次の米空軍トップは太平洋空軍司令官Brown大将 [米空軍]
初めての黒人空軍参謀総長誕生へ
他軍種を含め史上初めての黒人が軍種トップへ
トランプ大統領が推挙し、夏に交代予定
2日エスパー国防長官は、トランプ大統領が次の米空軍参謀総長候補者(第22代)として、現在太平洋空軍司令官を務めるCharles Q. Brown空軍大将を米議会に推挙したと発表しました。
米議会でこの人事が承認されれば、米空軍のみならず、陸海空軍と海兵隊の軍人トップに、初めて黒人大将が就任することになります。ちなみに統合参謀本部議長には、パウエル陸軍大将(後の国務長官)が就任したことはありますが・・・
Charles Q. Brown空軍大将は1962年生まれの58-59歳で、テキサス工科大学出身のF-16パイロットです。技量優秀な操縦者が務める「Weapons School」司令官を務めたほか、B-1、B-2、B-52爆撃機、C-130など15機種で2500時間近い飛行時間を持つパイロットです
2018年7月に太平洋空軍司令官に就任するまでは、アジア経験が中尉時代に韓国KunsanでF-16パイロットとして1.5年、大佐である同基地司令官として1年間のみで、朝鮮半島情勢が不安定な中、太平洋軍や太平洋空軍司令部のあるハワイ勤務経験が無い状態でしたが、現職での2年間で、北朝鮮情勢から中国、更には極東ロシア軍情勢まで、インド・アジア太平洋地域への見識を十分すぎるほど蓄えたと言えましょう
中東地域に関しては十分すぎる経歴で、2011年から2018年7月の間に、、中央軍作戦副部長、中央軍空軍副司令官、中央軍空軍司令官、そして中央軍副司令官と、アフガンから対IS作戦を含め、アラブの春以降の困難な中東情勢を、統合の立場を含めて経験した人物です
更に欧州やアフリカに関しても、イタリアで航空団司令官を務めた後、少将として2014年から欧州&アフリカ米空軍司令部(@ドイツ)で戦略作戦部長を務めており、米軍が直面する難しい作戦地域全てに、それも最近の勤務経験がある他を持って代えがたい人物です
また、空軍大学のACSC(指揮幕僚コース)を優秀成績者として卒業した頭脳明晰な人物で、ワシントンDCでは、大尉として米空軍参謀総長の副官室勤務を、大佐として空軍長官直属の特別検討チーム長を務めた経験を持ち、早くから将来を嘱望されたパイロットであることが伺えます
3日付エアフォースタイムズ記事によれば
●エスパー国防長官は推挙発表声明で、「空軍参謀総長の職は、重要で困難なもので、今後中国やロシアなどに対抗する大国間の競争に軍事的シフトを図る複雑さが増すばかりの任務である。Brown大将は、適した才能と経験を持って、米空軍の能力と即応性を研ぎ澄ませ、同盟国等との絆を強固なものにしてくれるだろう」と期待を示している
●Barrett空軍長官は、「米空軍は不屈のCQ Brown大将によって導かれることになる。彼の比類なき戦略眼と作戦運用能力に裏打ちされたリーダーシップにより、米空軍は国家防衛戦略遂行に引き続き集中して取り組んでいく」とコメントしている
●この夏に退役する予定の現在のGoldfein空軍参謀総長は、「米空軍が生み出した最良の空軍戦士の一人である。彼の世界中をカバーする知見、アジア、中東、欧州での経験は、今後の米軍の作戦運用等を考える時、何よりも、誰よりも強力なものとなろう」と表現している
●かつてBrown大将を部下に持ったことがあるCarlisle元空軍戦闘コマンド司令官(太平洋空軍司令官も経験)は、「CQとのコールサインのBrown大将は、厳しい仕事を部下に押し付けるたり、他部署に責任を押し付けることは決してしなかった。静かで内気な面も垣間見せる男だが、厳しい決断や困難な仕事から逃げることは決してなかった」、「一方で、本当に必要と思うことには徹底的にこだわり、厳しい予算審議の中でも、周到な準備を基に熱い情熱で議論に臨み、同時に最後に折り合うことにも潔かった」と述べている
●またカーライル氏は、「ジムで汗を流すことが好きで、厳しい勤務の中でも疲れた表情を見せない心身ともにたくましい男だが、同時に大変な読書家で、歴史から現代戦略までを広範に読んでおり、彼が人の前で話す内容には含蓄がある」と表現した
●更に部下からの人望の厚さも際立っていると同氏は述べ、「彼の下で働いた多くの兵士が彼の下で働くことに喜びを感じるタイプであり、部下を恐怖で従わせるタイプとは真逆である」とも評している
●James元空軍長官は、ペンタゴンでの統合職勤務がないという人もいるが、難しい中東作戦遂行に際し、各軍種のみならず、米議会とのパイプ役としても精力的で信頼のおける働きぶりが印象的で、国防省の外でも評判の良い人材である、と評価している
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下にBrown太平洋空軍司令官関連の過去記事をまとめましたが、対中国正面の西太平洋地域の情勢を、率直に厳しいと公言できる司令官でした。
