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米空軍が小型ドローン対策に最新技術情報収集 [米空軍]

国防省全体でいろんな検討が行われ交通整理中ですが

counterdrone2.jpg16日、米空軍が関連企業に対し、小型ドローン対策に関する情報提供要求(RFI:request for information)を発出し、11月17日期限で最新の技術動向を収集し、それら情報を基に基地を小型ドローンから守る方策を煮詰めていくようです

ドローン対策については何度も取り上げ、各軍種や各部隊が様々な手法を同時並行的に進めていることから、米国防省の調達担当Lord次官が資源投入先を絞り込むと昨年12月に発言していますが、ドローン技術も日進月歩であり、米空軍としても基地防衛のための絞り込みに苦心しているところです

counterdrone3.jpg改めて説明するまでもなく、小型ドローンは小さく、レーダで捉えにくく、熱源放射や赤外線放射や電磁波放射も小さいことから追尾も困難ですが、手りゅう弾程度の爆発物を運搬でき、ISRセンサーとしての能力も高く、重要な施設が集中する空軍基地には大きな脅威です

安価な小型ドローンは、損耗を気にすることなく大量に投入可能で、「群れ」としての制御能力も高まっており、その撃退は非常に大きな課題です。また自律性が高まっていることから、単に誘導や操作電波を遮断するだけでは対応できない難しさも加わっているようで、悩ましさは増しています

19日付米空軍協会web記事によれば
レーザーやマイクロ波のドローン対処への活用に着手している米空軍が発出したRFIには、小型ドローン対策に関する「破壊力」から「気象条件への対応力(雨や霧の中での有効性など)」まで、12項目の情報要求項目が含まれており、米空軍は今後1年かけて入手した最新技術を検討する

counterdrone.jpg米空軍は小型ドローン対策の方向性の一つとして、侵入する小型ドローンの目標補足、追尾、撃墜を人間操作員を介さず、全て全自動で行う方向も示唆しており、「最後の撃墜指令の段階で、人間が承認を行う方式で運用可能なことがミニマムなレベル」との表現もRFIには見られる

また米空軍は、小型ドローンの脅威と空軍各種部隊活動への影響についてのレポートをまとめようとしており、この新たな脅威に関する米空軍人の意識改革の必要性も強く認識している
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米空軍はすでに、海外展開先にレーザーやマイクロ波や電磁パルスを活用したドローン撃退兵器を試験投入し、様々なサブシステムにも触手を伸ばしてその能力を実戦環境で確認中ですが、米国内では、基地内の他システムへも影響や基地周辺地域への影響なども考慮し、非破壊的な「網で捕獲」などの手段が主流のようです

counterdrone4.jpgレーザーだってマイクロ波だって、敵ドローンに命中せず、その後ろの飛行機に命中したらどうする・・・的な問題が、実際の運用面では残されているのかもしれません。また最後に触れた、「ドローン脅威への意識改革」も大きなヒューマンファクターだろうと想像します

Lord次官による昨年12月の「3-5種類に絞り込む」案がどうなっているのか把握していませんが、道遠しの印象です。敵味方共に技術進歩も早いでしょうし・・

無人機対処にレーザーや電磁波
「米海兵隊の非公式マニュアル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-31
「ドローン対処を3-5種類に絞り込む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-14
「米軍のエネルギー兵器が続々成熟中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-30-1
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24

「兵器の群れ制御に苦戦」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-30

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米空軍が本格紛争用に小型軽量貫通弾GPAW検討へ [米空軍]

GPAW:Global Precision Attack Weaponだそうです
操縦席から多様な設定変更可能で自立群れ行動も可能な

F-35 Gilmore.jpg19日、米空軍が本格紛争用のGPAWと呼ばれる新型兵器開発に向け期待される性能や特性を公開し、今後1年間、企業の大小にかかわらず多様な提案や関連情報提供を受け付けることになりました

BAA(Broad Agency Announcement)との情報提供要望の中で示されたGPAWの構想には、具体的な部隊配備の希望時期は示されていないようですが、色々な希望性能が記されており、米空軍の中国やロシア等の「near-peer competitors」対処の考え方にも通じそうなのでご紹介しておきます

以下では米空軍の構想にある希望性能をご紹介しますが、陸海兵隊が長射程兵器重視に傾く中、スタンドオフ兵器だけでは勝てないと主張して陸海兵隊の動きをけん制し、スタンドイン兵器の重要性を訴えてきた米空軍の意地を感じる動きです

20日付米空軍協会web記事によれば
B-21 3.jpg米空軍は、作戦機に搭載する高度に柔軟性を持つ地上攻撃用兵器の調達に向けた動きを開始した
GPAWは、小型軽量で、大量に適切なコストで調達可能ながら、高度なセンサーと自立性を備え、強固に防御されたり、地中深くの目標も攻撃可能な野心的なレベル目指している

公開された情報提供要請BAAによれば、GPAWはF-35やB-21爆撃機の内部弾薬格納スペースに収納可能で、なおかつ、他の作戦機にも搭載可能なものを求めている
また、1機の航空機に多数搭載可能な小型兵器で、デジタル設計可能で、open-systems architectureを期待されている

F-15-JDAM.jpg更に、今後出現するだろう新技術を柔軟に取り込み可能な設計も求めており、その範囲には、position, navigation, and timing and guidance, navigation, control; cockpit-selectable warhead effect, fuzing, sensors, propulsion, “signature optimization” or stealthiness, “martime apps, multimode seeker, affordable mass, and autonomy/sensing 等が含まれる
運用環境としては、中国やロシアなどの「near-peer competitors」相手に使用でき、統合全ドメイン環境で機能し、GPAW同士が自律的に共同することも想定されている

米空軍はBAAで具体的な運用開始希望時期について触れていないが、大小を問わず関連技術保有企業から1年以内の回答を期待している

F-15E-Afgan.jpg●GPAWプロジェクトは3つのフェーズで進められる
Phase 1:→コストと新兵器のサイズのトレードオフなどを考慮し、どの程度の範囲の兵器が実現可能かを設定する。そしてopen architecture基準を設定し、各構成品の業務分担やコスト構造を設定する
Phase II:→上記の制約の範囲でベストなデザインを案出し、関連技術や迅速なプロトタイプ計画をまとめる
Phase III→兵器製造の競争入札を行う。複数の製造担当企業を選定し、製造単位ごとに競争環境が生まれるような方向を検討する
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陸海兵隊が対中国を念頭に、高価な長射程精密誘導兵器(スタンドオフ兵器)に力点を移す方向にある中、4-6万もある敵攻撃目標を精密誘導兵器で攻撃していては米軍が破産してしまうことから、米空軍はスタンドイン兵器の重要性を訴え、陸海海兵隊に戦い全体のニーズもよく考えるべきだと訴えてきましたが、国防長官も陸海兵隊の流れを認めているようにも見えます

F-22Hawaii2.jpgそんな中、米空軍は中国の強固な防空網を突破する可能性のあるステルス機のF-35やB-21爆撃機に、この安価で小型で破壊力もあるスタンドイン兵器のGPAW導入を構想し、F-35やB-21を米軍の戦いの中核に据え、予算を確保しようとの考えとも言えます

もちろん米空軍は、シュミレーションやウォーゲームを繰り返し行った結果として陸海海兵隊の極端な長射程兵器偏重をけん制し、前空軍参謀総長は陸海兵隊に対し、長射程兵器重視で勝利に導けるとの証拠を示せとまで訴えていましたし、正しい主張だと思います

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米空軍の課題:他軍種はABMSに懐疑的」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-12
「スタンドオフとインのバランスが重要」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02

米陸軍の長射程兵器導入など
「米陸軍は長射程兵器で2023年から変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「射程1000nmの砲開発の第一関門間近」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
「射程1000nmの砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1

海兵隊も長距離砲導入へ
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

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F-35維持整備の大問題ALISの後継ODIN導入開始 [亡国のF-35]

2022年12月のODIN運用開始に向け
ロッキード依存やめ国防省主導の後継ODIN導入
まずは海兵隊F-35B部隊から

F-35B.jpg21日、米国防省F-35計画室が、F-35維持整備の最大の課題の一つである兵站自動情報システムALISの後継機種であるODIN(Operational Data Integrated Network)を、米海兵隊Yuma航空基地所属のF-35B部隊に提供開始したと発表しました

F-35兵站自動情報システムのALIS(Autonomic Logistics Information System)は本来、個々のF-35の状態をリアルタイムで把握して故障個所を整備員に知らせ、整備計画を自動立案して提案し、必要な自動部品を発注し、任務計画や訓練記録まで助けてくれるシステムのはずでした。

しかし2000年代前半の思想や技術で設計された同システムは、不格好で(物理的に)重く処理速度も遅く、スマホ操作に慣れた現場整備員には扱いにくく、おまけにソフト不具合が山ほどあり、正常な機体を異常と判断する誤警報が頻発し、部品自動発注も大混乱、必要な基礎データ入力にも長時間必要でスタックも頻発し、会計検査院GAOが訪問した部隊では週に400件も不具合が発生してALISの世話に余計な人員を割く必要があるなど、F-35稼働率が上がらない元凶のひとつとなってきました

ODIN2.jpg更に設計思想が古いALISは設備が大型で重く、機動展開に適さないことからトラブルにつながることも多く、F-35部隊指揮官が演習に参加する際は「ALIS不具合対処」を想定して時間的余裕を確保する必要がある情けない状態だと3月に会計検査院が指摘しているほどです

