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IAEA:イランは核合意全てに違反も査察に完全協力 [安全保障全般]

米国以外の核合意国に経済制裁緩和要望
米国は核合意に戻るべきと考えます

JCPOA4.jpg5日、国際原子力機関IAEAが加盟国にイラン核開発に関する非公開レポートを配布した模様ですが、早くもAP通信がその内容を入手して報道しイランは米国が2018年に抜けた核合意の全ての項目に違反しているが、イラン核施設へのIAEA査察には協力的だとのレポート内容を紹介しています

この核合意(JCPOA:Joint Comprehensive Plan of Action)は2015年に米英独仏中露とイランの間で結ばれたもので、イランが核兵器開発を行わず、同国核施設へのIAEA査察でその遵守を確認できる限り、イランへの経済制裁は解除するというもので、世界がもろ手を挙げた歓迎したのですが、トランプ政権の米国が抜けて経済制裁を強化したことを契機に、イランは他の4か国の説得にもかかわらず核開発を再開したと伝えられていたところです

JCPOA2.jpgイスラム過激派が台頭する中、過激派の背後にイランの影があるのは事実ながら、イスラムの大国であるイランと西側の関係が安定することは世界全体の安定に大きく寄与することから、いろんな疑惑報道がある中でも、この核合意(JCPOA)を支持する専門家は多く、トランプ政権による撤退の際には、「オバマ政権の実績を否定することが目的の無茶苦茶な行為」として非難の声が上がりまし

まんぐーすも、TPP交渉不参加と核合意からの撤退は、今からでも考え直してほしいと思います

AP報道引用の5日付Defense-News記事によれば
核合意で許容されている低濃縮ウラン貯蔵量が202.8㎏であるのに対し、5月20日現在で1571.6㎏をイランは貯蔵している。この量は2月19日時点の1021㎏から大幅に増加し、許容量をはるかに超えて増加している
JCPOA5.jpgまたイランは、同合意で各濃縮レベルを3.67%以下と規定されているにもかかわらず、4.5%にまで濃縮して純度を挙げている。更に、重水の貯蔵量でも合意の上限を超えており、核合意のすべての項目で既定の範囲を超えて核開発を進めている

核合意の究極の目的はイランの核兵器開発(イランは追求していないと主張)を阻止することであるが、イラン自身は核合意違反をオープンにし、IAEAによる関連施設のモニターや査察を受け入れている
イランはコロナ感染で大きな被害を受けているが、IAEA査察官の移動用にチャーター機を準備するなど核合意に基づく査察や監視に「きわめて協力的:exceptional cooperation」だとIAEAはレポートで述べている

イラン政府は違反の指摘に関連し、米国離脱に伴い発動されたイランに対する厳しい経済制裁を埋め合わせるような、経済的インセンティブ提供を他国に求めている

核兵器運搬手段開発に関する米露の対立
JCPOA.jpg4月22日にイラン革命防衛隊が行った人工衛星打ち上げに関し、米国は、イランによる核兵器の運搬手段となる弾道ミサイル開発関連活動を禁じた2015年の国連決議に反するとイランを非難している
米国の国連大使は「衛星打ち上げと弾道ミサイル技術は同じものであり、イランは核兵器運搬手段の開発を行っている」、「イランの弾道ミサイル開発は地域の緊張を高め、国際社会への脅威である」、「国際社会はイランに説明責任を果たすよう求め、イランへの制裁を強化するよう動くべきだ」と国連安全保障理事会に議長に書簡で要請している

これに対しロシアの国連大使は、米国の非難はミスリーディングで、イランは宇宙開発の権利を有していると米国を非難し、「イランは現在・過去・未来にも核兵器を保有することはない」、「イランはIAEAによる査察を最も受けた国家である」、「イランが核兵器運搬用の弾道ミサイルを開発や試験したことはない」と反論している
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ロシアが援護射撃していると、とたんに疑いの目で見たくなりますが、イランがIAEAの査察に全面協力していることは注目に値します

イランはコロナで大きな被害を受けており、公になっている死者の10倍とか、衛星写真により数万人規模の墓地造成が国内各地で確認できるとか、秘密のベールの下で、国として厳しい状況下にあることは間違いなく、いがみ合わないで、妥協点を見つけるチャンスだとも思うのですが・・・

イランが含まれる記事
「CSIS宇宙兵器の分類案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-28
「米国防省のイラン軍事力レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22
「米爆撃機駐留停止の背景にイランの攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-30
「イランにもF-4ファントム最終章」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-12

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米空軍トップ候補者(黒人)が人種問題を語る [米空軍]

