SSブログ

米海軍の次期艦載機F/A-XXの構想進まず [Joint・統合参謀本部]

F/A-XX構想が定まらず米空軍の1/100の予算しか
専門家は予算不足で現有機派生形に落ち着かざるを得ないと
X-47Bの成果を葬った米海軍に亡霊が・・・

FA-XX Navy Boeing.jpg6月15日付Defense-Newsは、上院軍事委員会が米海軍に対し、現状で不明確な米海軍の次世代制空(NGAD)構想について不満を示し、整理して報告するように要求したと報じ、今現在の2020年度予算でも米海軍の要求額22億円に対し、わずか7億円しか認められていないと紹介しています

一方の米空軍は、公にはなっていないものの、PCA(Penetrating Counter Air)構想から離脱し、空軍省のWill Roper氏らを中心に、検討中の複数企業が同時並行的に取り組み、5年程度で最新鋭機を送り込む構想などを検証して煮詰めている模様で、これらに対し、1000億円程度の予算額が2020年度で認められているようです

X-47BFlight2.jpg中国の弾道や巡航ミサイルの射程距離と精度向上につれ、現有艦載機の航続距離では中国と戦えないとの危機感が専門家や有識者にはあり航続距離を得るには無人機が最適との意見が根強い中米海軍は無人攻撃機導入に消極的で、無人艦載給油機MQ-25Aの開発にかじを切っています

給油機MQ-25Aの原型は、かつて無人攻撃機をイメージして研究がすすめられ、空母での運用試験も行ったX-47Bのはずだったのに・・・・。米海軍の無人攻撃機への消極さは、元海軍トップからも指摘されています

15日付Defense-News記事によれば
FA-XX fass.jpg中国が対艦兵器を強化する中、その脅威から米空母を遠ざけるため、米海軍の苦悩は深まるばかりであるが、そんな中で新たな艦載戦闘攻撃機F/A-XXのロードマップを米議会から定めることが求められている。
上院軍事委員会は米海軍に構想提出を求め、「国家防衛戦略に適した空母航空団の構成と戦闘攻撃機F/A-XXの調達戦略の報告書を要求する」と米海軍に国防授権法の一部で求めたようだ

F/A-XXがどのようなものかは、米海軍内でも人によりさまざまで、米海軍省の研究開発担当次官補も「まだコンセプト検討フェーズにある」として、何も語っていない
一方で米海軍は、少なくとも36機のFA-18を2022-24年に調達する計画を白紙にし、その資金をNGADや戦闘攻撃機F/A-XX検討に充てる方向を打ち出し、米議会や関係者を驚かせている

X-47B Roosevelt.jpg専門家の意見は辛らつだ。ハドソン研究所(元CSBA)のBryan Clark研究員は米下院で最近証言し、「米海軍が置かれている財政上の厳しい制約からすれば、まったく新しい機体を開発導入することは事実上難しく、現有航空機の派生形にならざるを得ない」、「従って、生産ラインを維持するためにも、FA-18の調達をゼロにする米海軍案は不適切で、F/A-XXオプションを残す意味でもFA-18製造ラインを維持すべきだ」と語っている
前海軍次官のBob Work氏はさらに進んで、海軍と海兵隊がF-35のB型とC型、更にFA-18の3機種運用になって複雑さを増す結果になっている点を懸念し、航続距離が必要なら無人機が必要なことは各種分析から明白であり、焦点を絞って無人機へ早く進むべきだ、と訴えている

しかし米海軍内には無人攻撃機に対して消極的な姿勢があり、無人艦載攻撃機の開発試験を行っていた当時の米海軍人トップGarry Roughead退役大将は、「2021年に無人艦載機が初飛行や着艦試験を成功させた以降の過去8年間、当時の取り組みや成果が放置されたままだ。これほど重要な新技術に、これだけダラダラとした姿勢で」といらだちを隠せない
////////////////////////////////////////////////////

X-47BsTwo-ready.jpg空母の存在自体が疑問視され、その在り方の再検討が行われている中ですから、艦載戦闘攻撃機F/A-XXの検討が進まないのは当然ですが、新型空母や新型戦略原潜の価格が2倍に跳ね上がるような開発を行った米海軍が、自らの首を絞めているのが現状です

新型空母フォード級も無人艦載給油機MQ-25Aも、開発に暗雲が漂い始めている今日この頃、米海軍の将来が本当に心配です・・・

2012年当時のX-47Bの開発状況を過去記事でご覧ください。夢と希望にあふれています。エアシーバトルコンセプトが輝いていた時代のお話です・

空母艦載の無人攻撃機構想がしぼむ様子
「組織防衛VS無人機導入派」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-08-01
「哀愁漂うUCLASS議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-17
「UCLASSの要求性能復活?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-14
「夢しぼむUCLASS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-21

無人艦載攻撃機X-47Bの夢
「夏にRFP発出か:無人艦載機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-28-1
「映像:空母甲板上で試験中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-11
「映像:X-47B地上カタパルト発進」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-01
「X-47Bが空母搭載試験へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-28-1

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

イージスアショア撤退の日本にそれでも提言 [安全保障全般]

日本の環境では元々BMDは困難
イージスアショアも問題はあるが次善の策だったはず
それでも中止し無駄投資するくらいなら・・・

Clark.jpg6月26日付Defense-Newsは、イージスアショア導入中止を決定した日本に対し、もともと日本の環境からすれば困難(ultimately unsuccessful attempt)なミサイル防衛に、より非効率な投資を行うのではなく、これを機会に、中国や北朝鮮から同時多数攻撃を受ける前提を踏まえ、抑止力を少しでも高める包括的な航空ミサイル防衛全体(comprehensive approach to air and missile defense)を考えて投資すべきと提言する、ハドソン研究所(前CSBA)Bryan Clark研究員らの寄稿を紹介しています

冒頭から非常に難解な紹介になってしまいましたが、まんぐーすなりに解釈して説明すると、イージスアショアの発射するSM-3迎撃ミサイルが地上に落下しないように改修等の方向では、もともと日本の環境からすれば所詮困難なミサイル防衛投資が更に非効率になるから、少しでも中国などへの抑止力を高めるため、総合的な防空能力強化投資にこれを契機に目を向けては・・・との助言のよう思います

Aegis Ashore1.jpg更に言えば、住民への配慮といったよくわからない理由(unfoundedな懸念)で(問題があっても手段の中では)効率的なイージスアショアを中止し、住民対応に無駄に投資するより、策源地攻撃オプション採用が難しいなら、より大きな視点で包括的に防空システム全体の能力向上に投資すべきだとの提言と解釈しました

提言自体は総花的で、どこまで実現性があるのか専門知識不足でよくわかりませんが、大量の弾道ミサイルや巡航ミサイルを保有する中国の攻撃からの防御という「ultimately unsuccessful attempt」に、少しでも合理的な投資方向を見出し、抑止力強化につなげては・・・との無理を承知のアドバイス・・・のようにも感じました

Walton.jpgより広い視点から、日本の航空&ミサイル防衛を見つめる機会であることは間違いないので、基礎に立ち返って提言を眺めてみましょう

Bryan Clark氏は元海軍パイロットで、春まで所属していたCSBAでは、米海軍の今後の態勢について提言し、大型艦艇中心の編成から、無人艦艇を多く取り入れた体制への変換等を訴えていた人物で、エスパー長官も信頼する軍事メディア頻出の研究者ですもう一人の若手Walton研究員が起案でしょうが

提言:日本の航空&ミサイル防衛が追求すべき5要素
分散体制の固定型および移動型各種センサーのネットワーク構築。ここでのセンサーには、日本のイージス艦、米国の衛星、米軍のXバンドレーダー、構想・計画中の長期在空型無人機(弾道ミサイルや超超音速兵器の早期探知追尾用の赤外線センサー搭載)等を含む

Clark2.jpg航空&ミサイル防衛用の迎撃兵器は、より短中射程を重視し、小型でより安価なもので、多数配備可能な迎撃体に焦点を当て追求。現在進められている海上配備のSM-3やSM-6による広いエリアのカバー。PAC-3による緊要都市や基地の防御。また新たな拠点防空システムRolling Airframe Missileの活用。NKミサイルにブースト段階で対処する将来の空中発射兵器などを組み合わせ

エネルギー兵器(高出力マイクロ波兵器、電子線妨害装置やおとり、レーザー兵器)を緊要な防御対象周辺の配備し、有限数な迎撃ミサイルを補完し、短射程で緊要施設を守る
強靭な指揮統制システムで、米軍からの情報を含む各種センサー情報を融合し、より安価な兵器で、より効率的に脅威に対処する

重要軍事施設や基地に対する受動的な防御策の徹底:カモフラージュ、隠蔽、掩蔽、欺まんのほか、施設強化で残像性の高い体制の整備
/////////////////////////////////////////////////

Aegis Ashore2.jpg日本の防御態勢を飽和させるだけの十分なミサイルを、中国はもちろん北朝鮮も保有している現実の中で、迎撃ミサイルが24発しかないイージスアショアを2か所に配備しても限界があったのですが、よく理解できない理由でそれも配備中止し、更に非効率な投資をするくらいなら・・・

現有のSM-3や6をたくさん配備し、より安価な短中射程迎撃兵器の追求し、飽和攻撃に対処するエネルギー兵器や電子戦の追求、これら対処兵器をより精緻に指揮統制可能とする強靭なシステムの整備導入、更に防御対象をカモフラージュ(隠蔽・掩蔽)して見つかりにくくする等を考えたら・・・とのお話でした

色々裏のありそうなイージスアショア撤退ですが、「ultimately unsuccessful attempt to prevent successful ballistic missile attacks」な方向に流れていかないよう、注意していただきたいものです

