やり直し歩兵戦闘車ブラッドレー後継選定 [Joint・統合参謀本部]
米陸軍の将来を占う装備もグダグダの機種選定
昨年応募企業が1社しかなく仕切り直しになった選定です
17日、米陸軍が1980年代から派生形を含め6500両以上使用してきたブラッドレー歩兵戦闘車(IFV)の後継車両となるOMFV(optionally manned fighting vehicle)機種選定のため、やり直しの提案要求書RFP案を公開し、今後40日間で関連企業から広く「案」への意見や質問を受け付けるようです
この「やり直し」選定は、当初は提案要求書に応えた提案から2社に絞り込み、プロタイプを製造させて最終的に1つを選ぼうと米陸軍が考えていたものの、要求性能や納期要求の厳しさから昨年11月に提案要求書に応えたのが「General Dynamics Land Systems」1社だけとなったことから、米陸軍が競争原理が働かないと選定の「やり直し」を今年1月に決定した経緯を受けて行われています
「やり直し」の原因になった現実を見ない要求や選定の進め方に米議会は激怒し、米陸軍幹部を厳しく叱責して「やり直し」を注視しているわけですが、今回米陸軍は具体的数値要求をあまり含まない「企業側の革新的な発想を促進する自由度の高い要求案」を公開して「ご意見」を伺い、正式な提案要求書を発出するステップを踏むようです
これまでのゴタゴタはさて置き、歩兵戦闘車両は米陸軍の戦い方の根本を問われる装備品で、現在のブラッドレー歩兵戦闘車も、20年以上の検討過程の紆余曲折を経て1980年から1994年まで量産が行われましたが、湾岸戦争やイラク戦争の教訓を経てたびたび改修されて今日に至っています
後継のOMFV(optionally manned fighting vehicle)について今日は触れませんが、「有人型のオプションも残して:optionally manned」との触れ込みで始まって、完全な有人機として開発されている米空軍のB-21次期ステルス爆撃機のように、完成品は「有人歩兵戦闘車」になると予想して間違いないでしょう
まずは現在のブラッドレー歩兵戦闘車(IFV)について
●1950年代から検討が始まり、幾つかの構想や試作も行われたが、甲論乙駁で量産に至らず、ブラッドレーM2としての量産が始まったのが1980年で、1994年までに偵察用派生型等を含め6700両以上が製造された。
●操縦3名輸送席6-7名で、機械化歩兵小隊は4両で編成され、M1戦車と行動を共にし、緊要時に輸送席から歩兵を下車させ、戦車と戦闘車両と歩兵が相互補完して作戦を遂行する運用が基本。このためM1戦車と同程度の速度性能が要求され、C-17輸送機で空輸可能なことも要求されている
●25mm機関砲とTOW対戦車ミサイル2発を搭載し、7.62㎜機関銃も装備している。アルミニウム装甲で成形炸薬弾(HEAT)の直撃に耐えられない点が問題視され、湾岸戦争後に装甲強化型への改修も行われた
●湾岸戦争では、敵車両撃破数でM1戦車を上回ったが、被撃破のほとんどは有軍相撃であったことから、赤外線識別装置が追加装備された
OMFVのやり直し選定について
17日付Defense-News記事によれば
●米陸軍の地上戦闘システム担当Brian Cummings少将は、「我々は5フェーズからなるOMFV計画の第1フェーズを粛々と進める過程で、産業界からの意見や革新的アイディアを得たいと考えている」、「真に変革をもたらす戦闘車両を兵士に提供するため、何が実現可能かに関する産業界からのご意見を楽しみにしている」とRFP案公開に合わせて語った
●陸軍の次世代先頭車両検討チームのRoss Coffman准将は、「過度に制約を設けることなく、期待される要求性能を正確に定めることが極めて重要だ」、「米陸軍は産業界とのオープンな対話を通じ、技術の最先端を反映したOMFVの要求性能を確実に定めたい」とコメントしている
●17日にwebサイト上で公開された提案要求書RFP案掲載ページでは、「産業界の設計思想の自由度を確保し、革新的発想を後押しするため、米陸軍は可能な限りパフォーマンスレベルの数値規定や細部指示を避けた」、「米陸軍は重箱の隅に提案を追う込むようなやり方を望んでおらず、産業界の皆さんが前向きに陸軍に革新をもたらすような最新技術融合と将来の拡張性確保を目指す提案をまとめ、陸軍のビジョン実現に共に取り組んでいただくことを望んでいる」と狙いを説明している
●今回の「案」への意見聴取を踏まえ、最終RFPを発出し、応募提案から最大5つの候補を選定して2021年6月に設計契約を結び、最終選考に進む予定である
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米陸軍がOMFV(optionally manned fighting vehicle)の要求性能をまとめるにあたり、どのような戦場の様相や相手を想定しているのか大変気になりますが、要求性能が固まったあたりでご紹介を考えたいと思います
それにしても、「産業界の設計思想の自由度を確保し、革新的発想を後押しするため」とは言え、「具体的数値掲載を避けた」提案要求書を提示され、提案が採用されなかった企業は、「恣意的な選定作業が行われた」とクレームをつけたりしないのでしょうか? 恐らく米陸軍内でも、様々な意見がある歩兵戦闘車でしょうから、内輪もめにならないように、またスッキリ選定が進むことを祈ります
OMFVは特別です。海兵隊が対中国を考え戦車部隊を廃止し、長射程兵器の導入を積極的に進めようとする中、米陸軍の作戦構想を直に反映しそうなOMFVの行く末に注目したいと思います
それにしても、今のブラッドレーとOMFVの写真や想像図からは、2つの違いがよくわかりませんねぇ・・・
米陸軍関連
「士官の昇任審査書類から写真除外へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-26
「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-13
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「射程1000㎞の砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
米海兵隊の変革関連
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
