米空軍戦闘コマンドが将来戦闘機構想モドキに言及 [米空軍]
「Fighter」でなく「Capabilities」ロードマップと呼ぶとか
戦闘機で実施してきた任務をどう成し遂げていくか
30年後には戦闘機飛行隊の減少を望む
2月27日、フロリダ州オーランドで開催中の恒例の米空軍協会航空戦シンポジウムで、戦闘機族のボスである米空軍戦闘コマンド(ACC)司令官Mike Holmes大将が講演し、2018年の秋には取りまとめるはずが未だに形になっていない「fighter roadmap:戦闘機の将来構想」について、現在の戦闘機の役割をどのように受け継いでいくかを示す「capabilities roadmap」になるだろうと述べ、特に対中国正面では従来の戦闘機では任務を果たせない等と語り、同ロードマップの方向性について語りました
同司令官は「capabilities roadmap」がいつ出来上がるのかには言及せず、昨年11月に空軍司令部の戦略計画部長が「次世代の制空については様々なオプションが検討されているが、今後の技術的ブレークスルーを見極めつつ、AIやクライドやソフト開発の動向も踏まえて急がずに検討する」と説明した路線に変更はないようです
「急がずに検討する」というのは、分かりやすく言えば、お金がないし優先度が低いから後回しということで、米空軍参謀総長も2月10日の2021年度予算発表前後に、老朽航空機を早期退役させるなど、スクラップ&ビルドで予算をねん出して統合レベルの「連接性」や「ネットワーク化」強化に注力すると述べ、エスパー国防長官も国防予算の方針として「連接強化重視」の議会説明を始めているところです
そんな中でHolmes司令官は、今後の期間を5年ごとに大まかに区切り、F-16の後継を考え始める時期がいつ頃で、その後にNGAD(次世代の制空:Next-Generation Air Dominance)について考える・・・・みたいな形を提示し、のらりくらり感いっぱいですが、それでも「30年後には現在55個ある戦闘機飛行隊を維持しないような方向であることを望む」と語って、変化を受け入れる良い戦闘機パイロットの姿勢をチラリと見せています
27日付米空軍協会web記事によれば
●27日、Mike Holmes米空軍戦闘コマンド司令官は、これまで想定していた「fighter roadmap:戦闘機の将来構想」とのまとめ方ではなく、現在の戦闘機の役割をどのように受け継いでいくかを示す「capabilities roadmap」になるだろうと述べ、現在戦闘機が実施している任務は、戦闘機から、無人機や使い捨て航空機を組み合わせで引き継がれることになるだろうとの考えを示した
●そして同大将は、将来における「戦闘機とは何だ?」との議論をACC内で続けており、現在の戦闘機の役割は、使い捨て航空機(attritable aircraft)や無人機ウイングマンに引き継がれたり、現在とは異なるタイプの有人機が担う可能性もあると述べ、どの戦域で使用されるかによって異なるだろうとも表現した
●更に同司令官は、「徐々に、少しずつではあろうが、今から30年後には、現在の戦闘機飛行隊55個を維持することに拘らない状況になっていることを希望する。その頃までに我々は進歩し、異なった装備が入り込んでくるだろうと考えている」とも表現した
●「capabilities roadmap」については、大まかに5年毎になすべきことを整理すると述べ、ちょうど戦闘機に関する意思決定を自然に行うタイミングと重なるからだと同司令官は説明した
●第一段階では、退役が進みつつあるF-15Cの後継機導入を進め、これはF-15EXとF-35導入で行うと述べ、第4世代機であるF-15EXを新たに導入することについて同司令官は、「戦闘機部隊全体の平均年齢を下げる必要があるのだ。可能な予算範囲で戦闘機部隊を維持するためだ」と語った
●次の第二段階では、今後8年以内に検討する必要がある「pre-block」と呼ばれるF-16の「Block 25 and 30」の後継を決めるタイミングであると語り、「後継機に何を求めるかを定め、予算と獲得可能な能力を吟味することになる」と述べ、「低コストで使い捨て可能な機体や無人機ウイングマンなどなど、我々が今実験しているものを活用する機会でもある」と説明した
●第三段階は、まだ飛行可能な「post-Block F-16」と呼ばれる「Block 40s and 50s」を考えるタイミングであり、飛行できるだけでなく、戦いに有用であり続けるために近代化改修を決断すべき時期だと述べ、延命改修を示唆した。本件についてはMateriel Command司令官も、約10年の延命措置検討を示唆している
●最後の段階では、ACCとしてNGADを担う将来システムをどうすべきか決定すべきと同大将は語った。そして「今現在の戦闘機に関する考え方は、例えば航続距離、搭載兵器、展開距離などは、欧州線域ではそのまま通用するが、太平洋線域では距離の問題が克服できない」と課題の本質に触れ、「太平洋戦域では、NGAD検討において従来の戦闘機のような装備のニーズは必ずしも生まれないと思う。また距離と搭載量のトレードオフを迫るような機体は求められない可能性がある」と表現した
●同司令官は、空軍省のWill Roper調達担当次官が太平洋戦域向けの「低コスト使い捨て無人機」を検討し、長距離移動作戦の課題克服に取り組んでくれていると述べ、例えばB-21派生型の大型ミサイル搭載機とか、弾薬庫航空機構想なども候補として検討されていると説明した
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米空軍の戦闘機族のボスが、「現在の戦闘機任務は、無人機や使い捨て航空機にとってかわられる(Give way)」との表現や、「30年後には現在の55個戦闘機飛行隊を維持する方向でないことを願う」とか、「異なるタイプの有人航空機が将来のNGADを担う可能性がある」との表現で、全米の、いや世界の空軍関係者を前に語る時代が来ました
