米海軍は5年計画で新型大型艦艇を研究開発設計へ [Joint・統合参謀本部]
老朽イージス艦の後継を検討開始
発電量やスペース確保を重視で船体を新設計
既存のイージスシステム搭載を前提にリスクを低く
2月13日付Defense-Newsは、10日に公開された国防省2021年度予算案に、米海軍が5年計画で開始する次期大型艦艇(LSC:large surface combatant)の予算約50億円を計上し、2022年以降は3倍の150億円程度を計上する方向であると報じています
この次期大型艦艇LSCは2020年代後半に建造開始を予定するもので、イージスシステムは現有で最新のFlight III Arleigh Burke級のシステムをそのまま活用して開発リスクを下げ、一方で将来艦艇に求められる電子戦能力強化やエネルギー兵器搭載を見据えた発電能力強化や、より大型の攻防ミサイルを搭載するためのスペース確保を狙った新たな船体(Hul)設計に重点を置く研究開発設計を目指す方向にあるようです
大型艦艇の脆弱性が問題視され、中小型の無人艦艇導入を推奨するシンクタンク報告が出る転換点にある水上艦艇部隊ですが、それでも米海軍が2021年度予算から研究開発設計予算を計上開始したようですので、次期大型艦艇(LSC:large surface combatant)の方向性についてご紹介しておきます
13日付Defense-News記事によれば
●10日に発表された国防省の2021年度予算案から、米海軍が5年計画で次世代「LSC」の「research, testing and design」を開始する事が明らかになった
●予算案の文書には、既に存在する性能が証明済みのイージスシステムを、将来装備搭載のための柔軟性や拡張性を備えた新たに設計する船体に搭載する方向で検討することが示されている
●LSCの研究開発設計には、20201年度に約50億円、次年度は約3倍の145億円、その後は約160億円が投入される予定になっており、既に2019年には、関連企業に情報提供を求めるRFIを発出している
●2021年度要求の約50億円の中には、空母フォードで完成が遅れ批判を浴びている「弾薬運搬エレベータ」を、陸上で事前に試験して艦艇に搭載しても問題がないことを確認する設計試験経費約5.5億円も含まれている
●LCSの全体計画では、2021年中旬に要求性能審査を行い、2025年後半の建造企業の意見も踏まえた設計審査を経て、2020年代後半には1番艦の建造を開始することになっている
●冒頭で触れたように、米海軍はLSC開発リスクを局限するため、Flight III Arleigh Burke級イージス駆逐艦のミサイル探知レーダーや目標情報処理ソフト「Aegis Baseline 10」を、そのまま活用しようと考えている
●一方で米海軍は、将来の拡張性余地を最大限にした新しい船体設計を念頭に置いており、そこでは拡張性を支えるスペース、重量負荷容量、電力余力が求められることになる
●米海軍は具体的に、多くのより大型で飛翔速度が速く射程が長いミサイル、艦艇の全周をカバー可能なエネルギー防御兵器、電子戦装備、各種センサー、コンピュータシステム等を将来柔軟に増強したいと考えている
●このような米海軍のLSCへのアプローチは、イージスシステムを最初に導入した際、新たな船体を準備するのではなく、まず当時既存のSpruance級駆逐艦を少し改造してにAN/SPY-1レーダー等のシステムを搭載し、イージスシステムの機能動作が安定したことを確認した後にArleigh Burke級建造に着手した手法をまねたものである。
●別な言い方をすれば、新たな技術の山盛り導入を試みた結果、開発が長引いて価格が天井知らずとなり、わずか2隻の建造でストップされたZumwalt級ステルス駆逐艦の反省を踏まえたアプローチを採用したともいえる
●元駆逐艦艦長で軍事コンサルタントのBryan McGrath氏は、「少しづつ確認しながら進むイージス艦方式は賢明な選択だ」、「今後の船体に必要な革新は、十分な電力量が確保できることで、電力の分配、管理、整流、貯蔵、冷却は、21世紀中盤以降の艦艇の主要課題になる」、「陸上で艦艇搭載システムを事前に十分確認しておくこともよい方向である」とコメントしている
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敵ミサイルの格好の目標となる大型艦艇中心の海軍力整備を改め、平時には有人でグレーゾーン対処にも運用し、有事には無人で運用可能な中小型艦艇を増強すべき・・・とのCSBAのレポートを以前ご紹介しましたが、米海軍としては、無人艦艇を指揮統制し、大型ミサイルの発射母体となる水上アセットが必要だと主張するのかもしれません
レーザー兵器で360度防御するといっても、レーザーの出力が現在の100kw程度から3-400kwに上がっても、超超音速兵器や弾道ミサイルへの対応は難しいとの見解を「空母フォード」関連の記事でご紹介しましたが、2020年代後半までには何らかの目途がついているとの見積もりがあるのかもしれません
いずれにしても、米海軍は厳しい予算編成を迫られています。そんな中、米議会が国防省の予算案に不満を示し、各分野で変更・差し替えを画策しています。いろんな問題点や指摘は別の機会に紹介したいと思いますが、米軍の中で最初に破たんするのは米海軍かもしれません、次に米空軍かな・・・
関連の記事
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「空母フォードにレーザー兵器搭載期待」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
「米海軍トップが軍種予算シェア見直し要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-16
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「空母フォード3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
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「NKのおかげSSBNに勢い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-2