前CSBAのBryan Clark氏関連の記事
「F-35BとC型超音速飛行に制約」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-27
「フォード級空母にレーザー兵器を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-05
「CSBA:大型艦艇中心ではだめ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「FA-18から2機の同機を操縦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-05-1
「空母の脆弱性を海軍トップに詰問」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-07

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米空軍はアジアで米海兵隊と同じ方向へ!? [米空軍]

Brown次期空軍参謀総長が語る
軽量で機動性に富み、無人機を重んじ・・・か

Brown.jpg24日、米国務省が主催するリモートイベントで記者団に対し、8月から空軍参謀総長に就任するBrown大将(現在は太平洋空軍司令官)が米海兵隊が対中国を見据えてアジア太平洋地域で目指している新たな態勢づくりについてBurger海兵隊司令官と直接話をし、米空軍も同じような方向性を考えていると語りました

また、2018年7月に太平洋空軍司令官に就任して以来の中国軍の変化についても触れ、単に戦闘機や爆撃機の数量や性能アップだけでなく、具体的行動パターンに変化が表れていると危機感を示しました

Trump Duda2.jpg同じ24日に、ポーランド大統領をホワイトハウスに迎えたトランプ大統領が、再びGDP2%国防費支出に消極的なドイツへの制裁として、ドイツ駐留米軍を約1万人削減し、更に今度は明確にその削減する米軍の一部を、米軍駐留経費負担に積極的で、GDP2%をクリアーしているポーランドに移動させると語っており、アジアでこの姿勢がどのようなインパクトを持つのか気になるところです・・

まずはBrown大将の発言から
Brown4.jpgBrown大将は、David Berger海兵隊司令官から、海兵隊が最近明らかにした対中国を見据えた2030年に向けた体制構築方針である、重装備である戦車や野戦砲を削減し、軽量で機動性がある装備や無人システム、更に対艦ミサイルに焦点を当てていくとの方向性について直接説明を聞き、米空軍もその方向に向かうことを考えていると述べた
具体的にBrown大将は「(米海兵隊と)very similarな何かを実施する方向で考えている」、「引き続き海兵隊と協議していく事項である」とリモート会見で述べた

また2018年7月に太平洋空軍司令官に就任して以来の中国軍の変化について、軍事技術や兵器性能の向上といった側面だけでなく、劇的に作戦運用や地域の周辺国にプレッシャーを与える示威行動が増加し、南シナ海での防空識別圏(ADIZ)の一方的設置宣言や、周辺国の領空接近や領空侵入事案の増加が、その指標の一つだと述べた
H-6.jpgまたBrown大将は「最新の戦闘機であるJ-20の進歩や爆撃機の増加といった側面だけでなく、どのような活動を取り始めたかに注目している」と述べ、「私が就任した2年前には(長射程巡航ミサイル搭載可能な最新型の)H-6の話題など、私とスタッフとの間でほとんど出なかったが、今やH-6が外洋で活動することが日常の出来事になっている」と表現した

そして記者団に対し、「皆さんには中国のこのような変化に注目してほしい。規範に基づく国際秩序に反するこのような中国の行動に。これは太平洋空軍や米国だけの問題ではなく、地域全体の問題である」と語った

同じ頃トランプ大統領はポ大統領との会談で
「ポーランドは、米軍を派遣してくれたら、その費用を負担すると言ってくれている。我々はおそらく、ドイツからポーランドに兵力を移すだろう。ドイツから大幅に(substantially)兵力を削減する」とトランプ大統領は述べた
両国間で国防協力合意(Defense Cooperation Agreement)への署名が予定されているが、ドイツからの兵力移転の規模や時程など、移転の内容がどの程度含まれているのかは非公開である

Trump Duda.jpgポーランドのAndrzej Duda大統領は、「(米軍兵士駐留は)NATO憲章第5条に真剣に履行する意思の明示であり、ポーランドを攻撃しようとする者に、それが容易でないことを示すものだ」と述べ、「米軍駐留は大きな保証だ」と表現した
一方でポーランド大統領は、この日トランプ大統領が述べた、ドイツから約1万名を削減して一部をポーランドに兵力を移すが、これに伴い欧州に駐留する米軍全体の数を削減するとの点に関しては、欧州の安定のため反対だと再考を求めた
/////////////////////////////////////////

ボルトン元補佐官の暴露回顧録が話題ですが、ドイツに対してトランプ大統領がやっていることを理解するのに、貴重な参考書になっています

対中国、対北朝鮮、そして対日本での「暴露本」の内容が確かなればBrown次期空軍参謀総長やBerger海兵隊司令官が考える対中国軍事作戦が、どのような運命をたどるのか心配です

それにしても、米海兵隊に続く・・・とはどういう意味でしょう? 航空戦力の分散運用をACE(Agile Combat employment)で進める方針に、何か新たな要素が加わるのでしょうか?

もう一つ・・・イージス・アショアを最初に導入したポーランドは、日本の状況をどのように報じ、反応するのでしょうか?

「制裁でドイツ駐留米軍1万人削減へ」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-16

集中から分散運用へ新コンセプトACE
「三沢でACE訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08

Brown大将関連記事
「人種問題を経験から語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-06-1
「主要戦闘機の稼働率8割断念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-08
「アジア認識を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-07
「Brown大将が次期空軍トップ候補に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-03
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
「現空軍トップとベトナム訪問」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-14
「中露空軍の連携飛行を警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-31
「PACAFが緊急避難訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-27
「南シナ海で中国軍鎮静化?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-28
「燃料と弾薬の備蓄不足を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02-1
「新司令官初海外は日本横田総隊」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-14
「Brown大将の経歴などご紹介」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

技術開発担当次官が部下を引き連れ辞任へ [米国防省高官]

7月10日付で退任し、民間企業のオファーに乗るとか
優秀な改革者だが各所で衝突を繰り返す
日本のイージスアショア撤退とも関係かも・・・

Griffin.jpg23日付Defense-Newsが、中国やロシアとの軍事技術開発競争を米国防省でけん引するはずのMichael Griffin技術開発担当国防次官が、直属の部下であるLisa Porter次官補を引き連れ、民間企業に移籍するため7月10日に離任すると報じました

Michael Griffin次官は、調達兵站と技術開発担当国防次官が分離した2018年2月に、初の技術開発担当次官に就任した人物で、NASA長官や民間企業幹部も経験した「革新的な思想家:innovative thinker」として迎えられましたが、反面その強烈な個性で、国防省内や米政府、更に議会との対立も絶えなかったようです

同次官の考え方が素晴らしすぎて、周りがついていけなかったのか、あまりに発想が突飛で組織に馴染まなかったのか細部はよくわかりませんが、ミサイル防衛庁MDAや宇宙開発庁SDAを配下に従え、弾道ミサイル防衛や超超音速兵器対処の先陣に立っており、関連するレーザー兵器を含むエネルギー兵器、イージスアショア、宇宙配備センサー、迎撃兵器Kill Vehicleなどを巡って様々に話題を提供してきた人物です

Porter DOD.jpg就任時の挨拶で「私は直属上司である国防長官と副長官に対してのみ報告等の義務を負う」と述べ、米議会から批判を浴びたり、Wilson前空軍長官との激しい対立がメディアに暴露されたり、部下のやっている事業と全く食い違った政策を突然打ち出したり・・・とメディア的には話題豊富な人物でした

過去にまんぐーすが取り上げた中では、空母1隻と同価格のミサイル2000発を比較して超超音速兵器の導入を訴えたり試験電波発射が容易な軍演習場を5G民間企業に貸し出したいとして米軍と対立したり、専門家が疑問視するF-35へのミサイル防衛兵器搭載を主張したり・・・等々の「Innovative thinker」ぶりをご紹介してきました

日本との関係では中国の超超音速兵器(Hypersonic Weapon)対処を最優先事項と同次官が訴え、同盟国の協力が極めて重要として日本に探知追尾センサーの配備調整を始めていると述べていたこと等を踏まえ、河野防衛大臣がイージスアショア導入停止を発表した際は、超超音速兵器対処への優先対処へ方針転換か?、とツイッターで邪推情報をまんぐーすから発信させていただいたところです(思い付き邪推ツイートだったのに、ものすごい反響でビックリ!)。

いずれにしても、Griffin次官が同部署の筆頭部下を引き連れ辞任することで、米国防省の技術開発政策推進への影響は避けられず、同次官の下で国防省内外と対立して混乱してきたであろう各種政策の交通整理を含め、暑い夏になりそうです

23日付Defense-News記事によれば
Griffin2.jpg辞任を決意したGriffin次官が部下全員に送ったレターには、「民間企業からオファーがあり、私とPorter次官補は、その申し出を受けることを決断しました。過去数年間に渡り、素晴らしいチームを率いて仕事ができたことをうれしく思っています。皆さんのハードワークと貢献、その高い能力と誠実な仕事ぶりに心から感謝します。皆さんの増々もご活躍とご発展を祈念いたします」と記されている

5月20日のスピーチでGriffin次官は、「皆さんもご存知のように、政治任用者は政権のお陰で勤務できており、その勤務がいつまで続くかは誰にもわからない」と今回の辞任を示唆するような発言を行っており、そのころからペンタゴンを去る日が近いのではと噂されていた

Griffin次官とPorter次官補は、国防省の主要幹部で先週辞表を提出した3番目と4番目の人物で、他の2名は、Elaine McCusker国防省臨時監察官と Kathryn Wheelbarger国際安全保障問題担当次官補代理である
////////////////////////////////////////////