会計検査院は国防省に対し、ALISの不具合原因と要求性能未達成部分、F-35部隊の稼働率低下程度、それによる損失を明確に示し、1兆9000億円以上投入して開発してきたALISを捨ててODINを導入する説明を求めていますが、明確な回答がないままODINが進んでいる状況です

そんなALISとODINですが、21日の米国防省F-35計画室発表によれば、導入開始のODINは少しはマシなようですので、予定通り2022年12月にODINが運用開始となることを祈りつつ、また日本が余計な追加経費負担を迫られないことを願いつつ、アリゾナ州米海兵隊Yuma航空基地の様子をご紹介しておきます

23日付Defense-News記事によれば
F-35B2.jpg10月21日の米国防省F-35計画室発表によれば、米海兵隊Yuma航空基地に提供が開始されたODIN装備の一部は既に試験的に使用開始されており、9月29日と30日に計5回のODIN装備を活用した試験飛行が無事行われた模様である
搬入されたODINの装備は、ALISの最新ソフト(3.5.2.2 software)を使用して試験飛行を支援しており、今後2022年12月のODIN運用開始までの間で予定されているALISとODINの併用運用にも問題がないことを確認しながら導入が進められている

ALISのサーバーは人間の背丈ほどある大型のラックで提供されており、重量も400㎏程度あることから部隊の機動展開時に支障をきたしていたが、ODINの同装備は重量30㎏程度の旅行用キャリーケース2個ほどの大きさであり、持ち運びが格段に容易になっ
データ処理速度もODINでは改善が見られ、新たなODINハードはALISの約2倍の処理速度で、整備員や部品管理機関からの関連データ入力もALISの約2倍の速度で可能になっていることが確認されている

ODIN3.jpgまた、ALISと異なりODINはクラウド使用を前提として設計されており、システム使用中に見つかったソフトの不具合を修正したなら、オンライン環境で即座に提供して改善することが可能である
国防省幹部はALISとODINの最大の違いについて、「ALISをロッキード社が開発したのに対し、ODINは国防省内の専門チームが主導し、ロッキードや米空軍ソフト開発部署など各所の知見を集約して開発がすすめられている点である」と説明している

Yuma基地での今後の進め方について担当幹部は、「ALISからALISとODINの併用使用体制に移行するため、約1年後の2021年秋に当該F-35B部隊を一時運用休止状態にする。細部の時程については、F-35B部隊の運用スケジュールを優先して柔軟に今後検討する」と説明している
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ODIN4.jpg揚げ足を取るつもりはありませんが、これはあくまでも「米国防省F-35計画室」の発表であり、いわば大本営発表です

機体の状態判定に関する「誤警報」や部品誤発注の問題、現場整備員の使いやすさ等々について改善されたのかアピールがなく、「処理速度が2倍」とのコンピュータシステムとしては微妙な改善と、「今頃ですか」の機材サイズと軽量化の話だけです

今後に期待いたしましょう

ALIS関連の記事
「元凶:ALISとその後継ODINの現在位置」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-17
「ALISを断念しODINへ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-22
「ALIS問題を議会で証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-15
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02

最近のF-35
「中東でかく戦えり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07
「B型とC型が超音速飛行制限甘受」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-27
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

F-35維持費削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

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激動:イスラエルが「ある種の兵器」のUAE輸出に合意 [安全保障全般]

スーダンとの国交樹立発表の当日に静かに発表
イスラエルに米国が軍事優位担保する装備提供を条件に
トランプ大統領も意味深な発言を

Netanyahu Trump.jpg10月23日午後(つまりイスラエルの宗教上の安息時間に)、当日早くに行われたスーダンとイスラエルとの国交樹立合意発表に世界のメディアが目を奪われている中、イスラエル首相と国防相が、米国によるUAEへの「ある種の兵器システム:certain weapon systems」輸出に反対しないとの声明を出しました

この声明には前提があり、19日の週に米国を訪問していたイスラエルのGantz国防相が米国と、イスラエルの軍事力を向上させ中東での軍事的優位を確固たるものにする先進兵器のイスラエルへの提供に米国が合意したという点です

Gantz USA.jpeg邪推すれば、UAEには彼らが長年要望してきたF-35を輸出する一方で、中東で唯一のF-35保有国であったイスラエルの軍事技術優位を確保するため、他の最新装備(おそらく非公開で開発中の最新兵器)をイスラエルに提供することでイスラエルと「折り合いをつけた」・・・ということです

UAEへのF-35売却については、イスラエルの軍事優位絶対死守を叫ぶ米議会に強い抵抗があることから、イスラエルを新兵器提供で懐柔して米議会対策を円滑に進めようとのトランプ政権の巧妙な立ち回りとも考えられ、UAEへのF-35輸出が加速度的に進む可能性もあります

23日付Defense-News記事によれば
Gantz  Netanyahu.jpg23日にイスラエル首相と国防相が、米国がイスラエルの中東における軍事優位を担保するためのイスラエル軍近代化を進めることで合意したことを受け、UAEへの「ある種の兵器システム:certain weapon systems」輸出に反対しないとの声明を出した

声明の中でGantz国防相は、「米国訪問中に米国側と、イスラエルの軍事力を大きく向上させ、周辺地域における質的軍事優位を数十年確保する最新兵器調達に合意した」、「米側から、ある種の兵器システムをUAEに提供する件に関する米議会への通知計画について説明があった」と述べている
そして「ネタニアフ首相と国防相はともに、米国がイスラエルの軍事的優位維持のための軍事力向上策にコミットしてくれることから、それらシステムのUAEへの売却に反対しないこととした」と説明している

F-35 Israel4.jpgUAEへの輸出に反対しない「ある種の兵器システム」が何を指すかについてイスラエルのGantz国防相は言及を避け、米国防省もコメントを出していないが、スーダンとイスラエルの国交樹立合意に関する記者団とのやり取りの中でトランプ大統領は、「(F-35関連協議について)進んでいる。良い進捗を見せている。UAEは常に米国とともにあり、長年に渡り良い関係を維持して言い争いもなかった。協議が行われており、迅速に進むことを願っている」とコメントしている

イスラエルがF-35のUAEへの輸出に反対していたことや、UAEがロシアや中国と軍事面で関係を持っていることから、米議会はF-35のUAEへの輸出に強く反対しており、民主党の議員はF-35の中東地域への追加売却を禁ずる法案を提出していたところである
イスラエルのGantz国防相は、ネタニアフ首相が率いる政党と連立政権を組む別の政党の党首であるが、イスラエルとUAEが国交樹立交渉を行っていることを最終段階まで知らされなかったことに両国国交発表時は不満を示していたが、今回は連名のような形でUAEへの「ある種の兵器システム」輸出に反対しない旨の声明を出している
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記事の雰囲気は、完全に「UAEにF-35輸出へ」の流れになっています

イスラエルにどのような兵器を提供することに米国側が合意したのか不明ですが、米国防省は中露に手の内を知られないよう、多くの秘密開発計画を進めていますので、その中のいくつかの提供に合意したのかもしれません。

US UAE Israel Ba.jpgイスラエルに「反対しない」と言わせるとは、大した外交手腕です。かねてから、オマーン、モロッコ、クウェート、サウジなどがイスラエルとの国交樹立方向にあると言われていますが、そろそろ日本の古くからの「中東専門家」の皆様も、「アラブ諸国の新世代はイスラエルに対して明らかに旧世代とは異なる感情を抱いている」点に留意されるべき時が来ていると思います

中東とF-35
「米大統領:UAEへのF-35輸出は個人的にはOK」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-18
「米大統領:UAEはF-35を欲している」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-21
「中東第2のF-35購入国はUAEか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-11-05
「湾岸諸国はF-35不売で不満」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-16
「イスラエルと合意後に湾岸諸国へ戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-17

「中東派遣で米空軍F-35はかく戦えり」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19

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在日海兵隊が対中国想定の「飛び石」機動演習 [Joint・統合参謀本部]

米海空軍も絡めたExercise Noble Fury
島を強襲占領し、火砲を緊急空輸して射撃後すぐ再起動
沖縄本島、伊江島、硫黄島を使用して

Noble Fury3.JPG22日付Militarty.comが、米海兵隊が中国との戦いを想定し、太平洋の島々の間を迅速に機動展開しながら中国軍ISR部隊に負担を強いつつ、ネットワークで共有する敵目標情報を基に必要な打撃力兵器を島々に機敏に展開させ戦う方式を、10月上旬の「Exercise Noble Fury」で初めて本格的に訓練したと報じています

米海兵隊は、戦車部隊を廃止するなど部隊の軽量化・機敏さを目指した改革を進めており、その狙いはインド太平洋地域の島々を所要に応じて迅速に確保して拠点化し、火砲などを機動的に展開可能な部隊体制の構築ですが、その新たな態勢で目指す作戦運用を「Noble Fury」」で検証したとの位置づけです

Noble Fury5.jpg沖縄に司令部を置く第3海兵遠征軍(II Marine Expeditionary Force)が主催した同演習は、沖縄本島、伊江島、硫黄島、強襲揚陸艦Americaや海軍第7艦隊等を主要な演習舞台とし、MV-22オスプレイやAH-1Z攻撃ヘリ、高機動ロケットシステムHIMARSや米空軍のMC-130特殊作戦機が参加する統合作戦の様相を見せています