中国のA2AD能力の急速な増強を前に、「西太平洋の基地防御は困難」と語り、「太平洋戦争時に取り組んだ欺まんで、中国軍をだますことまで考えないとだめだ」と厳しい情勢認識を示し、現在の太平洋空軍アセットが集中するグアムや嘉手納や三沢基地からの戦力分散を訴えて訓練を進めるなど、決してあきらめない姿勢で部隊を引っ張っていた様子が印象的です
太平洋空軍司令官として、航空自衛隊関係者を中心として日本人とのつながりもできたでしょうから、トランプ政権による武器の押し売り圧力の中でも、日米の良好な関係の維持構築に尽力いただくことを祈念しつつ、ご紹介させていただきました
もちろん、トランプ大統領が「黒人票」を狙って「初の黒人・・」を話題にしたとの声も聞かれますが・・・
次の米空軍トップ候補:Charles Q. Brown空軍大将の公式経歴
→https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/108485/major-general-charles-q-brown-jr/
Brown太平洋空軍司令官の関連
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
「現空軍トップとベトナム訪問」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-14
「中露空軍の連携飛行を警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-31
「PACAFが緊急避難訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-27
「南シナ海で中国軍鎮静化?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-28
「燃料と弾薬の備蓄不足を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02-1
「新司令官初海外は日本横田総隊」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-14
「Brown大将の経歴などご紹介」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19
他軍種を含め史上初めての黒人が軍種トップへ
トランプ大統領が推挙し、夏に交代予定
2日エスパー国防長官は、トランプ大統領が次の米空軍参謀総長候補者(第22代)として、現在太平洋空軍司令官を務めるCharles Q. Brown空軍大将を米議会に推挙したと発表しました。
米議会でこの人事が承認されれば、米空軍のみならず、陸海空軍と海兵隊の軍人トップに、初めて黒人大将が就任することになります。ちなみに統合参謀本部議長には、パウエル陸軍大将(後の国務長官)が就任したことはありますが・・・
Charles Q. Brown空軍大将は1962年生まれの58-59歳で、テキサス工科大学出身のF-16パイロットです。技量優秀な操縦者が務める「Weapons School」司令官を務めたほか、B-1、B-2、B-52爆撃機、C-130など15機種で2500時間近い飛行時間を持つパイロットです
2018年7月に太平洋空軍司令官に就任するまでは、アジア経験が中尉時代に韓国KunsanでF-16パイロットとして1.5年、大佐である同基地司令官として1年間のみで、朝鮮半島情勢が不安定な中、太平洋軍や太平洋空軍司令部のあるハワイ勤務経験が無い状態でしたが、現職での2年間で、北朝鮮情勢から中国、更には極東ロシア軍情勢まで、インド・アジア太平洋地域への見識を十分すぎるほど蓄えたと言えましょう
中東地域に関しては十分すぎる経歴で、2011年から2018年7月の間に、、中央軍作戦副部長、中央軍空軍副司令官、中央軍空軍司令官、そして中央軍副司令官と、アフガンから対IS作戦を含め、アラブの春以降の困難な中東情勢を、統合の立場を含めて経験した人物です
更に欧州やアフリカに関しても、イタリアで航空団司令官を務めた後、少将として2014年から欧州&アフリカ米空軍司令部(@ドイツ)で戦略作戦部長を務めており、米軍が直面する難しい作戦地域全てに、それも最近の勤務経験がある他を持って代えがたい人物です
また、空軍大学のACSC(指揮幕僚コース)を優秀成績者として卒業した頭脳明晰な人物で、ワシントンDCでは、大尉として米空軍参謀総長の副官室勤務を、大佐として空軍長官直属の特別検討チーム長を務めた経験を持ち、早くから将来を嘱望されたパイロットであることが伺えます
3日付エアフォースタイムズ記事によれば