Griffin3.jpgGriffin次官に特に注目していたわけではありませんが、Griffin次官関連の過去記事を改めて見直し、先日の日本のイージスアショア計画停止(撤退)発表を考える時、いろんな意味で今後の影響が懸念されます

自ら連れてきた直近の部下も引き連れ、中露との軍事技術優位を争う先頭に立っているはずの人物が、予算審議が佳境を迎えるこのタイミングで民間企業に転身とは、アメリカ的ではありますが、アメリカだけのことでは済まないと思います

転職先が、中国資本のタップリ入った企業でないことを祈るばかりです。また、国防省幹部の辞任ラッシュが、落ちつくことを願うばかりです

Griffin技術担当次官関連の記事
「超超音速兵器対処は同盟国協力が鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-09
「空母1隻とミサイル2000発とどっちがお得?」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-20
「5G民間企業に軍演習場開放も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-14
「F-35にミサイル防衛兵器を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-01-19-1
「日本に探知追尾レーダー配備?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-24
「超超音速兵器対処に宇宙センサーを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-1

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

過去最大のサイバー演習を完全リモート環境で [サイバーと宇宙]

PCTEとのサイバー演習環境を国防省が優先整備
サイバー演習「Cyber Flag」に全世界の基地から参加可能に

cyber flag4.jpg15日付FifthDomeinは、6月15日から26日の間に実施された過去最大のサイバー演習「Cyber Flag」が、米国防省が優先事業として取り組んできたサイバー訓練環境整備の成果物であるバーチャル演習場「PCTE」の使用開始により、世界各地からリモート参加可能な体制で行われたと紹介しています

バーチャル演習場「PCTE:Persistent Cyber Training Environment」は全ての米軍が使用できるサーバー訓練環境で、今現在はプロトタイプ段階ですが、主担当の米陸軍により「TRIDENT:Cyber Training, Readiness, Integration, Delivery and Enterprise Technology」計画として、正規版の提案要求書が6月11日に関係企業へ発出されているということです

cyber flag.jpg過去数年のサイバー演習「Cyber Flag」は、ヴァージニア州のSuffolkにある米統合軍基地の施設で開催され、参加者の大半は、同盟国軍や米国の他政府機関からの参加者を含め、同施設まで出張して演習に参加していたとのことですが、今年は一部の例外を除き、世界中からリモート参加で行われ、規模も過去最大となったといことです。

米軍の実働部隊の場合、海外派遣される前には米陸軍Fort Irwin内に設けられた「National Training Center」に集まって事前訓練を行ってきましたが、従来サイバー戦の世界にはそのような演習環境が十分な形で存在せず、「PCTE」がその状況を一変させたようです

15日付FifthDomein記事によれば
5日、サイバーコマンドのPCTE担当Tanya Trout大佐は、「コロナのパンデミックの中、米サイバーコマンドは即応態勢維持のため、米軍の先陣を切って実戦的な訓練を行い、この新たな環境を活用して運用態勢を整え、部隊を鍛錬する」と述べ、コロナの影響で物理的移動が制約を受ける中での訓練充実に自信を示した
cyber flag2.jpg15日からの「Cyber Flag」演習では、一部の例外を除き、世界中の地域コマンドから関連部隊がリモート参加するが、従来のように一か所に集まって実施していた当時と同様に、敵からのサイバー攻撃への防御訓練などを実施できる、と同大佐は説明した

PCTE計画は今回の「Cyber Flag」演習で、これまでの単一部隊による演習から、より大規模な「Tier-1」レベルの演習も可能なことを確認し、得られた教訓を生かして更なる改良を図る予定である
PCTE計画では今後、PCTE内にあらかじめ準備された幾つかの訓練メニュを準備し、部隊のニーズに応じた訓練を、いつでも世界中からアクセスして可能な環境を整備し、訓練メニューも最新に事象を迅速に反映出来るよう取り組む方向である

PCTE計画の実施に当たり担当の米陸軍は、通常の調達要領とは異なり、小さな契約を積み重ねて最新の技術導入を可能にし、サイバードメインでの日進月歩の技術革新に追従できるよう工夫している
またこの過程で米陸軍担当部署は、現場のサイバー部隊からの意見吸い上げに注力し、現場の声を生かして「使えるシステム」構築と改良を重視している
///////////////////////////////////////////////

<cyber flag3.jpgstrong>コロナ感染が発生する以前から、サイバーコマンドではPCTEを活用したリモート「Cyber Flag」演習を企画していたようで、今後はこれが一つのサイバー演習の標準形になるようです。

皆が集まってブレインストーミングを必要とする様な演習や検討会も必要でしょうが、サイバー部隊の場合は、普段勤務している職場が戦場になるのでしょうから、移動時間も省けて効率的ですね。

ちなみに、記事に登場する「PCTE担当Tanya Trout大佐」は、アジア系の女性です。

今回のコロナ対応で、いろんなことがリモート環境である程度可能なことを否応なしに検証され、この記事がスッキリ身体に沁み込む方も多いでしょう。自衛隊はどうだったんでしょうか? ほとんどリモート化が出来なかった、進まなかった・・・・ような噂を聞きましたが・・・内部部局も含め・・

6月15-26日の「Cyber Flag」演習には、「international partners」も参加していると記事は紹介していますが、自衛隊部隊が参加したかは不明です

サイバー関連の記事
「海兵隊サイバー隊が艦艇初展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-08
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
「米国務省のサイバー対策はデタラメ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-27
「やっとサイバー部隊に職務規定が」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-13
「喫緊の脅威は中露からではない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-16
「ハイブリッド情報戦に備えて」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-05
「ドキュメント誘導工作」を読む→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1
「サイバー攻撃に即時ミサイル反撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-11-1
「NATOが選挙妨害サイバー演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13
「サイバーとISR部隊が統合して大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「ナカソネ初代司令官が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17
「大活躍整備員から転換サイバー戦士」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-3
「サイバー戦略がもたらすもの」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-02
「市販UAVの使用停止へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-07-1
「サイバーコマンドの課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-04
「サイバー時代の核兵器管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02

「人材集めの苦悩」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-31
「米空軍ネットをハッカーがチェック」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23
「米国政府サイバー予算の9割は攻撃用!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-31
「装備品のサイバー脆弱性に対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-02

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米国防省が国防宇宙戦略を発表 [サイバーと宇宙]

実質9ページの文書(水増し表紙等で18ページ)
国家防衛戦略NDSを支える下部戦略として

Defense Space St.jpg17日、米国防省のStephen Kitay宇宙政策担当次官補代理が会見し、2018年制定の国家防衛戦略NDSを宇宙分野から支える実質9ページの「国防宇宙戦略:Defense Space Strategy」を発表し、概要を説明しました

同戦略にすべて目を通したわけではありませんが、宇宙軍誕生に伴い現在取り組んでいる各種政策を整理紹介している印象です。

そんなに目新しい事実や方針が打ち出されたわけではありませんが、米国軍事宇宙政策の現在位置を確認し、頭を整理するにはよい文書ですので、概要の概要をご紹介いたします

17日付米空軍協会web記事によれば
●同戦略の情勢認識
Defense Space St2.jpg---米国が人工衛星を打ち上げて以来、宇宙アセットは地球内での作戦のサポート的な役割と考えれてきており、その防御についてはあまり考えられてこなかった。しかし今や宇宙アセットは、米国のみならず世界の日常生活を支える極めて重要なアセットであり、米軍事力にとっても必要不可欠なアセットである
---しかし宇宙アセットは、もはや安全な聖域に存在するものではなくなってきており、様々なレベルの戦いでターゲットになる恐れと直面している。特に中国とロシアは宇宙アセットへの最大の脅威となっており、米国とその同盟国の軍事能力をそぐため、「宇宙の兵器化」に向け、中国やロシアは多様な能力の研究・開発・試験を行っている

●米国の問題認識
---これらの脅威に対処するにあたり、我々はいくつかの課題に直面している米国防省自体に宇宙軌道上での戦いに関する経験が不足していること。世界全体の間に、宇宙での作戦に関するグローバルな理解や共通認識が不足していること。更に米国民の間にも、宇宙アセットにどれだけ日常生活が依存しているか等に関する認識が不足している
---そして、我々の日常生活から安全保障に至るまで広範に依存している宇宙アセットが、他国の活動の前にさらされ、その度合いが急増していることが良く認知されていない

●米国の対応状況
Defense Space St3.jpg---米国の脅威となる中国やロシアの宇宙能力開発は急速である一方で、米国は必ずしもすべての側面で迅速だとは言えない状況にある
---ただ、米国も宇宙軍を立ち上げ、作戦を担う宇宙コマンドを創設し、宇宙の重要性への理解も進みつつある。また民間企業の宇宙開発能力も飛躍し、同盟国とともに宇宙分野への取り組みが加速している

●具体的な重点分野
---今後10年追求する主要目標3つ
・ Maintain space superiority
・ Provide support to national, joint, and combined operations
・ Maintain space stability

主要目標3点を達成するための取り組み事項
1. Build a comprehensive military advantage in space
2. Integrate space more into combined operations
3. Shape the strategic environment
4. Cooperate with allies, partners, industry, and other U.S. Government departments and agencies
///////////////////////////////////////////////////////

Defense Space St4.jpg







国防宇宙戦略の現物
https://www.airforcemag.com/app/uploads/2020/06/2020-Defense-Space-Strategy-Summary-1.pdf

もう少し詳しい解説記事(C4isrnet)
https://www.c4isrnet.com/battlefield-tech/space/2020/06/17/pentagon-releases-defense-space-strategy-to-counter-russia-and-china/

取り組み事項にある「Shape the strategic environment」とは、一般国民や政治家等に、宇宙ドメインの重要性を知らしめることを指すのでしょうか?

