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中国政府が東北3省で産児制限撤廃へ [ふと考えること]

中国は1979年から「一人っ子政策」
2015年に慌てて「2人まで認める」に政策転換、しかし・・・

出生率.jpg19日付読売新聞電子版(20日付朝刊にも)は、若い世代の流出などで少子化が深刻で、働き手不足が深刻になりつつある東北3省(遼寧、吉林、黒竜江)に対し、中国政府が産児制限の撤廃を検討する方針を示したと報じています

正確には、18日に「国家衛生健康委員会」が産児制限撤廃の方針を明らかにし、産児制限の撤廃が与える経済的影響などを分析するよう東北地方の政府に指示すると伝えられています

東北3省2.jpg今回は「東北3省」を対象とした指示となる模様ですが、少子化が全国的に深刻になっている中国では、これをケーススタディーとして、全国に産児制限撤廃の動きが広がる可能性があると読売新聞は報道しており、注目を集めています

中国は急激な人口増加に危機感を感じ、1979年から「一人っ子政策」を全土で推し進めましたが、急速な経済発展に合わせ少子化が進んだことから、2015年に全国で「2人まで認める」決定をしました。しかし少子化傾向に歯止めはかからず、むしろ加速しているようです

少子化.jpg記事は、2020年の新生児数は「前年比15%減」の1003万人で、政府系調査研究機関の中国社会科学院は2019年に、中国の人口は2029年の14億4200万人をピークに減少に転じるとの予測を紹介し、少子化の背景には、不動産や教育費の高騰、子育て環境整備の遅れなど、政治から経済にまたがる構造的な要因があると解説しています

もちろん日本の少子化も深刻で、他国の心配などしていられる場合でないのですが、以下、記事に寄せられたコメントから、中国を一つのケースとして、人間の本質を見つめたいと思います

中島恵(フリージャーナリスト)
記事にあるように、不動産(新居購入)や教育費に、あまりにもお金がかかりすぎるという問題が大きいが、他にライフスタイルの変化、結婚率の低下など、政府がコントロールしにくい構造的な問題がある
皮肉なことに、それが顕著になってきたのは、一人っ子政策が撤廃された2015年頃からです。産児制限を撤廃して済むという問題ではありません。たとえ補助金などを出しても、子どもは増えていかないだろうと思う

中国の駐在員
中国ではとにかく子供に金がかかる。都市部だけかもしれないが、子供が結婚したら男の親はマンションを、女の親は車を買い与えないといけないとか
物価も、物によっては日本と同じかそれ以上の体感だけど、給料は日本より安い。そりゃあ子供を何人も育てられないよね

投稿者
中国の結婚難民の男性(一人っ子政策で男子人口が女性より多い)が女性を狡猾(こうかつ)なものに変えてしまった
幸せの形がお金無しでは話にならない、貧富の格差は夫婦の人生まで変えてしまう。子供をたくさん産んで幸せだった時代は、例え中国であっても過去のものになっています
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東北3省.jpg「東北3省」の経済的沈滞は深刻で、世帯の半数が貧困層・破産状態・・・との見方もあるようで、社会経済的に大きな問題を抱えているようですが、この地域が「アリの一穴」となって、中国全土で産児制限撤廃へ・・との見方は広くあるようです

この記事のコメント欄には他に、「日本は北欧のどこかのように、3人目から月に10万とか手当を出せばいい」とのありがちなコメントもありますが、現在社会は人間から、生き物としての基本機能である「子孫を増やす」との機能を失わせるインパクトを持っているようです

日本では、平成に入ったころからそんな時代に入ったのかもしれません・・・

記事カテゴリー「ふと考えること」
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レアメタル中国依存脱却に米国企業への投資強化 [安全保障全般]

Lynas USA2.jpg1日、米国防省が米国内でレアアース(希土類:rare earth)の採掘精製に従事する企業との約30億円の契約発表を行い、レアアースの中国依存を脱却する一歩だとアピールしました。

