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史上初:4コマンド参加の米本土防空演習 [Joint・統合参謀本部]

祝Space X! 有人宇宙ロケット打ち上げ成功! 
民間初の快挙を記念して、同社自身が作成した、失敗場面を集めた映像集をご紹介→勇ましい音楽に乗せ、ド派手な爆発・墜落・着陸失敗映像が続きます。この失敗を苦にせず、前向きに明るく前進する姿勢を学びたい!https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-09-18
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北米、戦略、輸送、宇宙コマンドが参加です
B-1を敵機か巡航ミサイルに見立てて米本土防衛

O’Shaughnessy3.jpg5月29日、北米コマンド司令官Terrence O’Shaughnessy空軍大将が声明で、5月20-31日の間に米東岸エリアで米軍の4つのメジャーコマンドが参加して実施する初めての米本土攻撃への対処演習を行うと明らかにしました

「4つのメジャーコマンド」が同時に参加する点が「史上初」なのだと思いますが、コロナ対処で米軍部隊の移動制限をかけている米軍としてはポーランドでの小規模共同演習、B-1爆撃機の世界各所遠征と並ぶ精いっぱいのアピール演習だと思います

b-1b.jpgしかし一方で、米本土への直接攻撃を意識した訓練は本格紛争対処に力点を移す米国防省の一つの焦点であり国防省が重視する第1回のJADC2(ABMS)演習(2019年年12月)のシナリオも米本土への巡航ミサイル攻撃対処で、フロリダの野外テントを指揮所として、イージス艦やAWACSや戦闘機のセンサーに、陸海空の迎撃アセットを絡めた軍種やコマンド横断実験演習でしたので、繰り返し様々な枠組みで取り組んでいるものと思います

各種報道から同演習の概要は
●4つのメジャーコマンドの役割と分担は
---北米コマンド 
  北米防空司令部を指揮中枢として、防空アセットとしてカナダ空軍のFA-18、米空軍のF-15、米海軍空母トルーマン艦載機(FA-18やE-2Cなど)を運用
  第2艦隊の各種艦艇運用
---戦略コマンド 
  仮想敵機としてB-1B爆撃機を運用し、米本土攻撃のため侵攻

---輸送コマンド 
  各種航空アセットへの空中給油
---宇宙軍
  衛星通信網の提供とGPS提供

O’Shaughnessy北米コマンド司令官は、「複数のドメインをまたぎ、4つのコマンドが参加する複雑な演習を推進することで、コロナ感染の状況にかかわらず、米軍が米本土防衛の態勢を維持していることを示す」と声明で演習の意義を説明している
Truman4.jpg●また「ハイエンド紛争の訓練を通じ、重要な役割を果たす戦略レベル組織と融合した運用に精通することができる」とも説明している

海軍宇宙コマンドの参加を通じて演習に参加する宇宙コマンド司令官Jay Raymond空軍大将は、「今日、宇宙能力を絡めない統合運用など考えられない。米軍が比類なきスピード、正確性、破壊力を持って活動するためのカギとなる能力と情報をあまねく広く宇宙コマンドは提供しているからだ」と参加の意義を語っている

なお、空母トルーマンは昨年9月に母港を出港して以来継続して任務に従事しており、本来ならこの春に帰還する予定だったが、コロナ感染を恐れて母港には戻らず、大西洋上で即応態勢部隊として待機中にこの演習に参加している
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B-1B爆撃機はもともと、低空を超音速侵攻でソ連軍に対峙する思想の爆撃機ですから、米本土に飛来する巡航ミサイルを模擬するのでは・・・と想像しています

それにしても、突然B-1爆撃機の出番が世界中で増えていますが、B-52部隊が長期の展開から休養期間に入っているとの説明もありましたが、B-1をいっぱい飛ばして早期引退の説明を容易にするためでは・・・とも邪推しております

全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMSとJADC2関連
「今後の統合連接C2演習は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-08-1
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「米空軍の夢をCSBAが応援!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「空軍資源再配分の焦点は連接性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-08
「マルチドメイン指揮統制MDC2に必要なのは?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24

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米特殊作戦軍の予算削減に危機感訴え [Joint・統合参謀本部]

SOF経験の陸空海兵隊OB3名の連名投稿
21年度予算案で5%減の扱いに危機感を

SOF2.jpg5月4日付MIlitaryTimesが、3名の米特殊作戦軍OBが寄稿した特殊作戦軍予算削減への反対意見を掲載し、中国やロシアとの本格紛争に備えるためには、本格紛争の各段階において特殊作戦軍の能力が欠かせないとの訴えを紹介しています

この寄稿は、ちょうど40年前に実行され失敗に終わった1980年4月24-25日のイラン大使館人質救出作戦の教訓などを振り返るイベントに合わせる形で行われたもののようですが、2018年の国家防衛戦略NDSで示された対テロから本格紛争への備えへの掛け声のもと、特殊作戦部隊(SOF:special operations forces)への誤った認識で、再び「日陰者」扱いされることへの危機感を訴えています

特殊作戦部隊は秘密のベールに包まれている部分が大半なので、その重要性を主張するのは難しいと思うのですが、中国やロシアと相手にした本格紛争前のグレーゾーン期間と本格紛争での重要性を、想像以上に踏み込んで主張しており、中国やロシアの弱点に踏み込んだ記述もあり興味深いのでご紹介しておきます

筆者は、元特殊作戦軍副司令官の退役空軍中将、同じく元参謀長の退役海兵隊少将、そしてSOF応援団体の会長である退役陸軍大佐の3名です

4日付MIlitaryTimes記事によれば
OEC.jpg4月27日の週、失敗に終わった40年前のイラン大使館人質救出作戦「Operation Eagle Claw」の犠牲者を追悼し、その後の米軍における特殊作戦部隊復活への取り組みを振り返る取り組みを、多くの米軍人OBや現役運人が行った
それは、40年前のイランの砂漠での屈辱から2001年のアフガンの山々での作戦までの特殊作戦部隊の再生や、またビンラディン暗殺作戦やISIS掃討作戦での特殊部隊の働き、それを可能にしたGoldwater-Nichols法の超党派Nunn-Cohen改正にまで及ぶ、長い道のりと教訓を追体験することでもあった

しかし今、国家防衛戦略NDSによる本格紛争重視の流れに押され、20年近くに及ぶ対テロ戦で活躍した特殊作戦部隊SOFへの投資が見直されようとしており、2021年度予算案では、米軍全体からすると僅か2%でしかない特殊作戦軍SOCOM予算が5%削減され、装備調達費は12%も削減される案となっている
●この削減は、現在進行中の紛争での活動を危機にさらすものであるとともに、将来の大国間紛争への備えをおろそかにするものだと危惧される

SOF.jpg対テロ作戦でない本格紛争では、特殊作戦部隊の能力は重要ではないとの非現実的な考えが蔓延していることは残念である。中国やロシアは、本格紛争が始まる前から不正規な戦いで米国と追い詰めようと膨大な戦力や能力を保有しており、その戦力は本格紛争開始後には米国攻撃や自国防御にも転用されるものである

●まず本格紛争以前のグレーゾーン段階を考えてみると、現時点においても、ロシアはハイブリッド戦に全力を投入しており、中国もまたグレーゾーンでの作戦を好んでいることは明らかになっている。彼らは武力紛争になることを避けつつ、米国の同盟国や友好国に影響力を拡大しようとして、金の力で影響力を拡大したり、SNSやインターネットなどの最新技術を駆使して広く国民に作用しようと浸透を試みている
米国は同盟国などともに、すべての政府機関が協力し、中国やロシアの動きを阻止する必要があるが、SOFはこれらのネットワーク構築に取り組み、非対称な脅威を撃退すべく、対テロ作戦と並行して努力している

本格紛争段階においてロシアは兵器管理枠組みに違反して長射程ミサイルや対艦ミサイルを配備し、その防御範囲をNATO領域にまで拡大しているし、中国も同様に弾道ミサイル体系を強化して西太平洋に拒否領域を拡大している。SOFは同盟国等とともに中露の周辺領域防御の穴を突き、両国に作戦レベルでのジレンマを引き起こし、その防御網を弱体化させることができる
加えて中国は、多くの物資を外国からの輸入に頼る戦略的に脆弱な問題を抱えており、長期間にわたる軍事作戦を支える物資供給交通網は格好の阻止の対象となっている。SOFはこの戦略的な阻止作戦で緊要な役割を担っており、中国に耐えがたいダメージを与えうる

SOF4.jpg約40年前の屈辱的作戦から2001年に対テロ作戦を開始するまでの復活については先に触れたが、その間にも、冷戦においてSOFは米国益のために重要な役割を果たしてきた。しかし、熱い戦いに至る前段階での見えざる戦いでのSOFの働きは目に見えず、SOFも「quiet professionals」を旨として黙々と任務を遂行した
SOFは急に増強することができない部隊であり、中国やロシアが得意とする不正規戦やグレーゾーンで重要な役割を持ち、本格紛争でも敵の弱点を突く作戦に不可欠な部隊である。意思決定者はそのことを肝に銘じ、その予算削減が取り返しのつかない結果を招くことを再度思い返すべきである。「Operation Eagle Claw」を忘れるな
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Wikipediaイラン大使館人質救出作戦:Operation Eagle Claw」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E4%BD%9C%E6%88%A6

中国やロシアが、金にものを言わせて中小国に浸潤を試み、影響力を行使しようとする試みを草の根で阻止しようと努力する特殊作戦部隊の声を以前アフリカを例にご紹介したことがありますが、そのような戦力をアジア太平洋地域に再配分しようとの検討が国防省で進んでいます。一長一短があり、予算が厳しい中、厳しい選択を米国防省、いや米国は迫られています

紛争時のSOFの重要な役割を訴えるため、3名の筆者は「both Russia and China have substantial holes in their territorial defense」とか、「China’s strategic shortcomings is the fact it cannot feed itself」と中露の弱点を指摘し、その弱点を突くためにSOFが重要だと主張していますが、中露の領土への極秘潜入作戦とか、交通網の隠密爆破・破壊作戦とか、映画のようなシーンをイメージしてしまいます

これほど具体的に中露の弱点を指摘した話は現役軍人ではできませんので、「Take Note」しておきたいと思います

特殊作戦部隊の関連記事
「アフリカ派遣部隊の削減検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-14
「人の感情を察知するセンサー開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-17
「特殊作戦軍で中露と対峙する」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-19
「ドキュメント誘導工作を読む」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1

「ハイブリッド情報戦に備え」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-05
「心理戦を様々な視点で」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-01
「海兵隊は特殊部隊を廃止せよ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13-1
「レーザーに今も熱狂的」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23
「比で対IS作戦を支援」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-12
「AC-130」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-06

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米国が危機の中:ロシアがリビアにMig-29展開 [安全保障全般]

ウクライナやシリアへの支援と同じパターン
ロシア軍事会社Wagner Groupを支援し反政府活動
NATOに南から脅威を与える拠点化か!?