最近取り上げていなかった宇宙の話題でした

宇宙兵器関連の記事
「提案:宇宙兵器の6分類」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-28
「4月中旬のロシア衛星破壊兵器試験を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-17
「航空機からロケット発射で衛星を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-14
「宇宙軍の最初の攻撃兵器」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-09
「画期的:衛星が推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-27
「怪しげなロシア衛星問題提起」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-04
「再び同高官が指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-26

その他の宇宙関連記事
「5G企業にGPS干渉の恐れある電波使用許可へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-14
「宇宙Fenceレーダー試験開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-12-1
「同盟国にも宇宙関連訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-2
「アジア太平洋での宇宙作戦が困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-10-1
「Space Fence試験レーダー完成」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-29
「米空軍のSpace Fenceを学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-28

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

女性が初の米空軍最先任軍曹へ:しかもアジア系 [米空軍]

4軍の最先任軍曹に女性は初めて
米空軍は黒人参謀総長と女性最先任軍曹との初づくし体制へ
アジア系で下士官最上位ポストに就くのも初

Bass5.jpg19日、次の米空軍参謀長に就任するCharles Q. Brown Jr大将が、共に米空軍を引っ張っていく第19代の最先任軍曹(CMSAF:Chief Master Sergeant of the Air Force)に、10数名の候補者の中から第2空軍の最先任軍曹を務めるJoAnne Bass最上級軍曹を指名し、8月14日に就任式が行われると米空軍が発表しました

各軍種の最先任軍曹は下士官のリーダーとして、軍事組織の8割程度を占める下士官団をまとめて引っ張っていく役割であり、特に規律や風紀、飲酒・薬物・セクハラ・性的暴力などの問題への現場レベルでの対応や、兵士の処遇に関する現場の意見を取りまとめて空軍指導部との橋渡しをするなどの役割が期待されるポストです

女性が最先任軍曹のポストに就くのは米空軍のみならず4軍で初のケースで、アジア系兵士がこのポストに就くのも初めてではないかと思われます。米空軍下士官41万人のトップに女性が就任することになります

JoAnne Bass最上級軍曹のご経歴概要は
Bass2.jpg米陸軍勤務者の子女として、世界各地での生活を経験し、1993年から米空軍で勤務。2005年に航空工学の学士取得
Operations System Managementとの職域でキャリアを開始し、「Current Operations Scheduler」や「Range Scheduling Specialist」として約7年ほど勤務

2000年から2015年の間は、ドイツのRamstein Air Baseで継続勤務し、上記職種や「Host Aviation Resource Management」との業務に従事
この間、(経歴表には記載されていないが)第24特殊戦術隊など複数の特殊作戦部隊にも所属して様々な統合作戦や特殊作戦に参加し、イラクやアフガニスタンで作戦行動に従事した経験を持

ドイツから帰国後は、ペンタゴンの空軍省で下士官教育訓練検討のチーフや、下士官教育を担当する第17航空団や教育部隊束ねる第2空軍の最先任軍曹を務め現在に至る
第2空軍は世界各地に下士官教育部隊を持ち、毎年3.6万人の教育を行っているが、多数の下士官教官のリーダーとして下士官育成の先頭に立ってきたほか、米空軍「ランニング」訓練コースの下士官先任アドバイザーとして、15万人の卒業生をお送り出している

Bass最上級軍曹の最先任軍曹(CMSAF)指名に関し
Bass3.jpgご本人は、「第19代の最先任軍曹にご指名いただき、恐縮するとともに大変名誉なことと考えております。偉大な先人の後に続けるよう努力したいと思います。歴史的な・・・と表現されることでもありますが、私は与えられた任務に立ち向かっていくだけです。私をこれまで支えてくれた家族や友人に、心から感謝申し上げたいと思います」と謙虚なメッセージを
18代のKaleth Wright最先任軍曹は「この指名はBrown大将の放った場外ホームラン。誇り高き瞬間、米空軍兵士よ偉大なれ!」とツイッターで

Brown次期空軍参謀総長は「Bass軍曹はその技能と人柄と経験で、私のリーダーとしての仕事に様々な視点を提供してくれるだろし、空軍兵士の高い期待に応えてくれるだろう。彼女はこれまでのキャリアの中でその高い能力を遺憾なく発揮してきており、全ての空軍人を高め駆り立てる我々の取り組みにおける賢明な相談役になってくれるだろうことに何の疑いも持っていない」とメッセージを寄せた

米空軍の3トップ(空軍長官、空軍参謀総長、空軍最先任軍曹)の2名を女性が占めることになり、米空軍の米空軍の主要49ポストの9つを女性が占めることとなる。(米空軍の女性兵士比率が20.0%なので正比例です)
////////////////////////////////////////////////////////////

JoAnne Bass最上級軍曹のご経歴
https://www.2af.aetc.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/1596057/chief-master-sergeant-joanne-s-bass/

Bass4.jpg米空軍入隊時の年齢が不明ですが、米陸軍の子女として世界各地を回った多様な経験が、その表情にも表れているような印象を受けます。ぜひ米空軍兵士に語り掛ける様子を拝見したいものです

アジアのどこの国と血縁があるのかご経歴からは不明ですが、日本人にはとても親しみやすい印象の方ですね。日本に来られることがあれば、ぜひ自衛隊の優秀な女性隊員達と懇談の時間を設けていただきたいものです

米空軍は、性的襲撃問題で深い闇を抱えており、その方面でも活躍が期待されているのかもしれません

軍での女性を考える記事
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19

「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11

「性犯罪対処室が捜査対象」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-04
「性犯罪は依然高水準」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-06-1

米軍での性的襲撃事案多発を考える記事
「士官学校に改善の兆しなし」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-02
「米3軍の長官が士官学校でのセクハラ問題議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-10
「現役パイロット時に上官にレイプされた」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空軍士官学校の内通者が反旗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-10-1
「性犯罪対処室が捜査対象」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-04
「性犯罪は依然高水準」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-06-1
「暴力削減にNGO導入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-05

「国防長官が対策会見」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-19
「指揮官を集め対策会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-04
「海軍トップも苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-20

「女性5人に一人が被害」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-10
「空軍内で既に今年600件」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-19-1
「米軍内レイプ問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-19

女性と徴兵制
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

関連の記事
「女性兵士の装具改善に時間必要」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-13
「今頃・・女性兵士にフィットした飛行服等に改良へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07
「女性初のF-35操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-08
「女性だけの編隊で攻撃」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-04

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

新型空母フォードに暗雲:EMALS故障で帰港 [Joint・統合参謀本部]

フル航空団艦載試験開始で「歴史的」と会見の翌日
2020年運用開始予定に暗雲
未だF-35C搭載の許可なしの状態もあり・・

Ford.jfif11日付Military.comは、運用体制確立に向け最終的な詰めに入っているはずのフォード級空母の1番艦Gerald R. Ford で、フォード級空母の目玉の一つである電磁式カタパルトEMALSが6月2日に故障し、空連を中断して引き返すことになったと報じました

同空母は、当初2014年の海軍への引き渡し予定が3年遅れの2017年となり、1隻の価格も当初の1.1兆円から1.5兆円に膨らみ、従来のニミッツ級の2倍にもなったことで強い非難を浴びていますが、更に中国などの軍備増強の中、空母の脆弱性が指摘され、米国防省が「空母の2隻削減」を検討するなど、一層つらい立場に立たされています

れでも今年1月には、F/A-18E/F、EA-18G、E-2D、C-2AがEMALSや着艦拘束装置(AAG)の運用確認テストを実施し、整備員や燃料員も航空機の取り扱い試験を受け、「空母」としての能力が確認されたことの証である航空機適合性試験(ACT)完了が2月5日に公表され、2020年中の運用開始に何とか間に合いそうな雰囲気を醸し出していました

F-35C2.jpgただし、今後の戦力の中核であるF-35C型は、電磁式カタパルトでの検証が進んでいないため、同空母に搭載する目処は全くたっていない状態です。この問題は大きく、米議会はF-35適応の問題がクリアされなければ、建造中の2番艦を受け取るべきでないと主張し、会計検査院も大きな懸念事項としてたびたび取り上げています

そんな中でも今回の航海は、これまでで最大規模となる艦載航空部隊「Carrier Air Wing 8」を乗せた歴史的なイベントだと、故障前日の6月1日に艦長が記者会見で大宣伝していたのですが、その翌日に課題と言われてきたEMALSが故障し、なんとも情けない帰港となりました

11日付Military.com記事によれば
これまでで最大規模となる艦載航空部隊「Carrier Air Wing 8」とその要員約1000名を乗せた新型空母フォードは、2日に発生したEMALS(Electromagnetic Aircraft Launch System)の故障により、7日に帰港したと米海軍報道官が発表した
EMALS.jfif同報道官は、EMALSの故障の原因等は調査中だが、「power handling system」をマニュアル捜査していた際にトラブルが発生し、航空機の運用など安全面での問題はなかったと説明、帰港後に地上勤務の専門家チームも合流して細部を確認し修理すると述べた

同時に報道官は、同空母では、EMALSを使用した離発着訓練が既に3500回近く問題なく実施されており、50名以上のパイロットがEMALS搭載の空母フォードでの運用資格を取得したとこれまでの成果をアピールした
しかし一方で、これまでの離発着実績では、EMALSシステムの信頼性が確保できたと結論付けられないとも同報道官は述べ、今回の事象分析も踏まえ、システムの信頼性向上につなげていくと説明した