米海兵隊幹部は演習後に記者団に、「将来の海軍・海兵隊の姿を本演習で披露できた」、「高いレベルで作戦を成功させた」、「本演習は、インド太平洋戦域全体の複数の展開基地に対する指揮統制、兵器の前方展開、展開航空機への支援体制確立などを遂行可能な第3海兵遠征軍の能力を示すものだ」とコメントして成果を強調しており、以下では記事から、演習で実施された作戦の流れをご紹介します

22日付Militarty.com記事によれば
Noble Fury.jpgまず小規模チームからなる海兵隊偵察部隊が占領確保を企図する島に上陸し、その後、上陸部隊本体がAH-1Z攻撃ヘリに援護されたMV-22オスプレイで島に展開して計100名規模で占領し、防御態勢を固めるとともに航空機受け入れ準備を進めた
海兵隊の上陸部隊は拠点確立後、米海軍第7艦隊から同艦隊が攻撃不可能な位置にある敵目標情報を入手し、米空軍MC-130特殊作戦用輸送機で夜間隠密裏に輸送されてきた高機動ロケットシステムHIMARSを素早く作戦可能な状態に準備し、第7艦隊から入手した情報に基づき敵目標を攻撃

Noble Fury2.jpg攻撃を実施後、直ちに再びHIMARSをMC-130輸送機に乗せ、次なる展開前方拠点に向けて離陸させた。海兵隊の発表文書によれば、この間の時間は数分(quickly loaded back into the MC-130J, taking off minutes after landing on the island)であった
HIMARSが離陸したのち、島を継続確保する要員以外は、CH-53E Super Stallionsに搭乗し、次の任務のため直ちに機動展開をした
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演習場所なった「沖縄本島、伊江島、硫黄島、強襲揚陸艦America」が、それぞれにどのような役割で訓練に関与し、記事のような流れの訓練が行われたのか言及がありませんが、アジア太平洋戦域の広さを考慮した環境設定がなされた演習であることが伺えます

Noble Fury4.jpg太平洋地域の米海兵隊の配置が朝鮮戦争直後に決定された場所から現在まで変化ないことから、David Berger海兵隊司令官は9月に「(対中国を考えると、)将来に向けて良い配置とは言えない」と語り、アジア太平洋の海兵隊配備見直しを検討中と述べ、在沖縄海兵隊に関しては数千人規模の移動を検討中(数か月でまとめる)と示唆しています

在日海兵隊の削減案(中国正面からの転進・削減)が明らかになる前に、このような作戦能力を示す演習を見せて、日本など同盟国の動揺を少しでも抑えたいとの願いも込められた演習と理解いたしまし

米海兵隊の変革関連
「司令官が在日米海兵隊削減を示唆」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-25
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「前司令官:基本的な防御手段を復習せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-10
「米空軍はアジアで米海兵隊と同じ方向へ!」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-25

米軍再編関連の記事
「9月末までに米軍再編検討を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-14
「アジア太平洋で基地増設検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-28 
「新統合作戦コンセプトを年末までに」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-18
「ドイツ駐留米軍削減が発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-30
「太平洋軍司令官が議会に要望」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-29

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7年前のクリスマスイブ [ふと考えること]

10年以上前の記事です
派閥のリーダーを辞任して勢いのなくなった石破茂氏ですが、防衛庁長官として発表した平成16年度版(2004年)防衛白書の巻頭言は、官僚の作文でない思いのこもった自筆文章として話題を呼びました。グッドジョブだったと思います
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Ishiba.jpg平成16年度版(2004年)の防衛白書は、防衛省(当時は防衛庁)発足50周年にも当たったことから、当時の小泉首相の挨拶が巻頭を飾るなど、半世紀を振り返る内容を含む白書として例年とは少し異なっていました。

しかし・・・何よりも石破防衛庁長官(当時)の挨拶に当たる「刊行に寄せて」が大きな注目を集めました。それは、その内容がこの種の出版物の冒頭に見られる「官僚の作文」ではなく、大臣自らが筆を執ったと思われる内容だったからです。

冒頭から全体の1/3を引用すると・・・

2003年12月24日イラク復興支援特別措置法に基づきはじめて派遣される航空自衛隊輸送機部隊の編成完結式が、最高指揮官である小泉純一郎内閣総理大臣臨席のもと、小牧基地において執り行われた。
●世間の多くの人々にとって、一年で最も楽しみな日のひとつであるこの日に、多くの若い隊員たちに厳しい任務を与える行事を行うことに、私は心の中である種のすまなさを感じていた

IraQC-130.jpg●編成完結式後に行われた壮行会において、私はできる限り多くの隊員と言葉を交わし激励をするため、会場内を回っていた。そのとき、ある若い隊員が私の手を握って、「総理の訓辞を直接聞き、こうして長官から激励してもらえる、私にとって今日は人生最高のクリスマスイブです。立派に任務を果たしてきます」と言ってくれた
私が防衛庁長官になって以来、最も感激した瞬間であり、このことを一生忘れないと思う。この日本にはこのような若者がいるのだそしてこのような人々の集団が自衛隊なのだ。私はこの時期に防衛庁長官であることを心から誇りに思ったことであった。

●また、去る6月6日、イラク・サマーワにおいて立派に任務を果たし帰国した陸上自衛隊第一次派遣隊の慰労会においても、同じ感激を味わうことができた
Iraqsamawa.jpg●未だ危険の存在するサマーワの地において、いかに現地の人々の心を捉え、いかに安全に任務を遂行するか、そのために彼らは筆舌に尽くしがたい努力をし、日本の国益の実現、国際社会の一員としての責務の遂行、イラクの人々の期待に応えること、そして日米安全保障体制の信頼関係の強化、というイラク派遣の諸目的を見事に達成したのであった。

●我々自衛隊に対する評価は近年、国内外において飛躍的に高まっている。ある世論調査によれば、自衛隊に対する国民の好感度は、20年前の2倍の70%弱にまで達し、私の長官室を訪れる各国元首や国防大臣たちも、極めて高い讃辞を寄せてくれている。

●イラクのみならず、それはゴラン高原やインド洋、さらには東ティモールにおいて、過酷な環境の中、日本の平和への願いと善意の実行者として隊員たちが活動していること、そして国内においても国の独立と平和、国民の生命・財産を守るため、服務の宣誓を誠心誠意実行している隊員諸官の努力を、国内外の人々が正当に評価してくれたことの証しである。

●しかしながら我々は決してこれに満足すべきではない・・・・
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あれから7年・・・何が前進し、何が変わらなかったのか・・・。変えようとしなかったのか、変えるのを拒んだのか・・・。
あの時のクリスマスイブ・・皆様はどのようにお過ごしだったでしょうか・・・・。

平成16年(2004年)の防衛白書
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80トンの物量輸送を世界中に宇宙経由で1時間以内で [サイバーと宇宙]

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SpaceXと米宇宙コマンドが来年にもコンセプト試験へ

Lyons.JPG7日、米輸送コマンドのStephen Lyons司令官が講演で、宇宙空間を経由した「世界中どこへでも1時間以内」の物資輸送に、SpaceXの精力的な取り組みもあって同コマンドが検討を進めており、早ければ来年2021年にも「test the concept」または「conduct a joint proof of principle」をSpaceXと共に行うと述べました

同司令官は具体的に、C-17輸送機が最大搭載可能な80トン級の輸送を宇宙空間経由で想定していると述べ、SpaceXの他に「xArc」との企業名を挙げ、共に予算投入を必要としない協力合意(CRADAs:Cooperative Research and Development Agreements)を今年3月と4月に結んで検討を進めていると説明しています

米輸送コマンド報道官は同司令官の講演後に、早ければ来年にも予定される「test the concept」または「conduct a joint proof of principle」について、検討中であるとして細部に言及しませんでしたが、宇宙を経由すれば、これまでの航空機による空輸には必要だった「領空通過許可」が不要になるなど、なかなか夢のある「世界中どこへでも1時間以内」構想検討ですので、課題と共にご紹介しておきます

7日付C4ISRnet記事によれば
SpaceX starship.jpg7日、Lyons司令官は「National Defense Transpiration Association」での講演で、「とても挑戦的なコンセプトだ」、「宇宙を利用した輸送のproof of principleに、SpaceXと共に取り組んでいるチームの存在にとても興奮している」と述べ
「それが小さな双方の部署による検討であっても、その進捗のスピードは目を見張り、SpaceXは極めて素早くこの分野で前に進んでいる」と語った

米輸送コマンドはSpaceXと「xArc」社との契約に関し、「宇宙を利用した輸送(space-based delivery)について、技術面、法規制面、コスト面から検討している」、「米輸送コマンドは、僻地への兵站支援面や物流業務面で専門知見を提供し、究極的には両企業の月や火星ミッションを目指す努力を支援する」との声明を出し、Win-Winの関係であることをアピールしている

専門家はこの宇宙利用の輸送について、長年提唱されてきたアイディアであると認めるものの、大きな課題も存在すると指摘している
一つは宇宙空間を出入りする際の貨物への「G対策:加速度対策」で、もう一つは米本土からロシアに北極経由では行けるが、南極経由では無理なように、「point to point」では地球上全てをカバーできない限界があり、これを補うには宇宙空間に物資を補完しておく必要があるが、これにはコストがかかる点である

