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国防次官がミサイル2000発と空母1隻の有効性比較 [米国防省高官]

考えれば考えるほど西太平洋では中国優位
ただ国防次官が問題提起で議論活発化か?

Griffin4.jpg14日付Defense-Newsは、9月にMichael Griffin研究開発担当国防次官が講演で、「中国指導者にとって、米空母1隻と通常ミサイル2000発は、どちらが脅威だろうか?」と聴衆に問いかけて空母の脆弱性問題を提起したことを紹介し、古くて新しい議論を様々な角度から取り上げています

同次官が空母1隻と同価格だと表現した「通常ミサイル2000発」が超超音速兵器(hypersonic missiles)を指すのかは不明ですが、記事ではそのようにも取れる表現が見られます

記事では空母の中国の精密誘導兵器に対する脆弱性は否定できないが、中国本土を攻撃する「通常ミサイル2000発」が核保有国中国との紛争のエスカレーションを望まない米国にとって有効なオプションなのかと言う疑問や、紛争を局地的レベルで押さえるために多様な能力を持つ空母が必要との議論が紹介され、また「通常ミサイル2000発」を有効に活用するは目標を把握し続けるセンサー等のキルチェーンも合わせて不可欠だとの意見が紹介されています

X-51A2.jpg単純な比較は難しいとの空母擁護派の匂いがする記事全体の雰囲気になっており、記事は最後に、中国の狙いは地域限定であり、中国が台湾から日本や西太平洋への影響力確保を「ミサイル重視」で達成するという戦略には意味があるが、米国は高価な航空優勢やISRや電子戦に投資しして足場を固め、必要な戦力をまず西太平洋に送り込み、そこから活動する必要があると、米中の立ち位置の根本的な相違に言及して考えるべきだとの意見を紹介しています

中国は最近、「超超音速ミサイルでの中国本土攻撃はエスカレーションを招く」と明言して米側をけん制しており、また中国本土に対する米ミサイルの攻撃オプションを、中国側は可能性が低く、あったとしてもたいしたことは無いと見なしている可能性も高く、「通常ミサイル2000発」の効果にも疑問の声があるようです

14日付Defense-News記事によれば
Griffin2.jpgGriffin研究開発担当国防次官が9月にDefense-News主催のイベントで講演し、「仮定の問題を皆で考えましょう。中国の指導者なら以下のどちらをより脅威と考えますか。米空母1隻と同コストの中国を射程内に納める通常ミサイル2000発。これは我々が自身に問うべき質問である」と語り、聴衆に空母の脆弱性について問いかけた
●米海軍の空母に対して疑問を投げかけたこの質問は、米海軍等にとって看過することが出来ない発言だが、同時に中国本土を攻撃するという甚大な結果を生じうるハイリスクのオプションと言う点で多くの専門家が安易に受け入れられない設定である

●Griffin次官は、米空母は中国やロシアにとって重い戦力であり、仮にこの戦力が有効性を失い、我が空母を支援できなくなったら受け入れがたい損失となると述べ、更に「我々の敵は空母の重要性を良く理解し、対処策の研究開発に取り組んできている。中国は数千の数千キロ射程がある精密誘導兵器を保有しており、この現実を見つめて、将来の取り組みを考える必要がある」と語った。
Ford-Class-Carrier.jpg●この次官の発言に対し、空母の脆弱性はあるが、中国が米国の通常兵器ミサイルを脅威と感じるかは疑問だと考えている専門家もいる。また中国が超超音速兵器での中国本土の攻撃は、エスカレーションのレベルを上げるものだとの認識を明確にしていることも、ミサイルによる中国本土攻撃のオプションの微妙さを示している

●CSBAのクラーク氏は、「イランや北朝鮮ならミサイルでの本土攻撃もあるかも知れないが、核保有国中国に対してエスカレーションを招く本土ミサイル攻撃があるのか? また中国に米国がエスカレーション覚悟で米艦艇への攻撃の反撃として中国本土攻撃があると認識させることが可能なのか疑問だ」、「ミサイル2000発も抑止力としての価値は低いのではないか」と見ている
●またクラーク氏は、「超超音速兵器はオプションとして保有したいが、その効果は小さい。その兵器を保有したとしても、多数を保有できないことから効果は限定的だ」、「中国は言うだろう。中国は大きいし、防御システムで吸収も出来るだろうから、効果は限定的だと」と述べている

●ブルッキングスのMichael O’Hanlon氏は、同次官の考え方は紛争がハイエンドレベルになってしまった後には当てはまるが、我々はまずハイエンド紛争になる事を防ぎ、小規模紛争で終結させることを考えるべきだと述べ、全面紛争状態のみを考えるべきではないと語った

ford-class-cvn-78.jpg●CSISのKarako氏は、装備品に偏りがちな議論に警鐘を鳴らし、「ハワイから大量のミサイルを発射するというが、中国の目標は移動するかもしれないし、目標情報システムも整備してキルチェーンを確立する必要もある」と述べ、単純な2者択一議論に釘を刺した
●また同氏は「中国の狙いは地域限定であり、中国が台湾から日本や西太平洋への影響力確保を「ミサイル重視」で達成するという戦略には意味があるが、米国は高価な航空優勢やISRや電子戦に投資しして足場を固め、必要な戦力をまず西太平洋に送り込み、そこから活動する必要があり、米中の立ち位置の根本的な相違を踏まえて考えるべきだ」とも述べた
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「ミサイルが完全じゃないから空母が必要」との議論では脆弱で高価な空母への投資を議論するには不十分だと思いますが、一つの視点としてご紹介しました。

まぁ・・・米国も「無い袖は振れない」ので、限られた予算の配分議論になった時、米国の国益や利害をまず優先するとなれば、空母でなく「通常ミサイル2000発」で抑止力少しアップを狙うのかもしれません。この場合、日本など極東の同盟国にはつらい話になりますが・・・

米空母が中国のミサイル1発で活動停止に追い込まれたら、この議論は一般民衆を巻き込んでその時点で完結するような気もします

レモンサワーでぼんやりした頭にはこれ以上の考察は難しいのですが、日本は日本で、戦闘機への投資も含め、よぉーーーーく考える必要がありましょう。

空母の脆弱性問題
「米海軍トップに議会が詰問」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-07

米空母の話題
「空母1隻削減案に揺れる」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-29
「スミソニアン空母映像4つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-20
「空母群が温故知新訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-25
「空母艦載給油機のRFP発出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-13

「映像で学ぶ:米海軍空母」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-25
「艦載機燃料タンクの振動問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-29
「空母フォード:3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「解説:電磁カタパルトEMALS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

超超音速兵器関連の記事
「米空軍も取り組み本格化」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-16
「ミサイル防衛見直し発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-19
「ロシアが超超音速兵器試験に成功」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-27
「日本に探知追尾レーダー配備?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-24
「LRDRレーダー開発が順調」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-10
「グリフィン局長の発言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-1
「米ミサイル防衛の目指すべき道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「BMDRはMDRに変更し春発表予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24-1
「米空軍が1千億円で」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-1
「同兵器は防御不可能」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-21-1
「ロシアが新型核兵器続々開発と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-1
「中国が超超音速兵器で優位」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-27-1

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