米海軍省のJames Geurts研究開発担当次官補は、並行してトラブル対処にあたっている同空母の兵器運搬用エレベーターについて、11台のうち5台が稼働状態になり、引き続き問題対処にあたっていると説明している
EMALS2.jfif米会計検査院は最近の報告書で、EMALSをはじめとするフォード級空母のカギとなるシステムについて、「米海軍は、カギとなるEMALSや着艦拘束装置(AAG)の試験を行っているが、その信頼性は依然として懸念材料である」、「これら中核システムの安全で安定した運用が担保できなければ、運用開始はできないだろう」と指摘していたところである
////////////////////////////////////////////////////

フォード級空母は、発電能力がニミッツ級空母と比較して3倍もあり、レーザなどエネルギー兵器の導入にも余裕で対応できる点や、EMALSも打ち出しの強さを電気的にコントロールできることから、多様な機種に使用できることなど良い点も多いのですが、ご覧の通りの難産です

Ford2.jfifトランプ大統領は2017年と2019年の2回、「電気のカタパルトはダメだ。もうやめろと海軍に言っている。今までの蒸気式がいいんだ」と発言し、その度に米海軍関係者が必死の説明を行って取りなしているのですが、アピールの場が一転「悪目立ち場面」になってしまい、泣きっ面にハチ状態の米海軍です

フォード級など米空母関連
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇案!?」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「半年かけて空母の将来像を至急検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-12
「レーザー兵器搭載に自信」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-05
「国防次官が空母1隻とミサイル2000発の効果比較」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-20
「空母フォード:3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「米海軍真っ青?トランプ「EMALSはだめ」」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-13
「空母を値切って砕氷艦を!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19

「フォード級空母を学ぶ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「解説:電磁カタパルトEMALS」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

「イランが米空母の2/3の大型モックアップ建造」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-10

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

優等生MQ-25海軍無人給油機が3年遅れの恐れ [Joint・統合参謀本部]

2024年運用開始を早めようと海軍トップが鼓舞も
試験用搭載空母の回しが厳しく関連装備搭載が・・・

MQ-25.jpg10日付Defense-Newsは、米海軍の優先事業の一つで米海軍トップも2024年の運用開始を前倒しするよう関係者を鼓舞していた空母艦載MQ-25無人給油機ですが、米会計検査院GAOが海軍関係者から聴取したところによれば、同機を艦載して試験する予定の空母2隻が必要な装備を搭載する期間を確保できない恐れがあり、その場合最悪3年MQ-25計画が遅れると報じました

米海軍の空母は前線からの要望で派遣頻度や期間が増え、おまけに維持修理費が厳しいことから修理に時間が必要など複数の要因で「回し」が厳しくなっており、最悪の場合は試験担当の空母(Carl Vinson とGeorge H.W. Bush)の無人機受け入れ改修期間が計画通り確保できない可能性があるとのことです

MQ-25A-4.jpg米海軍は、現在FA-18に給油ポッドを付加して給油任務を負わせていますが、その負荷が膨大で機体疲労蓄積の原因となっているため、計69機のMQ-25導入するため既に4機をボーイングと契約し、2019年9月には地上での初飛行を披露、大きく遅れている米空軍のKC-46給油機とは対照的に同じボーイング製ながら「優等生」ぶりを発揮していたところでした

海軍関係者は「3年遅れはまずありえない」と語っていますが、どうも歯切れが悪く聞こえ、米軍の開発プロジェクト「あるある」の典型的な匂いがしますので、ご紹介しておきます

10日付Defense-News記事によれば
米会計検査院のレポートによれば、「米海軍の担当幹部は、試験用空母の改修期間が確保できない可能性があり、無人機操作関連装備を試験用空母に搭載できなかった場合には、価格固定契約の条件を満たせない可能性がある」と語った模様である
MQ-25 3.jpgそして「仮に海軍が無人機の試験用空母に無人機管制装置などを計画通りに搭載できなければ、MQ-25の空母搭載試験が最悪3年遅れることになり、影響を受けて運用体制確立も遅れ、コストも上昇すると同海軍幹部は語った」とレポートしている

米海軍幹部は「3年もの遅れはまずありえない」と述べているが、米海軍は最近空母の派遣ローテーション回しに苦労しており、このような不安がぬぐえない状況にある
米海軍航空コマンド報道官は「米海軍はMQ-25の初期運用体制確立を2024年から変更していない」、「試験用空母が2隻とも十分な無人機受け入れ態勢を取れなかったり、無人機側の問題が発生しない限り、3年遅れは考えにくい」と対応している

MQ-25を受け入れる空母には、無人機管制装置、無人機との通信ネットワーク、無人機受け入れ装置、指揮統制装備などが必要とされているが、同無人給油機導入により、ざっくり艦載機の行動半径が400nm延伸可能との見積もりもある
/////////////////////////////////////////////////////////////

3年延期は考えにくいが、(まず)1年ぐらいは伸ばさざるを得ない。それに伴ってコストはアップする・・・とのシナリオを予想いたします。米会計検査院の懸念が現実化しなかった例を思い浮かびません

MQ-25A.jpg米海軍にとっても新たなタイプの装備品であり、厳しい予算の中で部隊側からMQ-25を強く求める声は上がらないでしょうし、国防予算が縮小する中、空母の回しの厳しさを「言い訳」に、プロジェクトの後送りも考えられます

もともとMQ-25の原点は空母艦載ステルス無人攻撃機で、国防省幹部やシンクタンク専門家が強く突破型攻撃無人機を望んだのに、米海軍艦載機族が無人給油機にすり替えたと陰口をたたかれる装備ですので、今後もいろいろあるのかもしれません

MQ-25関連の記事
「MQ-25地上で初飛行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-20
「2019年6月の状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-04
「MQ-25もボーイングに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-01-1
「NG社が撤退の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-29-1
「提案要求書を発出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-13
「MQ-25でFA-18活動が倍に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-03
「MQ-25のステルス性は後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-27 

「CBARSの名称はMQ-25Aに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-17
「UCLASSはCBARSへ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-02
「UCLASS選定延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-05-1

「米海軍の組織防衛で混乱」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-01
「国防省がRFPに待った!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-12

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

トランプ大統領:ドイツ駐留米軍を1万人削減へ [安全保障全般]

NATO約束のGDP2%国防費未達への制裁
ドイツを「職務怠慢」「義務不履行」と非難
GDP1%の日本への影響は?

Germany US3.jfif15日、トランプ大統領がホワイトハウスで記者団に、NATO各国の国防費を2024年までにGDPの2%以上にするとの約束に消極的なドイツを「職務怠慢」と厳しく非難し、「国防費を支出するまで、ドイツ駐留米軍を削減する」と宣言し、現在34500名を25000名まで削減すると表明しました

ドイツはNATO設定の「2024年までに2%目標」に対し、「2031年までに2%を達成したい」との態度をとっており、かねてからトランプ大統領は他に2%以下の国が多数あるのですが、特にドイツに批判的でした

Germany US6.jfif昨年夏ポーランド大統領が訪米した際には、「ポーランドは約束を守っているのに、ドイツはだめだ」と述べ、ドイツからポーランドに米軍を移動させることを検討すると示唆し、これに答えてポーランド大統領が、米軍兵士受け入れのため2000億円以上の施設整備を準備すると述べ、基地名を「Fort Trump」にするとまで言ってトランプ大統領を喜ばせていたところでした

トランプ大統領と欧州の関係はギクシャクでしたが、ロシアの脅威が高まる中、米国防省は欧州諸国へのコミットメントを確保するため、様々な演習や爆撃機派遣などを行って来たところです

ドイツには米欧州軍やアフリカ軍司令部、欧州&アフリカ米陸軍司令部、欧州&アフリカ米空軍司令部、中東やアフガンでの負傷者を受け入れる大きな医療施設、F-16基地、NATO最大の演習場などがあり、具体的な1万人削減の中身が気になります

どうやらドイツには事前調整なしで、更に米議会にも全く相談なくトランプ大統領は「1万人削減」を発表したようで、早くも与党共和党の主要議員からも反対の声が上がり、下院軍事委員会の共和党メンバー22名から「再考せよ」レターも出たようです

約1万名削減の具体的日程や中身については言及がなかったようですが、同盟国に突き付けた「脅し」です。日本も対岸の火事ではありません。要注目です

15日付Military.com記事によれば
Germany US4.jfifトランプ大統領はホワイトハウスで記者団に、「ドイツ駐留米軍を(現在の34500名から)25000名まで削減するつもりだ」と述べ、冷戦期から大幅に削減された現在の兵員を、ロシアからの脅威が高まる中でさらに削減すると明らかにした
「我々はドイツを守っているのに、ドイツ側は職務怠慢だ。義務不履行状態にある。全く理屈に合っていない」、「ドイツが2%の国防費を支出するまで、米国は米軍兵士を削減する」とトランプ大統領は語ったが、「25000名まで削減する際、削減した兵士をどこへ動かすかは後で明らかになるだろう」と表現し、細部については言及しなかった

トランプ大統領は就任以来、他のNATO国にも2%目標を満たしていない国が多数ある中で、ドイツには厳しく当たってきた。そして今回の米軍削減をドイツへの懲罰として表現し、「ドイツ駐留米軍兵士は、ドイツ国内で多くを消費し、ドイツの地域経済に貢献しているが、ドイツは米国と不均衡な貿易利益を得ている」と語った
Germany US5.jfif34500名の米軍兵士のほかに、17500名文民職員もドイツに駐留しているが、文民職員については言及していない

15日の大統領の発表に対し、事前調整の無かった米議会は反発し、22名の共和党下院軍事委員会メンバーが再考を促すレターを大統領に送り、上院軍事委員会の重鎮Jack Reed議員は「またロシアが喜ぶことをしている」と強く非難している
///////////////////////////////////////////////

