米空軍が次期戦闘機検討でギャンブルを!? [米空軍]
機種選定による1機種大量生産ではなく
複数企業が独自機体を長期契約更新しつつ保持
5年毎に最適なものに乗り換え
2日、米空軍の革新的調達推進役であるWill Roper次官補が次期制空機構想の方向性を発表し、「Digital Century Series」なる「複数のジェット機」を並行開発する従来とは全く異なるコンセプトを打ち出し、パイロットでないDale White大佐(推定45歳:調達幹部)を長とする「Program Executive Office for Advanced Aircraft」をWright-Patterson空軍基地に立ち上げました
従来の戦闘機開発は、米空軍司令部内に戦闘機パイロットを中心とした検討室を作り、次期戦闘機の要求性能を固めて候補企業に提示し、複数の企業からの提案を評価して1つの機種に絞り、その機種を1000機以上、能力向上を行いつつも20年程度製造を継続するというものでした
しかし今回の基本的考え方は、脅威環境を踏まえて要求性能を検討するのでしょうが、複数の企業と対話しながら、コストを抑えつつ迅速にリスク低く実現可能かを見極め、継続的な革新が可能かや、ソフト更新対応を重視し、構想から5年以下程度で実用化のイメージです。
また複数企業が並行して開発をを行い、ある段階で最も実現可能な1機種に大量でない小規模機数を製造させるが、1機種を製造開始した後も、他企業の他機種も契約を継続して設計を更新させ、5年程度の周期で脅威環境に最適な機種を再び選んで小規模機数を製造させる考え方です
ただし、まだまだ今回のアプローチ手法は「やわやわ」な様で、新設「Program Executive Office」の最初の仕事は、上記のような「Digital Century Series」なる複数機種を並行存続させる考え方が実現可能か、また複数機種並行存続にどの程度コストが必要かを含む「調達戦略」を9か月以内にまとめる事になっています。
Roper次官補は、「このような世界(this universe)に到達する道筋を、White大佐が見つけてくれることに最上級の自信を持っている」と「Program Executive Office」発足式典で述べたようですが、この表現からして異次元な感じです
Dale White大佐(推定45歳)とはどんな人?
(日本で同様のポストが思い浮かびません)
●一般大学出身の調達幹部。初級士官課程を成績優秀者として卒業し、ニューメキシコ大学でMBA取得。米海兵隊指揮幕僚大学を成績優秀者として卒業。大佐昇任時期は同期生でトップクラス
●その経歴のほとんどは米空軍マテリアルコマンドで宇宙、サイバー、航空機など多彩な兵器システムの兵站面のマネジメントを仕切る。現在は米空軍ライフサイクル管理センターでISRと特殊作戦軍のProgram Executive Officer (PEO)、その前は空軍省の緊急戦力造成室でB-21のProgram Directorでこの時にRoper次官補の部下だったと考えられる。
●その他、米空軍研究所宇宙ミサイルセンター、空軍省調達担当次官室などで、一貫して兵器システムの「producing, testing, modifying, fielding, and supporting」を担当
Roper次官補は同Office発足式典で
●White大佐は、このプログラムを枠に囚われない思考に基づき(based on his out-of-the-box thinking)導くために選ばれ、このプログラムを導くに必要な軍需産業を理解する専門能力を持った者として期待されている
●このプログラムは、軍需産業にとっても良いものでなければ成立しないが、同時に継続して技術革新を導き、より小型で速く機敏なものを追及する。担当企業は1000単位の製品を作る企業であることは必ずしも必要ない。このような世界(this universe)が存在する道を、この大佐が見つけてくれることに、最上級の自信を持っている
また9月にRoper次官補は
●従来のように、単一の非常に素晴らしい航空優勢獲得用アセットを製造する企業を選定するのではなく、新たなコスト削減技術(ソフト開発、オープンアーキテクト、デジタル開発等)で複数の戦闘機開発に投資したい
●米空軍は、その中から最も実現可能な機体の提供企業を1つ選んで小規模の製造を依頼するが、他の企業とも契約を継続し設計更新を続けてもらう
●この方式の利点は、企業間の競争を増し、最新技術を搭載した戦闘機を約5年ごとに送り出す能力を強化する点にある。企業側が考える可能なことと、わがチームが提言してくれることに基づき、どの程度の間隔で新型機を送り出すかのリズムをセットする必要がある。今は5年毎を想定しているが、違うかもしれない。もっと早ければよいが、5年でも現状と比較して遥かによい