Stephen Townsend.jpg25日、米アフリカ軍のStephen Townsend司令官が会見し、リビア政府(Government of National Accord)から訴えがあったロシア軍Mig-29戦闘爆撃機のリビア反政府グループ(Libyan National Army)勢力地域への展開を確認したと明らかにし、リビア反政府グループが18日の週に予言した「新たな航空作戦開始」に投入されるだろうと述べました

リビアは政府軍と反政府武装勢力による内戦状態にあり、首都トリポリ侵攻を狙うエジプトやUAEが支援する反政府軍を、西側やトルコが支援する政府軍が何度か撃退して何とか持ちこたえてきましたが、ここに新たな航空戦力をロシアが投入して反政府軍を支援し、直接的にはロシア軍の分身として活動するロシア民間軍事会社「Wagner Group」の作戦を応援させるようです

Wagner Group.jpgこのロシア傭兵組織「Wagner Group」のオーナーは新興財閥トップのYevgeny Prigozhinで、プーチンと親密な関係を持つ人物であり、ロシアによるウクライナへの浸潤やシリアのアサド政権支援勢力としての活動していますが、米国内でもSNSを通じた2016年米国大統領選挙への関与や、現在も続く米軍兵士や家族・OBへの執拗なフェイクニュース配信や誹謗中傷ツイートなどにも関与しているようです

米国がコロナで厳しい時、隙に付け込むのがロシアと中国のお家芸ですので、その狡猾ぶりをご紹介しておきます。衛星写真では、少なくとも6機のMig-29がリビア東部の飛行場で確認されているようで

26日付Military.com記事によれば
25日、Stephen Townsend米アフリカ軍司令官は、「ロシアは長くリビア国内紛争への関与を完全に否定してきたが、ロシアが支援する反政府勢力への提供戦力を拡大したことは明らかで、反論の余地はない」、「我々はロシア軍Mig-29がリビアに飛来するのを、その過程も含め全て監視していた」と語った
Mig-29.jpgそして同Mig-29戦闘爆撃機が、当初シリア内のロシア軍展開基地に移動し、そこでロシア空軍の塗装から国籍識別表記などを消し、カモフラージュ塗装に塗りなおされた過程もフォローしていたと明らかにした

Townsend司令官は以前イラク及びシリアでの多国籍部隊司令官を務めていた人物であるが、「私がシリアで見てきたのと同様に、ロシア政府が支援する傭兵組織Wagner Groupを手先として、ロシアはアフリカ大陸への勢力拡大を図っている」、「Mig-29はロシア人傭兵パイロットを乗せ、Wagner Groupの攻勢を支援する対地支援や政府軍攻撃を行うだろう」と説明した
米アフリカ軍幹部は「ロシアはWagner Groupを隠れ蓑にしてアフリカ中部でも活動を活発化しており、プーチンの指示のもと、サブサハラ地域での影響力拡大を図っている」と語っている

Harrigian.jpg米アフリカ軍空軍司令官のJeff Harrigian大将は、長期的なロシアの狙いは、リビアに恒久的なロシア軍の根拠基地を設け、NATOに南から脅威を与えることだとも説明した
そして同空軍大将は、「仮にリビアに基盤を確立できたなら、次にロシアは広範囲をカバーするA2ADエリアを構築するための戦力をリビアに展開させるだろう」、「そうなったらNATO南部諸国にとって極めて大きな脅威と(なり、NATOに2正面作戦を強いることに)なる」と危機感を示した
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Wagner Group2.jpgロシア民間軍事会社「Wagner Group」は、プーチンの指示を実行に移す実質のロシア軍で、ロシアの「hybrid warfare」を担い、不正規戦を展開する「little green men」そのものと考えられています

米国がコロナで苦しい状態にあるとき、アジア太平洋重視で米アフリカ軍の削減を検討している今、彼らは嬉々として活動するのでしょうし、その「魔の手」はSNS等を通じて日本にも及んでいるのでしょう

中国もこのチャンスを逃してはいません
China.jpg26日付Defense-News記事が、コロナの影響を受けインドネシアとタイが国防費の7-8%削減を決定し、マレーシア、ベトナム、フィリピンも同様の方向に進まざるを得ない状況に置かれていると報じ、この機に乗じた中国がコロナ対策支援で資金提供を申し出るなどで地域への浸潤を加速させていると紹介しています。

また当然のように東シナ海や南シナ海での横暴なふるまいは加速し、尖閣での領海侵入常態化、ベトナムの漁船撃沈事案やマレーシアの海底開発妨害など、枚挙にいとまがない状況です

ロシアのアフリカ進出関連
「ロシアTU-160爆撃機が南アフリカ展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-22 
「特殊作戦軍が中露と対峙する」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-19
「米アフリカ軍削減の動き」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-14

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米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止 [米空軍]

従来は身長の範囲を決め、範囲外の応募者には特別な例外規定で対応してきたが・・・

female pilot.jpg5月13日、米空軍は従来定めていたパイロット募集に際しての身長範囲基準「162.5㎝~195.6㎝」を廃止し、広くパイロットになりたい人の応募を募る方式に変更すると決定しました

米空軍ではパイロットの民間航空会社等への流出等によるパイロット不足に対処するため、これまでも身長範囲基準以外の人を採用する道を「例外規定」として2015年に設け、基準外の希望者の身体測定を精密に行い、操縦席やコクピット操作が可能な人をより細かく見極め、機種を限定して採用する取り組みを行い、2015-2019年の間で223名の「例外規定」応募者の87%を採用しているそうです

なおこの例外規定で、最低で150㎝、最高で205.7㎝の人の受け入れ実績があるようです

しかし米空軍省内にボランティアを集めて設置されたWTI(Women’s Initiative Team:リーダー女性中佐)の調査で、米国の一般女性の場合、身長基準外の割合が44%に上るが、「例外規定」を活用しての応募が一つの「心理的な壁」となり、多くの志ある女性に手を挙げることをためらわせ、結果として有能なパイロット適正者を排除していることが明らかになったことから、今回の身長基準廃止につながったようです

height.jpg昨年11月には、操縦者養成を担う第19空軍司令官Craig Wills少将が、操縦者不足への対策を2019年夏に再検討する中で「我々が考えていたよりも、身長基準がパイロット希望者が応募を断念する要因として、他に比して極めて大きな原因だった」、「単に身長の問題で応募しなかった者が多数いた」と気づきの点を語り、「例外規定」を積極的に活用してほしいと対外的にアピール作戦を開始すると語っていましたが、それでは不十分だと判断し、身長基準自体の廃止に踏み切ったようです

もちろん、募集時の身長基準をなくしたからと言って「操縦の安全に目をつぶる」ということではなく全ての航空機のコックピットをレーザー測距機であらゆる側面から精密に測定し、応募者が対応可能かの見極め基準を明確にし、同時に応募者の詳細な身体データ(身長や座高だけでなく、おしりから膝までの長さ、膝からくるぶしまでの長さなどなど詳細な人体測定数値、unctional reach, wingspan, body mass, weight-to-height ratio, waist-to-hip, hip-to-knee and more・・)を機体データと照合するソフトを導入し、操縦に支障のある不適合者は採用しない厳格性は維持するということです

つまり、乱暴な「足きり」「門前払い」をなくし、少々手間はかかるが希望者一人一人をしっかり把握し、適合性や適正をしっかり見極めてその能力を生かす方法に変えるということです

22日付米空軍協会web記事によれば
female pilot 2.jpg21日付米空軍発表によれば、米空軍操縦者のダイバーシティ(多様性)を増す取り組みの一環として、5月13日付で米空軍は操縦者募集基準から身長範囲を廃止した
従来の「shorter than 5'4" or taller than 6'5"は基準外、64-77 inchesの間(162.5㎝~195.6㎝)を受け入れ」では、平均的な米国女性(20-29歳)の44%を排除することになっており、これを改める

米空軍省のGwendolyn DeFilippi人的戦力担当次官補代理は、「我々は米空軍で働こうとする人たちの前に立ちはだかる、バリアを見つけ排除することに注力している」、「この規定変更は大きな一歩である。特に、これまで応募をためらっていた小柄な女性やマイノリティーの人達にとって」とコメントしている