昨年から示唆していたドイツからの兵力削減を、米議会などに相談なく具体的に発表したということです。

Germany US.jfif大統領の権限でどこまで可能なのか把握していませんが、欧州の中で国として一番安定しているドイツと事を荒立てることは、確かにプーチンの喜ぶところでしょう

同じ勢いで、貿易赤字を抱える日本にも厳しい要求が来ないか不安です

ドイツ関連の記事
「米独2000名に安保アンケート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-10
「独高官が3機種混合認める」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-23-1
「独トーネード後継を3機種混合で?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-29
「トーネード後継でFA-18優位?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28

「独戦闘機選定に米圧力?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
「独レーダーがF-35追尾」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-01

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

MTCRで縛られた米国製無人機が輸出制限で中国製拡散 [安全保障全般]

米国が非公式で自発的な枠に縛られ無人機輸出制限の中
中国製無人機が中東などで増殖中

MTCR.jpg3日、米空軍協会のミッチェル研究所が「Modernizing Unmanned Aerial Vehicle Export Policy for Effective Coalition Forces」とのレポートを発表し、1987年発足のMTCR(ミサイル技術管理レジーム:Missile Technology Control Regime)により、米国製無人機がミサイルに分類されて輸出が大きく制限されている中で、この枠組みに縛られない中国製無人機が中東などの西側同盟国に大量に輸出されている問題を取り上げています

MTCRはあくまで非公式&自発的な集まりで、国際約束に基づく枠組みではありませんが、米英など西側諸国35か国(なぜかロシアも)が参加しており、大量破壊兵器の運搬手段となるミサイル及びその開発に寄与しうる関連汎用品・技術の輸出を規制することを目的としていますが、当時の技術的解釈で「搭載能力500kg以上かつ射程300km以上の完成した無人航空機システム」も本枠組みで厳しい輸出規制の対象となっています(末尾の外務省webサイト参照)

CH-4.jpgちなみにMTCR参加国35か国は、アルゼンチン,オーストラリア,オーストリア,ベルギー,ブラジル,ブルガリア,カナダ,チェコ,デンマーク,フィンランド,フランス,ドイツ,ギリシャ,ハンガリー,アイスランド,インド,アイルランド,イタリア,日本,韓国,ルクセンブルグ,オランダ,ニュージーランド,ノルウェー,ポーランド,ポルトガル,ロシア,南アフリカ,スペイン,スウェーデン,スイス,トルコ,ウクライナ,英国,米国です

MTCRに参加していない中国の代表的無人機企業CASC(米国製MQ-1やMQ-9と類似のCH-4、CH-5やRainbowなど製造)は、2014年以降2018年時点で、CH-4を30機以上サウジやイラク等に提供しており、同機輸出を10か国と交渉中といわれています

現代の戦いで重要な無人機を、米国が同盟国に十分に提供できないことは以前から問題視され米国務省が窓口になって、「無人機をミサイルとしての枠組みから外す」ことや、「搭載能力500kg以上かつ射程300km以上の完成した無人航空機システム」の縛りから「速度が時速800㎞以下」を除外することなどを参加国に提案してきましたが、無人機による民間人の誤爆事案が多発していることもあり、同意を得られていない状況です

CH-5 2.jpg若干緩和されたのは、2018年の交渉で、武器を搭載していないレーザー照準器「laser-designator」搭載機への制限や、FMSでない企業との直接売買が一部の無人機で認められた程度で、米国政府や企業には、中国製無人機の西側への浸潤に強い警戒感があります

2018年当時の報道では、衛星写真などで中国製が目撃されている国として、ヨルダン、イラク、サウジ、UAE、エジプト、パキスタン、ナイジェリアが紹介されており、イエメンやアフリカでの民間人被害が確認されているようです

「性能はほどほどで価格が半額以下」と言われた中国製無人攻撃機の性能は、年々向上しているといわれる一方で、イエメンなどで中国製無人機による民間人の犠牲者が急増してMTCRの議論が進めにくい状態が生まれている皮肉な現状があり、米国関係者のいら立ちが募っています

3日付米空軍協会web記事によれば
●3日に行われたレポート発表会で、同研究所のLarry Stutzriem研究部長(退役少将)は、「なぜ米国同盟国が米国より、中国から容易に無人機を購入できるのか?」と問題認識を訴え、同レポート担当のHeather Penney上席研究員は国際的約束でない非公式で自発的なMTCRに縛られているからだと説明し、「無人機は航空機であり、ミサイルではない。ミサイルの枠組みから除外すべき」と主張した

CH-4 2.jpg更に米商工会議所の国防輸出委員会のKeith Webster会長は、MTCRが設けられた当時の目的は明確だったが、技術の変化に対応しておらず、見直しが必要だと述べ、「中国は敵であり、米国の同盟国や友好国への扉を開くべきではない」と主張した
また、ヨルダン、サウジ、UAEなどの諸国は、米国が輸出できなければ他に選択肢がなく中国製に手を伸ばしているが、敵対国である中国関係者がアドバイザーとして現地で活動している状況は、今後米国との軍事関係や外交関係を損なう恐れがあると同会長は懸念している

同会長は更に、「F-35を英国と共同開発しているのに、MTCRのために無人機の共同開発ができないばかげた状態にある」と述べ、他の執筆者とともに、当面の策として「速度が時速600㎞以下」の無人機を制限の対象から除外する案を参加国で協議することを提案している
ただし、米空軍や豪州が検討を本格化している無人ウイングマンを考えれば、600㎞/hではすぐに限界を迎えるので800km/h以下の除外が必要だとし、いずれにしても現代の技術に対応していないMTCRの根本的見直しが必要で、無人機はミサイルではなく航空機との枠組み変更が急務だと主張した
///////////////////////////////////////////////////

レポート現物
https://a2dd917a-65ab-41f1-ab11-5f1897e16299.usrfiles.com/ugd/a2dd91_cf3af457648a49dc889de89fd6d6dcd0.pdf 

外務省によるMTCR解説
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/mtcr/mtcr.html

CH-5.jpgこの話題は2018年10月に取り上げたのが最後で、中国製無人機の拡散状況がわかりませんが、レポートは約30ページで、恐らく中身を見ると、中東湾岸諸国やアフリカ諸国に中国製無人機が拡散している最新の状況が説明されていると思います(中身を見ていません。失礼)

「無人ウイングマン構想」に関連しているとは知りませんでした。そういえば、豪州がボーイングと組んで無人ウイングマン試験機を開発して披露したと思ったら、米国も機種選定本格開始で、タイミングが合ってるなぁーーーと思っていましたが、表立って共同開発できないから、同時並行で走っているんですね。多分

しかし日本も入っているMTCRって、皮肉な枠組みですねぇ・・・。よく勉強しないと、その重要性やなくなった場合の影響が読めませんが、INF全廃条約やオープンスカイズ条約を破棄したトランプ大統領なら、「やめた」と言い出すかもしれませんねぇ・・

無人機の写真は全て、米国製そっくりの、中国製CH-4とCH-5です

米国製無人機輸出緩和の関連
「中国無人攻撃機が中東で増殖中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-10-06-2
「肩透かし無人機輸出緩和」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-3
「4月にも武器輸出新政策か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-18-1
「無人機輸出規制の見直し開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-04

中国と無人機
「中国がサウジで無人攻撃機の製造修理」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-29
「中国が高性能無人機輸出規制?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03
「輸出用ステルス機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-27

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

IISS:INF離脱の米国による対中国ミサイル導入は困難 [安全保障全般]

当たり前のことと考えず、現実の整理から
今は亡きINF条約を導入すれば中国は95%ミサイル喪失とか

US China.jfif5日、英国の戦略研究機関IISSがアジア太平洋安保情勢に関する報告書の一環として、「The End of the Intermediate Range Nuclear Forces Treaty: Implications for Asia」とのレポートを出し、中国との間でINF条約のような軍備管理条約を結ぶことの難しと、米国が巡航ミサイルを当地域に配備することの難しさを改めて確認しています

1987年に米露間で結ばれたINF全廃条約は、射程500-5500Kmの地上発射弾道ミサイル及び地上発射巡航ミサイルの全廃を両国に求める(空中発射や水中発射の巡航ミサイルは、条約規制外)ものでしたが、2019年8月にトランプ政権は、ロシアが同条約に違反して欧州正面に巡航ミサイルを配備していることから、条約破棄を通告しています

IISS Asia.jpg米国がINFから抜けたのはロシアの違反もありますが、米国とロシアだけが上記兵器を保有できない隙を見て、中国は米露が保有を自己規制していた弾道ミサイルや巡航ミサイルを2200発も保有して西太平洋地域のおけるA2AD網を構築していることが、米国のINF脱退と同条約で規制されていた兵器の開発に進ませた大きな要因と考えられます

ただ、INF条約の縛りから抜けても、中国との間で同様の条約を結ぶのは現実的ではないし、米国が地上発射の巡航ミサイルなどを中国正面に配備するのも容易ではないとIISSは改めて分析しているようです

5日付Defense-News記事によれば
IISS Asia2.jpgIISSは、今や世界最大の短距離及び中距離弾道ミサイルの保有国(INF条約の範囲で約2200発)となった中国は、あくまでも防衛的な戦力だと主張しているが、台湾をはじめとする中国沿岸諸国にとって大きな脅威となっていると評価している
またIISSは、中国の地域における比較優位(comparative advantage)の根幹をなすこれらミサイル戦力を中国がINFのような軍備管理の枠組みで議論するとは考えにくいと見てい