米軍史上初の黒人で軍種トップになる候補者
空軍キャリア経験の中での黒人差別を語る

Brown4.jpg5日午後、太平洋空軍司令官で次の米空軍参謀総長候補になっているCharles "CQ" Brown大将が、警察官によって殺害された黒人George Floyd氏に関連する全米での騒乱に関し、「PACAF司令官として、米軍の主要幹部として、黒人として何を思うのか?」との問いに答える約4分半のビデオメッセージを、太平洋空軍の公式Twitter上で公開しました

「I’m thinking about...」との話法の繰り返しで、米空軍での勤務の中で、黒人が特別な目で見られ、特別な扱いを受けていると感じた様々な場面をさらりと描き、米空軍や米軍だけでなく、多くの人に人種差別について考えてほしいと、婉曲的に促すように語りかけています

非常に重く、非常に強いメッセージとなっています。このタイミングで、黒人として初めての軍種トップになりそうな人物だけに、その思いをこのタイミングで語るのは勇気のいることだと思いますが、表に出てメッセージを出したことを讃えたいと思います。普通の人なら、感じると思います・・・

Brown大将のメッセージ(全部ではなく一部)
Brown5.jpg私は今、亡くなったGeorge Floyd氏のことだけでなく、同氏と同じような運命に苦しんできた多くの黒人のこと思い、私の中に巻き起こる大きな感情と向き合っている(I'm thinking about)
私は、私の人生の仕事として守ることに捧げてきた米国という国の、愛国歌(my country tis of thee)に表現された訴えや、独立宣言や憲法に表現されている平等について考えている

私はまた、私の米空軍でのキャリアを振り返り、飛行隊の中で、主要幹部の中で、また部屋の中でたった一人の黒人として過ごしてきたことを思い返している
私は、私の発言が個人的な意見であるにもかかわらず、黒人代表の意見かのように扱われる場面に何度も遭遇したことを思い返している

Brown nomination2.jpg私は、部隊の中で他の同僚と同じ飛行服を着用し、胸にパイロットマークを付けている中で、他の米軍人から「あなたはパイロットか?」と質問されたことも思い返している
私は、(私の上司や同僚の持つ)黒人に対する先入観や見方を無効にするため、他の2倍働かなくてはならないと考えてきた。また私は、私が黒人であるからと期待していない上司に、失敗した姿は見せられないとのプレッシャーと戦い続けてきたことを思い返している

私は、黒人である私のような人生を歩んだことのない、2つの世界を航海する必要のない、他の空軍人のことを考えている。そしてそのような空軍人には降りかからない問題であることから、問題があるとも感じていない空軍人が、人種差別をどのように考えいるのか思索している

現在国内で発生している悩ましい出来事の中で、私という黒人が軍種トップにノミネートされた歴史的出来事に関し、私に向けられる非常に大きな期待について考えている
Brown.jpg私は、これまでのキヤリアの中で期待に十分こたえらてなかった自分を振り返り、今後の私に寄せられる期待にも十分に応えることができないだろうと考えている。そして私の空軍トップへのノミネートがもたらす、幾らかの希望と大きく重い負担にも思いを寄せている

私は数百年続く米国の人種差別を修正(Fix)することはできないし、米空軍所属員に影響を与えてきた数十年に及ぶ差別を修正することもできない
私は、どのようにしたら、個人的に、仕事的に、制度的に改善を図り、今だけでなく将来の空軍人全てが、多様性の価値を尊重し、各人の可能性を生かせる環境で働けるようになるのか考えている

私は皆さんの考えを聞きたいと考えている。皆さんが何を考え、どのようにしたら共に状況を変えられるのか聞かせてほしい

同司令官が語る映像が掲載されている記事
https://www.airforcemag.com/presumptive-next-chief-of-staff-talks-about-his-own-experiences-with-racism/

太平洋空軍のツイッターで公開の映像
https://twitter.com/PACAF/status/1268794618461618177?s=20

「Brown大将の経歴ご紹介」
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19

Brown大将関連記事
「主要戦闘機の稼働率8割断念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-08
「アジア認識を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-07
「Brown大将が次期空軍トップ候補に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-03
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
「現空軍トップとベトナム訪問」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-14
「中露空軍の連携飛行を警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-31
「PACAFが緊急避難訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-27
「南シナ海で中国軍鎮静化?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-28
「燃料と弾薬の備蓄不足を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02-1
「新司令官初海外は日本横田総隊」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-14

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どんでん返し新型4世代機F-15EXでエンジン機種選定へ [米空軍]

6月30日、まず最初の発注分(2022年11月30日まで納入分)は、F-15EXの調達を急ぐので、GE製にすると国防省が発表

461台購入予定のエンジンのうち、何台をGEにまず発注するのかは不明。ちなみエンジンの納入は2030年まで続きます
https://www.airforcemag.com/ge-gets-contract-for-first-batch-of-f-15ex-engines/
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GE AviationのF110で行くはずが・・・
Pratt & WhitneyがF100も競わせろと訴え、空軍が折れる
このご時世、民需が厳しく、軍事への期待大です