●新設「Program Executive Office」の最初の仕事は、上記のような「Digital Century Series」なる複数機種を並行存続させる考え方が実現可能か、また複数機種並行存続にどの程度コストが必要かを含む「調達戦略」の初期報告を6ヵ月後に、最終報告を9か月以内にまとめる事である
White大佐は式典で
●わがチーム前に立ちはだかる任務はタフなものである。しかしその任務は、わが国が世界の舞台で確固たる地位を維持するために「must-do」なものである
●我々はもはや、かつて保持していた世界のスーパーパワーの地位を約束されていない。そして今、我々は米国の今日を築いた要素の根元に立ち返り、学び直さなければならない
////////////////////////////////////////////////
White大佐はPEO Advanced Aircraftとして、戦闘機の機体だけでなく、NGAD(Next Generation Air Dominance)の一部をなす多くのサブシステム開発も監督下におくことになっているようで、NGAD計画には、並行して多くの新兵器やエンジンやミッションシステム開発が盛り込まれているようです
戦闘機パイロット族はこの動きをどのように見ているのでしょうか? 「当分泳がしておけ」、「そのうち自由に操ってやる」などと考えているのでしょうか? 最後にご紹介した、White大佐の強烈な使命感と危機感を、戦闘機パイロット族はどのように感じるのでしょうか?
結構衝撃的な話ですが、米空軍参謀総長やACC司令官のHolmes大将あたりの決意の程を確認したいものです。
Col. Dale White大佐の経歴
→ https://www.wpafb.af.mil/Welcome/Biographies/Display/Article/1585290/colonel-dale-r-white/
「戦闘機族のボスがNGAD予算を危惧」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-21
米空軍の次世代制空機検討PCA
「PCA価格はF-35の3倍?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15
「秋に戦闘機ロードマップを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-22
「PCA検討状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-12
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「F-35にアムラーム追加搭載検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-28
複数企業が独自機体を長期契約更新しつつ保持
5年毎に最適なものに乗り換え
2日、米空軍の革新的調達推進役であるWill Roper次官補が次期制空機構想の方向性を発表し、「Digital Century Series」なる「複数のジェット機」を並行開発する従来とは全く異なるコンセプトを打ち出し、パイロットでないDale White大佐(推定45歳:調達幹部)を長とする「Program Executive Office for Advanced Aircraft」をWright-Patterson空軍基地に立ち上げました
従来の戦闘機開発は、米空軍司令部内に戦闘機パイロットを中心とした検討室を作り、次期戦闘機の要求性能を固めて候補企業に提示し、複数の企業からの提案を評価して1つの機種に絞り、その機種を1000機以上、能力向上を行いつつも20年程度製造を継続するというものでした
しかし今回の基本的考え方は、脅威環境を踏まえて要求性能を検討するのでしょうが、複数の企業と対話しながら、コストを抑えつつ迅速にリスク低く実現可能かを見極め、継続的な革新が可能かや、ソフト更新対応を重視し、構想から5年以下程度で実用化のイメージです。
また複数企業が並行して開発をを行い、ある段階で最も実現可能な1機種に大量でない小規模機数を製造させるが、1機種を製造開始した後も、他企業の他機種も契約を継続して設計を更新させ、5年程度の周期で脅威環境に最適な機種を再び選んで小規模機数を製造させる考え方です
ただし、まだまだ今回のアプローチ手法は「やわやわ」な様で、新設「Program Executive Office」の最初の仕事は、上記のような「Digital Century Series」なる複数機種を並行存続させる考え方が実現可能か、また複数機種並行存続にどの程度コストが必要かを含む「調達戦略」を9か月以内にまとめる事になっています。
Roper次官補は、「このような世界(this universe)に到達する道筋を、White大佐が見つけてくれることに最上級の自信を持っている」と「Program Executive Office」発足式典で述べたようですが、この表現からして異次元な感じです
Dale White大佐(推定45歳)とはどんな人?