規定変更の契機となった調査を行ったWITリーダーのJessica Ruttenber中佐は、「調査結果は、たとえ現在の例外規定で操縦者になれる資格がある者でも、女性の場合は多くが応募せずに終わっていることを示している」、「身長基準の撤廃により、より多数で多様な応募者を米空軍は得ることができるようになる」と語っている

height4.jpg米空軍はこの他にも操縦者不足対策として女性の活用を推進しており、Goldfein空軍参謀総長は、妊娠により飛行停止となった期間にも、地上でシミュレーター教官やスタッフ業務に柔軟に配置転換を可能にする検討を行うとしている
●また、男性を意識して設計されることが多い操縦者用装備についも、例えば、G-スーツ、飛行服、小用器具、サバイバルキットなどを女性用のサイズで準備することに取り掛かっている
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あくまで米空軍の公式な立場は、「パイロット採用数を確保するために基準を緩和しているのではなく、能力と意志がある者がその力を生かせる体制を目指している」ということですが、操縦者の空白ポストが2000もある状況ですから、規則の変更にも積極的です

コロナ関連で民間航空会社が厳しい状況に置かれ、空軍から民間航空会社への転職も難しくなっているでしょうから、米空軍が取り組んできたパイロット採用や要請数増の施策が今後どう調整されていくのか気になります

米空軍パイロット不足関連
「Fly-only管理の募集中止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-15
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-19
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18
「操縦者不足緩和?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
「下士官パイロット任務拡大?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10

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有識者:コロナで米国防省を巡る環境は激変する [安全保障全般]

米国民の安全保障感覚と予算面での大きな変化
今後ますます具体化する諸課題と変化を考える

Hyten.jpg21日、米軍家族支援団体「Blue Star Families」が主催したwebパネル討議でJohn Hyten統合参謀本部副議長(空軍大将)が、「コロナが米軍に与える影響」とのテーマで基調発言を行い、コロナ危機は大変厳しいが米国の一般社会ほど米軍は影響を受けておらず、過去の様々な激変を乗り越えてきた経験を活かし、米軍はその即応態勢を維持していかなる事態にも対処できると述べましたが、パネリストからは異論が続出しました

もちろんHyten副議長だって「心配ない」とは決して思ってないでしょうし、危機の真っただ中に後援団体の会合で懸念事項を列挙するわけにもいかず仕方ないですが、他のパネリストが上げた懸念事項は決して無視できるものではなく、今後も議論され、また現実化するであろう課題ですのでご紹介しておきます

手短に言うと、国防予算の大幅削減危機、国家防衛戦略が前提とする前方展開態勢の再検討、米国民の安全保障観の激変・・・などです

22日付Military.com記事によれば
Hyten2.jpg●現役のみならず退役米軍兵士家族も支援する「Blue Star Families」が主催した「How will COVID-19 Change the Military?」とのTVパネル討論会で、Hyten副議長はコロナ危機について、「911テロのようなトラウマになりうる事案だし、過去の湾岸戦争や冷戦やベトナムや朝鮮戦争のようでもある」と表現し、米軍の任務はこれを乗り越えて国家防衛戦略NDSがしめす中国やロシア対処に向かって取り組むことだと語った
そしてその過程で「これまでと異なる移動や業務遂行要領で取り組む必要がある」と語りつつ、「我々が今日直面している、またはするであろう危機にはすべて対応可能な態勢を維持している」、「米国の素晴らしい国民とともに取り組んでいく」と自信をもって述べました

これに対し退役陸軍中将でSAIS所属のDavid Barno氏は、「今回の危機は大恐慌以上となる可能性のある、現代社会の人類が未経験の破壊的な危機」だと述べ、米国政府が直面する今年から近い将来にかけた大幅な歳入不足により、国防予算は強い削減圧力にさらされると厳しい認識を語っ
Brano Nora.jpgまたBarno氏は、国家防衛戦略NDSが前方展開戦力を基本としていることを問題視し、コロナが前方展開戦力を無視するように米国に来襲したように、今後はサイバーや宇宙ドメインからの脅威が飛躍的に大きな脅威で優先度が高くなるとし、従来の陸海空軍の役割や重要性は低下すると主張した

同じくJohns HopkinsのNora Bensahel女史は2つの大きなインパクトがあると主張し、まず、米国民の安全保障意識が極端に内向きになり、経済苦境と重なって、日々の生活や健康にかかわる内からの脅威重視に変わり中国らロシアの脅威に対し関心が薄れ、「国防省の施策が国民の安全意識から遠のき、関係ないものとみなされる恐れがある」と述べた
2点目として、Barno氏と同じく厳しい財政運営を上げ、国防費は確実に縮小の方向に向い、その額は相当に大きくなると述べ、「経済危機は財政制約を極めて大きくし、国防費は今後数年にわたり大きく縮小を余儀なくされるだろう」と表現した
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「サイバーや宇宙ドメインの重要性」はコロナで始まったことではありませんが、今後の厳しい財政運営と国防費大幅削減の中でも、サイバーと宇宙は大事にしろとのメッセージと受け止めました

Brano Nora2.jpg米国民の安全保障意識は、コロナを契機として激化するであろう米中や中国と西側社会の対立の中でも、内向きになるだろうとの指摘です。これほどまでにコロナの被害を大きくしている一つの要因である米国や欧州社会内部の格差や、社会の分断といった現状は、外敵よりも身近な生活のための敵との戦いを強いることになるのでしょう・・・

日本への影響はどうなるのでしょうか・・・。見るに堪えない小学生のいじめのようなマスゴミの偏向報道からは、大事なことが見えてきません。今こそ自らの情報収集能力と判断力が試されるときということでしょうか?

既に火花を散らし始めた軍種間の予算争い
「軍種間の重複をなくせ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「遠方攻撃は誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「米海軍が軍種予算シェア見直し要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-16

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
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遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判 [Joint・統合参謀本部]

厳しい予算状況の中、重複は避けるべき
他軍種はその必要性を自ら証明せよ・・と厳しく!

Wilson3.jpg20日、米空軍協会ミッチェル研究所からの遠隔インビューに臨んだ米空軍副参謀総長Stephen Wilson大将が、今後の米空軍の重点施策について語る中で、コロナ対策で国防予算が削減されそうな中にあって、これまで米空軍が担ってきた遠方攻撃能力に、他軍種が乗り出そうとする状況に苦言を呈し、「重複を避けるべき」「軍種の特徴に応じた力を発揮すべき」と述べて陸海海兵隊をけん制しました

この発言は、中国が各種弾道ミサイルや対艦ミサイルを整備し、そのA2AD領域を第2列島線にまで拡大しようとしている中で、米陸軍が「射程1000nmの砲」開発を開始し、海軍海兵隊が2021年度予算案で「地上や艦艇発射型トマホーク」や「Naval Strike Missileの車両搭載版」導入を柱にすえるなど、長射程攻撃能力の強化投資が米軍内各軍種で同時並行的に進めていることを懸念した発言です

Goldfein8.jpg同様の懸念をGoldfein空軍参謀総長も1日に表現し、その際は、多くの将来戦ウォーゲーム結果を引用し、長射程兵器(standoff missiles)と使い捨て無人機(attritable aircraft)で構成される「outside force」では勝利できないと説明し、最も厳しいシナリオでも勝利でるのは、長射程兵器と「inside force」などの従来兵器を組み合わせたハイブリッド戦力(hybrid force of both stand-off and stand-in systems)だけだと主張し

更に、「長射程兵器のみ戦力推奨派」に対し、そう主張したいのなら分析結果を示せ、国家防衛の責任を負うなら、言葉の勢いだけの主張ではなく、将来戦で勝利可能との証拠を示せと強く訴えていました

ただGoldfein大将は温厚な方なので、米陸軍と海軍が生き残りのため、米空軍の任務や役割を「密漁」しようとしていると空軍内の声に対しては、つまらない考え方だと述べ他軍種の動きを妨げるつもりは毛頭ないと言葉を足してインタビューに応じていました

今回の副参謀総長(B-1とB-52操縦者)は少し表現が強いような気もしますがコロナ対策で国家予算の組み換え議論が米政府内で本格化し、空軍予算削減の話が出ているのかもしれません。B-21新型爆撃機の調達機数を、現在の100機程度から170機以上に大幅増強したいとの思惑を米空軍はかねてから持っており、これを妨げるものは許さないとの思いかもしれません

20日付米空軍協会web記事によれば副参謀総長は
Wilson.jpgコロナウイルス対策のために、国防予算の持ち直し傾向が停止する可能性があるが、これを契機に現在の兵員数でより多くの任務に対応できるよう、現在進めている人工知能AIや機械学習アルゴリズムの活用を加速すべきであろう
米空軍内からも意見が出ているが、他軍種が不必要に遠方攻撃能力のような米空軍能力と重複する分野への予算配分を追求していることに関し、限られた予算を細かく分割するようなことになりそうで懸念している

我々は重複部分を削り、他軍種の持つ力や何で貢献すべきかを彼らに示す必要がある
米空軍は、今年中くらいには爆撃機部隊の拡充に関する計画を打ち出すことになるが、他軍種も彼らの遠方攻撃能力の必要性を正当化できるように証明しなければならない

次の空軍参謀総長候補であるBrown太平洋空軍司令官も最近、国防省と米軍全体で「roles and missions:役割と任務」について見直し、重複部分を切り落とす良いタイミングだと話している
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公開web対談の映像


Goldfein空軍参謀総長が多数のシミュレーションやウォーゲーム等の結果を根拠に語っていたように、米空軍はその主張に相当の自信を持っているようですが、それなら後援団体での講演で語るのではなく、国防省や統合参謀本部の他軍種がいる場で主張して議論してほしいと思います

B-21 bomber.jpg統合の作戦指揮統制管理システムであるABMSや超超音速兵器開発では、国防省も巻き込んで4軍のまとまりが維持できているように思いますが、「遠方攻撃:long-range strike」に関しては、他軍種も存亡をかけた戦いと認識しているのかもしれません・・

しかしです、最近の日本のTwitter等のSNSじゃないですが、米軍内の足並みの乱れを見た中国やロシアが、その隙間にくさびを打ち込むような「情報工作」を仕掛けてきますよ・・・と注意喚起申し上げたいです