F-15EX 3.jpg5月20日付米空軍協会web記事によれば、2020年度から予算が計上され、2023年から米空軍への納入が始まる第4世代機F-15EXに関し、GE Aviation社製のF110エンジンで進め、5月に契約すると1月に米空軍が公式発表していたにも関わらず、対抗馬のPratt & Whitneyが「わが社のF100も要求値を満たしている」と会計検査院に訴えたことから、勝ち目なしと判断した米空軍が折れる形でエンジン選定をやることになったようです

このF-15EXは、老朽化が進むF-15C型の退役が進む中、空軍はF-35を後継にしたいながら、F-35の維持費が高すぎ、かつ増産が間に合わない等の背景から、苦渋の決断として「旧型機種の最新型」導入というかつてない異例の導入が決まったものです。ちなみに、F-16でなくF-15になったのは、ロッキード(F-16とF-35担当)に偏ってはダメ・・との軍需政策判断です。このあたりの経緯や関係者の証言は以下の記事・・・
「イヤイヤF-15EXに進む米空軍」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-30

F-15EX 2.jpg米空軍が使用するF-15C/D型はPratt & WhitneyのF100を搭載していますが、15年ほど前から始まった輸出機用にはGEのF110が搭載され、F-15シリーズの最新型カタール用F-15QAを原型に、能力付加したF-15EXを導入することにした米空軍は、そのままGEのF110を使用する考えでした

もう一つのF110選択の理由は、対抗馬のPratt & WhitneyのF100をF-15EXに搭載するには、F-15EXの「fly-by-wireシステム」への適合改修が必要で、この適合改修を製造と同時並行で行う必要があるため、米空軍が「わずらわしさ」を嫌ったためだといわれていま

これに怒ったPratt & Whitneyは、同社実績からすればF100エンジンの「fly-by-wireシステム」への適合など何の問題もなく、納入までに適合確認を十分終了できるにもかかわらず、米空軍が恣意的に排除したと米会計検査院に訴え、5月18日がGAO裁定日でしたが、その直前に米空軍側から両社エンジンから選定を行うと申し出があったようです

米空軍や国防省側としては、F-35のF135エンジン(2700機分)をPratt & Whitneyが担当しているんだから、141機のF-15EX用エンジンぐらいGEに回してやれよ・・・が本音かとも思いますが、きっちり比較分析する作業が求められるようです

20日付米空軍協会web記事によれば
F-15EX 4.jpg米空軍は、2023年供給開始時点では月産エンジン4基を求め、2026年半ばには月6基まで伸ばし、その生産能力を2030年5月まで維持することをエンジンメーカーに求めている

米空軍の方針変更を受けGE社は、「わが社のF110-GE-129は、(現時点で)F-15EXに適合する唯一のエンジンであり、米空軍の要求に直ちに答えることができる完成品である」、「GAは最近15年間で、F-15用エンジンの86%を世界中に提供しており、米空軍F-16でも7割を支えている」、「F110エンジンファミリーの総飛行時間は1000万時間を超え、3400個のエンジンが世界中で活躍してきた」と自信のコメントを発表した

一方のPratt & Whitneyは、「わが社のF100-229は、米空軍が現在運用する全てのF-15(F-15Eを含む)の推進システムであり、その信頼性、安全性、性能を最前線に提供している」、「機種選定決定により、目的達成のための第一歩を踏みだせる」との声明を出している
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F-15EX.jpgF-35という最新鋭機がありながら、最新型とは言え一世代前のF-15の新造機購入に至った複雑な背景は米空軍を取り巻く環境の縮図であり、特に導入決定当時のダンフォード統合参謀本部議長の突き放したような表現ぶりが絶妙ですので、ぜひご確認ください
「イヤイヤF-15EXに進む米空軍」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-30

民航機の落ち込みが「底なし」にも見える今日この頃、他の分野でも軍需をめぐる企業間の競争が激化するのかもしれません・

F-15EX関連の記事
「イヤイヤF-15EXに進む米空軍」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-30
「国防省高官もF-15EX導入を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-23-1
「統参議長がF-15EX購入を語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-2
「F-15EXは空軍の選択ではない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-02
「参謀総長F-15Xを強く示唆」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-31-1
「空自MSIP機も能力向上改修へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-01
「ボーイングがF-15X宣伝中」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-24-1
「コッソリF-15C電子戦能力向上を中止」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-03
「F-15Cの早期退役やむなし?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-22

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エスパー長官&マティス元長官のデモ鎮圧関連の発言に思う [エスパー国防長官]