(日本で同様のポストが思い浮かびません)
●一般大学出身の調達幹部。初級士官課程を成績優秀者として卒業し、ニューメキシコ大学でMBA取得。米海兵隊指揮幕僚大学を成績優秀者として卒業。大佐昇任時期は同期生でトップクラス
●その経歴のほとんどは米空軍マテリアルコマンドで宇宙、サイバー、航空機など多彩な兵器システムの兵站面のマネジメントを仕切る。現在は米空軍ライフサイクル管理センターでISRと特殊作戦軍のProgram Executive Officer (PEO)、その前は空軍省の緊急戦力造成室でB-21のProgram Directorでこの時にRoper次官補の部下だったと考えられる。
●その他、米空軍研究所宇宙ミサイルセンター、空軍省調達担当次官室などで、一貫して兵器システムの「producing, testing, modifying, fielding, and supporting」を担当
Roper次官補は同Office発足式典で
●White大佐は、このプログラムを枠に囚われない思考に基づき(based on his out-of-the-box thinking)導くために選ばれ、このプログラムを導くに必要な軍需産業を理解する専門能力を持った者として期待されている
●このプログラムは、軍需産業にとっても良いものでなければ成立しないが、同時に継続して技術革新を導き、より小型で速く機敏なものを追及する。担当企業は1000単位の製品を作る企業であることは必ずしも必要ない。このような世界(this universe)が存在する道を、この大佐が見つけてくれることに、最上級の自信を持っている
また9月にRoper次官補は
●従来のように、単一の非常に素晴らしい航空優勢獲得用アセットを製造する企業を選定するのではなく、新たなコスト削減技術(ソフト開発、オープンアーキテクト、デジタル開発等)で複数の戦闘機開発に投資したい
●米空軍は、その中から最も実現可能な機体の提供企業を1つ選んで小規模の製造を依頼するが、他の企業とも契約を継続し設計更新を続けてもらう
●この方式の利点は、企業間の競争を増し、最新技術を搭載した戦闘機を約5年ごとに送り出す能力を強化する点にある。企業側が考える可能なことと、わがチームが提言してくれることに基づき、どの程度の間隔で新型機を送り出すかのリズムをセットする必要がある。今は5年毎を想定しているが、違うかもしれない。もっと早ければよいが、5年でも現状と比較して遥かによい
●新設「Program Executive Office」の最初の仕事は、上記のような「Digital Century Series」なる複数機種を並行存続させる考え方が実現可能か、また複数機種並行存続にどの程度コストが必要かを含む「調達戦略」の初期報告を6ヵ月後に、最終報告を9か月以内にまとめる事である
White大佐は式典で
●わがチーム前に立ちはだかる任務はタフなものである。しかしその任務は、わが国が世界の舞台で確固たる地位を維持するために「must-do」なものである
●我々はもはや、かつて保持していた世界のスーパーパワーの地位を約束されていない。そして今、我々は米国の今日を築いた要素の根元に立ち返り、学び直さなければならない
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White大佐はPEO Advanced Aircraftとして、戦闘機の機体だけでなく、NGAD(Next Generation Air Dominance)の一部をなす多くのサブシステム開発も監督下におくことになっているようで、NGAD計画には、並行して多くの新兵器やエンジンやミッションシステム開発が盛り込まれているようです
戦闘機パイロット族はこの動きをどのように見ているのでしょうか? 「当分泳がしておけ」、「そのうち自由に操ってやる」などと考えているのでしょうか? 最後にご紹介した、White大佐の強烈な使命感と危機感を、戦闘機パイロット族はどのように感じるのでしょうか?
結構衝撃的な話ですが、米空軍参謀総長やACC司令官のHolmes大将あたりの決意の程を確認したいものです。
Col. Dale White大佐の経歴
→ https://www.wpafb.af.mil/Welcome/Biographies/Display/Article/1585290/colonel-dale-r-white/
「戦闘機族のボスがNGAD予算を危惧」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-21
米空軍の次世代制空機検討PCA
「PCA価格はF-35の3倍?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15
「秋に戦闘機ロードマップを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-22
「PCA検討状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-12
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「F-35にアムラーム追加搭載検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-28
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