Lyons2.jpgこのように専門家は、「Starshipが point to pointの有効な手段となるには、技術的や経費面での課題が多くあり、法的面でも整理すべき点が残されている」と指摘している
一方でLyons司令官は宇宙利用の利点として、「伝統的に基地使用や上空通過などの外交上の問題が摩擦ポイントとなっており、物資の迅速な輸送の障害となってきた」と指摘し、この点が宇宙利用で解消されると指摘している

この点についてはCSISのTodd Harrison氏も、宇宙条約に沿うならば宇宙軌道上の上空通過に許可は不要だと主張し、「アフガンのような急峻な地形に囲まれた国でもアクセスが容易になる」と述べたが、「大気圏を経由する着陸においては、航空機と同様の着陸許可が必要となろう」としている。「戦いの最中ならば、問題にはならないだろうが」とも付け加えた

宇宙軍No2は「明確なコンセプトは無い」と表現
Saltzman.jpg16日、米空軍協会ミッチェル研究所で講演したChance Saltzman宇宙軍副作戦部長(宇宙軍No2)は、宇宙を活用した物資輸送についての質問に対し、宇宙軍として組織・訓練・装備面でサポートすることはあるだろうが、現時点で明確なヴィジョンはない(I don't have a clear vision for what that looks like yet)と表現した
更に「物資輸送における最も安価な手法ではない」、「しかし検討されている」などと記者団の質問に答え、ICBMと間違えられる恐れがあるのでは・・・との質問に対しては、「わからない」と対応した
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「米本土からロシアに北極経由では行けるが、南極経由では無理なように、「point to point」では地球上全てをカバーできない限界があり・・」は

SpaceX starship2.jpg「The other is that you’re still limited in where you can go. An ICBM travelling on a ballistic flightpath can go from the U.S. to Russia over the North Pole, but can’t go via the South Pole. If you actually place the payload in orbit it can theoretically go anywhere given enough time, but requires a lot more energy and cost.」の訳ですが、そんなことも知りませんでした

技術面でも、コスト面でもいろいろありそうですが、SpaceXに期待いたしましょう

「SpaceX:失敗場面を集めた映像を明るく発信」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-18 

Space-X社関連の記事
「Space-Xロケット再利用で3回目打ち上げ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-12-08-2
「Facon Heavy試験」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-27
「偵察衛星打上げと1段目回収」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-02
「イスラエル通信衛星失敗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-06
「ロケットの着陸回収に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-25

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米海軍の「Project Overmatch」を覚えておこう [Joint・統合参謀本部]

対中国の戦術ネットワーク構築プロジェクトです
コロンビア級SSBNに次ぐ最重要課題と表現

Gilday2.jpg14日付Defense-Newsは、米海軍トップのMichael Gilday大将が対中国ハイエンド紛争のカギと呼ぶ戦術ネットワーク構築プロジェクト「Project Overmatch」のリーダーに、Douglas Small海軍少将を指名した報じています

記事によれば米海軍は、従来のように空母周辺に戦力を集める形でなく、戦力を広大なエリアに分散し、中国のISRに最大の負荷を強いることを狙っており、このために艦艇や航空機や無人アセットを様々な連接ノードを用いて繋げようと取り組んでおり、そのノードには無人機や艦艇やハイテクのE-2Dなどが期待されているようです

Project Overmatch3.jpgそしてこのネットワークには海軍だけでなく空軍アセットも連接され、様々なセンサーからの敵目標情報を活用し、様々な攻撃兵器の中から最適な兵器を選定して対処することを目指しているようです

このようなネットワーク整備への注力は、海軍や海兵隊が導入に取り組む長射程兵器の活用も念頭にあるようですが、中国やロシアの電子戦能力に伴う妨害力強化を考慮すれば、米海軍は現在のネットワークでは十分に支えることができないとの危機感が明確に認識されています

14日付Defense-News記事によれば
Gilday3.jpgGilday大将は同少将の指名に際しプレスリリースで、米海軍の戦術ネットワークの現状を厳しく表現し、「米海軍の最大の課題は、主要な指揮統制系統に入り込むことだ」、「我々はネットワークを活用する兵器、ネットワークにつながるアセット、指揮統制ノードを導入しつつある。しかし重要なピースである適切なセットワークを保有していない」とはっきり認めた

そして同大将は、「Project Overmatch」をコロンビア級SSBNに次ぐ米海軍最重要のプロジェクトだと呼び、ちょっと前まではWW2当時の原子爆弾開発プロジェクトである「Manhattan Project」に匹敵すると表現していた取り組みを、「制海を可能とする作戦環境に導く、ネットワーク、関連インフラ、データ構築、分析支援能力等々を構築する努力」と語っている

Project Overmatch.jpg更に、「これほど重要で優先度の高い任務はない」、「米海軍を挙げてSmall海軍少将を支援する」、「目指すところは、全ドメインで、全ての方向から、同期された様々な兵器を、時には群れとして米海軍が活用できるようにすることである」と語っている
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Small.jpgこの記事だけでは中身がわかりませんが、西太平洋に広く分散するであろう艦艇・航空機・無人アセットに、様々なセンサーアセットと連接ノードを結び付ける戦術ネットワーク構築プロジェクトが「Project Overmatch」と呼ばれ、艦艇乗りで電子戦や艦艇センサーやミサイル防衛にも関与してきたDouglas Small海軍少将がプロジェクトリーダーに選ばれたということです

4件連続で発生している米海軍艦艇の火災事故、運用開始が伸び伸びのフォード級空母、コロンビア級SSBNの価格高騰、艦艇修理・建造施設のパフォーマンス低下などなど、良い話題がほとんどない米海軍ですが、頑張っていただきたいものです

米海軍の関連記事
「米国防長官が米海軍体制検討のさわりを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-18-1
「21年初に本格無人システム演習を太平洋で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-10-1 
「米空母と潜水艦修理の75%が遅延」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「潜水艦も無人化を強力推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-03
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇推進案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「空母故障で空母なしで出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-16
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24

全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMSとJADC2関連
「突然前倒し?第3回目は太平洋で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-29
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-05
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米空軍の課題:他軍種はABMSに懐疑的」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-12
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

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中国空軍H-6Nに空中発射極超音速兵器搭載か? [中国要人・軍事]

ネット上に流布された8秒間の映像が話題
H-6N爆撃機の胴体下に試験用キャプティブ弾か?

H-6N 3.jpg19日付Defense-Newsは、河南省の中国空軍基地(Neixiang Ma’ao)で撮影されたと推定されるH-6N爆撃機の画像を掲載し、中国軍が開発する空中発射型の極超音速兵器の模擬弾(キャプティブ弾)を胴体下に搭載しているのではないか・・・と報じています

2018年版の米国防省レポート「中国の軍事力」は、中国軍が核弾頭搭載可能な空中発射弾道ミサイル「CH-AS-X-13」を開発中だと記載していましたが、今回撮影されたミサイルらしきものがそれに該当するのかは不明です

豪州在住で日本を含むアジアの話題をカバーしているMike Yeo記者による記事で、映像の出どころや撮影時期や場所などの情報は不明ながら、ロシアと異なり、公開情報として滅多に出てこない中国軍の極超音速兵器開発に関する記事ですのでご紹介します

19日付Defense-News記事によれば
Henan Province.jpg中国軍が開発中だと伝えられてきた空中発射弾道ミサイルが、極超音速兵器である可能性が出てきた
中国空軍のH-6シリーズ大型爆撃機の最新型であるH-6N爆撃機が着陸する様子をとらえた映像がネット上にアップされ、映像の質が低くはっきりとはわからないが、胴体下に極超音速兵器を搭載している可能性がある

映像では、H-6N爆撃機の胴体下部が少し凹型にへこんでミサイルらしきものが搭載しやすいような形状になっており、搭載ミサイルは、弾頭部分にDZ-ZF極超音速飛翔体を使用し、ブースター部分にDF-16中射程弾道ミサイルを使用したDF-17極超音速ミサイルに非常に似ている
DF-17 2.jpg中国軍の空中発射極超音速兵器開発がどの程度進んでいるのかは不明だが、映像からは、少なくともミサイルのモックアップを機体に搭載し、様々な飛行パターンで空力特性や機体への影響を確認するキャプティブ開発段階にあることを示唆しているように見える

米国防省は、少なくとも中国が2014年から極超音速兵器の開発に取り組んでいると分析している。極超音速兵器は、飛翔コースが予測できる弾道ミサイルとは異なり、探知しにくい大気圏内を飛翔し、飛翔中に経路を変更可能であることから、これまでのミサイル防衛網では対処困難と言われている
H-6N Neixiang Ma’ao.jpg映像の撮影場所は不明だが、米空軍大学内の中国航空宇宙研究所は、短い映像から河南省の中国空軍「Neixiang Ma’ao」基地ではないかと推測している。H-6爆撃機部隊が所属している同基地には3600m級の滑走路とH-6を十分格納できるシェルター20個が確認できるが、衛星写真によれば最近、丘の側面から穴を掘った形の幅70mの出入り口を持つ地下施設工事が行われている
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2019年10月1日の中国建国70周年軍事パレートに初登場し、世界が注目した極超音速兵器「DF-17」ですが、航空機搭載型が開発されていても不思議ではありません。米軍も陸海軍が共同で3軍共通飛翔体を開発し、陸海空軍がそれぞれに発射機を開発していますから・・・