「米空軍トップがチクリ批判・誰の任務か?」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02

遠方攻撃に傾く米軍地上部隊
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「射程1000㎞の砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06

「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-13
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

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無人ウイングマンのデモ機選定開始 [米空軍]

まずデモ機提案企業を6月15日まで募集
7月8日までに複数企業を選定し各400億円で試作へ

Skyborg3.jpg20日付Defense-News等は、米空軍が15日に無人ウイングマン構想(Skyborg構想)のデモ機作成に名乗りを上げる企業募集を開始したと報じ、7月には複数の企業を選んで各400億円を提供して試作させる計画だと伝えています

この無人ウイングマン構想は、中国やロシアなどの強固な防空網を持つ敵との本格紛争を想定し、現在は有人機がすべてを担っているISR偵察や攻撃を、安価で撃墜されても負担が少ないが人工知能で任務を果たせる無人ウイングマン機と有人機で分担することを考えたものです

例えばリスクの高いエリアでのISR任務を無人機が担当し、有人機は敵から遠い空域から無人機からの入手情報を基に指揮統制をしたり、また無人機が兵器を多量に搭載してシューターの役割を担い、有人機が各種情報を基に無人兵装機を誘導すなど、様々な任務分担が構想されています

XQ-58 Valkyrie.jpg具体的に米空軍研究所が、Kratos社と組んで無人ウイングマン機を想定した試験機XQ-58A Valkyrieで空力特性などの飛行試験を既に4回実施しており、この知見もデモ機開発に生かされます

また豪州とボーイング社が組み、米空軍と同様の構想で3機の試験機導入を決めており、その初号機納入式が4日に豪首相も参加して派手に行われたばかりですが、この試験機を通じて得られた知見も、当然米空軍とも共有され、無人ウイングマン構想や無人機全体の活用構想成熟に生かされるものと考えられます

今回のデモ機提案募集(solicitation)には、将来的な計画は示されてないようですが、昨年来の空軍高官の発言から、プロトタイプ方式で2023年までに無人ウイングマン(Skyborg)を実現する計画だと考えられています

以下では、募集通知に示された無人ウイングマン機(Skyborg)への要求を中心にご紹介します

20日付Defense-News等記事によれば
Skyborg.jpg無人ウイングマン機(Skyborg)は、大きな戦闘力を発揮しつつも、維持整備の負担を最小限に抑え、現有の有人戦闘機に比して局限されなければならない
またSkyborg機は、モジュラー式で多様なハードとソフトを搭載可能で、多様な任務に複数のバージョンで対応することを狙っている。またソフトは迅速に全機に対してアップデート可能であることが期待される

更にSkyborg機は、繰り返し使用可能で使い捨てを前提としたものではないが、低コストで任務遂行中に失われても損害が軽微な「attritable system」であることを想定している
今回の募集では明確に規定されていないが、これまで米空軍関係者は、デモ機製造の選に漏れた企業も、今後のSkyborg構想実現過程に参加するメンバーとなる可能性があり、次の段階の「募集」に参加することが期待されると説明していた

Skyborg2.jpg米空軍協会機関紙によれば、今回の募集には複数の企業の応募が見込まれており、6月15日の締め切りまでに、XQ-58A Valkyrie製造の「Kratos Defense and Security Solutions」、豪州に試験機を納入した「ボーイング」、そのほかにも「General Atomics」と「Lockheed Martin」がそれぞれ応募するといわれている
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無人ウイングマン構想(Skyborg構想)については、ぼんやり感は否めないものの、何回もご紹介もしてきましたので、2023年という遠くない将来に実現することを祈っております。なかなか米空軍に明るい話題がない中で、ABMS(先進戦闘管理システム)とB-21新型爆撃機とSkyborgくらいが明るそうな話題ですので、期待しております

豪空軍と米空軍の協力枠組みがあるのか全く把握していませんが、恐らくそうだろうと邪推しております。また、空中戦を人工知能AIで支援しようとのDARPAによるACE(Air Combat Evolution)構想も、つながっていると考えています

無人ウイングマンの背景
「日米が協力すべき4分野」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-18
「戦闘機族ボスがNGADを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-28
「CSBAの米空軍将来提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「連接重視で航空アセット削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「次期制空機検討は急がない、急げない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-19
「米空軍が次期戦闘機検討でギャンブル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05

豪州の取り組み関連
「試験用初号機納入式典」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-05-1
「豪州とボーイングが共同で」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-2

米空軍の計画
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
「空母搭載の小型無人機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-03
「空軍研究所が関連映像公開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-3

「ACE(Air Combat Evolution)構想」
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無人機含む空中戦を支えるAI開発本格化 [米空軍]

18か月間の「phase 1」開始
4つの分野に分け担当企業と契約

Air Combat Evolution.jpg6日、米国防省の研究開発機関DARPAが取り組む空中戦に人工知能を活用するプロジェクトACE(Air Combat Evolution)の担当企業の一つに、「Dynetics」が選ばれたと同社が発表しました

昨年5月、DARPAが説明したACE構想によれば
空中戦を中心とした航空作戦全般に人工知能AIを導入し、操縦者の負担を軽減して他の大局的な判断に集中させることを狙いとするもの。また、有人機と無人機の連携を、様々な航空作戦シナリオにおいて可能にする技術開発にも重点を置く
ACEでは、空中戦シナリオを、異機種、多数機、作戦レベルの多様なシナリオへと適応範囲を広げることを想定し、これらの過程を通じて、人工知能による自動化への人間の信頼感を高めることを狙っている
ACEの目指すところは、一人の操縦者が複数の自律的に行動可能なAI無人機を従え、より大きな作戦を遂行可能なミッションシステム指揮官となることを可能にし、一人のパイロットが複雑で大きな交戦戦略を練り、目標を選定し、兵器を選択し、無人機の機動や行動を管理することを可能にすることである

Air Combat Evolution2.jpgACE全体の計画やプロジェクト期間はよくわかりませんが、とりあえずDynetics社が担当するのは、ACEが今後18か月かけて取り組む「phase 1」の4つの分野の一つだということです。

いずれにしても、米空軍が進める無人ウイングマン構想のXQ-58 Valkyrieや、豪州とボーイングが先日初公開した「Loyal Wingman Advanced Development Program」や「ATS:Airpower Teaming System」構想の試験初号機とも密接に関連していると思われるので、ご紹介しておきます

18日付C4ISRnet記事によれば
Air Combat Evolution3.jpg6日付でDyneticsは声明を発表し、「ACE全体に共通する狙いは、複雑で混とんとした空中戦場面にAIを挑戦させることで、AIが困難な場面でも人間を助けられることを示し、戦闘場面における人間のAIへの信頼感(trust)を高めることにある」との同社Tim Keeter担当責任者の言葉を紹介している
ACEは4つの技術分野に分かれており・・
---第1に、空中戦アルゴリズムを構築すること
---第2に、操縦者と無人機とアルゴリズムの間の信頼感を如何に構築し、信頼度を測定するか
---第3に、第1,2、4分野の進捗具合を把握し規模を拡大する(scale)する
---第4に、実際の有人機と無人機での融合(integrate)でデモ飛行

ACEが今後18か月かけて取り組む「phase 1」で、第3分野を約13億円の契約で担当する同社は、他分野のチームが検討したアルゴリズムや手法を把握してより一般的な場面に拡大し、異機種多数機による空中戦シナリオでのAI活用を可能にする役割を担う。最終的には有人機と無人機を使用した実機での試験に結び付けるよう取り組む
●なお同社は、第3分野担当チームに「SoarTech」「InfoSciTex」「Intuitive Research and Technology Corporation」の3社も取り込んで担当する
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プログラムのイメージ説明(2分半)


DARPAでのACEプロジェクト担当責任者(program manager)は米空軍のDan Javorsek中佐で、「Animal」とのコールサインだそうです。

同中佐のYouTube映像での表現を借りれば、「トップダウンでなく、ボトムアップで様々な場面を積み上げ・組み合わせて」プロジェクトを進めるとのことで、当然といえば当然ですが、前線で操縦桿を握る大尉から少佐レベルの知見をインプットするのでしょう

「人間のAIへの信頼感(trust)を高める」との狙いが前面に出ていますが、それだけ前線パイロットには「AIに何ができるの?」的な疑問や「斜に構えた姿勢」が広くみられるということなのでしょう。

同じACEでも、太平洋空軍が取り組む「Agile Combat Employment」とは別物なので、注意しましょ

米空軍の計画
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
「空母搭載の小型無人機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-03
「空軍研究所が関連映像公開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-3

豪州とボーイングの取り組み
「試験初号機を披露」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-05-1
「豪州とボーイングが共同で」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-2

無人ウイングマンの位置づけ
「日米が協力すべき4分野」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-18
「戦闘機族ボスがNGADを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-28
「CSBAの米空軍将来提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「連接重視で航空アセット削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「次期制空機検討は急がない、急げない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-19
「米空軍が次期戦闘機検討でギャンブル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05

別のACE:分散運用する新コンセプトACEへ
「アジア認識を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-07
「三沢でACE訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08

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6年経過も未決着の米空軍警戒監視レーダー選定 [米空軍]

2度選定をやり直して決定した企業にダメ出し排除
豪州企業も含む3社にデモ装置作成させ評価へ
語るに切ないグダグダ選定です

3DELRR2.jpg11日、米空軍は旧式の「AN/TPS-75」地上配備型警戒監視レーダーの後継機種選定のため、3つの企業にそれぞれ約5500万円を供与してデモ装置を9月末までに製造させて評価し、年末までに契約企業を選定すると発表しました。なおこの機種選定は、約6年前から2度の選定作業を経ても集結しない「なさけない」選定です