発電量やスペース確保を重視で船体を新設計
既存のイージスシステム搭載を前提にリスクを低く
2月13日付Defense-Newsは、10日に公開された国防省2021年度予算案に、米海軍が5年計画で開始する次期大型艦艇(LSC:large surface combatant)の予算約50億円を計上し、2022年以降は3倍の150億円程度を計上する方向であると報じています
この次期大型艦艇LSCは2020年代後半に建造開始を予定するもので、イージスシステムは現有で最新のFlight III Arleigh Burke級のシステムをそのまま活用して開発リスクを下げ、一方で将来艦艇に求められる電子戦能力強化やエネルギー兵器搭載を見据えた発電能力強化や、より大型の攻防ミサイルを搭載するためのスペース確保を狙った新たな船体(Hul)設計に重点を置く研究開発設計を目指す方向にあるようです
大型艦艇の脆弱性が問題視され、中小型の無人艦艇導入を推奨するシンクタンク報告が出る転換点にある水上艦艇部隊ですが、それでも米海軍が2021年度予算から研究開発設計予算を計上開始したようですので、次期大型艦艇(LSC:large surface combatant)の方向性についてご紹介しておきます
13日付Defense-News記事によれば
●10日に発表された国防省の2021年度予算案から、米海軍が5年計画で次世代「LSC」の「research, testing and design」を開始する事が明らかになった
●予算案の文書には、既に存在する性能が証明済みのイージスシステムを、将来装備搭載のための柔軟性や拡張性を備えた新たに設計する船体に搭載する方向で検討することが示されている
●LSCの研究開発設計には、20201年度に約50億円、次年度は約3倍の145億円、その後は約160億円が投入される予定になっており、既に2019年には、関連企業に情報提供を求めるRFIを発出している
●2021年度要求の約50億円の中には、空母フォードで完成が遅れ批判を浴びている「弾薬運搬エレベータ」を、陸上で事前に試験して艦艇に搭載しても問題がないことを確認する設計試験経費約5.5億円も含まれている
●LCSの全体計画では、2021年中旬に要求性能審査を行い、2025年後半の建造企業の意見も踏まえた設計審査を経て、2020年代後半には1番艦の建造を開始することになっている
●冒頭で触れたように、米海軍はLSC開発リスクを局限するため、Flight III Arleigh Burke級イージス駆逐艦のミサイル探知レーダーや目標情報処理ソフト「Aegis Baseline 10」を、そのまま活用しようと考えている
●一方で米海軍は、将来の拡張性余地を最大限にした新しい船体設計を念頭に置いており、そこでは拡張性を支えるスペース、重量負荷容量、電力余力が求められることになる
●米海軍は具体的に、多くのより大型で飛翔速度が速く射程が長いミサイル、艦艇の全周をカバー可能なエネルギー防御兵器、電子戦装備、各種センサー、コンピュータシステム等を将来柔軟に増強したいと考えている
●このような米海軍のLSCへのアプローチは、イージスシステムを最初に導入した際、新たな船体を準備するのではなく、まず当時既存のSpruance級駆逐艦を少し改造してにAN/SPY-1レーダー等のシステムを搭載し、イージスシステムの機能動作が安定したことを確認した後にArleigh Burke級建造に着手した手法をまねたものである。
●別な言い方をすれば、新たな技術の山盛り導入を試みた結果、開発が長引いて価格が天井知らずとなり、わずか2隻の建造でストップされたZumwalt級ステルス駆逐艦の反省を踏まえたアプローチを採用したともいえる
●元駆逐艦艦長で軍事コンサルタントのBryan McGrath氏は、「少しづつ確認しながら進むイージス艦方式は賢明な選択だ」、「今後の船体に必要な革新は、十分な電力量が確保できることで、電力の分配、管理、整流、貯蔵、冷却は、21世紀中盤以降の艦艇の主要課題になる」、「陸上で艦艇搭載システムを事前に十分確認しておくこともよい方向である」とコメントしている
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レーザー兵器で360度防御するといっても、レーザーの出力が現在の100kw程度から3-400kwに上がっても、超超音速兵器や弾道ミサイルへの対応は難しいとの見解を「空母フォード」関連の記事でご紹介しましたが、2020年代後半までには何らかの目途がついているとの見積もりがあるのかもしれません
いずれにしても、米海軍は厳しい予算編成を迫られています。そんな中、米議会が国防省の予算案に不満を示し、各分野で変更・差し替えを画策しています。いろんな問題点や指摘は別の機会に紹介したいと思いますが、米軍の中で最初に破たんするのは米海軍かもしれません、次に米空軍かな・・・
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「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
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「米議会で中国抑止を考える」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17
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「空母フォード3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「攻撃原潜に新たな形態BlockⅤ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-07
「NKのおかげSSBNに勢い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-2
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