まんぐーすは思います。

Esper3.jpgエスパー国防長官が正規軍のデモ隊鎮圧への投入に、スタッフ的な立場から反対意見を述べたのは、米軍兵士の心を知る、陸軍士官学校出身の元陸軍中佐として、米軍部隊内の黒人兵士の動きに不穏な雰囲気を感じたからだと思います。

また、マティス元国防長官の寄稿にも、その思いが約35%は含まれていると思います。

Mattis4.jpg主要なポストに就く黒人下士官が、本件に政治的メッセージを発信し始めていることや、恐らく前線部隊の中でも、兵士の間で議論が白熱して言い争い等が生まれていることを聞き及び、前線部隊経験者として、米軍を代表する立場にある者(あった者)として、部隊の安定のため、姿勢を示す必要性を強く感じたのだと思います。

対外的な発信を主に意図したものではなく、米軍内部に向けた、「トップは部隊の思いをわかっているぞ」との意思表示であり、言い換えれば、言葉は悪いですが部隊内の「ガス抜き」的な意味合いもあると思います

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米国防長官室:対中国で潜水艦も無人化を強力に推進 [Joint・統合参謀本部]

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ミサイル96発搭載で2千億円以上の現艦艇は非効率
空母2隻削減案に続き、攻撃原潜体制も見直しへ

XLUUV 2.jpg1日付Defense-Newsは国防省の内部文書を取り上げ、米国防長官室OSDが米海軍とともに進めている2045年を見据えた将来体制検討で、攻撃型潜水艦関連では、多くの予算を超大型無人潜水艦(XLUUV)に投入する方向が打ち出される模様だと報じています

エスパー国防長官の指示で今夏完成を目指し、CAPE(Cost Assessment and Program Evaluation室)を中心として進められている全省的な「a new joint war plan」作成の一環ですが、米海軍とCAPEが多数のウォーゲームやシュミレーションを通して検討を進めているもので、水上艦艇に関しては「空母2隻削減」や「大型艦艇重視から大中型無人艦艇導入推進」の方向を打ち出そうとしていると先日ご紹介しました

「国防省が空母2隻削減と無人艦艇案!?」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22 

記事は「50隻の大型無人潜水艦」、「バージニア級攻撃原潜の予算を活用」、「同時に(有人?)攻撃原潜2-3隻の追加」とか、単に危険な敵領域近くでの攻撃用だけではなく、人間だと心身の疲弊が激しい「対潜戦・機雷戦」「情報収集」への無人潜水艦の投入との内容を紹介しており、検討途中の内容ですが、簡単にご紹介しておきます

1日付Defense-News記事によれば
XLUUV.jpg国防長官室がCAPEを活用している内部検討は、米海軍に50隻の大型無人潜水艦(XLUUV :extra-large unmanned underwater vehicles)の購入や、有人大型潜水艦をより複雑な任務に振り向けるよう推奨している。同時に2-3隻の攻撃潜水艦増強も提言するようだが、多くの予算をXLUUVに投入する方向性の模様である
米海軍はボーイングと既に、最初の4隻のXLUUV契約を約50億円で2019年2月に結び、その後5隻に拡大したが、2023年以降は毎年2隻購入する計画だといわれている

また米海軍は、一連の無人艦艇開発を進めており、より安価に打撃力向上を図るとともに、中国軍が対処しなければならない目標を増やして負担を強いることを狙っている
米国防省は本件に関し、内部検討の話で、決定したものではないとコメントを避けているが、エスパー国防長官は3月にインタビューで、数か月かけて「より軽い海軍」に向けた方向性を打ち出すと述べ、「将来の海軍や海兵隊にとって大きなgame changerになるだろう」と語っていたところである

XLUUV 3.jpg海軍評論家のEric Wertheim氏は、 XLUUVは、1隻3000億円以上する現在の攻撃原潜の任務を引き継ぐもので、本格紛争時に敵脅威下の危険なエリアで有人潜水艦に代わって任務を遂行し、敵が人海戦術で多数の人員を配したアセットで対抗してくる中、西側軍にとって今日最も高価なアセットである「兵士」を守ることができると説明し、
またXLUUVは、長時間の業務で生身の兵士が心身ともに疲弊する「対潜戦・機雷戦」「情報収集」などの任務も遂行できる可能性を持っているとも同氏は分析している

米海軍トップのMichael Gilday大将も昨年、「将来の艦隊が無人艦艇を含むであろうことは承知している。96発のミサイルを搭載する1隻2000億円以上する艦艇を必要なだけ分散配備し、猛烈なスピードで艦艇建造を進める潜在的国に対抗できないことは明らかで、考え方を変えなければならない」と述べていたところである
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XLUUV 4.jpg記事だけから見ると、国防長官室と米海軍が一体となって無人艦艇や無人潜水艦導入に進んでいるように見えますが米海軍は「新たな空母やイージス艦像」検討を並行的に進め、何としても有人艦艇の存在意義を示そうとして予算を確保しようとしており、決して一枚岩ではありません