どなたが撮影したのか、いつどこで撮影されたのか不明の映像です。映像に白い車が移っていますが、大丈夫でしょうか・・・

Mike Yeo記者のツイッター関連投稿
https://twitter.com/TheBaseLeg/status/1318161366276960259

軍事ブロガーJSFさんの「DF-17」解説
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20191008-00145888/

中国の極超音速兵器開発
「中国が超超音速兵器で優位」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-27-1
「中国が優位なのか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-14

ロシアの極超音速兵器
「露が対艦極超音速兵器試験に成功か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-08
「ロシア第3の超超音速兵器3M22 Zircon」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-21
「プーチンが超超音速兵器を大自慢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-26
「ロシアが新型核兵器続々開発と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-1
「ロシアも取り組み表明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-11

米軍の極超音速兵器開発
「3月の極超音速兵器テストは誤差20㎝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-14
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31

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米軍輸送コマンド:旅客機移動でコロナ感染リスク低い [Joint・統合参謀本部]

B-767やB-777でDARPAと共に科学的検証
患者の横に座っても54時間飛行して感染量に達する程度
他に考慮すべき要因も残っているが

Trans COVID-19.JPG15日、米軍輸送コマンドがDARPAや民間企業等と協力して実施した大型旅客機での「コロナ感染リスクテスト」結果を記者団に発表し、旅客機の優れた換気能力とフィルター性能により、「浮遊飛沫:airborne particles」は6分以内に除去され、エコノミー席の隣に感染者が座っていても、54時間機内に滞在しないと感染につながるウイルス量を吸引することにはならない等の分析結果を明らかにしました

試験は、兵士の空輸を担う米軍輸送コマンドが資金を出し、DARPA、米空軍輸送コマンド、民間企業「Zeteo Tech」「S3i」、ネブラスカ大学が協力して、8月24-31日の間に米軍兵士の輸送に使用頻度が高いボーイング767-300 と777-200旅客機を使用して行われ、地上と飛行中のデータを収集したとのことです

Trans COVID-193.jpg乗客が機内を動き回ったり、会話したり、激しく咳き込んだりすることまでは想定していない実験だったようで、この点は今後の研究に委ねたいとの米輸送コマンドの姿勢ですが、一般のイメージとは異なり、旅客機の換気・空気清浄能力は一般家庭の15倍程度と極めて高く、実験結果もそれを証明したということで、科学雑誌への投稿と記者発表を急遽計画したようです

まだまだ詰めるべき点があるとは思いますが、「揚げ足取り」の日本のTVワイドショーや野党の話にうんざりしている中、地道に科学的な検証を行った米輸送コマンドや関係機関の皆さんの努力を讃え、厳しい状況にある航空業界の皆様へのエールの意を込め、発表概要をご紹介いたしま

15日付Military.com記事によれば発表概要は
B-767-300.jpg15日明らかにされた米軍主導の研究によれば、大型の民間旅禍機内でコロナに感染するリスクは相当低い模様で、旅客機の高性能換気・空気浄化システムにより、どの座席に座ってもその程度に差はない模様である
ボーイング767-300 と777-200旅客機で行われた実証試験では、機体内は空気が下に流れて換気浄化装置に集められるようになっており、「浮遊飛沫:airborne particles」の機内滞在時間を局限する役割を果たしている

実験では、飛沫にDNA識別可能な処置を施し、2-4分間おきに300回飛沫を機内に放出した。B-767では機内3か所で、B-77では4か所で飛沫が放出され、特別センサーでリアルタイムでその拡散状況がモニターされた
また機内座席には、マスクをしたマネキンと着用しないマネキンが置かれ、呼吸や咳の調査に使用された

機内で飛沫は急速に除去され、6分以内にセンサーで検知されなくなった。同様の試験を一般家庭で行うと、約90分間空気中に漂っていることから、旅客機内は一般家庭の15倍の換気浄化能力がある換算となる
Trans COVID-192.JPGこの飛沫滞留時間を感染可能性で見てみると、B-777のエコノミークラスの乗客で隣席にコロナ感染者がいたとしても、54時間機内滞在していないと感染に至るウイルスを吸引できないこととなる。また感染者が機内の隣のキャビンにいる場合だと、100時間以上必要な計算になる模様

また研究は、マスク着用の重要性を改めて指摘し、マスクをしている感染者が咳をした場合、多くのケースで95%以上飛沫拡散が抑制されるとの結果をまとめている
更に、飛沫が機内の乗客が接触しやすい座席等の表面に蓄積される状況についても分析が行われ、絶対量は小さいが、座席のひじ掛け部分に比較的残りやすく、垂直なモニター画面や座席の背もたれはより少ないとの結果が出ている

方で研究に関するいくつかの注意喚起も行っている。研究が乗客が機内を自由に移動することや、相互に会話することについては研究想定に含まれていないこと、更に機内全体の換気状況については上記条件で散布された「浮遊飛沫:airborne particles」に関し行われ、乗客の咳や激しい呼吸は想定していない点を今後の課題だと明確にしている
今後この研究成果は他の関連研究者のレビューを経て、科学雑誌に投稿掲載される方向で、米輸送コマンドはこの成果が更なる研究の基礎となり、より適切なコロナ対策や国民の理解につながることを願っている
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B-777-200.jpg欧州などでは、春の感染の山を上回る勢いで感染者が急増し、フランスが再び夜間外出制限を導入するなどコロナの影響は衰える気配を見せません

そんな中ですが、これまでの経験を蓄積して、少なくとも日本では旅行や外食が少しずつ可能になり始めています

今の世界に、旅客機に乗っていきたい場所があるわけではありませんが、福島原発の「処理水」と同様に、マスゴミや野党やパヨクに騙されず、正しい知識が普及することを願う次第です

輸送コマンド関連の記事
「輸送機が新データリンクで数百倍データ通信高速化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-04
「輸送機から攻撃兵器投下試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-01
「やっぱり駄目:KC-46改善は2023年以降に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-04
「空中給油機を通信中継アセットとして」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-11

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米大統領選を前にNew START延長交渉は混迷から合意へ [安全保障全般]

またもやどんでん返し!!!
11月20日、ロシア外務省が突然、米国提案の「とりあえず1年延長、その間は現状変更しない」案を受け入れると発表し、米国務省報道官が「歓迎する。すぐにも合意手続きを進める用意がある」と反応
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2021年2月消滅の最後の核兵器管理条約を巡り
とりあえず1年延長案を巡り、米大統領選を前に駆け引き

O'Brien.JPG16日、米露間の戦略核兵器制限条約New STARTの延長問題を巡り、これまで交渉されてきた米側提案の「とりあえず1年延長、その間は現状変更しない」案に対し、プーチン大統領が「無条件でとりあえず1年延長」ならOKとちゃぶ台返し反応を示し、米側交渉責任者Robert O'Brien米大統領補佐官が「話にならない(non-starter)」「大統領選の様子見か!?」と不信感をあらわにしました

新START条約は米露間で2011年2月5日に発効したもので、双方の戦略核弾頭上限を1550発とし、その運搬手段である戦略ミサイルや爆撃機配備数上限を700に制限する条約です。有効期限は10年間で、最大5年の延長を可能とし、条約の履行検証は米露両国政府による相互査察により行うこととなっています

New START3.jpg核兵器管理の条約には新STARTとINF全廃条約がありましたが、1987年12月8日に米露が署名し、相互に射程500kmから5500kmの地上発射弾道ミサイルの廃棄と保有禁止を約束するINF全廃条約は、ロシアが条約を履行していないとして、トランプ政権が2019年8月2日に破棄通告しています

INF全廃条約破棄を受け、新START条約が核兵器管理の唯一の枠組みとなったことから、多くの専門家が同条約の延長すべきと主張していますが、トランプ大統領は本条約を「オバマ時代の悪いディールだ」と呼び、新START条約の延長はせず、中国も含めた米中露の3カ国で核兵器管理の合意を追及すべきだと発言していました

一方ロシアは、新START条約の規定に沿って5年延長を提案していましたが、トランプ政権提案の露中米3カ国取り決め追求については、米露と比較して少ない核兵器しか保有しない中国が、保有核兵器削減を求める可能性のある議論を拒んでいる現実を踏まえ、「非現実的だ」と突っぱねていました

Putin START.jpeg条約消滅の危機が迫る中、米側は米露中での新条約案を一旦わきに置き、「とりあえず1年延長、その間は(New START範囲外の核兵器も含め)現状変更しない」案を持ち出し、今年10月2日のジュネーブでの米露交渉ではロシア側も同意していたとRobert O'Brien米大統領補佐官は主張していますが、ロシア側は「そのような合意など存在しない」と反論しています

O'Brien補佐官は「他の国にも見られるように、ロシアも大統領選挙がどうなるかを見ているのだろう・・・」とコメントしており、さもありなん・・な状況です

16日付Military.com記事の見方は・・・
O'Brien2.jpgO'Brien補佐官は、ロシア側も新START条約消滅による核軍拡競争への突入を前にし、そのスタンスを再考したと示唆していたが、大統領選挙を前にロシアはロシアらしい対応を見せた
トランプ大統領はNew START条約延長に積極的ではなかったが、大統領選挙を前に、今年に入って同条約延長の交渉に取り組み始めていた。なお民主党のバイデン候補は、ロシア側提案の5年延長に合意すべきとの姿勢である