ゲーツ国防長官(当時)は2009年1・2月号のフォーリンアフェアーズ誌に「A Balanced Strategy:バランスの取れた戦略」との論文を投稿し、中国やロシアや新興脅威国の台頭を念頭に、「足の短い戦闘機の役割は小さくなる」喝破していましたが、10年以上を経て世界の空軍にも少しづつ浸透してきたということでしょう・・・
「A Balanced Strategyを振り返る」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2011-11-27
中国に近接する日本から、本来は脅威の変化を語る声が最初に上がるべきだと当時思いますが、今になっても我が空軍の戦闘機族に変化が見られないことが残念です
Holmes司令官を見習って、オフィス勤務時はフライトスーツじゃなくて、制服か戦闘服にすることから始めてはどうですか?
「脅威の変化を語らせて下さい」
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
「中国軍事脅威の本質を考えよう」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-12-30
意思決定先延ばしの次期制空機PCA
「CSBAの米空軍将来提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「連接重視で航空アセット削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「次期制空機検討は急がない、急げない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-19
「米空軍が次期戦闘機検討でギャンブル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05
「戦闘機族のボスがNGAD予算を危惧」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-21
「PCA価格はF-35の3倍?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15
「秋に戦闘機ロードマップを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-22
「PCA検討状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-12
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「F-35にアムラーム追加搭載検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-28
欧州の戦闘機関連話題
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
「独の戦闘機選定:F-35除外も核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
戦闘機で実施してきた任務をどう成し遂げていくか
30年後には戦闘機飛行隊の減少を望む
2月27日、フロリダ州オーランドで開催中の恒例の米空軍協会航空戦シンポジウムで、戦闘機族のボスである米空軍戦闘コマンド(ACC)司令官Mike Holmes大将が講演し、2018年の秋には取りまとめるはずが未だに形になっていない「fighter roadmap:戦闘機の将来構想」について、現在の戦闘機の役割をどのように受け継いでいくかを示す「capabilities roadmap」になるだろうと述べ、特に対中国正面では従来の戦闘機では任務を果たせない等と語り、同ロードマップの方向性について語りました
同司令官は「capabilities roadmap」がいつ出来上がるのかには言及せず、昨年11月に空軍司令部の戦略計画部長が「次世代の制空については様々なオプションが検討されているが、今後の技術的ブレークスルーを見極めつつ、AIやクライドやソフト開発の動向も踏まえて急がずに検討する」と説明した路線に変更はないようです
「急がずに検討する」というのは、分かりやすく言えば、お金がないし優先度が低いから後回しということで、米空軍参謀総長も2月10日の2021年度予算発表前後に、老朽航空機を早期退役させるなど、スクラップ&ビルドで予算をねん出して統合レベルの「連接性」や「ネットワーク化」強化に注力すると述べ、エスパー国防長官も国防予算の方針として「連接強化重視」の議会説明を始めているところです
そんな中でHolmes司令官は、今後の期間を5年ごとに大まかに区切り、F-16の後継を考え始める時期がいつ頃で、その後にNGAD(次世代の制空:Next-Generation Air Dominance)について考える・・・・みたいな形を提示し、のらりくらり感いっぱいですが、それでも「30年後には現在55個ある戦闘機飛行隊を維持しないような方向であることを望む」と語って、変化を受け入れる良い戦闘機パイロットの姿勢をチラリと見せています
27日付米空軍協会web記事によれば
●27日、Mike Holmes米空軍戦闘コマンド司令官は、これまで想定していた「fighter roadmap:戦闘機の将来構想」とのまとめ方ではなく、現在の戦闘機の役割をどのように受け継いでいくかを示す「capabilities roadmap」になるだろうと述べ、現在戦闘機が実施している任務は、戦闘機から、無人機や使い捨て航空機を組み合わせで引き継がれることになるだろうとの考えを示した
●そして同大将は、将来における「戦闘機とは何だ?」との議論をACC内で続けており、現在の戦闘機の役割は、使い捨て航空機(attritable aircraft)や無人機ウイングマンに引き継がれたり、現在とは異なるタイプの有人機が担う可能性もあると述べ、どの戦域で使用されるかによって異なるだろうとも表現した
●更に同司令官は、「徐々に、少しずつではあろうが、今から30年後には、現在の戦闘機飛行隊55個を維持することに拘らない状況になっていることを希望する。その頃までに我々は進歩し、異なった装備が入り込んでくるだろうと考えている」とも表現した