ポンペイオ国務長官と同期生で、陸軍士官学校卒業生であるエスパー長官が夏までに取りまとめる全省的な「a new joint war plan」が、米海軍や空軍にどのような「game change」を迫るのか、注目いたしましょう。でももう夏ですよねぇ・・・

米海軍と海兵隊を巡る動き
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇案!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「米海軍が半年で空母再検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-12
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「5年計画で新型大型艦艇設計」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-14
「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-13

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GAOが米軍の女性採用&離職防止努力不足を指摘 [Joint・統合参謀本部]

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米議会の要請でGAOがチェック
GAOの評価・提言に国防省と4軍が同意

Female GAO.jpg5月19日付Military.comが、2018年の米議会要請に基づき、米会計検査院GAOが公表した米軍女性兵士の構成比率や離職に関する調査等に基づく提言レポートを紹介し、人材確保が難しい中にあって女性兵士の活用が急務であるにもかかわらず、米軍全体に取り組みが不十分だとのGAO指摘を紹介しています

レポート名は「FEMALE ACTIVEDUTY PERSONNEL Guidance and Plans Needed for Recruitment and Retention Efforts」で、記事によれば、GAOの分析と提言に国防省と4軍が同意した模様です

記事は80ページにわたるレポートの詳細を伝えていませんし、女性兵士比率で米空軍がトップで海兵隊が最も低いとか、女性兵士離職の6大理由とか、あっと驚く中身があるわけではありませんが、小さなことからコツコツと・・・の精神からご紹介しておきます

ご興味のある方は、下でご紹介する現物をご確認ください

19日付Military.com記事によれば
記事が示す統計の概要
 女性兵士率%  2004年  2018年  離職率
 全体      15.1    16.5   
 陸軍      15.3    15.1   最高
 海軍      14.7    19.6   2番目に高い
 空軍      20      20.2   最低
 海兵隊     6.1     8.6   2番目に低い

離職率は、男性と比較して女性兵士は28%高い
下士官の昇任率も、男性と比較して女性は低い

女性兵士離職の6大理由
 仕事スケジュール、組織文化、家族計画(妊娠出産育児)、家族のケア、任務上の展開出張、性的襲撃

陸軍
 全軍で唯一、女性兵士比率が低下。離職率も4軍で最大
海軍
 女性比率は大きく向上したが、離職率は2番目に高いままである

空軍
 比率は2004年当時から2割程度あり、離職率も最低
海兵隊
 比率は4軍で最低も、改善率は最高、離職率も2番目に低い

female soldier.jpgレポートは退職女性兵士へのインタビューを取り上げ、「性的襲撃と、それが発生した際の不適切な軍による処置が女性の離職を増やしている」や、「性的襲撃を行った犯罪者が処罰を受けず、周辺の他兵士からの支援も得られず、退職を決意した」との証言を紹介している

昨年12月に4軍の代表者(多くは副参謀総長)が議会で本件に関する証言を求められ、陸軍は「より多様性を高め、米国の一般国民の優秀な姿を代表できるよう目指す」と述べ、海軍も「多様性は海兵隊にとって重要な要素である。多様な米国社会の多様な部分の優秀な人材から構成される海兵隊であるよう努める」と決意を語っている
しかしGAOはレポートで目標や計画策定が行われていないと指摘し、「国防省が、明確な目標、改善把握の指標、目標に向けての時程表を定めて女性兵士の採用と離職防止に取り組まなければ、国防省は引き続き貴重な人材を獲得し確保することに失敗を続けるだろう」と結論付けている

female sailer.jpg●そしてGAOは国防省と4軍に対し、「diversity strategic plan」の更新と、採用と離職防止の具体的目標設定を勧告し、「設定目標は縛りとなるものではなく、継続的改善の指針となるものだ」と説明している。
国防省と4軍は、この勧告内容に同意している
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GAOレポートの現物
https://www.gao.gov/assets/710/707037.pdf

古い奴だと思われるでしょうが、ここは「本音と建て前」、「表と裏」が明確に存在する世界でしょうからねぇ・・・

もちろん性的襲撃やセクハラの撲滅は当然ですし、女性の能力を生かせる分野は十分にあると思います。しかし一般社会と同じように、男女比を5:5にできる組織かと言えば違うとも思います

ちなみに防衛白書によると我が自衛隊の女性自衛官比率の現在位置は7%ぐらいで、2027年に9%以上を目指している・・・そうです
また採用数でいうと、2017年以降は女性採用を10%以上としているらしいです
https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2019/html/n41203000.html

