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米軍基地勤務の韓国人5千名レイオフ開始 [安全保障全般]

駐留経費を巡る米韓の合意未成立の影響で
4倍増求める米側が態度変えず
コロナ対策への高評価で韓国政権支持率上昇中で

Korea3.jpg3月31日付Defense-Newsは、在韓米軍の駐留経費負担額を巡る米韓交渉が2019年に決裂し、その後も双方に歩み寄りがない中、4月1日から約5000名の在韓米軍基地で働く韓国人労働者に対する給料支払いがストップし、レイオフ(一時的解雇:furloughed)が始まったと報じ、4月15日の韓国総選挙を控え、情勢が注目されると解説しています

トランプ大統領が韓国側に、SMA(Special Measures Agreement)で決定される韓国側負担額の4倍増を要求したことから、5年ごとに実施されるSMA見直しが2019年に決裂し、今年3月17日にLAで行われた7回目の米韓交渉でも実質進展なく終了しているようです。なおSMAは1991年から更新されつつ今日に至っています

Korea5.jpg様々な要因が絡む本交渉で、4月15日に予定される韓国総選挙の結果も大きな要素ですが、各方面から評判の悪かった韓国大統領が、コロナ対策で韓国国民からの評価を急上昇させつつあり、3月23日の週の世論調査では最近で最高の50%以上の支持率を集め、総選挙の結果次第では、韓国側の出方に影響を与えるとの見方が出ているようです

5千名のレイオフにより困っているのは韓国人労働者だけでなく、在韓米軍基地で勤務する米軍人もで、南北境界線から遠い場所に新設された在韓米軍司令部を含むCamp Humphreysに移動したばかりの米兵が、施設の整備や維持管理を行う人を失い、米兵が任務外の仕事を行う事態になる可能性が高くかわいそうな状況です。

結論や落とし所が見えない状況ですが、日本にも「飛び火」する可能性のある件ですので、状況をご紹介しておきます。

3月31日付Defense-News記事によれば
米軍駐留経費負担の4倍増を求められた韓国政府は、以下のような主張で米側の過剰な要求に反発している
--- 韓国は駐留経費以外にも、例えば、米軍の海外における最大の基地である「Camp Humphreys」建設費の9割(約1兆円)を負担している(ソウル市内の南北境界線から近い位置から、70kmほど南に位置。家族用住宅や福利厚生施設も充実)

--- 米国製兵器3兆円のFMS購入契約を結んでいる。例えば、F-35、グローバルホーク、F-16近代化改修、イージス艦システム、パトリオットPAC-3、ハプーン対艦ミサイル、AH-64Eアパッチヘリなどなど
--- 上記FMS契約以外にも、2014年以降商業ベースで、約2.8兆円規模の国防関連装備品や兵器を米国から輸入している

Korea4.jpg●また、韓国国防相は最近Defense-Newsに寄稿し、「これまで増額を続けてきた在韓米軍の安定を支える約7700億円の駐留経費負担に加え、土地や建物の提供、共同訓練や演習への協力支援、軍需産業間の協力関係など」で貢献してきたと主張している。

2005-2008年に在韓米国大使を務めたAlexander Vershbow氏は、「北朝鮮の脅威もあり、トランプ大統領は交渉の主導権を握り、主張を押し通すことが出来るかもしれない。しかし韓国側に一方的な譲歩を強制することは、韓国国民からの支持を大きく損ねることとなり、Pyrrhic victory(古代ギリシャの歴史・ピュロスの勝利「損害が大きく、得るものが少ない勝利)になりかねない」と警告している
Atlantic Councilのアジアプログラム部長であるMiyeon Oh氏は、「この韓国人労働者レイオフはSMA交渉に更なる不確実性をもたらした。コロナ対策で各国が忙殺される中、その混迷度が深まったと言える。SMA交渉に関する両国間の溝が縮まる気配はないが、両国安保上の連携やコロナ対処における連携の障害になってはならない」と警鐘を鳴らした
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当初、コロナ感染が地方の教会を発信源に爆発的に広がった韓国ですが、積極的にコロナ検査を行う作戦(既に42万人に実施)で、現時点では感染者数の発生増加を比較的抑えられている(3月31日で新規感染101名)と評価されているようです。

Korea2.jpg年初頃には、レイオフされる5千名が反韓国政権の動きに加わると警戒されていたようですが、コロナ対策への評価で「どうしようもない」現大統領への韓国内の支持率が5割強となっている状況で、日韓「通貨スワップ」について、上から目線の発言を韓国閣僚が始めた背景もそのあたりに原因がありそうです

コロナ感染で、イタリアの道でなく、韓国の道を目指すとぶち上げた米国が厳しい状況におかれていますが、駐留経費については、日本にも「飛び火」する可能性のある件ですので注意しておきましょう

韓国は「対北」を越えた軍備増強中
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-03

在韓米軍関連の記事
「在韓米軍司令部が70㎞南へ移動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-08
「韓国の米軍再編は順調」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-27
「在韓米軍は兵士に不人気?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-10-02

KF-X関連の記事
「KF-Xは欧州のミサイル搭載?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-30-1
「米が韓への技術提供拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-28
「KF-X計画公式発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-01-1
「韓国KF-Xは2個エンジン」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-22
「F-35がらみでKF-X支援要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-31

韓国とF-35関連記事
「韓国F-35とKF-Xのゴタゴタ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-04
「韓国F-35とKF-X」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-25
「韓国がF-35に最終決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-22-1
「急転直下:F-35を選定か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-19

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