米側交渉団のMarshall Billingslea氏は、「米側は条約延長に向けあらゆる努力をしてきた。ロシアは歴史的なwin-win合意の機会を逃した」、「これまでの合意を反故にした」と語ったが、ロシア側は何の合意もしていないと反論している
New START2.jpgクリントン政権時の国防長官であったWilliam J. Perry氏は、米側が持ち出した「1年延長の間は(New START範囲外の核兵器も含め)現状変更しない」との提案部分に関し、「何の意味も感じない、合理的な理由のない提案」で、「大統領選に向けた国内向けアピールに持ち出したのではないか」と批判的にコメントしている

プーチン大統領は16日、「条約締結からこれまで、新START条約は軍拡競争を封じ込める基礎的な役割を果たしてきた」と述べているが、米情報機関は、今後10年間でロシアは、新START条約で縛られていない短射程の戦術核の増強を含め、核戦力の大幅拡大を図ると見積もっている

ハドソン研究所・村野将さんの関連ツイート
米側は単に延長を拒否したということではなく、米側も1年延長すべきだという点は同じだが、それならアヴァンガルドのような現行条約の枠外にある核兵器配備計画を一旦凍結しないとダメだ、ということ。問題はどの運搬手段を凍結対象にするか
Murano.jpgどうせ今だって規制されていない核兵器は増やせるんだから、単純延長で妥協しろ(でなければ、戦略核を無制限に増やすかもしれないぞ〔増やせるとは言っていない〕)、というロシアの言い分を飲む理由があるだろうか

CFEが有名無実化し、INFが失効した今、階層的な軍備管理枠組みが前提だった新STARTは不完全な条約になっている不完全でも基礎なのだから、そのままにしておくべきだという議論と、不安定な基礎の上に積み上げても仕方ないから、一度更地にして土台から作り直すべきだという議論がせめぎあっている
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米国防省は予算増が期待できない中、老朽化が進む核兵器を更新することに精いっぱいな現状です。その予算確保も厳しく、米海軍や空軍は、各軍種の予算枠内ではなく、「核抑止特別枠」での予算確保を米議会に求めているところです

Putin START2.jpg方でロシアは国家財政が厳しい中でも核兵器開発を精力的に行っており例えば開発中の「Sarmat」(Satan2:RS-28)は、弾頭10-16個搭載し、音速の20倍で飛翔してミサイル防衛網を突破可能といわれる射程11000kmの新型ICBMで、北極圏経由のみならず、南極経由で米国を攻撃可能とロシアが明らかにして米国を仰天させた新兵器です。ロシア系研究機関が「10発で米国の全国民を殺害する威力がある」との試算を発表しています

またAvangard超超音速兵器は、通常弾頭と核弾頭の両方を搭載可能で、大気中を音速の20倍以上で飛翔して敵の探知や迎撃兵器を無効化する兵器で、2019年12月に配備を開始するとプーチン大統領が発表しています

同様に、通常兵器でも米軍の優位を認識しているロシアは、記事が述べているように戦術核面でも開発増強を企図しています。大統領選挙を前に、米側が押されっぱなしな印象のNew START延長交渉です

新START期限切れ関連
「延長へ米露交渉始まる!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-18-1
「Esper新長官アジアへ中距離弾導入発言と新STARTの運命」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-04
「IISS:対中国軍備管理とミサイル導入は難しい」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-09

ロシアの兵器開発とINF条約関連経緯
「第3の超超音速兵器Zircon」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-21
「トランプが条約離脱発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「露は違反ミサイルを排除せよ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-06
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15

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陸軍長官:3月の極超音速兵器テストは誤差20㎝ [Joint・統合参謀本部]

今年3月19日の試験の話を今になって語る
ロシアの「Zircon」試験に対抗して米国製アピールか

McCarthy 2.jpg13日、米陸軍協会主催イベントでRyan McCarthy陸軍長官が、今年3月に行われた3軍が共通使用する極超音速兵器のCommon-Hypersonic Glide Body(C-HGB)の第2回目の試験で、弾頭が目標からわずか「20㎝以内: only a mere 6 inches」に着弾していたと、今頃になって明らかにしました

McCarthy陸軍長官はスピーチで、「極超音速ミサイルは、指定された試験用ターゲットに、わずか6インチ(20㎝弱)の誤差で命中した」と3月19日の試験に具体的に言及し、同試験直後に発表されていた「指定された試験目標に向かって超音速で飛翔した」とのプレス発表から大きく踏み込んで開発状況をアピールしました

Hypersonic.jpg2020年3月の試験は、2017年10月の第1回目からかなり間隔が空いて実施された試験で、ハワイのカウアイ島発射で実施され、飛翔距離や高度、着弾状況などは全く公開されていませんでしたが、半年以上経過した今頃になって、着弾精度について「6インチ」との具体的数字を突然明らかにしました

この3軍が共通使用を想定して陸海軍が共同開発したボディー部分「C-HGB」は、弾頭、誘導システム、ボディー内配線、熱防護シールドで構成され、3軍はそれぞれにこのボディー開発成果を生かし、地上・艦艇・航空用ランチャーや関連システム開発を進めており、それぞれ陸2023年、海2023年、空2022年配備を目指しているところです

3月の試験や最近の状況は以下の過去記事で
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22

Putin Zircon.jpgなぜ突然、陸軍長官の口から誤差「6インチ」発言が出たかを邪推すれば、それは10月6日にロシア軍が白海上のフリゲート艦「Groshkov」から行った、「米空母キラー」の極超音速対艦兵器「3M22 Zircon」の発射試験成功報道を意識したものと考えられます

プーチン大統領の誕生日である7日に、Gerasimovロシア軍参謀総長がTV電話で試験成功をプーチン大統領に報告する模様がメディア報道され、プーチンが「最新の比類なき兵器導入」とアピールした模様が、この分野で中露に後れを取っていると米国防省に批判的な米国安全保障関係者や米議会を「刺激」し、米国防省高官として米国のキャッチアップ状況をアピールせざるを得なかったものと考えます

「露が対艦極超音速兵器試験に成功か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-08

ちなみに米軍での取り組み状況は8月時点で
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
Hypersonic2.jpg8月5日、米陸軍のNeil Thurgood中将は2023年部隊配備との野心的な計画を実現すべく、米海軍と協力し2021年には年間3回の「C-HGB」発射飛翔試験を計画していると発言
その際同中将は、「年3回の試験計画は非常に野心的なものであるが、中国やロシアの動向を見るに、我々は積極的に動かざるを得ない」と述べている
また併せて同中将は、国防省がすべての資金を出してくれるわけではなく、開発リスクを局限するように見積もりつつ、陸軍の資源を有効活用できるよう、一つの試験で並行していくつかの課題に挑戦することになると財政上の厳しさをアピール

Hypersonic3.jpg8月8日、米空軍第412試験飛行団は、米空軍がロッキードと開発を進めている極超音速兵器ARRW(AGM-183A Air-launched Rapid Response Weapon)に関し、最後の「captive-carry試験」を実施し、テレメトリーやGPS信号を地上に送信することに成功したと発表
ARRWの「captive」弾はB-52爆撃機に搭載され、B-52とARRWの融合適合も併せて確認され、今年後半に予定されている最初の「Booster Test Flight」に向けた一つのヤマを越えた、と試験担当幹部は語っている
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第1回目の試験から2年半の間隔をあけて実施された第2回試験ということで、技術的にも困難であったことが伺えますが、弾頭、誘導システム、ボディー内配線、熱防護シールドで構成されるボディー部分「C-HGB」が誤差20㎝程度で着弾していても、米軍が配備するのは2022年以降ということで、まだまだ開発の山がありそうです

ちなみに米陸軍は、2023年に部隊運用開始を目指す計画ですが、部隊には2022年の7-9月に配備を開始し、訓練や運用開始準備を行わせる模様です

中国の極超音速兵器の話を最近聞きませんが、どうなんでしょうか? 内陸部で試験しているのでしょうか???

プーチンの誕生日に成功報告
「露が対艦極超音速兵器試験に成功か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-08

米軍の極超音速兵器開発
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31

中露の極超音速兵器
「ロシア第3の超超音速兵器3M22 Zircon」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-21
「中国が超超音速兵器で優位」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-27-1
「プーチンが超超音速兵器を大自慢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-26
「ロシアが新型核兵器続々開発と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-1

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米陸軍と海兵隊F-35が情報共有演習 [Joint・統合参謀本部]

陸軍と海兵隊F-35が敵情報を双方向で共有し攻撃
sensor-to-shooter時間を20分から20秒へ短縮

Project Convergence2.jpg12日付C4ISRnetが、9月末に米陸軍がアリゾナ州Yumaで行った戦術ネットワーク演習「Project Convergence」に海兵隊F-35Bが参加し商用衛星情報を陸軍AI技術で分析した敵目標情報をF-35に伝えたり、逆にF-35センサー情報で陸軍砲兵部隊が敵を攻撃する訓練を行い成功したと報じています

先日、米陸軍と空軍の間で、2年もかけてJADC2(統合全ドメイン指揮統制)の「もっとも基礎的な」コンセプトを定める議論を開始することになったとお伝えし、同時に米空軍が陸軍や海兵隊の長射程攻撃重視を快くみておらず、両参謀総長が丸一日協議して「基礎的」検討合意にとどまった壁の厚さを邪推しましたが、陸軍は同じ地上部隊仲間の海兵隊からF-35活用を学び始めたようです