●エスパー国防長官は推挙発表声明で、「空軍参謀総長の職は、重要で困難なもので、今後中国やロシアなどに対抗する大国間の競争に軍事的シフトを図る複雑さが増すばかりの任務である。Brown大将は、適した才能と経験を持って、米空軍の能力と即応性を研ぎ澄ませ、同盟国等との絆を強固なものにしてくれるだろう」と期待を示している
●Barrett空軍長官は、「米空軍は不屈のCQ Brown大将によって導かれることになる。彼の比類なき戦略眼と作戦運用能力に裏打ちされたリーダーシップにより、米空軍は国家防衛戦略遂行に引き続き集中して取り組んでいく」とコメントしている
●この夏に退役する予定の現在のGoldfein空軍参謀総長は、「米空軍が生み出した最良の空軍戦士の一人である。彼の世界中をカバーする知見、アジア、中東、欧州での経験は、今後の米軍の作戦運用等を考える時、何よりも、誰よりも強力なものとなろう」と表現している
●かつてBrown大将を部下に持ったことがあるCarlisle元空軍戦闘コマンド司令官(太平洋空軍司令官も経験)は、「CQとのコールサインのBrown大将は、厳しい仕事を部下に押し付けるたり、他部署に責任を押し付けることは決してしなかった。静かで内気な面も垣間見せる男だが、厳しい決断や困難な仕事から逃げることは決してなかった」、「一方で、本当に必要と思うことには徹底的にこだわり、厳しい予算審議の中でも、周到な準備を基に熱い情熱で議論に臨み、同時に最後に折り合うことにも潔かった」と述べている
●またカーライル氏は、「ジムで汗を流すことが好きで、厳しい勤務の中でも疲れた表情を見せない心身ともにたくましい男だが、同時に大変な読書家で、歴史から現代戦略までを広範に読んでおり、彼が人の前で話す内容には含蓄がある」と表現した
●更に部下からの人望の厚さも際立っていると同氏は述べ、「彼の下で働いた多くの兵士が彼の下で働くことに喜びを感じるタイプであり、部下を恐怖で従わせるタイプとは真逆である」とも評している
●James元空軍長官は、ペンタゴンでの統合職勤務がないという人もいるが、難しい中東作戦遂行に際し、各軍種のみならず、米議会とのパイプ役としても精力的で信頼のおける働きぶりが印象的で、国防省の外でも評判の良い人材である、と評価している
///////////////////////////////////////////////////////
下にBrown太平洋空軍司令官関連の過去記事をまとめましたが、対中国正面の西太平洋地域の情勢を、率直に厳しいと公言できる司令官でした。
中国のA2AD能力の急速な増強を前に、「西太平洋の基地防御は困難」と語り、「太平洋戦争時に取り組んだ欺まんで、中国軍をだますことまで考えないとだめだ」と厳しい情勢認識を示し、現在の太平洋空軍アセットが集中するグアムや嘉手納や三沢基地からの戦力分散を訴えて訓練を進めるなど、決してあきらめない姿勢で部隊を引っ張っていた様子が印象的です
太平洋空軍司令官として、航空自衛隊関係者を中心として日本人とのつながりもできたでしょうから、トランプ政権による武器の押し売り圧力の中でも、日米の良好な関係の維持構築に尽力いただくことを祈念しつつ、ご紹介させていただきました
もちろん、トランプ大統領が「黒人票」を狙って「初の黒人・・」を話題にしたとの声も聞かれますが・・・
次の米空軍トップ候補:Charles Q. Brown空軍大将の公式経歴
→https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/108485/major-general-charles-q-brown-jr/
Brown太平洋空軍司令官の関連
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
「現空軍トップとベトナム訪問」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-14
「中露空軍の連携飛行を警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-31
「PACAFが緊急避難訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-27
「南シナ海で中国軍鎮静化?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-28
「燃料と弾薬の備蓄不足を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02-1
「新司令官初海外は日本横田総隊」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-14
「Brown大将の経歴などご紹介」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19
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