米国はINF脱退直後から、地上発射型の巡航ミサイル開発や試験を開始し、アジア太平洋地域での同種兵器のアンバランスへの対処として、同地域への配備を示唆している
IISSのレポートはしかし、この米国の動きに2つの側面から注意喚起を行っている

一つは、米国によるアジア太平洋地域への例えば巡航ミサイルの配備は、中国側の懸念を増幅させ、さらなる中国側の反応を招き、地域の軍拡競争を巻き起こして地域をより不安定に導く懸念である
US China2.jfifもう一つは、米国がその兵器の配備先選定で難しい調整や選択を迫られる点である。例えば米国が韓国にミサイル防衛システムTHAADを2017年に配備しようとした際、それが防御ミサイルであるにもかかわらず、中国は韓国に対し、外国的や経済的な圧力をかけて調整を困難にさせ、配備後の現在も中国は様々な形で圧力をかけている

●米国領であるグアム島に配備することも考えられるが、中国大陸との距離もあり、効果や有効性が低下する
IISSは、米国がINF条約で禁じられていた兵器を開発してアジア太平洋地域への配備を示唆しても、中国を軍備管理のテーブルに着かせることはできないだろうとし、同時にまた、米国が兵器開発や配備を控えたとしても、中国が軍備管理協議に興味を示すとは考えにくいと分析している
//////////////////////////////////////////////////////

IISSアジア安保レポートの宣伝映像30秒


商売上手なIISSが、地域担当の軍事記者に発売開始した新商品の内容を流し、宣伝記事を書いてもらったような「構図」だとも思いましたが、当たり前のようで重要なポイントを指摘していますのでご紹介しました

南シナ海周辺の国に米軍地上発射巡航ミサイルを配備することの困難さ、だからと言って日本で簡単に受け入れられるものでないことも容易に想像できます

米軍地上部隊が長射程兵器の開発導入を目指していますが、西太平洋への配備には、色々ややこしい中国が絡んでくるわけです

新START期限切れ関連
「延長へ米露交渉始まる!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-18-1
「Esper新長官アジアへ中距離弾導入発言と新STARTの運命」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-04

ロシアの兵器開発とINF条約関連経緯
「第3の超超音速兵器Zircon」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-21
「トランプが条約離脱発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「露は違反ミサイルを排除せよ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-06
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

Sea Train:無人艦艇を電車のように連結し海洋移動 [米国防省高官]

無人艦艇を大波から守り長距離移動させる手法
DARPAが約3年かけで開発実証へ

Sea Train.jpg1日付C4isrnetが、DARPAが募集をかけて具体的な企業選定に入っている「Sea Train」構想について取り上げ、来年度から約3年をかけて開発&試験をおこなうコンセプトの概要を紹介しています

米海軍と海兵隊は、従来の高価多機能少数の大型艦艇重視から、低価格機能絞り多数の小中(無人含む)艦艇体制へと変革を目指す方向にあり、それら損耗しても全体にダメージが少ない小中艦艇に偵察や電子戦や攻撃を担わせて、強固な防衛網を築く中国に対処しようと考えています

例えばCSBAの提案には、平時のグレーゾーン任務遂行時には少数の人員を搭載し、微妙な任務を大型艦艇より費用対効果良く遂行し、有事には無人で運用し、有人艦艇の前方で前述のリスクの高い任務を遂行するイメージが描かれています。エスパー長官もインタビューでこの考えを語ったことがありま

Unmanned Ship.jpgそこで課題となるのが、このような小中小型無人艦艇の遠方移動で、考え出されたのが無人艦艇を列車のように連ねて一列で大洋を移動するコンセプトです

イメージは、米本土沿岸の別々の港を出港した無人艦艇4隻が、沖合4マイルほどの海上で自動的に一列に並ぶ体形に集合し、事前プログラム通りに自動で一列に連結され、約6500マイル先の東南アジアへの航海に出発する。アジア方面に到達したら、連結が解除され、各艦艇はそれぞれに異なる任務遂行地まで無人で移動し、任務終了後、再び連結して帰還する・・・といった感じで

連結してつながっていると攻撃されやすいのでは・・・と心配になりますが、防御は別として、小中艦艇は太平洋の荒波に弱く、連結により大波にも耐えることができ、また「列車」に燃料補給艦を含めることで限定された燃料搭載能力を補完できるメリットがあるようで

1日付C4isrnet記事によれば
Nuss.jpgDARPAの同プログラム責任者であるAndrew Nuss氏は、2月に「Sea Train」構想への挑戦企業を募集したところ、具体的な数は言えないが大きな反響を得て募集が集まり、年度末(9月末)までには選定結果を発表したいと述べた
選定後は、前半の18か月を開発段階、後半の18か月を技術試験段階とし、最終的には、大洋の環境下でデモ試験(model testing)を行うことを目指しており、DARPAとしてはその後、米海軍が採用してくれることを期待している

DARPAはこのプログラムで、中型の無人艦艇(全長12~50m)に焦点を絞って開発&試験を行うが、プログラム全体を通じて得られた教訓は、大型または小型艦艇の場合にも活用される
Nuss氏は、「このユニークなプログラムを通して、開発リスクの低減に着意していく。海軍や海兵隊に一連の提案ができるように仕上げ、これら艦艇の遠方展開に際し、より遠方に、給油寄港なしで可能な手法を確立したい」と抱負を語っている
///////////////////////////////////////////////

Sea Hunter3.jpg対象となる艦艇の「連接」は、「connecting the vessels — physically or in a formation」との表現になっており、列車のように連結器でガッチリ組み合わせる方法だけでなく、物理的につながらず、接近して隊形を組んで・・・のパターンもありそうです

記事が紹介する「想定シナリオ」では、艦艇列車の目的方面は「Southeast Asia」となっており、色々突っ込みどころがありそうですが、「輸送機からパレタイズした弾薬&ミサイルを投下」と同様に、対中国を想定し、あらゆる可能性や方法を模索するたくましい努力の一環です

無人艦艇導入は待ったなしの雰囲気です。以下の過去記事でご確認ください

米海軍と海兵隊を巡る動き
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇案!?」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「無人潜水艦を多数導入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-03
「米海軍が半年で空母再検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-12
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「5年計画で新型大型艦艇設計」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-14
「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-13

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

ホルムズ海峡にイランが模擬米空母を設置し攻撃訓練か [安全保障全般]

ニミッツ級空母の2/3のサイズ
2015年にも同様のモックアップ空母の攻撃訓練

Fake CV Iran.jpg9日、AP通信がMaxar Technologies社が撮影提供した衛星写真を取り上げ、ホルムズ海峡に面するBandar Abbasとの都市のイラン革命防衛隊の港湾施設近傍の海上で、米空母ニミッツ級をやや小型にしたモックアップが確認できるとして、2015年に同様の模擬米空母を使用して行われた革命防衛隊の演習が計画されているのだろうと報じています

このモックアップの存在をイラン政府や革命防衛隊関係者は認めていませんが、確認されたモックアップは衛星写真からすると全長200m・幅50mで、本物のニミッツ級空母の全長300m・幅75mに比較すると約2/3の大きさだということです。

9日付NavyTimes記事によれば
Bandar Abbas2.jfif2015年に同様のモックアップが確認された際は、革命防衛隊の演習「Great Prophet 9」で使用され、小型のスピードボートの群れでモックアップを取り囲んで機関砲やロケット弾で攻撃し、最終的には地対艦ミサイルで攻撃して破壊している
今回モックアップが確認された場所近傍には、革命防衛隊のスピードボート100隻以上が集結している港湾施設があり、米海軍との緊張が高まった際にしばしば同港湾施設からスピードボートが出動している

スパイ容疑でイラン人を逮捕し死刑判決
9日、イラン司法省の報道官が、イラン国内で米国やイスラエルのためにスパイ活動を行い、革命防衛隊などの秘密情報を金銭を対価に提供していたとして、イラン人Mahmoud Mousavi Majdに死刑判決が出ていると発表した
Majdが罪を犯した当時の所属等は明らかにされていないが、秘密情報を扱う立場になったとされ、2018年10月に捕えられ、2019年9月に死刑判決を受けていた模様。なおMajdは、2020年1月に米軍無人機がスレイマニ革命防衛隊司令官を殺害した件に関しても、同司令官の位置や動きに関する情報提供で罪に問われている
///////////////////////////////////////////////////////

米国がコロナ&人種問題で混乱している中ですので、ご紹介しておきます

speedboat Iran.jfifこれだけ大きなモックアップですので、コロナ以前から建造が始まっていたと思いますが、艦載機の模型も16機搭載する念の入れようですので、米空母への恨みが相当イラン側には鬱積しているのでしょう。

ホルムズ海峡の通行の邪魔にならないところで、「撃沈」して騒いでいただきたいと思います

イランが関連する記事
「イランは核合意全てに違反もIAEA査察には協力的」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-06
「CSIS宇宙兵器の分類案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-28
「米国防省のイラン軍事力レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22
「米爆撃機駐留停止の背景にイランの攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-30
「イランにもF-4ファントム最終章」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-12

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

2021年7月無人戦闘機と有人戦闘機が空中戦勝負へ [米空軍]

当初はF-16クラスの機体に人工知能を搭載して
自動車の自動運転が苦労している教訓にも学べ

Shanahan2.jpg4日、おなじみの米空軍協会ミッチェル研究所主催のオンラインイベントに、米国防省の統合人工知能センター長であるJack Shanahan空軍中将が登場し、米空軍研究所AFRLが2018年から開始している戦闘機に人工知能を搭載する研究で、2021年7月に有人戦闘機との空中戦を予定していると明らかにしました