米陸軍Army Futures CommandのWillie Nelson担当部長が、「滅多に使用しない言葉だが、あえて使用したい。前例のない、画期的な試みで、皆が興奮した」と米陸軍にとってのインパクトの大きさを表現しています。ただF-35の参加は偶然から生まれたチャンスだったようで、「今頃初めてかよ・・・」との声も聞こえてきそうですが、「大きな一歩」には違いないのでご紹介しておきます

12日付C4ISRnet記事によれば
Project Convergence3.jpg統合での戦いを追求する米軍の中にあって、米陸軍にとって戦術ネットワーク演習「Project Convergence」は極めて大きな意味を持つビックプロジェクトだが、F-35を実験演習に組み込む計画までには至っていなかった
しかし9月の「Project Convergence」演習場から道路一本隔てた海兵隊航空基地にF-35Bが多数配備されていたことから、とんとん拍子に話が進み、1機の海兵隊F-35の演習参加が決定した。ただ、調整にはRyan McCarthy陸軍長官までかかわっていた模様で、「チャンスがあったので強く追及した。握手して了解を得て、離陸したF-35はすぐ演習場の上に現れたんだ」と振り返っている

Project Convergence4.jpg急に話がまとまったので、Nelson担当部長のチームは、どのようにこのチャンスを生かして、F-35を演習内の目標情報共有の流れの中でリアルタイムに活用するかを考えた
一つはF-35への目標情報提供である。商用衛星画像がワシントン州にあるTITAN地上施設で受信され、そこで米陸軍開発のAI目標情報抽出システム「Prometheus」により敵情報が生成・整理される。そのデータはYuma演習場の地上施設に衛星通信で提供され、そこからF-35にLink-16経由で提供され、敵の脅威情報として、また攻撃目標情報として活用された

逆にF-35センサーからの情報を米陸軍が活用する手法も検証された。F-35Bがとらえた潜在的脅威はLink-16を通じて陸軍に提供され、陸軍部隊は「FIRESTORM:FIRES Synchronization to Optimize Responses in Multi-domain Operations」システムを用いて最適な陸軍攻撃手段を選択、演習では「Extended Range Cannon Artillery」が指定され、見通し外攻撃を行った

Project Convergence.jpgNelson担当部長は、「我々は宇宙アセット、航空プラットフォーム、そして地上装備を結び付け、目標情報を異なったコミュニティー間でやり取りして作戦行動につなげた。素晴らしいことだ」、「事前の検討にはなかった挑戦に、各方面の専門スタッフが知恵を出して取り組んだ成果が新たなものを生み出した」と喜びを表現している
海兵隊F-35参加によって生まれたこの大きな成果は、2021年の「Project Convergence」計画に極めて大きな示唆を与え国防省全体が取り組む5世代戦闘機と他プラットフォームとの連接への取り組みを加速することにつながるだろう
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米陸軍にとって極めて重要と思われる戦術ネットワーク演習「Project Convergence」に、第5世代機であるF-35やF-22の活用が含まれていない時点で「米軍は大丈夫なのか?」、「中国やロシアと戦う前に、陸海空海兵隊が相互に戦っているのでは・・・」と心配になりますが、これを契機として前進していただきたいと思います

Project Convergence5.jpgしかし・・・中東ではどうしていたんでしょうか? A-10とかF-16とかF-15Eとか・・・。情報共有に20分かかっていたんでしょうか???

余談ですが、陸軍Army Futures CommandのWillie Nelson担当部長は、同姓同名のカントリー界の大御所とは全く関係なさそうです・・

「米陸軍と空軍がJADC2コンセプト共同開発にゆるく合意」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-06

全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMSとJADC2関連
「突然前倒し?第3回目は太平洋で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-29
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-05
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23

「今後の統合連接C2演習は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-08-1
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28

米陸軍の長射程兵器導入など
「米陸軍は長射程兵器で2023年から変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「射程1000nmの砲開発の第一関門間近」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
「射程1000nmの砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「極超音速兵器の開発状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米空軍の課題:他軍種はABMSに懐疑的」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-12
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

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米トルコ関係:S-400とF-35部品を巡り再び緊迫 [安全保障全般]

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トルコがロシア製S-400レーダーで米軍F-16追尾で緊迫
一方でトルコ製造F-35部品に2023年まで依存

S-400 4.jpg各種軍事メディアが、米国やNATOからの強い反対を押し切り、ロシアから高性能防空ミサイルシステムS-400を導入した米トルコ関係の現状を報じ、輸入したロシア製のS-400レーダーで米空軍F-16を追尾するようなトルコに経済制裁を訴える超党派の米議会の動きや、一方でS-400がらみでF-35計画から排除したはずのトルコから、F-35部品を当面購入し続けなければならない悩ましい状況を伝えています

スラム諸国唯一のNATO加盟国であるトルコを重視する西側諸国は、トルコに防空システムを実質提供するような形で支えてきましたが、エルドアン大統領の世俗主義からイスラム主義重視姿勢への転換で西側との関係が悪化し、2019年7月にトルコはロシア製S-400装備の導入を開始します

F-35C.jpgトランプ大統領は、F-35を100機も購入予定のトルコとの関係を維持したい未練たっぷりでしたが、S-400導入を看過することはできずトルコをF-35共同開発国から除外し、トルコ用に製造済みだった6機のF-35を米国が使用することを2019年7月に決定します

ただ、F-35共同開発国としてトルコが担っていた900種類ものF-35部品製造について、米国防省は2020年春までに米国企業を中心とした企業に移転を完了したいと説明していましたが、ロッキード社のずさんな部品供給体制立ち上げやコロナの影響等もあり順調にはいかず、今では2023年までトルコ製造F-35部品に依存する状況が続く模様です

そんな中、トルコ軍S-400による米軍F-16ロックオン?に米議会が激怒し、トルコに対する経済制裁措置を求める動きが活発化しています・・・

7日付米空軍協会web記事によれば
S-400 2.jpg7日、米議会上院のChris Van Hollen議員(民主党)とJames Lankford(共和党)はポンペイオ国務長官に対し書簡を送り、8月に地中海地域4か国の演習に参加した米空軍F-16を、トルコ軍のS-400レーダーが追尾した事例が初確認され、今後も同様の動きでS-400を通じ関連情報がロシアに流出する懸念大だと訴えた
ちなみに同演習は、最近トルコがキプロス周辺の領有権問題がある海上に油田調査リグを出す等の行動をしていることを受け、トルコによる東地中海地域への軍事行動への対処を想定したものだった

トルコは昨年11月、トルコ空軍のF-16をS-400テストのために飛行させS-400レーダーでの探知状況等を確認しているが、今回は米空軍のF-16を対象にS-400が使用された初のケースであり、ロシアへの探知追尾状況に関する情報流出を両議員は懸念している
書簡で両議員は更に、NATOがトルコに提供している防空システムの情報がロシアに流出していないか、NATOのLink-16情報がロシアに流出していないかを確認するよう求めている

F-16 2.jpgまた両議員は、米国やNATOの要請に応じず、トルコがS-400使用をやめる気配がないことから、米議会が「Countering America’s Adversaries Through Sanctions Act (CAATSA)」に基づくトルコへの制裁法を2019年に成立させているにもかかわらず、トランプ政権がこれを実行しないことに不満を示すプレスリリースも出している

トルコがS-400を黒海沿岸に展開
6日、トルコ軍はS-400を試験するため、同防空システムをトルコ北部の黒海沿岸港湾都市Sinop周辺の演習場に展開させ、周辺空域への民間航空機の侵入を制限する公布を出した
黒海はロシアが併合したクリミア半島に面しており、NATO軍とロシア軍が相互に演習や警戒監視活動を活発に行っている緊張地域である
Turkey USA.jpgトルコ軍は当初、ロシアから輸入したS-400を2020年4月に運用開始する計画だとしていたが、コロナの影響で運用開始時期が遅れていると説明している

米国は、トルコがS-400を運用開始すれば制裁を発動すると警告しており、S-400運用開始の遅れは米国との関係も背景にあるのではと憶測されている
運用開始時期についてはトルコ国防省調達部門トップは、「このような重要な装備品については、いつから運用を開始するかに関し、公にする意思はない。運用開始準備がどの程度進んでいるかについても、トルコの戦略的位置づけからすれば答えるつもりはない」と回答を拒否している
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イランとトルコが、イスラム主義(政治も生活も全部イスラムでやるというイデオロギー)の国をリードし、西側や他のアラブ諸国と対峙する時代に向かうのでしょうか? 心配です

もう一方のF-35の部品調達問題ですが、トルコ製部品の代替問題以前に、ロッキード社のサプライチェーン管理がでたらめで、ALISの機能不全に加え、議員対策から米本土の州や全世界にばらまいた部品製造企業が期待した品質や納期を満足せず、混乱カオス状態にある模様です

F-16 F-35.jpg加えてトルコ製造部品の代替探しです。2020年予定が2023年まで伸びるとは、「見通しが立たない」と宣言しているようなものです

米国防省もF-35フル生産にかじを切り、フィンランドもF-35購入(60機)に傾きそう(2021年機種決定予定)な流れですが、「亡国のF-35」状態に変化ありません

米トルコ関係
「トルコの代わりに米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
「米がトルコに最後通牒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09
「6月第1週に決断か」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-23
「トルコが米国内不統一を指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-2
「もしトルコが抜けたら?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-21

「露がトルコにSU-35売込み大詰め!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-29
「プーチンがトルコ大統領にSu-57Eを売り込み」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-28-1

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米陸軍と空軍がJADC2コンセプト共同開発に合意 [Joint・統合参謀本部]