軍での女性を考える記事
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19

「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11

「性犯罪対処室が捜査対象」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-04
「性犯罪は依然高水準」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-06-1

米軍での性的襲撃事案多発を考える記事
「士官学校に改善の兆しなし」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-02
「米3軍の長官が士官学校でのセクハラ問題議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-10
「現役パイロット時に上官にレイプされた」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空軍士官学校の内通者が反旗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-10-1
「性犯罪対処室が捜査対象」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-04
「性犯罪は依然高水準」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-06-1

「性犯罪は依然高水準」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-06-1
「暴力削減にNGO導入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-05

「国防長官が対策会見」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-19
「指揮官を集め対策会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-04
「海軍トップも苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-20

「女性5人に一人が被害」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-10
「空軍内で既に今年600件」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-19-1
「米軍内レイプ問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-19

女性と徴兵制
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

関連の記事
「女性兵士の装具改善に時間必要」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-13
「今頃・・女性兵士にフィットした飛行服等に改良へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07
「女性初のF-35操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-08
「女性だけの編隊で攻撃」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-04

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上下院軍事委員長が対中国抑止イニシアティブ推進 [安全保障全般]

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以下の米議会主要メンバーのPDI推進論考は、2020年3月中旬に太平洋軍司令官が議会に提出した、国家防衛戦略NDS遂行に必要な約2.2兆円の太平洋軍強化に必要な要望事項レポートを反映したもので、細部は以下のDefense-News記事が報じています
https://www.defensenews.com/global/asia-pacific/2020/04/02/inside-us-indo-pacific-commands-20-billion-wish-list-to-deter-china-and-why-congress-may-approve-it/

Davidson太平洋軍司令官は、
グアム島の360度ミサイル防衛、長射程兵器、分散基地の整備、同盟国の強化、演習場ネットワークの整備、分散運用や分散基地を支えるロジ能力の強化・・・等を要求しています
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MD、長射程地上兵器、分散飛行場、燃料弾薬貯蔵重視
名称Pacific Deterrence Initiativeで具体化へ

Inhofe.jpg5月28日付でJim Inhofe上院軍事委員長とJack Reed委員(民主党の同委員会筆頭者)が「War on Rocks」に論考を寄稿し、米国防省の対中国軍事予算配分に異議を唱える形で「PDI:Pacific Deterrence Initiative」を提唱し、F-35に代表されるアセット優先投資ではなく、そのアセットが活動できる複数の展開基盤整備や地上発射の長射程兵器、更には数少ない拠点を守るミサイル防衛装備への重点投資を訴えました

この「PDI:Pacific Deterrence Initiative」との名称は、ロシアのウクライナ侵攻に対抗すべく2014年に始まった約2兆2000億円の「European Deterrence Initiative」の対中国版をイメージしたもので、4月に太平洋軍司令官が議会指示により提出した2021~2026年度予算に約2兆2000億円の配分を求めるレポート等も参考にしつつ、今後細部が検討される模様です

PDI2.jpg既にAdam Smith下院軍事委員長(民主党)やMac Thornberry委員(共和党の同委員会筆頭者)も国防省の予算編成には不満を募らせ、欧州と同様の「Initiative」が必要だとの考えを示しており、上下院の軍事委員会が同じ方向で国防省の現方向とは異なる方向性を打ち出そうとし始めた・・・ということのようです

しかし国防省側は、何か戦略や「Initiative」を打ち出すなら予算が必要だが・・・と声を濁し、それでなくても枠が小さい国防費の中で、かつコロナの影響で国防費大幅削減が現実味を帯びている中で、議会が勝手に予算の使い道を決めようとしていることに困惑を隠せない様子です

今後どう転ぶか全く見えず、党派を超えた議会関係者の方向性が揃うのかよくわからない言葉先行の「Pacific Deterrence Initiative」ですが、両院の軍事委員長らが問題意識を持っている点について、とりあえず確認しておきたいと思います

28日付「War on Rocks」論考やDefense-Newsによれば
PACOM.jpgInhofe上院軍事委員長とJack Reed委員の論考は、地上配備の長射程攻撃能力、地域ミサイル防衛能力、前線の戦力分散用基地の飛行場や港湾施設整備(燃料や弾薬備蓄施設を含む)の整備を推進し、一方でF-35に代表されるプラットフォーム購入重視の国防省姿勢と異なる方向で「PDI」を進めたいとする内容である
この考え方は、細部は不明ながら、Smith下院軍事委員長やThornberry委員らが考えている「PDI」と同じ方向性を持つ