●「capabilities roadmap」については、大まかに5年毎になすべきことを整理すると述べ、ちょうど戦闘機に関する意思決定を自然に行うタイミングと重なるからだと同司令官は説明した
●第一段階では、退役が進みつつあるF-15Cの後継機導入を進め、これはF-15EXとF-35導入で行うと述べ、第4世代機であるF-15EXを新たに導入することについて同司令官は、「戦闘機部隊全体の平均年齢を下げる必要があるのだ。可能な予算範囲で戦闘機部隊を維持するためだ」と語った
●次の第二段階では、今後8年以内に検討する必要がある「pre-block」と呼ばれるF-16の「Block 25 and 30」の後継を決めるタイミングであると語り、「後継機に何を求めるかを定め、予算と獲得可能な能力を吟味することになる」と述べ、「低コストで使い捨て可能な機体や無人機ウイングマンなどなど、我々が今実験しているものを活用する機会でもある」と説明した
●第三段階は、まだ飛行可能な「post-Block F-16」と呼ばれる「Block 40s and 50s」を考えるタイミングであり、飛行できるだけでなく、戦いに有用であり続けるために近代化改修を決断すべき時期だと述べ、延命改修を示唆した。本件についてはMateriel Command司令官も、約10年の延命措置検討を示唆している
●最後の段階では、ACCとしてNGADを担う将来システムをどうすべきか決定すべきと同大将は語った。そして「今現在の戦闘機に関する考え方は、例えば航続距離、搭載兵器、展開距離などは、欧州線域ではそのまま通用するが、太平洋線域では距離の問題が克服できない」と課題の本質に触れ、「太平洋戦域では、NGAD検討において従来の戦闘機のような装備のニーズは必ずしも生まれないと思う。また距離と搭載量のトレードオフを迫るような機体は求められない可能性がある」と表現した
●同司令官は、空軍省のWill Roper調達担当次官が太平洋戦域向けの「低コスト使い捨て無人機」を検討し、長距離移動作戦の課題克服に取り組んでくれていると述べ、例えばB-21派生型の大型ミサイル搭載機とか、弾薬庫航空機構想なども候補として検討されていると説明した
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米空軍の戦闘機族のボスが、「現在の戦闘機任務は、無人機や使い捨て航空機にとってかわられる(Give way)」との表現や、「30年後には現在の55個戦闘機飛行隊を維持する方向でないことを願う」とか、「異なるタイプの有人航空機が将来のNGADを担う可能性がある」との表現で、全米の、いや世界の空軍関係者を前に語る時代が来ました
ゲーツ国防長官(当時)は2009年1・2月号のフォーリンアフェアーズ誌に「A Balanced Strategy:バランスの取れた戦略」との論文を投稿し、中国やロシアや新興脅威国の台頭を念頭に、「足の短い戦闘機の役割は小さくなる」喝破していましたが、10年以上を経て世界の空軍にも少しづつ浸透してきたということでしょう・・・
「A Balanced Strategyを振り返る」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2011-11-27
中国に近接する日本から、本来は脅威の変化を語る声が最初に上がるべきだと当時思いますが、今になっても我が空軍の戦闘機族に変化が見られないことが残念です
Holmes司令官を見習って、オフィス勤務時はフライトスーツじゃなくて、制服か戦闘服にすることから始めてはどうですか?
「脅威の変化を語らせて下さい」
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
「中国軍事脅威の本質を考えよう」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-12-30
意思決定先延ばしの次期制空機PCA
「CSBAの米空軍将来提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「連接重視で航空アセット削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「次期制空機検討は急がない、急げない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-19
「米空軍が次期戦闘機検討でギャンブル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05
「戦闘機族のボスがNGAD予算を危惧」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-21
「PCA価格はF-35の3倍?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15
「秋に戦闘機ロードマップを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-22
「PCA検討状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-12
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「F-35にアムラーム追加搭載検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-28
欧州の戦闘機関連話題
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
「独の戦闘機選定:F-35除外も核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
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