レアアースに関しては、昨年9月30日に当時のトランプ大統領がレアアース確保に関する大統領令を発出しレアアースの世界市場を中国が牛耳っている危機的な状況に警鐘を鳴らし、米国政府を挙げて米国内採掘処理を活性化させて備蓄を増やすとともに、中国産の輸入を抑える関税などの措置検討に入ったところでした

rare earth3.jpg実際、米国はレアアースの約8割を中国から直接輸入しており、残りの部分にも第3国経由で中国産を輸入している鉱物が含まれているなど、米中対立が激化し緊張感が高まる中、中国側にアキレス腱をゆだねているような状態にあります

米国防省も重要な装備・兵器(ミサイル、弾薬、極超音速兵器、電子機器の放射線防護から携帯電話まで多様な装備)に不可欠なレアアース17種類を重要素材と指定し、Lord前調達担当次官が昨年10月に上院軍事委員会で、レアアース確保備蓄に向けた戦略作成や柔軟な予算運用が可能となるよう議会の協力を求めていたところでした

今回の30億円契約先は、中国企業以外で世界最大のレアアース採掘精製企業「Lynas Rare Earths Limited」の米国支社「Lynas USA」で、同社は米国防省からの資金でテキサス州に「light rare earth」の精製施設を建設するということです

1日付C4ISRnet記事によれば
Lynas USA.jpg●今回契約発表があった精製処理施設が完成すれば、Lynas社は世界のレアアースの1/4を採掘精製する規模となる見込みである
昨年4月にも国防省は、同社がテキサス州に建設する「heavy rare earth metals」処理施設に、他のベンチャー企業と共に資金を拠出しており、また昨年11月にはレアアース国内産出増加のために3件で計約13億円の契約を民間企業と結んでいるところ

rare earth2.jpg国防省は今回の契約に際し、「(トランプ大統領による)大統領令13817で指示された貴重で重要な鉱物資源確保に向け、米国防省が近年取り組んできた資源調達やサプライチェーン強化の一環である」と声明を出している
また専門家は「この契約の重要性は、米国防省が継続的に国家安全保障上重要なレアアース確保政策推進に取り組んでいることを示した点にある」、「レアアースはほとんどすべての国防装備品や兵器に不可欠な素材である」とコメントしている
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中国に8割依存とは厳しい現実です。また埋蔵量でも、中国が35%、旧ソ連圏で20%以上など、西側にとっては頭の痛い話です

rare earth.jpg日本の排他的経済水域内の海底に、多くの貴重な鉱物(レアアース?)が眠っていると耳にしたことがありますが、日本も貢献できそうならばぜひ投資を考えてはどうかと思います。詳しくないので素人アイディアですが・・・


レアアース関連記事
「レアアース確保に米国が大統領令:中国依存脱却へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-03
「中国がレアアース輸出規制へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-06

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中国空軍がY-20U空中給油機を量産開始か? [中国要人・軍事]

2020年末、4機の機影が西安の飛行場で
中国軍の弱点だった空中給油に国産機量産か

Y-20U tanker.jpg18日付Defense-Newsは、昨年12月30日に撮影された西安飛機工業(集団)公司が所在する西安閻良飛行場の衛星写真を紹介し、2018年に初飛行が報じられたY-20U空中給油機が4機確認できると報じ、3機が量産機ではないかと推測しています

中国空軍にとって空中給油機は弱点・不足・ギャップ分野と呼ばれ、現在は1950年代設計のソ連製Tu-16の中国版H-6爆撃機を改良した給油量の少ないH-6U空中給油機20機余りと、ウクライナから2014年に輸入した3機のIl-78MP給油機(Il-76旅客機改良)を保有していますが、空中給油が確認されることはあまりありません

Y-20U tanker2.jpg中国空軍は2016年に就航したY-20輸送機を空中給油機に改良して問題解決を狙い、2018年にY-20U空中給油機の試験機初飛行が伝えられていました。今回撮影された4機のY-20Uの内、1機はこの開発試験機だとDefense-Newsは報じています