同論考は、「PDIは、中国が米国の取り組みからリスクや不確実性を感じ取り、軍事的行動に出ることを抑止することを狙った資源投資の方向を示すものだ」と表現しているが、具体的にどの程度の予算規模でいつまでの期間を対象とするかについては、今後米議会内の軍事委員会と予算配分委員会の議論を待つこととなる
同論考で両名は、国防省がプラットフォーム導入を重視し、国家防衛戦略が求めている本格紛争に備えた任務や体制や兵站分析が不十分であることに上院軍事委員会として不満であると述べ、欧州でも重視した、拠点整備、染料や弾薬備蓄施設、展開が容易な飛行場運用キットの準備などを求め、これ以上の航空機を求めない姿勢を展開している

PACOM2.jpg具体的には、「前線に展開する飛行場がほとんどなく、あっても弾道ミサイルへの防御態勢がない状態で、F-35を何機購入しようが意味がない。また、燃料や弾薬の準備もなく、前線での修理態勢も整っていない状態を無視している姿勢も理解できない」と表現している
PDIで重視される資金は以下の5つのカテゴリーで、「Joint force lethality」、「force design and posture」、「strengthen allies and partners」、「exercises, experimentation and innovation」と「ogistics and security enablers」の5つである

この軍事委員会の動きに関しCNASのEric Sayers研究員は、「幾らかの資金がPDIの重視項目に流れるとは思うが、今後の課題は、厳しい国家予算の中で議会の予算委員会が理解するか、また国防省がPDIの方向を国防省予算に真剣に組み込み込むかである」とコメントしている
また国防省のHeino Klinck東アジア担当次官補代理は、28日CSBAでのイベントで、個人的にはPDIは一つの考え方だと思うと尊重する姿勢を示しながらも、「国家防衛戦略がアジア太平洋を優先視していることは明確だ。しかし同時に我々皆が認識しているのは、戦略実行のカギは予算で、予算が戦略である現実である。今現在は優先地域としてのアジア太平洋を支える予算ではない」ときっぱり語った
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PDI.jpgいつの世にも意見の食い違いがあり、従来の安全保障環境を一変させる中国の台頭ですから、様々な意見があるのは当然でしょう。しかし、意見を持つ組織が互いに話し合いの場で議論するのではなく、メディアや対外的な場で意見をぶつけ、国家機関内での意思疎通を二の次にしているようで気になります

特にコロナによる国家予算の危機が叫ばれ、国防費大幅削減が数年間は予想される中、今のこの状態では今後が懸念されます

相手は中国やロシアであって、米国内で争っていては、自らのアピールに終始していては、中国やロシアに付け込まれるだけですよ・・・と言いかけて、日本も同じだとため息が出ました

対中国の軍事戦力や資源配分議論が紛糾
「コロナで安保環境激変を予想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-25
「特殊作戦軍の予算削減に反論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-05
「軍種間の重複をなくせ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「遠方攻撃は誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「米海軍が軍種予算シェア見直し要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-16

European Reassurance Initiative関連
「NATO首脳会議は葬式?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18-1
「ロシアの毒牙にセルビアが危ない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-10-2
「対露の欧州米軍予算4倍を説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-2
「欧州への派遣や訓練を増加」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-08-1
「F-35初海外はやっぱり英国」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-21
「露の脅威を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-23-1

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CSIS:宇宙兵器議論のため兵器分類をまず考えよう [サイバーと宇宙]

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野放しな宇宙兵器を管理する議論の枠組み構築に向けた一歩
部分的核実験禁止条約と宇宙条約しかない現状から前進したい

SpaceWeaponCSIS.jpg5月27日、CSISのTodd Harrison研究員が「International Perspectives on Space Weapons」との33ページのレポートを発表し、世界各国の関心が高まる宇宙ドメインにおける兵器議論の枠組みを構築するため、また可能ならば宇宙兵器管理の枠組み構築の第一歩になればとの願いを込め、「宇宙兵器の6分類」を議論のたたき台として提示しました

Harrison研究員は問題認識として、宇宙兵器を制限する現存の唯一の枠組みである部分的核実験禁止条約(Partial Test Ban Treaty)や宇宙条約(Outer Space Treaty)が「宇宙の兵器化:weaponization of space」を制限しているが、幾つかの国が数十年前から宇宙兵器と呼ばれるものを保有していることは否定できない事実であると指摘し

Harrison.jpg一方でこの問題を議論しようにも、何が「宇宙の兵器化:weaponization of space」や「宇宙兵器:space weapon」なのか定義の合意も皆無な状況で、更にこの定義を定める条約的枠組みを構築する動きもほとんどない現状を挙げています

そこで同研究員は、まず米国と西側同盟国間(一般国民を含め)で宇宙兵器について議論する際の実用的な区分として「6分類」を準備し、まず宇宙ドメインで急いでやるべき、またはやりたいことの議論を行う際の、「航海」を手助けしたいと考えたようです