この新型レーダーは、3DELRR(Three-Dimensional Expeditionary Long-Range Radar)計画に基づくもので、米本土の沿岸部や北極圏沿岸部に配備し、主に領空に接近するロシア機や可能な範囲での巡航ミサイル探知追尾を担うもので、捜索範囲が500㎞程度で200目標の同時追尾能力が求められます。また同時に、僻地に配備することから安定性や維持整備に手間がかからないことも重要な要素になっているいわれています
3DELRR4.jpg
また、移動可能なシステムですが、有事には敵の最初の目標になるシステムですので、それほど高価格ではなく(初期契約が開発費込みで3台20億円程度)レーダー監視範囲が重複するように多めに準備し、交代で電波を出して残存性を高める運用が想定されているようです

11日付C4ISRnet記事などによれば
11日、米空軍は選定が延び延びになっている3DELRR計画を迅速に進めるため、「off-the-shelf」方式で調達するオプションを追求すべく、調達先企業にデモ機を作成させて判断する「SpeedDealer」との呼称の選定の対象となる3企業(Lockheed MartinとNorthrop Grummanと豪州企業CEA Technologies)を発表した
3DELRR3.jpgこの3企業選定にあたっては、3月2日に企業説明会を行い、4月15日締め切りで参加企業を募っていたが、締め切り後は当初予定の1か月間の選考期間をフル活用することなく発表が行われた。選ばれた3つの企業は、各企業約5500万円の資金を活用し、9月末までにデモ機を作成することを求められている。

3DELRR計画は過去の2度選定を行っているが未だに決着していない。1度目では2014年10月にレイセオンが選ばれたが、競合企業からの不服申し立てで決着しなかったが、仕切り直しの2度目の機種選定でもレイセオンがNorthropとLockheedに勝利し、決着したかに思われた
しかし今年1月米空軍は、レイセオン社が技術的課題を克服できず、期間を遅延してもレーダーを完成できない状態が続いていることから契約を解除し、レイセオン社を排除した「SpeedDealer」への切り替えを決断した

3DELRR5.jpg米空軍は11日の発表で、「作戦運用上で対処が必要な環境と目標に対する能力と維持整備コンセプト、また他空軍システムとの融合性や量産可能性に基づいて評価する」、「最初から選定をやり直すのではない。新たな開発計画を開始するのではない。3月の企業説明会で提示した要求内容と企業側からの返答を見て、現存技術で製造可能なレベルのデモンストレーションが可能と確信した」と状況を説明している
米空軍の3DELRR調達担当幹部は、米国企業に対してはプロトタイプ作成枠組みとしてよく利用される契約手法の「other transaction authority」を用い、豪州企業に関しては「Foreign Comparative Test project」の枠組みで準備資金を提供すると説明した

対応企業の一つNorthrop Grummanの担当副社長は、「米空軍のニーズに応えるべく、費用対効果が高く、開発リスクが低い実証済のシステム技術で迅速に準備を行い、夏にはデモ装置を提供できるだろう」と自信を示した
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3DELRR.jpg日本では、三菱電機とNECと東芝製レーダーが全国28か所のレーダーサイトに配備され、そのほかに被害時代替用に移動用レーダー部隊が全国に4個部隊に準備されていますが、弾道ミサイル探知追尾能力を付加するなどして、より高額なものとなっています

フィリピンに三菱電機製の警戒管制レーダーを提供する話もあるようですから、日本企業も参戦すれば良かったのでは・・・と勝手に思いますが、2014年に決着とお伝えした記事を、今頃振り返ることになろうとは思いしませんでした・・・。レイセオンも情けないですし、グダグダですねぇ・・・

おまけに、当初から3DELRRを争っているロッキードのレーダー技術が、中国側に漏れて「ステルス機探知用」の立派なレーダとして完成して配備済との話もあるらしく、ため息100倍の心境です。下の関連記事でご確認ください

2014年10月に決定したはずの3DELRR
「レイセオン製に決定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-10-09
上記機種選定に参加した別のレーダーのパクリ?
「中国製ステルス機探知レーダーが米国製にそっくり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-11-24

対ステルス関連の過去記事
「中国にステルス対処の受動レーダー出現」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-05
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12
「ステルスVS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「米イージス艦のIAMD進歩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09

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決定後1か月:炎上中の5G企業へのGPS近傍電波使用許可 [安全保障全般]

5月22日、米国政府(NTIA:National Telecommunications and Information Administration)が正式にFCCに対し、Ligado社への周波数使用承認を停止し、GPSへの干渉防止が確実になされているかを確認せよと要求
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追記:32名の超党派上院議員がFCCへ再考を促す連名書簡

5月15日にFCCが受け取る模様
32名は超党派の議員グループで、内6名はFCC管轄の商務委員会や軍事委員会のメンバー
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4月20日にFCCが企業LigadoにL-Band使用許可
しかし国防省はGPSへの干渉の恐れから対抗継続

Ligado3.jpg13日付C4ISRnetは、民間5G通信事業者Ligadoが米国政府に要求してきた衛星通信用L-Band周波数使用申請を、4月20日に米国政府FCC(Federal Communications Commission)が許可したことに米国防省が引き続き強く反対しており、上院軍事委員長を含めた多くの有識者が「第3者機関」による再評価を求めていると報じています

これに関して全会一致で判断したFCCは全く意に介さず「国防省の偏った主張はあまりにもばかげている」と言い放つなど一歩も譲歩する姿勢をせず、FCC決定後1か月間経過しても報道が過熱した状態で続いています

Ligado4.jpg記事によれば焦点は、国防省が行ったGPS信号への干渉を懸念する調査結果を、Ligado社が提案した改善策でクリアーできるかにあるようですが、Ligadosy側が十分これまで試験や検証や修正を行ってきたとの主張に関し、国防省側はLigadoの検証や対策は不十分で、膨大に普及しているGPS利用装置への干渉状態を把握することは困難で、問題が発生した場合の対策が事実上不可能だというもので、まったくかみ合っていません

今後も「炎上」や「くすぶり」の継続が予想され、一方で中国企業ファーウェイが先行して西側が極めて劣勢な近未来通信の主役「5G」技術に関することでもあり、状況に触れておきます。これまでの経緯については、末尾の過去記事をぜひご覧ください

13日付C4ISRnet記事によれば
Ligado6.jpg6日の上院軍事委員会でも、両者の主張が全くかみ合っておらず、Jim Inhofe上院軍事委員長は11日の週にC4ISRnetに対し、「国防省側が試験を通じて提示したデータと、FCCが許可判断に使用したデータが齟齬しており、両者が異なる対象物を見ているかのように思える」述べ、
●更に「国防省が提示している8つの政府機関とともに行った分析結果を、FCC側が公平に考察していないように見える」、「米国防省の分析結果を信頼している一方で、独立機関がLigadoの計画を評価してGPSへの影響を見極めてくれれば、安眠できるのに・・・と思う」と吐露していた

NAS.jpg具体的に第3者機関による再評価の動きがあるわけではないが、3つの団体が中立的なnon-profit, non-governmental機関である「National Academy of Sciences:国家科学アカデミー」による両者の主張やデータの再評価を求める声を上げている。その3つの団体は、「Securing America’s Future Energy」、「Intelligent Transportation Society of America」「Resilient Navigation and Timing Foundation」である

国防省は、再度試験をやり直すことには消極的であるが、最近国防省報道官が会見で、既に存在する試験データを第3者機関が再評価することについては支援すると述べ、、「この分野に疑問ない知見を有した機関により再評価がおこわればならない。10年間にわたる試験データの再確認は骨の折れる作業だが、Ligado社の予算で行われた極めて限定的な試験結果を含むデータの再確認は、我々の主張を裏付けるものとなる。Ligadoの計画で進めば、GPSに1デシベル規模の干渉妨害が発生することになろう」と訴えている
Ligado社はコメントを拒否している

Ligado7.jpgFCCの決定を覆すのは容易ではない。FCCの5名の委員が前回一致で決定した事項を変更するには、委員の3名が意見を変える必要がある。しかし、国防省や上院軍事委員会関係者によれば、FCCは意思決定の過程から国防省を意図的に除外しようとしており、決定変更は難しいとみられている
6日の上院軍事委員会での審議後にFCC報道官は、「FCCが全会一致で決定した事項に関する数多くの事実と異なるコメントは、まったくの誤りだ」、「国防省は偏向された一方的な見解に満ち溢れている」と厳しく非難するコメント出している
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まんぐーすには判断する知見がなく、Jim Inhofe上院軍事委員長と全く同じく「独立機関がLigadoの計画を評価してGPSへの影響を見極めてくれれば、安眠できるのに・・・」との心境でこの記事をご紹介しています

Ligado5.jpg一方でFCCやホワイトハウス関係者の、「国家活動における民生分野の比重が拡大する時代の変化を政府機関は理解し、官僚的な閉鎖姿勢を改め、技術的な視点で議論に応じるべき。国防省を中心とした反対派は、あらゆる言い訳、遅延戦術、政治的根回しなどの本質的でない手段で、電波割り当て議論を妨害している」との主張にも一理あり、難しい問題です

GPSのようなシステムを独自に運用している中国やロシアが黙っている点からすれば、米GPSだけに影響が出そうな心配もあり・・・

5Gと干渉問題の記事
「5G企業に国防省大反対の周波数使用許可へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-11
「米議会でも国防省使用の周波数議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-05
「ファーウェイ5G使用は米国との関係に障害」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-17
「軍事レーダーの干渉確認」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-05
「5G企業とGPS関係者がLバンド電波巡り激突中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22-2
「戦略コマンドが5Gとの電波争奪に懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-27
「GPSが30日間停止したら」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-18
「5G試験のため民間に演習場提供案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-14

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衛星通信会社Intelsatが破産宣言 [安全保障全般]

国防省事業関連部門は対象外
3月の衛星ブロードバンド企業OneWebの破産宣言に続き
中国資本の侵入を長期的に警戒

Intelsat.jpg13日、衛星通信会社大手のIntelsatが破産を宣言し、「Chapter11」の申請をバージニア州東部リッチモンド区の米国破産裁判所に提出しました。破産宣言と「Chapter11」申請の範囲には、米軍および同盟国軍に衛星通信を提供する Intelsat General は含まれていないようですが、Intelsatへの外国資本浸潤を国防関係者は懸念しています

Intelsatは声明のなかで、その最終市場のいくつかがコロナの影響を受けたと説明しているようですが、昨年秋に話題のFCCによるC-Band周波数帯の公開オークション計画発表で、主要な衛星通信会社の株価が暴落したことも要因になっているようです

米国での破産とか「Chapter11」申請の意味するところは、日本の倒産のイメージとは異なり、まんぐーすも理解不十分ですが、同社CEOは
●「Chapter11」に関し、裁判所の承認条件となっている、現在業務を継続し、FCCが負担したCバンドの清算費用を返済する10億ドルの新規資金を確保している
Intelsat3.jpg●「FCCの要求を満たすために資金が必要で、累積している債務を帳簿からから一掃する必要があった」、「バランスシートを強化する包括的なソリューションを実現することを目指す」
●「これにより投資して戦略的成長目標を追求し、当社の強みを活かし、追加資源投資の風を吹き込み、お客様の緊要なニーズに対応することが可能になる」
・・・と前向きでやるき満々な姿勢で、誰もが知る「Intelsat」の名前が消えることはなさそうです

ただ、国防関連部門に短期的には影響ないとしても、今後もまとまった資金が継続的に必要になることに変わりはなく、国防関係者はこぞって中国の浸潤を警戒しています

14日付C4ISRnet記事によれば
CSIS研究員のTodd Harrison氏は、「国防省にとっての長期的な懸念は、インテルサットが最終的に破産からどのように脱却するかであり、国家安全保障の観点から懸念されるような所有権の譲渡や資金提供者の増加にある」と述べ、
Lord調達担当国防次官らが繰り返し懸念を表明している中国資本の浸潤について、Harrison氏は「国防省や財務省が注目することになる」、「資本が米国起源のものなら国防省にとって好ましい」とコメントしている

Roper.jpg米空軍のWill Roper調達担当次官補も、「立場上コメントが難しいが、敵対国の戦術には、コロナのこの時期特に注意している。軍需産業が厳しい状況にある今は、他の状況では接近のチャンスがない敵にとって、略奪する戦術的機会である」と懸念をにじませた
一方で同次官補は、「単に経済的に困窮している軍需産業を支援することと、外国資本の浸潤にさらされている企業に手を差し伸べることとでは、まったく別の戦略が求められる」、「我々は困難な状況にある企業すべてに対し手を差し伸べることはできない」と苦しい実態を示唆した

OneWeb.jpgまた同次官補は、航空宇宙関連の企業で、国防部門より民生部門の収益に大きく依存している企業への影響を懸念していると述べ、国防省が共に北極圏での通信確保を検討していた「OneWeb」が3月に破産した例を挙げた。OneWebは低軌道衛星通信網に取り組み、日本のソフトバンクも出資していた
●そして「(厳しい状況下にある企業を支援するため、)特に懸念している航空、宇宙、マイクロエレクトロニクス関連企業を注視し、例外的な積極姿勢で契約手続きを迅速に進め、今週の衛星契約にこぎつけた。またChapter11申請状況をつぶさにフォローし、迅速に対策を打てるように構えている」とも同次官補は説明した
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厳しい経済見通しはニュースで見聞きしていますが、名を知る企業が倒産すると、さすが心に響くものがあります

Intelsat2.jpgいつも前向きな発言で「夢」を描いてくれるWill Roper氏の発言にも、残念ながら、お手上げ感がにじんでいます

米政権や米国国内の様々な動きにもバラバラ感が漂っており、コロナの更なる爆発的感染も懸念される雰囲気です。トランプ大統領の「F-35部品製造を米国内に呼び戻す」発言ではないですが、どっと疲れが出そうな発言も多いですし・・・

危機に乗じた中国資本の米軍需産業への浸潤を警戒
「再びLord次官が警戒感」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-02
「米国防次官:中国資本の浸透警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-26

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次のPACAF司令官はアジア太平洋経験豊富すぎ [米空軍]

ペンタゴン勤務経験がない異例の大将誕生か
今年58歳と高齢なので最終ポストかも・・・
日本ハワイ中東アラスカ韓国をよく知る飛行5000時間の男

Wilsbach4.jpg14日、米空軍は次の太平洋空軍司令官(commander of Pacific Air Forces)候補に現在在韓米軍副司令官で第7空軍司令官でもあるKenneth Wilsbach中将を推薦し、合わせて大将昇進も上申すると発表しました

この人事が米議会で承認されれば、次の米空軍参謀総長候補であるCharles Brown大将の後任として、太平洋空軍司令官つまり、対中国有事の際はアジア太平洋に展開する米海軍戦力を含む全ての航空戦力を指揮する統合航空戦力司令官(JFACC)も務めることになります

Wilsbach.jpg冒頭でもご紹介したように、Wilsbach中将はアジア太平洋地域を知り尽くしているであろうと想像できる経歴の戦闘機パイロット(F-15C、F-22、F-16C、MC-12)です。以下では、同中将の経歴がアジア太平洋地域に集中する様子を、勤務地ごとにご紹介いたします

1985年、フロリダ大学で土木工学を学び、ROTCコース学生として卒業、米空軍で戦闘機パイロットコースに進む
●嘉手納基地勤務
---大尉から少佐にかけ3年間、F-15C飛行隊の作戦運用幹部
---准将として、嘉手納基地司令官&第18航空団司令官

●ハワイでは
---少佐として、太平洋軍司令官の副官
---大佐として、太平洋空軍副作戦部長
---准将として、太平洋軍副作戦部長

●アラスカでは
---少佐として、F-16飛行隊作戦担当幹部
---中佐として、F-16飛行隊長
---中将として、アラスカ地域司令官&第11空軍司令官(エレメンドルフ基地)

●韓国では
---「現在」2018年8月から中将として
      第7空軍司令官&Osan基地司令官&在韓米軍副司令官
●中東では
---中佐として、中東航空作戦センター司令官
---少将として、米中央軍作戦部長や第9空軍司令官

●米海軍では
---少佐として米海軍指揮幕僚大学卒業
●米本土では
---大佐として、フロリダ州エグリン基地の飛行群司令官
---大佐として、同基地司令官&第56航空団司令官
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Kenneth Wilsbach中将の公式経歴表
https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/108478/lieutenant-general-kenneth-s-wilsbach/

ペンタゴンでの勤務がありません米空軍司令部や統合参謀本部や国防省での勤務経験がない、つまりワシントンDCの「力学」を現地で勤務して肌で感じることなく「大将」になる極めて特異な人物と言えましょう。欧州も全く関与していませんし・・・

Wilsbach2.jpg学生としてのDC滞在はあります。中佐後半に「Industrial College of the Armed Forces」を、准将として太平洋空軍副作戦部長勤務間に「CAPSTONE Executive Development Course」を、それぞれ履修していますが・・・

奥様はお写真にあるCindyさんという方らしいです。かつてない難局ですが、これ以上ないアジア経験を最後のご奉公(邪推:失礼)にぶつけていただきたいと思います

現在のPACAF司令官:Brown大将関連記事
「主要戦闘機の稼働率8割断念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-08
「アジア認識を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-07
「Brown大将が次期空軍トップ候補に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-03
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
「現空軍トップとベトナム訪問」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-14
「中露空軍の連携飛行を警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-31
「PACAFが緊急避難訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-27
「南シナ海で中国軍鎮静化?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-28
「燃料と弾薬の備蓄不足を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02-1
「新司令官初海外は日本横田総隊」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-14
「Brown大将の経歴などご紹介」
   →https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19

集中配備から、分散運用する新コンセプトACEへ
「三沢でACE訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08

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コロナ前でもF-35部品供給が増産に追い付かず [亡国のF-35]

更に追記
5月19日ロッキード社は、コロナによる部品調達困難や工場活動制限により、2020年のF-35製造予定機数141機のうち、18~24機は納期に間に合わない可能性があると発表 一応「18-24 jets is a worst-case scenario」で、今後回復するように頑張る、とのことです
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追記:トランプ大統領がF-35部品製造の国内回帰訴え

14日のTVインタビューで大統領が曰く
Q(製薬メーカーを例に、中国から米国内に回帰させる経済振興策について質問され、)
Trump.jpgA「ばかげた話をいやほど聞かされてきた。例えばF-35だ。素晴らしい戦闘機だが、その部品を世界中で作らせているんだ。オバマが大統領の時に決めたんだが、トルコとの関係が難しくなると部品の調達が滞り、戦闘機を作れなくなるんだ。オバマは良かれと思ってやったんだろうが、世界中から調達しているからそうなる。ばかげた話だ。すべての部品を米国で作るべきなんだ!