Y-20輸送機もY-20U空中給油機も、共に4基のロシア製D-30KP-2ターボファンエンジンを搭載しており、中国国産WS-20ターボファンエンジンへの切り替えを狙って開発が続いているようですが、WS-20の投入は早くても2024年以降だと言われています

推測が多い記事ですが、中国軍の着実な能力アップの一環ですので、ご紹介しておきます

YouTube上のY-20とY-20U紹介映像


18日付Defense-News記事によれば
2020年末に撮影され、Planet Labs社からDefense-Newsに提供された衛星写真は、両方の翼端下に空中給油用のポッドを装着した様子が「影」として確認できるY-20U空中給油機4機の存在をとらえている
Y-20U tanker3.jpg撮影された西安閻良(Xi’an-Yanliang)飛行場には、西安飛機工業(集団)公司(XAC:Xi’an Aircraft Company)の工場があり、4機の周辺には計16機のY-20輸送機が確認できる

ちなみに西安閻良(Xi’an-Yanliang)飛行場は試験飛行の拠点となっており、中国製航空機の飛行試験を行う組織が所在している
Y-20U空中給油機はhose and drogue方式の空中給油機で、撮影された4機の内、3機はグレーに塗装され、グレーの1機は試験開発用の1機と推測されている

中国軍にとって空中給油能力は弱点の一つと言われており、今後のY-20Uの製造状況や空中給油訓練の様子が注目されている
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Y-20U.jpg最近、中国空軍の大型爆撃機H-6の最新型が、極超音速兵器の搭載試験らしき飛行を行っている様子が確認されたり、グアム島の米空軍アンダーセン基地を攻撃する模擬映像が中国空軍により公開されたりと、中国の大型爆撃機が注目を集めています

そんな中国航空アセットの能力を、行動半径延伸や飛行時間増強で支えるのが空中給油機で、太平洋の島々や海面に分散して被害を免れようとする米海空軍戦力への大きな脅威です

じわじわとボディーブローのように効果を発揮し、西側の作戦計画の選択肢を狭める役割を果たす、中国空軍Y-20U空中給油機の今後に注目いたしましょう

中国空軍公開のアンダーセン米空軍基地攻撃デモ映像
「H-6Kのグアム島ミサイル攻撃模擬映像」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23

中国の最新型大型爆撃機が極超音速兵器搭載試験か?
「中国空軍H-6Nが極超音速兵器試験?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-20

軍事ブロガーJSFさんの極超音速兵器「DF-17」解説
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20191008-00145888/

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米空軍が戦闘機世代構成と5世代マイナス機の検討開始 [米空軍]

国防省を巻き込んで「態勢見直し」との横串を狙う
5世代と次世代と「5世代マイナス」の混合編成を検討
地域コマンドや空軍内の反対を覚悟の上
「今変わらなければ勝てない」との危機感を前面に

Brown2.jpg17日、Brown米空軍参謀総長が記者団に、戦闘機の世代構成(force mix)を「数か月間:a months-long」で検討すると語り、5世代機と次世代機(NGAD)と「5世代機マイナスをイメージの新型機」のあるべき混合比率を見極めたいと語り、併せて「5世代機マイナス」の新型機が備えるべき要求性能を明らかにしたいと述べました

またこの米空軍司令部における検討には、国防省のCAPE(コスト見積評価局)のモデル分析やシミュレーション能力の力を借りたいと述べ、併せてオースチン国防長官が表明した「態勢見直し」との連携を少しでも図りたいとの希望も語っています

Fighter mix2.JPG15-20年後の将来脅威を念頭に、平時からグレーゾーン、そして有事のあらゆる場面を想定し、かつ限られた予算等を考慮した検討を想定しているようで、Brown参謀総長の強い信念である「今変わらなければ勝てない。今やらなければ変化を加速できない」との問題意識から、数年後を懸念する地域コマンド司令官や空軍戦闘機族からの大反対は承知の上と言い切ってまで検討を進め、分析結果を基に強く2023年度予算案から舵を切る決意の模様です

特に注目なのは「5世代機マイナス」との4世代機と5世代機の中間能力を備える新型機導入のアイディアで、1月に退任したRoper調達担当次官補が進めようとしていた「F-16導入案」を白紙にし、今回の検討で要求性能を見極め、「デジタル設計技術」を用いて早急に実現したいとの思いも語っています

もう一つの注目はF-35のエンジン問題で、Brown大将は明確に、エンジンが想定よりも早く損耗することからF-35の使用頻度を下げる必要があると語っており、これはこれで大問題になること間違いなしです。既に米空軍がF-35調達機数を、当初の1763機から1050機に削減する案を検討しているとの報道もありますし・・・

17日付米空軍協会web記事によれば
Brown nomination.jpg17日、Brown大将は記者団に、数か月間で「TacAir study:tactical aviation requirements study」を行い、近未来から将来の要求を踏まえたあるべき戦闘機の戦力構成(a force mix)を導き出したいと語った
また同検討には、検討の信頼性確保と国防長官室との意思疎通を図る意味で、国防省のCAPE(Cost Assessment and Program Evaluation)の協力を得たいとの希望を述べ、「態勢見直し」との連関性なく本検討を進めるのはあまりにもナイーブだとも語った

退任したRoper次官補が主張していたF-16導入案は採用しないと明確に述べ、1970年代設計のF-16では迅速なソフト更新に対応できないため、白紙的に新たな「fourth-and-a half/fifth-gen minus」機を導入し、上記検討の中で要求性能や必要機数も煮詰めたいと語った
Fighter mix3.jpg検討の結果に「誰もが同意するとは思わないが、議論の出発点にしたい」、「私の仕事は結果が持つリスクを合わせて見極めること」、「空軍司令部のスタッフには、事実やデータを持ってこい、感情や思いは求めていない」と語った

また、地域コマンドからの反対を予期し、「地域コマンドは私が米空軍参謀総長であることを知っており、戦力構成に関する意思決定する立場だと認識している」、「私の決定は人気のないものとなろう。私を嫌うものも出てくるだろう」、「だが、今意思決定をしなければ、変化を加速できない。私は私がベストだと思う方向に空軍を導きたい。申し訳ないが」とも表現した
更に、「地域コマンド司令官らは、2-3年先の将来を考えて議論するだろうが、私は地域コマンド司令官の5-6代後の時代、つまり15-20年後を見据えている。全ての任務に必要なだけの戦力を準備することはできない」とも表現した

(記者団からのF-35エンジン問題について問われ、問題の存在を認めつつ、)最新鋭機へのニーズが高いことから使用頻度が高くなり、F-35のエンジンが高頻度の使用で故障する率が高まっていると述べ、その問題も本検討の検討要素となると語った
Fighter mix.jpgこの問題対処に維持整備方式や整備施設の体制検討を中将大将レベルで行っていると述べ、シンプルにはF-35の使用頻度を下げることが対処法だ(simply be to use the F-35 less)とBrown大将は語った

「フェラーリで毎日通勤することはないだろう。フェラーリは日曜日に運転すればいいんだ。F-35はハイエンド環境の装備であり、ローエンド環境で常に使用する必要はない」と述べつつも、「この考え方にも異論があるだろう。反論も予期している」とBrown参謀総長は述べた
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Brown大将の話しぶりは常に「直球」で、全く回り道をする気配がありません。就任直後に空軍内に配布した「Accelerate Change or Lose」との小冊子のタイトルの信念で、前進あるのみです

Brown4.jpg語弊があるかもしれませんが、「いつクビになっても構わない」と覚悟を決め、「あるべき姿に直進する」決意なのかもしれません

黒人との立場で、既に様々な声が周囲から聞こえてくるのでしょう。これまでの空軍生活の中で受けた差別への思いもあるのでしょう。信念に忠実に、ただ前進あるのみです・・・・。立派だと思います

「オースチン長官が態勢見直し開始」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-06

Brown空軍参謀総長の関連記事
「春完成の電子戦戦略を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-30
「戦闘機新調達方式などを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-24
「行動指針を小冊子で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-01
「米空軍は海兵隊と同じ方向を目指す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-25
「人種問題を経験から語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-06-1

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コロナ下でもUAEで巨大兵器見本市 [安全保障全般]

アブダビに1300企業が集結しアクチャルで
国交樹立のイスラエル企業含め5か国が初参加

IDEX NAVDEX.jpg2月21日から25日にかけ、UAEの首都アブダビで巨大兵器見本市(IDEX and NAVDEX)が実際に人や企業を集めて開催され、初参加5か国を含む世界各国から1300以上の企業が、自慢の武器兵器を展示アピールするようです

コロナ下で、実際に人や企業を集めて開催される本格的な兵器見本市は初めてで、体温感知センサーの入場口への配置はもちろん、滅菌の霧散布装置などハイテクコロナ設備を大挙投入し、出品企業関係者と見本市参加者は全員PCR検査「陽性」証明を提示する必要があるとの厳格な体制下ですが、バーチャルでない開催とはUAEの統制力を感じます

IDEX NAVDEX2.jpg15回目となるIDEX(International Defence Exhibition and Conference)と、NAVDEX (Naval Defence and Maritime Security Exhibition)の同時開催で、NAVDEXには複数の国から新型艦艇が参加展示される予定となっています

初参加の5か国は、UAEと歴史的な国交樹立を果たしたイスラエルの他、アゼルバイジャン、ポルトガル、ルクセンブルグ、北マケドニアで、特にイスラエルの初参加について、UAE国防省や参謀本部と連携して同イベントを開催運営する企業ADNEC幹部は、「如何にこのイベントが地域の平和維持を先頭に立ってけん引するものであるかを示す」、「中東地域の国防戦略の敷石となる重要イベントだ」とアピールしています

IDEX NAVDEX3.jpg今回の重要テーマは、サイバー、研究開発、サプライチェーン、人工知能、第4の産業革命などで「(コロナ拡散以降)世界で初めて、国防関係者や軍需産業関係者が一堂に会し、軍事情勢や新たな兵器技術について意見交換し、交渉する絶好の機会である」と同イベント関係者は説明しています

同イベント間のメディアイベントを取り仕切る関係企業によれば、5日間に40以上のビジネス発表、20以上の新製品の披露イベント、50以上の自立型・無人型車両、精密誘導兵器、海洋パトロール艇、電子戦機器、メンテナンス機材等々の新機能の紹介イベントが予定されているそうです

IDEXのwebサイトhttps://idexuae.ae/
NAVDEXのwebサイトhttps://www.navdex.ae/

Defense-NewsのIDEX特集ページ
https://www.defensenews.com/digital-show-dailies/idex/
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この手の商売人の皆様の、いろんな意味での底力を見る思いがします

コロナ下で西側諸国が「瀕死」の状態にある中でも、無人機を使った作戦で戦史の一ページを飾る戦いが行われたり、サイバー戦分野でその脅威が現実化したりと、兵器武器世界は変化の歩調を緩めてはくれません。

参加者がどの程度になるか不明ですが、開催するからにはそれなりの「目算」があるのでしょう・・・

世界の軍事関係者に衝撃
「攻撃無人機でアゼルバイジャン圧勝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-21
「米国防省が小型無人機対処戦略を発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-10

最近のサイバー関連の記事
「ロシア発:驚愕の大規模サイバー攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-18
「フロリダ水道施設にハッカー:薬品投入量操作」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-10

無人機対処にレーザーや電磁波
「小型ドローン対策に最新技術情報収集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-20-1
「米海兵隊の非公式マニュアル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-31
「ドローン対処を3-5種類に絞り込む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-14
「米軍のエネルギー兵器が続々成熟中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-30-1

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NATO国防相会合の雰囲気は変わるか? [オースチン国防長官]

オースチン国防長官初参加:17-18日
バイデン政権は前政権との違いがあるのか?

NATO ministerial3.jpg16日付Defense-Newsは、17日から18日にかけ開催されるNATO国防相会議(バーチャル)に関し、強硬に加盟諸国にGDP比2%国防費支出を要求し、目標達成に消極的だったドイツから駐留米軍を削減する姿勢まで示した(バイデン政権は削減凍結を表明)トランプ政権との違いを示せるのか・・・との視点で同会議の論点を、匿名の国防省高官の話から紹介しています

結論めいて申し上げると、「NATO諸国間の関係の再活性化」や「話し合いの雰囲気醸成」や「アプローチの変化」や「同盟国との協力」とのバイデン政権の姿勢を強調しつつも、「負担の共有」を求める姿勢に変化はないが、国防費のGDP2%枠だけでなく、兵力派遣での貢献も評価する考え方も議論の対象になるかも・・・といった雰囲気です

そのほか、サイバー対処問題、イラクやアフガニスタンへの派遣兵力の増減問題などが焦点になるだろうとの見方ですが、Aaron Mehta副編集長の記事ですのでご紹介しておきます。18日には日本でも少しは報道されると思いますが・・・

16日付Defense-News記事によれば
NATO.jpg15日、17日から開催されるオースチン長官初参加のNATO国防相会議について、2名の国防省高官は別々に、「米国と他加盟国との関係再活性化」や「国防支出増加の要求は引っ込めない」との米国の姿勢を語った
一人の高官は、非常に攻撃的対立的だったトランプ政権とは異なる姿勢を示し、「アプローチの仕方を変える」、「ともに同盟国等と取り組んでいきたい」とのトーンを打ち出していくと述べた

また、「相談する:consulting」ことに焦点を当てると表現し、前政権がドイツ駐留米軍削減を関係国との調整なしに打ち出したようなやり方とは、異なるアプローチをとるとの姿勢を強調した
しかし、凍結されたドイツ駐留米軍の削減とポーランドへの一部移動計画について高官の一人は、「欧州での米軍の態勢は当地の安全保障にとって重要であり、撤退と見られるようなことは考えていない」と述べるに留まった

NATO ministerial4.jpgただ、オースチン長官が異なる姿勢でバーチャル会議に臨むとしても、NATO加盟国に国防支出増加を要求する基本姿勢に変化はないと述べ、「加盟国に対し、既に決定した事項にコミットしていく事を確認したいし、その方向に向かっていることを評価したい。ただ課題があることも承知している」と高官の一人は表現している
同会議を前にした15日にJens Stoltenberg事務総長は、「負担の共有については、2%枠だけでなく、貢献や能力(contributions and capabilities)の話でもある」と表現し、9か国のみが2%枠を満たしている現状と、他の形での貢献も評価すべきとの考えを示唆した

これに対し国防省高官は、「事務総長の述べた3つのC(cash, contributions and capabilities)の考え方はわかるが、最終的にはお金が全てに深くリンクしていることも忘れるべきではない」、「今投資できなければ、将来のあるべき態勢を確立できない」と釘を刺した

NATO ministerial2.jpg上記のような論点の他に、NATO加盟国間にはイラクとアフガンへの派兵問題がある。トランプ政権は派遣兵力を2500名まで削減する決定をしたが、NATO加盟国はバイデン政権がこれを再び増加させることがないかを注視している
これに関し高官の一人は、「政権全体で取り組む米軍の態勢見直しに取り掛かっており、その中で議論される。米国とNATO加盟国は共に戦い、去るときは同じだ」と語った

もう一つの論点は、特別なセッションが設けられている「新たな破壊的な兵器技術」関連で、特に最近米国を揺るがしている「SolarWinds」ソフトを経由した大規模政府系機関ハッキングが問題になっているサイバー関連問題だろう。この問題議論のため、NATO正式加盟国でないスウェーデンやフィンランドの代表者も呼んで議論することになっている
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Austin8.jpgバイデン政権になっても、むしろバイデン政権だから、日本にも「負担の共有」要求は「真綿で首を締める様に」強まると考えるべきでしょう。民主党政権ですから・・・

日本の米軍への「思いやり予算」が、とりあえず1年そのままで、それ以後について継続協議となりましたが、タフな交渉が待ち構えていると考えるべきでしょう

でも先日の記事の繰り返しになりますが、最終的には、日本はどうするのか? 覚悟はあるのか?・・・に行きつきますので、きちんと正面から情勢を見つめることが必要なのでしょう

アーミテージ氏が最近投げかけた、「日本は、中国に対してタフになる心構えは出来ているのか?」との問いに、答えることができるのか・・・です

バイデン政権の国防姿勢関連
「オースチン長官が米軍態勢見直し指示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-06
「国防副長官が所信を述べる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-03
「バイデン政権で国防政策はどう変わるのか」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-09

影響深刻:米政府機関に大規模ハッキング
「ロシア発:驚愕の大規模サイバー攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-18

ドイツ駐留米軍削減の関連
「国防長官が1.2万名削減計画を発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-30
「独駐留米軍を1万人削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-16
「移動先ポーランド大統領と会談」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-25
「米独2000名に安保アンケート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-10
「9月末までに米軍再編検討を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-14

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F-35のエンジンブレードと整備性問題発覚 [亡国のF-35]

稼働率低調の2大原因の一つ
キャノピー問題は第2メーカー参入の5月まで辛抱か

F-35 F135.jpg12日付Defense-Newsが国防省筋の話として、F-35の稼働率低空飛行の当面の原因とされているF135エンジン問題について、エンジンブレード耐熱塗装の問題と、オーバーホール整備に想定以上の時間が必要となっている問題を取り上げ、国防省F-35計画室の対処方針を紹介しています

また、退任直前のLord前次官が明らかにしていたエンジン以外のもう一つのF-35稼働率低迷要因である「キャノピー」については、5月から新たなメーカーが製造や補修に参入して前線部隊を支える方向だと、同記事は紹介しています

F-35 F135engine.jpg退任前日の1月19日にLord前次官が明らかにしたF-35稼働率は、「複数ある任務の一つでも可能な機体は69%で、全ての任務が可能な機体は39%」との衝撃的なものでしたが、上記のエンジン整備やキャノピー問題だけに原因を集約するのは無理があり、兵站情報管理システム(ALISに代わりODIN)トラブルや部品確保サプライチェーンの混乱や想定以上の部品故障率や整備員の技量未熟等々・・・複数の大きな原因が背景にあります

ただ、当面の大きな課題であるF135エンジン問題とキャノピー問題の2つの状況をご紹介しておきます

12日付Defense-News記事によれば
12日、国防省F-35計画室幹部が、F-35用のF135エンジンの問題は2つあり、一つはオクラホマ州Tinker空軍基地の「F135 Heavy Maintenance Center」で計画通りの時間でエンジン整備が終了しない問題で、もう一つはエンジンブレードのコーティングが想定より早く損傷する問題だと説明した
F-35 F135 5.jpg同高官は「深刻な態勢維持上の問題だ」と述べ、上記問題により2022年まではF-35の5-6%の機体はエンジンが無い状態となり、2割のF-35が何らかの影響を受けることになる可能性があると述べた

この状況を受け、米空軍はF-35の展示飛行チームに対し、2021年の展示飛行計画から8つの計画を削減し、エンジンへの負担を減らしてエンジン整備所要を抑制するよう指示した

このエンジン問題に国防省F-35計画室が気づいたのは2020年初めで、同年夏には、上記エンジン整備センターで予定されていた年間60台のエンジン整備が遂行できないことが明らかになった
F-35 F135 4.jpg整備センターでの遅れは多様な要因で発生しており、技術データ不足、整備工程管理の不具合、整備支援機材の不足、整備担当者の技量不足などなどが組み合わさって発生している、と同幹部は語った

エンジン整備センターでの問題対処には、整備作業ラインをもう一つ6月までに立ち上げる方向で、また国防省とPratt & Whitneyが整備支援強化で契約を結び、作業員の技量向上訓練にも着手する予定である
これら対策により、「現状200日以上必要としているエンジン整備を、122日程度で終了させたい」と同幹部は語った

もう一つのエンジンブレードの問題は、耐熱コーティングが想定より早く劣化する問題である
本件に関しPratt & Whitney(Raytheon Technologiesの傘下:オースチン国防長官は関与できるのか?)は、2020年からエンジンブレード改良処理過程を導入開始し、製造ラインに投入していると声明を出している

