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目標放棄:主要戦闘機の稼働率8割 [米空軍]

マティス長官が2018年10月に設定した目標
次期空軍参謀総長候補が議会で証言

Brown nomination2.jpg7日、次期空軍参謀総長候補であるCharles Q. Brown太平洋空軍司令官が議会承認を得るため上院軍事委員会で証言し、2018年10月に当時のマティス国防長官が米軍の主要戦闘機(F-35、F-22、F-16、FA-18)に対し設定した「稼働率8割目標」を、2020年以降は掲げないと説明しました

今後は、マティス長官目標以前の形態、つまり各部隊指揮官が任務や機種の特性に応じて設定する任意の指標を目標として報告する形に戻す一方で、効率的で費用対効果の高い機体維持を追求するため取り組み始めている「strategic sustainment framework」などを通じ、また民間の維持整備手法からも学んで維持費の削減を目指すと説明しています

また、Willson長官時代の2018年8月に米空軍が打ち出した将来の夢構想「The Force We Need」で目指すとした、飛行隊数を70以上増加させて386個とする目標に関しても極めて慎重な表現で「当面は現状程度で頑張るが、386以下では将来にリスク」と官僚っぽい対応を見せています

7日付Defense-News記事によれば
Brown nomi.jpg7日の上院軍事委員会用にBrown大将が準備した資料には、昨年2019年の対象機種の最高稼働率が示され、前年2018年より向上したと主張されているが、「Air Force Times」と「Defense News」が入手した2019年の年平均稼働率データからは、米空軍主要戦闘機の厳しい状況がうかがえる
F-22に関しては、巨大ハリケーンのためにティンダル基地で17機が被害を受けた影響もあるが、結果として米空軍の対処機種は8割を達成できていない。F-35に関しても様々にアピールされているが、まだ新しい期待を使用している部隊立ち上げ段階でこの状況である

   稼働率% 2018年  2019年  2019年最高
   F-16    70    73    75(7月)
   F-22    52    51    68(4月)
   F-35    50    62    74(9月)

Brown大将は証言で「国防長官室は、2018年から始まった主要戦闘機稼働率8割取り組みに関し、2020年度は取り組まないと決定している」と述べ、代わりに、各航空部隊指揮官が定める従来の即応態勢指標を目指すと説明した
●同大将は「今現在の戦いのための態勢の維持と将来への備えのバランスを引き続き追及する。老朽化が進むすべての装備品を維持することは難しくコストもかかるが、維持整備費削減に向け、民間分野を含む最新技術や手法にも目を向け取り組んでいく」と説明した

Goldfein8.jpgこの稼働率8割目標に関しては従来から米空軍内の反発が強く、現在のGoldfein参謀総長も、即応態勢は如何に任務を首尾よく遂行したかによって測られるのもので、機体の稼働率だけから評価されるものではないと昨年8月に述べており、操縦者や整備員等の技量レベル、配分飛行時間、部品や燃料等の準備状況など多様な指標によって総合的に評価されるべきだと主張している
一方で空軍は稼働率8割を前面に出さない代わりに、導入を進めている「strategic sustainment framework」との手法を通じ、各拠点での維持整備作業の状況をネットワークで共有することや、「conditions-based maintenance」の導入に取り組んでいくとBrown大将は説明した

他に、Willson空軍長官時代の2018年夏に取りまとめた「The Force We Need」でぶち上げた、386個飛行隊への飛行隊数25%増構想に関する議員からの質問に対し同大将は、必要な増強だと述べる一方で
当面の間、つまり近い将来においては、国家防衛戦略NDSを遂行する体制にあると説明し、「将来的には386飛行隊態勢に向かう必要があり、それ以下はリスクを伴う」と述べた

F-35.jpgただし、米空軍がそのレベルに完全に達することができない可能性があることは認めつつ、無人機を最大限に活用する体制構築などを通じて、その穴を埋めていきたいと表現し、「386に少し足りないかもしれないが、有人機と無人機の連携、例えばXQ-58 Valkyrieのようなシステムと第5世代機の編隊連携なども含め、我々の活動範囲や状況把握能力を向上させていく」と説明した
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まぁ・・・米空軍のみならず米軍は、20年続いている対テロから中国ロシアとの本格紛争への備えに移行を図る過渡期にあり、従来装備品を大胆に早期退役させて新型装備に切り替えたり、ネットワーク重視の戦い方に転換しようとしている途上にあり、予算総額が横ばいの中、「メリハリ」をつけた予算配分もせざるを得ず、「稼働率」だけを追求できない状況にあり、このような形になったものと思います

Mattis.jpg邪推ですが、おそらく当時のマティス長官は、「今現在の戦いへの態勢の維持と将来への備え」のバランスを取ると海軍や空軍は言うが、表面を取り繕っているだけで実態は十分な統制が取れているとは言えないことから、せめて今の「即応態勢」を確保を確実とするため、わかりやすい「稼働率」目標を示したのだと思いますが、うまくいかなかったようです

「386飛行隊」への増強夢構想については、米海軍が無理と分かっていながら「355隻体制」を訴え続けていることから真似したんじゃないかと邪推していますが、それでなくてもコロナで大変なBrown次期参謀総長ですから、突っ込まないで上げてほしいと思います

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