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陸軍の長射程兵器導入を踏まえた協力
米海軍とは2019年末により具体的な検討開始だが
2年かけ基礎コンセプト検討とか・・・

Army Air Force.jpg9月29日、米陸軍と米空軍トップが、全ドメイン統合指揮統制JADC2(Joint All-Domain Command and Control)の共同コンセプト開発に2年かけて取り組むことに合意し、文書に署名した模様です

両軍は、2022年度末(2022年9月末)までに、相互のデータ共有の基準と両軍間のデーターインタフェースについて協議して定めることに合意した模様ですが、米空軍側の発表には「もっとも基礎的なレベル(most basic)の」JADC2を構築するための合意だとの表現があり、もともと作戦運用思考やスピードが異なる両軍の架け橋は容易ではないような印象です

Army Air Force5.jpgちなみに、今回のコンセプト開発合意では、JADC2の前にCombinedの「C」を加えたCJADC2コンセプトの開発を目指すとなっており、この微妙な違いが意味するところはよく分かりません

JADC2に関する合意には、2019年12月に結ばれた米海軍と米空軍の合意がありますが、こちらはより具体的に、米海軍と米空軍の前線での作戦情報ネットワークを連接する特別チームを編成するというもので、米陸軍との「most basic」な取り組みとはレベルが異なる印象です

とりあえず、報道や発表文書から、米陸軍と空軍の合意についてご紹介します

5日付C4ISRnet記事によれば
Army Air Force2.JPGこの共同コンセプト開発合意は、米陸軍のJames McConville参謀総長と米空軍のCharles “CQ” Brown参謀総長を交えた丸一日の協議を経たのち、9月29日に両者によって署名された
この2年間の共同コンセプト開発を、米陸軍は「Army Futures Command」、米空軍は「米空軍司令部の戦略計画部A5」がそれぞれ担当窓口となり、カウンターパートとなって行う

米陸軍のG-3,5,7を兼務するCharles Flynn中将は合意に関し、「将来戦における課題の中心は、戦いのスピードとその範囲にある。戦いの速度は一層迅速になり、かつてない範囲に分散配置されたセンサーや攻撃兵器を活用する戦いが統合戦略には求められる」と合意の背景を説明した
このような情勢から、米空軍はセンサーと攻撃兵器を緊密に結び付け対処を迅速化するABMS(Advanced Battle Management System)開発や実験演習に取り組み、米陸軍も2年かけたネットワークの近代化や「Project Convergence」との1週間にわたる試験を行い、従来20分間だった「sensor-to-shooter」時間を20秒間に短縮したと関係者は述べていたところであ

Army Air Force4.jpgMcConville米陸軍参謀総長は合意について、米陸軍関係者の会議で10月1日、「very, very important」と語り、「我々がかつて経験したことがない将来戦場で、全ての適切なセンサーと兵器と指揮統制を融合させ、作戦のスピードと縦深性を確保できるだろう」と語っている
また「我々は今後、保有したことがない長射程精密誘導兵器を導入する方向にあるが、このために統合戦力や同盟国等と共にクロスドメイン能力を獲得し、従来とは異なる力を発揮する」とも語っている
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米陸軍は、射程1000nmの砲開発など、長射程兵器開発導入に向けた動きを本格化し、このため目標情報を迅速にタイムリーに入手する必要性に迫られており、米空軍や米空軍が開発中のABMSとの協力は不可欠と考えらますが、米空軍のABMSへは懐疑的な思いも見え隠れし、「2年」もの時間を基礎コンセプトレベルの検討にかける理由はそのあたりにあるような気がします

Army Air Force3.jpgまた米空軍は、陸軍や海兵隊が長射程兵器偏重に傾くことに反対しており、このため両軍の参謀総長が丸一日かけて協議する必要があったのかもしれません。幕僚間で十分に詰まらなかったのではないでしょうか? この意見の相違が、両軍の担当部署が、米陸軍は「Army Futures Command」、米空軍は「米空軍司令部の戦略計画部A5」とちぐはぐになった原因とも考えられます

「sensor-to-shooter」の時間が20分だった米陸軍の文化が、秒単位にどこまで急激になじんでいくのかも注目したいと思います

米陸軍の長射程兵器導入など
「米陸軍は長射程兵器で2023年から変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「射程1000nmの砲開発の第一関門間近」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
「射程1000nmの砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「極超音速兵器の開発状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米空軍の課題:他軍種はABMSに懐疑的」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-12
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

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米空軍研究所の主要テーマ「兵器の群れ行動制御」苦戦 [米空軍]

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計画発表から1年半経過も、今から外部の知恵募集へ
MALDは計画から外す可能性も

weapon-swarm.jpg9月29日付米空軍協会web記事は、米空軍の「new science and technology strategy:新科学技術戦略」(2019年4月)に基づき、米空軍研究所AFRLが「先進的で前衛的な道を切り開く新しい研究開発プログラム(vanguard programs)」として取り組む3分野として2019年11月に定めた一つ、「兵器の群れ行動制御:a weapon swarming project」(通称:Golden Horde)が苦戦していると関係者へのインタビューを紹介しています

ちなみに「Vanguard Programs」として取り組む他の2つは、「無人機ウイングマン機:Skyborg wingman drone」と「新型GPS技術研究衛星:an experimental satellite effort(NTS-3)」です

3分野決定時に「兵器の群れ行動制御」をご紹介した際は
weapon swarming3.jpg敵を混乱させるため、既存の兵器を群れとして使用する「自立制御:autonomy」の検討
例えば、共に作戦予定の他編隊の離陸が遅れた場合、互いにネットワーク上で連携を取り、先行編隊が遅れた編隊を待って同時攻撃を作為する等の自律的な行動を期待
また、攻撃プランが機能しないと判断した場合は、事前リストの中から次善の目標を捜索し、最善の兵器を再選択し、行動ルートを変更して任務を遂行なども期待
2020年の夏には「巡航ミサイルの群れ」の初度試験を予定し、2021年夏には他の兵器も組み合わせた試験を狙っている

米空軍研究所のHeath A. Collins准将へのインタビューは極めて分かりにくく、「遅れている」「苦戦している」との表現を使わない強気姿勢ですが、報道記事のタイトルは「Air Force Wants Help Teaching its Weapon Swarm How to ‘Think’」とズバリ指摘しており、名が体を表しています。苦戦の様子がわかる部分を多少意訳し、つまみ食いでご紹介します

9月29日付米空軍協会web記事によれば
NGAD7.jpgCollins准将は、この技術の重要性を踏まえ、研究対象のSDB(Small Diameter Bomb I)の群れ技術を前進させることに取り組んでいるが、開発に着手して1年以上経過した現在でも、実環境でネットワーク化された兵器に「how to think」させるかや、「playbooks:行動基準」をどのように作成するかに苦心している
「もう少し、関連技術を対象兵器や目標群に対し、どのように適用するかを学ぶ必要がある」と語り、研究者たちは外部の知恵を借りてこの問題を解決したいと考え始めている

「NCA(networked, collaborative, autonomous)兵器システムの開発と成熟に挑戦しており、企業や学界や技術使用者の皆さんのアイディアを持ち寄っていただいて、バーチャル環境で競い合って試験ができるような環境立ち上げにも取り組んでいる。このような取り組みから、戦いの場でNCAが何を提供できるか、どのような攻撃対象にどのような対応が可能かをより深く学んでいきたい」と述べた
weapon swarming2.jpg米空軍研究所は「兵器の群れ制御研究(Golden Horde)」の一部再検討や仕切り直しにかかわらず、10月には関連無線ソフトのバァーチャル試験を行い、実際の飛行試験を今年末に行う計画だと同准将は述べた

我々は一度過去にさかのぼってこれまでの知見を再確認し、SDBでの試験を更に前に進めることで新たな知見を得られると考え、スケジュールを遅らせることなく立てている。多くのSDB改修も実施済で、実用化に近づいていると思う」と同准将は語った

当初はMALD(Miniature Air-Launched Decoy)をこの研究対象に含めて進めていたが、空軍研究所は「現在今後について検討している。まずはSDBに集中し、その後成果を他に展開したいと考えている」とし、MALDを一旦研究対象から外すことも考えている

weapon swarming.jpgまた同准将は、極超音速兵器や敵防空網制圧兵器「Stand-In Attack Weapon」にも、群れ技術を将来拡張したいと考えている模様だが、いづれにしても、バーチャル環境で実施可能な開発設計やテストは極力事前に実施し、「最初から生産ラインに設計図を持ち込みたい」と語ってい
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小型ドローンを大量に飛ばして制御し、空中や水上に絵をかいたりする規則性のある「無人機の群れ」技術は確立されているのかもしれませんが、これに「自立制御:autonomy」や「人工知能」を加え、最新の全般状況をリアルタイムで共有する仕組みとなるとなかなかハードルが高いのかもしれません

10月にバーチャルで試験するという「関連無線ソフト・技術」も、複雑なものが必要なのかもしれません。

2019年4月に「新科学技術戦略」ができたのに、11月まで重点3分野を決定するのに時間がかかったのは、成功する可能性程度の見極めが難しかったからかもしれませんねぇ・・・。でも期待してます

「米空軍研究所が重視する3分野」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-26

MALD関連記事
「MALDが作戦可能体制に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-29-1
「MALD完成間近」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-04-1
「続MALDをご存じ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-07-1
「MALDをご存じ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-16

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