ただ、自信たっぷりということではなく自動車の自動運転に世界中の複数の自動車企業が数千億円レベルの巨額の投資を10年近く続けている中で、未だに完全自動運転を実現した「level four」の自動車が出現していないことを例に挙げ、成功が約束されたわけではないと表現し、自動車業界の教訓にも学んで前進したいと語っています

Skyborg3.jpg先日は、国防省最高位の研究機関であるDARPAが進める人工知能空中戦プロジェクトACE(Air Combat Evolution)について、18か月間の「フェーズ1」検討に入るとご紹介しましたが、DARPA側は「空中戦シナリオを、異機種、多数機、作戦レベルの多様なシナリオへと適応範囲を広げる」レベルを狙っているようなので、米空軍研究所はその一部を担っているのかもしれません

Shanahan空軍中将は、ご紹介するAFRLのプロジェクトの成果は、「多数進行中の他のAI活用システム」に融合・統合されて活用されると説明していますので、それなりに他プロジェクトとの役割分担が緩やかにでもあるのだろうと信じておきましょう

4日付米空軍協会web記事によれば
Rogers AFRL.jpg米国防省の統合人工知能センター長Shanahan中将は、空軍研究所のチームリーダーであるSteve Rogers氏が、2021年の飛行準備のため大変忙しく困難な時間を過ごしていると語り、機械と人工知能が人間を打ち負かす準備をしており、成功すれば偉大な成果となると表現した
空軍研究所はAI操縦の戦闘機を2018年から追求しており、関係者はプロジェクト開始当時のインタビューで、「F-22やF-35のような最新鋭機に人工知能を搭載するのではなく、当初は、F-16のような機体に搭載する予定だ」と説明していた

研究開発リーダーであるRogers氏は、「数千時間の飛行経験がある優秀な戦闘機パイロットを、様々な英知を集めて学ばせた人工知能でサポートしたら、どれほどの能力を発揮できるだろうか・・・」、「人間がまだ思考し始めていない将来までも、タイムラインで意思決定を手助けしてくれるだろう」と構想を語っている
Airpower Teaming System.jpgプロジェクトの成果については、「多数進行中の他のAI活用システム」に融合・統合されて利用され、米空軍が優先推進する「Skyborg:無人ウイングマン構想」から、戦闘計画システムや維持整備管理に至る様々な分野で、人工知能や機械学習が生かされることになる

今年2月の米空軍協会の航空宇宙戦シンポジウムで、基調講演を行ったSpaceXのElon Musk氏は、「F-35の敵は人間に遠隔操作された無人機となろうが、その無人機は人工知能により支えられた機動や行動で強化されているだろう」と述べ、無人機の時代を予言して空軍関係者に波紋を投げかけた
この講演に絡めてShanahan中将は、自動車の自動運転に世界中の複数の自動車企業が数千億円レベルの巨額の投資を10年近く続けても、未だに完全自動運転を実現した「level four」の自動車が出現していないことを例に挙げ、成功が約束されたわけではないと表現し、一方で自動車業界の教訓に学ぶことでより、迅速に人工知能戦闘機を実現することも可能だろうと述べた
//////////////////////////////////////////////////

ミッチェル研究所イベントの映像


2018年から開始して、2021年7月には有人機と空中戦がデモ可能、とのレベルがどの程度なのか気になりますが、高度な搭載システムにあまり頼らない第4世代機F-16クラスで、AIによる機体姿勢や機動や運動エネルギー管理の基礎を確立しようとの路線だと想像しました

より多くのセンサー情報やデータリンク情報を処理する必要がある第5世代機への投入は、その先だということでしょう。DARPAの研究とのすみわけや連携が背景にあることを信じつつ・・・

DARPAの無人機空中戦ACE研究
「空中戦を支えるAI開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-19

米空軍の構想
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
「空母搭載の小型無人機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-03
「空軍研究所が関連映像公開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-3

豪州とボーイングの取り組み
「試験初号機を披露」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-05-1
「豪州とボーイングが共同で」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-2

無人ウイングマンの位置づけ
「日米が協力すべき4分野」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-18
「戦闘機族ボスがNGADを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-28
「CSBAの米空軍将来提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「連接重視で航空アセット削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「次期制空機検討は急がない、急げない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-19
「米空軍が次期戦闘機検討でギャンブル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米空軍が輸送機から攻撃兵器投下試験 [米空軍]

様々なタイプの兵器を貨物庫から投下
何でも使って攻撃能力をアップしたい苦肉の策?

palletized munitions2.jpg5月27日、米空軍司令部の新規能力検討チーム(Warfighting Integration Capability cell)の副部長であるClint Hinote少将が、空軍協会ミッチェル研究所のオンラインイベントに登場し、米空軍の攻撃能力増強の一検討として、C-130やC-17輸送機から、パレタイズした精密誘導兵器(細部不明な弾薬・ミサイル?)を投下する実験を1月から行っていると明らかにしました

今後の予算確保の見通しが危ういプロジェクトのようですが、中国などとの本格紛争を考えるとき、攻撃能力が絶対的に不足しているとの問題意識が米空軍にはあり、弾薬庫航空機(arsenal plane)や無人ウイングマンの兵器庫化などの検討や、B-21爆撃機の調達増要求にもあるように、様々な方向で知恵を出している状況のようです

palletized munitions4.jpgただ、この構想は部隊側から出たものではないようで、同少将が技術問題よりカルチャー的に米空軍に受け入れられるかが課題とか、作戦時にどのように指揮統制するかも考える必要があると語っているように、白紙的に様々なアイディアを出す司令部組織と現場の温度差を乗り越えるのも容易ではなさそうです

見通しが明るくない中でも、今後も企業からアイディアを募りつつ、色々試して行くようですので、具体的にどのような兵器を投下しているのかについてほとんど明らかにされていないのですが、厳しい中でも知恵を絞る米空軍の姿勢に敬意を示し、ご紹介しておきます

5月27日付Defense-News記事によれば
27日にHinote少将は、これまで輸送機からの「パレタイズされた弾薬:palletized munitions」の投下試験を、様々なパターンを含めて2回行い、「今後どのようにこの事業を進めていくかについて議論している」と語った
そしてその中では、4月に募集を締め切った新たな技術情報提供に応じてくれた5社からの提案や情報も踏まえて検討していると説明した

palletized munitions.jpg2月にも同様のRFIを出し、その際は、敵の脅威範囲外から大量のスタンドオフ兵器を投下する技術に関してであったが、「我々は如何に大型爆撃機部隊が大きくなろうとも、統合戦力が求める投射量要求はそれよりも大きく、長射程のパンチ力拡大を狙い、あらゆる可能性を追求する一環として輸送機からの投下を検討している」と、様々なアイディアを検討している背景を同少将は語っ

最初の1月28日の投下試験はユタ州の試験場で行われ、特殊作戦部隊のMC-130J貨物庫から、5つの木製パレット(CEP:Combat Expendable Platforms)に搭載した6つの模擬爆弾(ミサイル?)を投下し、その中の4つはCLEAVER(Cargo Launch Expendable Air Vehicles with Extended Range)であった
実験した空軍研究所は質問に対し、長射程巡航ミサイルも投下されたパレットに含まれていたことを認め、5つのパレットを投下高度を変えて投下したと説明している

2回目の実験は2月27日に行われ、輸送コマンドのC-17から、2回のパレタイズ弾薬の投下が行われた模様

palletized munitions3.jpgHinote少将は課題について、予算確保が極めて難しい状況にあることにまず触れ、次に輸送アセットを戦闘機や爆撃機のように戦闘任務に用いる際の指揮統制の難しさに言及し、強力なまとめ役や洗練された指揮統制系統を準備する必要があると述べた
そして更に付け加え、米空軍内にある輸送機からパレタイズされた弾薬を投下することに関する心理的壁、カルチャーバリアーも極めて大きく、技術的なものよりも大きい障害だと表現し
////////////////////////////////////////////////////////

イベントの映像


主催者側であるミッチェル研究所のデプチューラ退役中将は湾岸戦争時の航空作戦立案者(当時中佐)ですが、大きな戦いでは4-6万個の攻撃目標に対処する必要があるとして、費用面で高価な長射程兵器だけでは耐えられないことから、陸海海兵隊の長射程兵器注力に疑問を呈しています。輸送機からの投下が費用対効果的にも役立つかは不明ですが、対中国では、戦力の拠点が少ないことから、いかにして攻撃力を確保するかが大きな課題となります

C-17-2.jpg米空軍では弾薬庫航空機(arsenal plane)や無人ウイングマンの兵器庫化、B-21ステルス爆撃機の調達増、海軍では平時は少数の有人で運用する有事無人艦艇の導入や攻撃型潜水艦の巡航ミサイル搭載数増、陸海海兵隊の長射程兵器の導入などが耳にする動きですが、中国が米国や同盟国の拠点を弾道ミサイル等で攻撃すれば、たやすく崩れそうな気もします

速度が遅く、敵に狙われたら回避できなく、また目立ちやすい輸送機が、おしりを開いて弾薬を投下する場面が想定しがたいのですが、そんなことは百も承知の米空軍の取り組みで

次期制空機PCAでも攻撃力は課題
「従来型戦闘機は対中国で需要がないかも」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-28
「CSBAの米空軍将来提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「連接重視で航空アセット削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「次期制空機検討は急がない、急げない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-19
「米空軍が次期戦闘機検討でギャンブル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05

弾薬庫航空機の構想
「米空軍は弾薬庫航空機を継続検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-05
「カーター長官が17年度予算案で表明」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-02-03
「弾薬庫航空機に向け改修」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-13
「同構想とB-52」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-12

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース