SSブログ

米海軍が半年かけ空母の将来像検討 [Joint・統合参謀本部]

内外の知見を集め・大きな変革の予感
元海軍長官や国防省高官や有力議員も交え

Modly.jpg9日、Thomas Modly海軍長官臨時代理が、「Future Carrier 2030」(通称:FC-2030)との特別チームを立ち上げ、現在4隻まで契約が終わっているフォード級空母の次の空母について、内外の関係者の知見を集め、約半年かけて検討すると明らかにしまし

発表リリースの中でModly長官代理は、「長期的にわが国が直面している課題とこの世界は、確かな視点と分析に基づく厳しい判断を求めている」、「フォード級4隻の契約が完了し、若干の考慮時間が許される中で、何が次に来るべきかを考える時だ」、「コスト、残存性、そして2030年代以降にも優越で融合された海軍戦力を建造する軍需産業基盤の維持すると言う国家的要請を踏まえて分析されなければならない」と検討の背景と論点と重要性を語っています

ASBM DF-21D2.jpg更に長官代理は軍需産業基盤に特に言及し、「空母建造には、約48州にまたがる約6万人の熟練技術者雇用が関わっており、水道の蛇口を開閉するようにはいかない。従って、検討結果が米国の軍需産業の競争力と雇用に恒久的なインパクトを与えることを念頭に、方向性の変更に当っては思慮深くあらねばならない」と述べています

9日付米海軍協会USNIサイト記事は加えて、空母は米海洋戦力の「かなめ」として機能してきたが、中国軍の対艦弾道ミサイル「DF-21 and DF-26」等のA2AD兵器を前に、空母の有用性に懸念が示されるようになってきており、従来の「空母は高速で移動でき、デコイや艦載機、更に随伴する艦艇群などにより受け入れ可能なレベルのリスク下で運用可能」との米海軍の主張を吟味することを迫られていると、背景を説明しています

ford_class3.jpgまた、2016年に米海軍が実施した「戦力構造分析:force structure assessment」において、カタパルトがなく垂直離着陸型艦載機と回転翼機を装備する強襲揚陸艦タイプの「軽空母」を押す声があり、シンクタンクからは今でも軽空母を押す声が強い中で、米海軍内では議論する動きさえ見られない点も外部から批判的議論を呼ぶことになると同記事は説明しています

以下では、9日付米海軍協会USNIサイト記事から、検討体制や同検討へのインプットとなる米海軍及び米海兵隊の動きなどをご紹介しておきます。「大山鳴動してねずみ一匹」の可能性もありますが、大きな判断が出る可能性もあるでしょうから・・・

9日付米海軍協会USNIサイト記事によれば

●検討態勢
---検討チーム長(executive director)は、米海軍省の高官。チーム長の補佐役に、海軍研究所と米海軍司令部作戦検討部からの派遣要員を当てる
---チーム長に助言する「FC-2030 Senior Executive会議」を編成し、John Warner元上院議員を名誉議長にし、John Lehman元海軍長官やChristine Fox元国防副長官、Randy Forbes元下院議員等で構成する
---米海軍の研究機関や高等教育機関は全て検討に貢献・関与する

●検討へのインプットや関連する諸検討
---海軍と海兵隊が米艦隊への要求事項をまとめた「Integrated Naval Force Structure Assessment」

---海軍と海兵隊を融合する海軍作戦「DMO:Distributed Maritime Operations」構想
---太平洋の島々での作戦を意識した「EABO:Expeditionary Advance Base Operations」構想
上2つは、現場からの脅威認識、最新艦艇技術動向や無人艦艇技術を基に検

---Norquist国防副長官が主導する国家艦艇建造要求見直し
---米海軍が無人機と有人機の役割を主に実施している「Air Wing of the Future」検討
/////////////////////////////////////////////////////////

ford-class2.jpg記事がこの「FC-2030」検討を、「Blue-Ribbon:最上級の、最高の」との形容詞表現をつけて紹介しているように、米海軍が大きな決意を持って臨むものと考えられます。もちろん、空母への様々な批判を封じ込めるため、「空母は今後も必要!」との「お墨付き」を狙ったものかもしれませんが・・・

1隻が1兆5千億円で、搭載アセットを含めると2兆円を優に超え、5千名の乗員が運命を共にする空母が、精密誘導兵器の拡散と射程精度向上で、大きな転換点を迎えていることは間違いありません

結論がどうなるにしても、議論の過程やデータをしっかりと残していただき、「大山鳴動してねずみ一匹」にならないように期待したいと思います

フォード級の話題
「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「解説:電磁カタパルトEMALS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

「空母フォード:3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「トランプはEMALSに反対」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-13
「空母フォード3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03

米海軍を巡る記事
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「ロシアの対艦超超音速ミサイル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-21
「空母1隻削減案に揺れる」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-29
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24

「中国巨大艦艇が就航」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-15-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。