Q「可能なのか?」
A「変えようとしている。関連のすべての政策を変更しようとしている。F-35は重要だ。しかし機体をトルコで作って米国に移送している。でも米国との関係が悪化し、トルコがそれを拒否している」

以上のやり取りに関し国防省報道官は、大統領の発言についてはホワイトハウスに確認してくれと対応し、「国防省は引き続きF-35計画にコミットし、最新の谷はない戦闘機を提供し、合わせてコストや維持整備費の削減に取り組んでいく」と述べるにとどめ、ロッキード社もコメントを避け

14日付Defense-News記事は大統領の発言した「F-35製造の米国回帰」計画があるのか不明としたのち、F-35計画の基礎として、共同開発国が部品製造等を分担して行うことが大前提となっていると説明し、トランプ大統領にありがちな思い付き発言だろうと結んでいる
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米会計検査院が指摘、トルコ離脱でさらに悪化へ
加えてコロナの影響で悪化は避けられず

F-35B2.jpg12日付で米会計検査院GAOがF-35問題に関するレポートを出し、2015年段階から懸念されていた急激な増産計画に部品供給が追い付かない状況が2019年に顕在化し、トルコの共同開発国からの離脱で更に悪化する恐れがあると指摘し、米国防省が2021年初旬に予定している「フル生産」決定までに米議会にデータを添えて説明すべきとしています

GAOレポートは問題ばかりを指摘しているわけではなく、2016年当時と比較すれば、2019年は製造134機の中で117機が計画通りに納入されたと改善具合を評価していますが、現在コロナで遅れている最終試験が終了するタイミングで製造ペースアップの「フル生産」を開始したい国防省にとっては厳しいデータが示されていま

もともと2015年当時の国防省F-35計画室長も、急激な増産前提の計画には不安を隠さず、「過去の経験から、新造機の増産は最高で年5割増が限界だと言われているが、このペースを大幅に上回る3倍増産を計画している」と正直に不安を吐露していましたが、いよいよ顕在化し、トルコ離脱でますます悪化の方向ということなのでしょう

12日付Defense-News記事によれば
F-35C2.jpg12日発表の米会計検査院レポートによれば、部品の納期遅延事象は2017年8月当時で2000件以下だったのに対し、2019年7月段階では1万件以上に急増している
また、納期遅延から生じる製造現場での部品不足件数は、2018年7月での875件が、2019年7月には8000件以上に急増しており、不足部品の6割に当たる製造元は20社のサプライヤーに集中していると同レポートは指摘している

GAOはこの部品納入の遅延と現場での部品不足により、「機体の組み立てが長引いて効率が低下し、人件費が積みあがって最終コストが増加する結果となっている」と指摘し、対策の必要性と「フル生産」移行に疑問を呈している
GAOレポートは2019年のデータのみを対象としているが、ロシアから高性能地対空ミサイルシステムS-400を導入したトルコが共同開発国から昨年末に除外されたことから、トルコ企業が製造を担当していた1005種類の部品の代替製造企業を早急に見つけてラインを立ち上げる必要が生じており、2020年中は契約が残っているトルコ企業があるものの、今後の部品安定供給への更なる難題となってくるはずだとGAOは懸念している

F-35C.jpg国防省はトルコ企業の代替サプライヤーを主に米国内で見つけているが、急な要請にこたえて要求に適合した部品製造が可能なのか、トルコ企業と同等の価格でできるのかについては未だ未確定な部分が多く、昨年12月時点ですでに、代替生産を開始した15部品でトルコ企業当時の納期より遅延している。国防省F-35計画室も「新規参加の企業の10%がF-35製造初参加であり、いくつかの部品については2021年まで納期遅延が予期される」と認めている
GAOは新規参入企業関係者からの聞き取り情報として、「一つの部品製造でも、複数の材料を調達するサプライヤーを確保し、調達リードタイムを加味した生産計画を立てて実行するには1年以上は必要」、「更に国防省の事業に参加するには、製造工程や製品に関する認証や試験を通過する必要があり容易ではない」との声を紹介し、前途多難な見通しを示してい

●製造企業に変更等はないが、重要パーツの中で歩留まりが低下して懸念されているのがPratt & Whitney製の「F135エンジン」である期間は明らかになっていないが、2019年中の一時期、不具合が多数発生したことからエンジン納入を停止した時期があった模様で、9割以上のエンジンが納期遅延してた模様である
F-35B.jpgGAOは「機体組み立て後の試験で発覚したエンジン不具合が、2018年には8件だったのが、2019年には18件に急増し、そのたびに機体を分解してエンジンを取り出し確認修理する工程が増え、納期遅延につながった」と指摘し、重要な主要パーツであるだけに原因究明が急務だとしている

GAOは以前から、フル生産が可能な根拠データや計画のリスクを米議会に説明するよう国防省に要求しているが、国防省は十分に対応していないともGAOは指摘している
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コロナ対策や経済振興策のため、2021年度予算案の再検討とか、米国防予算の約3兆円削減などの文字を米メディアで目にするようになって来ましたが、部品供給が「ボトルネック」になりそうなF-35は、最重要事業との国防省内での位置づけにもかかわらず「切りしろ」要員になるのかもしれません

Congress.jpgF-35計画をしつこくフォローしてきた経験からすると、GAOが指摘すると、国防省F-35室長が「既にご指摘の点は把握済・対処済みである」とコメントしますが、最終的にはGAOが指摘したように問題が顕在化して計画全体が遅延修正される・・・とのパターンが当たり前のように繰り返されています。

ただこの部品不足問題は、2015年当時から内部で認識されていた課題であり、そのまま顕在化しているという点でお役所的な匂いがプンプンです。

2015年にすでに明確に認識されていた部品不足問題
「国防省F-35室長が問題視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-10-1
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17

米トルコ関係
「トルコの代わりに米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
「米がトルコに最後通牒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09

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X-37Bが少しソフトな路線に??? [サイバーと宇宙]

謎の無人宇宙実験船が5月16日打ち上げへ
宇宙滞在2800日以上の10年選手が6回目に挑戦
3年ぶりにご紹介

X-37B2.jpg6日、宇宙軍が謎に包まれた宇宙実験船X-37Bの6回目の打ち上げを5月16日に実施すると発表し、今まで打ち上げ前に明かされることのなかった任務内容について少し明らかにし、空軍・宇宙軍・軍需産業の強固なスクラムを示す事例としてアピールしています

X-37Bは「9m×4.5m×3m」とマイクロバス弱程度の大きさで、ロケットの先端に取り付けて打ち上げ、帰還時は無人のスペースシャトルのような感じで飛行機のように滑走路に着陸する無人宇宙船です。OTV(Orbital Test Vehicle)が正式名称の実験船で、当初はNASA所管でスペースシャトルの貨物室に搭載する予定でしたが、同シャトル計画が中断されて2004年以降は国防省が引き継いでいます

X-37B4.jpg2010年4月に最初の打ち上げられた1回目の宇宙滞在が224日間、2回目が468日間、3回目が675日、そして2017年5月に帰還の4回目は718日間、2019年10月に帰還した5回目は780日で、その任務が非公開であることから、アマチュア天文家が競ってその様子を地上から観測し、中国衛星に接近しているとか、様々な憶測を呼んでいるところです

前回5回目の帰還後に、イオンエンジンの一種らしい「Hall Effect thruster」も試験の一つだと公表されましたが、頻繁に軌道を変更することから、まだまだ興味は尽きませんただ今回は、空軍士官学校制作の小型衛星や農業関係の試験も行うと「打ち上げ前に」公表され、「その心は?」と新たな関心を集めていることろです

7日付C4ISRnet記事によれば
国防省の中では、米空軍の緊急能力造成室(Air Force Rapid Capabilities Office) が担当していることから、その目的を、軍事衛星や通信衛星が機能喪失した際の緊急代替衛星や装置の宇宙投入用とか、宇宙空間で軌道を柔軟に変更して敵衛星を無効化する任務を担うのではとか、貨物室に新素材を載せて宇宙空間で試験しているのではとか等々、様々な憶測呼んでいる
X-37B3.jpg今回の打ち上げは新設の米宇宙軍担当による初めての機会であるが、引き続きX-37B自体は米空軍の所有である。

同時期に予定されていたGPS III衛星の打ち上げはコロナの影響で延期されたが、同じ宇宙軍が打ち上げを担当するX-37Bは予定に変更なしと発表された
宇宙軍参謀総長のJohn Raymond大将は、「国家として宇宙ドメインに求められているスマートで機敏で先進的な技術開発を継続推進するため、同チームは日夜努力を続けている」、「指示や要求に迅速に対応できる開発試験展開能力の発展を表現する重要な打ち上げだ」と発表声明で表現している

6日の発表で宇宙軍は、今回のX-37Bでは、宇宙船の太陽光発電システムで生み出した電力をマイクロウェーブで地上に送信する研究「SSPIDR:Space Solar Power Incremental Demonstrations and Research」の試験を行うと発表した。
米空軍研究所はNorthrop Grummanと約110億円の宇宙実験支援契約を結んでいるが、空軍研究所のEric Felt担当部長は、「SSPIDRはgame-changingな技術追求の一つで、宇宙で生成したエネルギーを地上の好きな場所で利用する興味深いコンセプトだ」と表現し、宇宙から僻地の地上に展開する部隊への電力供給を可能にする技術試験といわれている

X-37B.jpgSSPIDRの他にも、X-37Bに付加された機体尾部の新モジュールに米空軍士官学校が教育の一環として作成した5つの実験機材を搭載した小型衛星「FalconSat-8」を搭載して軌道に投入したり、政府機関が行う食用作物の種子への放射線や宇宙空間が与える影響調査を行う実験機材の搭載などすることになっている
Goldfein空軍参謀総長は今回の打ち上げに関し、「米空軍と宇宙軍、そして軍需産業界の一体となった取り組みを象徴する事例だ」、「X-37Bは再利用可能な宇宙船の限界に挑戦し続け、将来の宇宙能力向上に資する」とコメントを寄せている
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非公開な実験だらけのX-37Bですが、今回は、新設宇宙軍による初打ち上げアピール、コロナに負けずgame-changing技術に挑戦し続けているアピール、打撃を受けている軍需産業との強固な連携をアピール、4月中旬に対衛星兵器実験を行ったロシアとの姿勢の違い&負けないぞ意識をアピール・・・などなどの観点から、数ある実験項目からソフトなものを公表したのではないか・・・と邪推しています