昨年応募企業が1社しかなく仕切り直しになった選定です
17日、米陸軍が1980年代から派生形を含め6500両以上使用してきたブラッドレー歩兵戦闘車(IFV)の後継車両となるOMFV(optionally manned fighting vehicle)機種選定のため、やり直しの提案要求書RFP案を公開し、今後40日間で関連企業から広く「案」への意見や質問を受け付けるようです
この「やり直し」選定は、当初は提案要求書に応えた提案から2社に絞り込み、プロタイプを製造させて最終的に1つを選ぼうと米陸軍が考えていたものの、要求性能や納期要求の厳しさから昨年11月に提案要求書に応えたのが「General Dynamics Land Systems」1社だけとなったことから、米陸軍が競争原理が働かないと選定の「やり直し」を今年1月に決定した経緯を受けて行われています
「やり直し」の原因になった現実を見ない要求や選定の進め方に米議会は激怒し、米陸軍幹部を厳しく叱責して「やり直し」を注視しているわけですが、今回米陸軍は具体的数値要求をあまり含まない「企業側の革新的な発想を促進する自由度の高い要求案」を公開して「ご意見」を伺い、正式な提案要求書を発出するステップを踏むようです
これまでのゴタゴタはさて置き、歩兵戦闘車両は米陸軍の戦い方の根本を問われる装備品で、現在のブラッドレー歩兵戦闘車も、20年以上の検討過程の紆余曲折を経て1980年から1994年まで量産が行われましたが、湾岸戦争やイラク戦争の教訓を経てたびたび改修されて今日に至っています
後継のOMFV(optionally manned fighting vehicle)について今日は触れませんが、「有人型のオプションも残して:optionally manned」との触れ込みで始まって、完全な有人機として開発されている米空軍のB-21次期ステルス爆撃機のように、完成品は「有人歩兵戦闘車」になると予想して間違いないでしょう
まずは現在のブラッドレー歩兵戦闘車(IFV)について
●1950年代から検討が始まり、幾つかの構想や試作も行われたが、甲論乙駁で量産に至らず、ブラッドレーM2としての量産が始まったのが1980年で、1994年までに偵察用派生型等を含め6700両以上が製造された。
●操縦3名輸送席6-7名で、機械化歩兵小隊は4両で編成され、M1戦車と行動を共にし、緊要時に輸送席から歩兵を下車させ、戦車と戦闘車両と歩兵が相互補完して作戦を遂行する運用が基本。このためM1戦車と同程度の速度性能が要求され、C-17輸送機で空輸可能なことも要求されている
●25mm機関砲とTOW対戦車ミサイル2発を搭載し、7.62㎜機関銃も装備している。アルミニウム装甲で成形炸薬弾(HEAT)の直撃に耐えられない点が問題視され、湾岸戦争後に装甲強化型への改修も行われた
●湾岸戦争では、敵車両撃破数でM1戦車を上回ったが、被撃破のほとんどは有軍相撃であったことから、赤外線識別装置が追加装備された
OMFVのやり直し選定について
17日付Defense-News記事によれば
●米陸軍の地上戦闘システム担当Brian Cummings少将は、「我々は5フェーズからなるOMFV計画の第1フェーズを粛々と進める過程で、産業界からの意見や革新的アイディアを得たいと考えている」、「真に変革をもたらす戦闘車両を兵士に提供するため、何が実現可能かに関する産業界からのご意見を楽しみにしている」とRFP案公開に合わせて語った
●陸軍の次世代先頭車両検討チームのRoss Coffman准将は、「過度に制約を設けることなく、期待される要求性能を正確に定めることが極めて重要だ」、「米陸軍は産業界とのオープンな対話を通じ、技術の最先端を反映したOMFVの要求性能を確実に定めたい」とコメントしている
●17日にwebサイト上で公開された提案要求書RFP案掲載ページでは、「産業界の設計思想の自由度を確保し、革新的発想を後押しするため、米陸軍は可能な限りパフォーマンスレベルの数値規定や細部指示を避けた」、「米陸軍は重箱の隅に提案を追う込むようなやり方を望んでおらず、産業界の皆さんが前向きに陸軍に革新をもたらすような最新技術融合と将来の拡張性確保を目指す提案をまとめ、陸軍のビジョン実現に共に取り組んでいただくことを望んでいる」と狙いを説明している
●今回の「案」への意見聴取を踏まえ、最終RFPを発出し、応募提案から最大5つの候補を選定して2021年6月に設計契約を結び、最終選考に進む予定である
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米陸軍がOMFV(optionally manned fighting vehicle)の要求性能をまとめるにあたり、どのような戦場の様相や相手を想定しているのか大変気になりますが、要求性能が固まったあたりでご紹介を考えたいと思います
それにしても、「産業界の設計思想の自由度を確保し、革新的発想を後押しするため」とは言え、「具体的数値掲載を避けた」提案要求書を提示され、提案が採用されなかった企業は、「恣意的な選定作業が行われた」とクレームをつけたりしないのでしょうか? 恐らく米陸軍内でも、様々な意見がある歩兵戦闘車でしょうから、内輪もめにならないように、またスッキリ選定が進むことを祈ります
OMFVは特別です。海兵隊が対中国を考え戦車部隊を廃止し、長射程兵器の導入を積極的に進めようとする中、米陸軍の作戦構想を直に反映しそうなOMFVの行く末に注目したいと思います
それにしても、今のブラッドレーとOMFVの写真や想像図からは、2つの違いがよくわかりませんねぇ・・・
米陸軍関連
「士官の昇任審査書類から写真除外へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-26
「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-13
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「射程1000㎞の砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
米海兵隊の変革関連
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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