそうです


E-3 AWACS後継検討に企業に情報要求書を

ここ数か月で急速に後継導入機運が盛り上がり
ボーイングの「E-7 Wedgetail」で実質決まりでしょうが

E-7 2.jpg2月8日、米空軍がE-3早期警戒管制機の後継機選定に関する情報要求書(RFI:request for information)を関連企業に提示し、その内容から2023年にも米空軍が後継機導入契約を結ぶことを念頭に置いていることが明らかになりました

30日以内の回答を求めた「RFI」は、あくまでも検討資料収集目的で、次の段階となる提案要求書につながるものではない前提だそうですが、契約後5年で地上訓練機材等も含め少なくともプロトタイプ機2機の納入が可能かや、関連能力を有する機体かどうかを確認する内容になっているようです

E-7.jpg米空軍が保有する31機のE-3は、平均年齢43歳で機体稼働率が急激に低下しており、比較的若い「G型」でも稼働率が2020年70.7%から2021年60.7%に10%も低下し、古い「B型」は同期間で65.8から55.8%に低下している厳しい状況に直面しており、前線部隊から後継機早期導入を求める声が高まっていたところです

「RFI」は、先進的な「360度をカバーする空中移動目標捜索レーダー」、「敵味方識別能力」、「海洋監視レーダー能力」の他、「指揮統制」、「航空管制」、「近接航空支援」、「SEAD」、「空中給油」、「捜索救難」を支援可能な能力に関する情報提供を求めているようです

E-3 2.jpg既に米空軍は昨年10月、E-7製造元のボーイングに対し、現形態のE-7を米空軍規格に適合させるために、何をどのくらいの経費で実施する必要があるかの検討を依頼しており、結論は実質出ているような気がするのですが、一応ステップを踏んでいるのかもしれません

E-3後継機に関する動き
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