同研究員の言葉を借りれば、「人々は何十年も、宇宙の兵器化はダメだ、宇宙兵器はダメだと言って立ち止まっているが、この暫定枠組みで見てみれば、既に実用化されているものが厳然と存在していることに、より明確に気づく」ためのものです。特別驚く分類ではありませんが、まんぐーすのような初心者にはありがたいのでご紹介します

5月27日付C4isrnet記事によれば
Harrison研究員は、「kinetic か non-kineticか」及び、どこ(地球内または宇宙)からどこへ作用を及ぼすかを組み合わせ、「6分類」を作成した。ただし、地上にある宇宙関連施設(衛星との通信施設など)を地球内から攻撃するパターンは、宇宙を経由していないので除外している

Earth-to-space kinetic
地球から宇宙アセットに発射する物理的破壊を狙ったミサイルなどで、2019年にもインドが実験している。この兵器は目標破壊後に「宇宙ゴミ」を宇宙空間に放出・残置することが大きな問題と言われている。通常弾頭と、理論的には核弾頭が使用される
既に、米、露、中、印がこの能力保有を示している。米露は1960年代に宇宙での核実験を行ったが、ロシアは今年4月にも能力試験を行っている
Earth-to-space non-kinetic
Space Weapon.jpg地球から宇宙アセットへの電波妨害、レーザーによるセンサーかく乱、サイバー攻撃で、その効果は多様であるが、一時的な機能妨害や停止から、恒久的な機能喪失までに及ぶ
米露中及びイランを含む、多くの国がこの能力を保有している


Space-to-space kinetic
宇宙空間で衛星が他の衛星に接触して機能を妨害したり破壊したりする。この目的専用の衛星も含まれる。ここでも物理的接触により生じる「宇宙ゴミ」が問題となる。ロシアは冷戦期に繰り返し、この種の兵器を宇宙軌道に置く試験を行っていた
核兵器の使用も理論的にはあるが、影響範囲が大きく、周辺の宇宙アセットにも被害が及ぶ可能性がある。
Space-to-space non-kinetic
軌道上の衛星から、高出力マイクロ波や妨害電波などにより宇宙アセットの機能を阻害する。公開情報でこの兵器の使用が明らかになったことはない
この兵器が使用されたことを外部から確認することは困難であるが、2018年にフランスがロシアに直接、この手段で軍事通信を傍受(または妨害:intercept)しようとしたと非難している

Space-to-Earth kinetic
Space Weapon2.jpg古くからフィクション映画で用いられている、宇宙アセットから地上目標(地球内目標)を攻撃するイメージである
宇宙から地上や地球内に金属片を落として重力エネルギーで破壊力を得る手法や、大気圏突入装置に弾道を搭載する手法等が考えられる。米国がかつて検討したといわれているが、このような兵器が試験された記録は公開情報にはない

Space-to-space non-kinetic
衛星など宇宙アセット(地上から発射された弾道ミサイルを含む)を、電波妨害などで機能喪失させる手法
米国が議論していた衛星からレーザーを使用して弾道ミサイルを無効化する構想もこの範疇に含める。しかし、この手法が使用された記録は公開情報にはない
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CSISの同レポート紹介ページ
https://aerospace.csis.org/international-perspectives-on-space-weapons/

「公開情報では確認できない」との表現が多数見られますが、サイバーと同様に観察・監視するのが難しい世界だということでしょう。

Space Weapon3.jpg「Earth-to-space non-kinetic」能力を「米露中及びイランを含む、多くの国がこの能力を保有している」というのは、衛星通信電波の妨害は容易だということなのでしょう。

Harrison研究員は、宇宙兵器や宇宙の軍事化の定義にコンセンサスが得られなくても、「宇宙兵器の開発は将来に向け加速する。しかしこの際各国は、防御用の兵器だと主張してその開発を説明するだろうが、その能力は他の方向ににも使用可能な能力であると認識すべきだろう」と結んでいるようです。要注意ですね!

宇宙兵器関連の記事
「4月中旬のロシア衛星破壊兵器試験を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-17
「航空機からロケット発射で衛星を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-14
「宇宙軍の最初の攻撃兵器」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-09
「画期的:衛星が推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-27
「怪しげなロシア衛星問題提起」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-04
「再び同高官が指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-26

その他の宇宙関連記事
「5G企業にGPS干渉の恐れある電波使用許可へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-14
「宇宙Fenceレーダー試験開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-12-1
「同盟国にも宇宙関連訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-2
「アジア太平洋での宇宙作戦が困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-10-1
「Space Fence試験レーダー完成」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-29
「米空軍のSpace Fenceを学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-28

ブログサポーターご紹介ページ
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