それにしても、機体の修理や部品の交換は当然行っているのでしょうが、第1回の打ち上げからまる10年、6回目の打ち上げで宇宙滞在3000日越えを目指すとは大したものです

X-37B関連の記事
「ちょっと明らかに?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-11
「中国版X-37B?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-15
「X-37Bは中国衛星を追跡?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-07
「X-37BがSシャトルの代替?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12

「米が宇宙アセット防護計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-16
「X-37B関連小ネタ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-04
「X-37Bをご存じですか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-20

4月中旬のロシア衛星兵器試験を痛烈批判
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-17

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延期ABMS演習は更に拡大:次の次はアジア太平洋 [米空軍]

いずれにも宇宙軍司令官が参加
予期せぬ状況設定で即興対処を作為

Dunlap.jpg7日、米空軍協会ミッチェル研究所主催のオンライン講演に、米空軍が最優先事項として取り組むABMS(先進戦闘管理システム)担当のPreston Dunlap氏が登場し、4月に予定されていた宇宙メイン主題の第2回実験演習を8~9月に延期し、その次のアジア太平洋対象の演習は12月頃を予定していると語りました

JADC2(統合全ドメイン指揮統制)とか連接マラソンとも呼ばれるこの実験演習は、各種シミュレーション演習の結果、クラウド技術やAI技術を活用し、4軍の装備を有機的に連接して情報や指示を迅速に共有することが大きな戦闘能力向上につながることが判明したことを受け本格化した演習です

演習では宇宙、上空、地上、水上、水中の多様なアセットを連接して指揮統制を迅速に行う各種検証を行っており、昨年12月の1回目は「米本土への巡航ミサイル攻撃対処」をテーマに行われ大きな成果を上げ、今後も4か月に一度実施の方向で準備されているものです

米国防省は米空軍を中心として強くこの演習を推進しており、従来型のアセット予算を後送りし、老朽装備を早期退役させてまで「連接性向上」に投資する方向性が、米国防省2021年度予算案で打ち出されています

7日付米空軍協会web記事によれば
ABMS.jpgPreston Dunlap氏は、4月に予定されていた第2回目の実験演習は宇宙軍に焦点を当てたものの予定であったが、コロナ関連で8月末から9月上旬へ延期することになったと述べ、しかしこの期間を利用し、演習内容をより充実拡大させることが可能になっており、同じく主演習部隊となる北米コマンドや、参加する米戦略コマンドとも細部を調整していると説明した
「多くの拡大修正を行っている」と同氏は語り、第1回に引き続き米本土が巡航ミサイル攻撃を受ける想定を置き、より多くのセンサーや兵器を陸海空宇宙サイバードメインを束ねて活用する形に発展させており、同時に第1回で表面化した連接リスクを除去する確認や、新ソフトの検証も行うと説明した。

12月の予定となった第3回目はアジア太平洋戦域を対象と予定しており、1,2回の米本土ではなく、遠方に機動展開する作戦を想定し、宇宙軍司令官と太平洋軍司令官が中心に戦うシナリオを準備していると述べたが、細部については言及できないとした
ただし同氏は「海外を戦域として想定する盛り上がる設定」と表現し、一番の特徴は、演習側が全く想定していないような状況を付与し、その場における指揮官の指示で手持ちのリソースで対応を求めるような訓練や検証を行うと語り、従来の演習とは異なり、よりリアリティーを追求し、第4回目以降の演習への資としたいと述べた

コロナ対処への貢献
Dunlap3.jpgこの実験演習に向け空軍研究所の「deviceONEプロジェクト」で開発した最高秘密情報が扱えるラップトップPCがあるが、今回のコロナ対処ではプロトタイプ段階の当該PC約1000台を、ニューヨーク市の州軍展開拠点や病院船コンフォートに提供し、現場活動の円滑化・迅速化に貢献した
このPCは重要秘密情報を扱えるが、当該情報を扱っている間のみ情報がPC内に存在し、使用後はPC内には何も残らない「SecureView」とのソフトを使用しており、使用後に展開先の駐車場に置き忘れても情報保全上は何の問題も発生しないと同氏説明し、実験演習の実戦での成果第1番ともいえると語った

実験演習に対しての議会の理解を得るための説明について問われた同氏は、目に見える兵器や装備品と異なり、ネットワークの重要性に理解を得るには工夫が必要だろうが、日常生活の中にもネットワークは入り込んでおり、具体的な前線での事例等から説明すれば理解を得られるだろうと答えた
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この実験演習の旗振り役は米空軍調達トップのWill Roper氏ですが、その下でABMSを取りまとめているのがPreston Dunlap氏です。

Dunlap2.jpg議会説明に関する質問が出ていますが、国防省や米軍内の新たなアイディアが議会の理解を得られずとん挫するケースが増えており、それが本当に国民代表者によるチェックの役割を果たしているのか、利害企業のロビー活動による捻じ曲げなのか気になるところです。

アジア太平洋対象の第3回演習では同盟国の関与があるのでしょうか? まず豪州でしょうが、オブザーバ参加ぐらいさせてもらえれば、日本にも参考になるでしょうに・・・

ABMSとJADC2関連
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「米空軍の夢をCSBAが応援!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「空軍資源再配分の焦点は連接性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-08
「マルチドメイン指揮統制MDC2に必要なのは?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24

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中国軍の本格海外進出は2030年以降か [中国要人・軍事]

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Jane's社が米国の委託でレポートを
経済成長鈍化が障害と分析

Jane China.jpg4月15日、米国政府が設置している米中経済安保評議会の委託を受けた「Jane's社」が、中国軍の海外作戦能力を「兵站:Logistics」の視点から分析した「China’s Logistics Capabilities for Expeditionary Operations」との約115ページのレポートを発表し、現時点では限定的な能力だが、財政的な制約を克服し、海外の拠点整備や空母能力の向上を計れば、2030年代には相当な能力を持つ可能性があると分析しています

このような分析を受け、「Jane's社」は米国政府や議会に対し、中国による海外拠点への投資や軍事物資の事前集積の状況をよく監視し、更に中国が「一帯一路」構想と称して諸外国に資金を投入し、懐柔を図ることを防止するため、米国も資金投入や外交空白を無くす関与が必要だと提言しています

中国が第2列島線までの範囲で軍事的に相当な位置を確保した実態を受け、米国が中国の海外進出状況に危機感を覚えて委託した研究の様ですが、レポート細部を見ていませんが、中国にとっても海外での作戦能力獲得は容易ではないとの分析のようです。「経済的な逆風」を相当程度織り込んでいるようです

15日付Defense-News記事によれば
Jane China2.jpg米中経済安保評議会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)がJane's社に委託したレポートは、中国が膨大な軍事的投資を既に行い、第1及び第2列島線内において、潜在的な敵対国に「受け入れがたい」レベルのコストを強要する能力を獲得した、と分析している
●また同レポートは、これら軍事作戦能力を活用して、災害対処や中東における海賊対処などの国際的な取り組みに参画するレベルにステップアップしているとも評価している

一方で大規模な海外での作戦遂行(large-scale expeditionary operations)能力については、中国はまだまだ十分ではない(is still a way off)と評価している
また、中国軍はアフリカ東海岸のジブチに兵站支援拠点基地を設置し、米国の中東アフリカ作戦をモニターしたり、潜在的には米国の活動を妨害する拠点としているが、2020年代にこれら海外拠点を引き続き拡大するとは考えにくい、とも分析している

ただし、2030年以降になれば、中国軍がジブチの補給基地を越える軍事拠点整備に向かう可能性が高い、との見方を示している
●また、現計画から理論的に類推すると、2035年頃には中国海軍や空軍が相当ハイレベルな戦闘行動が海外で可能になっているはずだが、強固に防御された近代的戦域で作戦するためには、海外の軍事拠点や、少なくとも友好国の港湾や飛行場を利用可能にする必要がある、と分析している

Jane China5.jpgまた、中国は空母の能力を向上させないと、世界にエアパワーを展開する能力が限られており、経済的な逆風がその遂行の前に立ちはだかっているともレポートし、「中国空母からの支援が無く不十分な状況では、統合防空システムを保有する国や領域で、中国が作戦を遂行能力は依然として限定的である」と結論付けている

これらの分析を踏まえ、レポートは米国に対し、中国による海外作戦用装備品への投資やジブチ等への作戦資材・兵器の事前集積をモニターすることや、対潜水艦作戦のための補給艦やヘリへの投資を監視する必要があると提言している
また米議会に対しては、中国が「一帯一路」構想の下に投資している相手国に対し、米国としての影響力を確保するための資金投入方法を考えるべきと提言し、「米国からの関与が途切れた空白地帯の国に、中国が軍事活動支援基盤を求めている現実に目を向けるべき。2国間でも多国間でも良いので、中国の野望を阻止するため、関係が疎遠になっている国に関与すべきである」と警告している
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レポート現物
「China’s Logistics Capabilities for Expeditionary Operations」
https://www.uscc.gov/sites/default/files/2020-04/China%20Expeditionary%20Logistics%20Capabilities%20Report.pdf

コロナの影響が中国経済にどの程度の影響を与えるかは不明ですが、欧州や西側諸国のように、国民に多額の「補償」を考える必要のない国が有利になるのでしょうか・・・

中国とすれば、経済成長著しいアジアでの覇権を確立することが第一で、アジアでの収入源を抑えた後に、2030年代からアフリカなどにより強く進出していくのかもしれません。人の駒は豊富ですから・

ご参考の記事
「海兵隊が対中国に改革構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「混乱に乗じた中国資本の浸透警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-26
「不気味:中国人留学生が米軍基地撮影で続々逮捕」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-25
「巨大ミサイル巡洋艦1番艦「南昌」が就航」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-15-1
「中国建国70周年軍事パレード」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-02

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