F-35 F135 2.jpg2月17日にTinker空軍基地が「F-35関連各級指揮官がF-35関連の種々の課題を議論する会議サミット」を開催し、F135エンジン問題に関する議論も行われた模様だが、国防省関係者は細部への言及を避けた

唯一の良いニュースは、もう一つの稼働率関連の課題であるキャノピー問題で、現在唯一の「canopy transparencies」サプライヤーであるGKN Aerospaceがキャノピーのコーティングの表面剥離問題で製造・修理に苦しみ必要量の提供が滞っている中、第2のサプライヤーが参画する予定であることである
PPG Aerospaceという第2のキャノピーサプライヤーは、5月から「canopy transparencies」を提供開始する予定である
//////////////////////////////////////////////////

F135エンジンについては、F-35製造が始まる段階で「あの火災事故の原因対策は終了したのか?」、「本当に大丈夫か?」、「いろんな不具合データが出ており別のエンジンが良いのではないか」等々の意見が多く出されていたと記憶していますが、今になって・・・ではないことを祈ります

でも、最初に述べたように、エンジンとキャノピー問題はあくまで目の前の課題であり、その後ろや足元には、より大きな構造的な維持整備の問題が山積していることを忘れてはなりません

米空軍でまもなく第2位の保有機数となるF-35ですが、維持整備問題で既に大きな「お荷物」となっています。量産前に・・・

2016年9月23日の火災事故記事
「日本用1番機の式典日に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24
「本当?:背風を受けF-35エンジン始動時に火災」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-07-13

2014年6月の火災事案
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「深刻:問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08
「F-35:2週間後も飛行停止」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-26
「P&W社がエンジン亀裂を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-24

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米空軍トップが春完成の電子戦戦略を語る [米空軍]

国防省電子戦戦略や同ロードマップと連携を図りつつ
もはや電磁スペクトラム優勢確保は不可能な状態だと認め
湾岸戦争後、我々は電子戦分野で居眠り運転だったと吐露

Brown4.jpg1月27日、Brown米空軍参謀総長がオンライン講演し、昨年10月末に発表された国防省電子戦戦略(電磁スペクトラム戦略:Defense-wide electromagnetic spectrum strategy)とその具体化に向けたロードマップが3月に完成する中で、米空軍も今春に大転換の電子戦戦略を取りまとめると語り、その方向性について触れました

「相手に手の内を明かさない」方針から、昨年10月29日に概要だけがブリーフィングされた国防省戦略も「ぼんやり」したものでしたが、空軍参謀総長が語った内容も、具体的な話よりも危機感と姿勢と大きな方向性を述べたもので、「ぼんやり感」は否めません

「さわり国防省電子戦戦略」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03

それでもしかし、強烈な危機感と現状認識、より攻撃的な態勢を目指すこと、ハードよりソフト面に注力すること、同盟国等を含めた一体性を追求する方向などが述べられており、米国防省全体の方向性を理解する一助となりそうなのでご紹介しておきます

まず昨年10月末の国防省戦略の「さわり部分」復習
Electronic Warfare.jpg新戦略では、従来の伝統的な電子戦分野である電子妨害や心理戦活動、商用・公用・軍用の電磁波運用管理だけでなく、米軍が電磁波の世界で容易に隠れる(Hide)ことが出来たり、商用周波数帯を作戦用により容易に使用出来たりする方向である
また、敵の周波数使用を容易に拒否できるようにする方向を追求する

日々の電磁スペクトラム運用を司る「combatant command」を創設する方向で検討す
具体的なロードマップ(EMS roadmap)は、Hyten統合参謀本部副議長らが中心となり2021年3月までにまとめる
・・・と説明していますが、よくわかりません。軍用の周波数帯を不必要時に民間に貸し出す代わりに、必要時に商用周波数を軍が使用できるような枠組みを含んでいるとの説明もあるようです

Brown空軍参謀総長は新戦略の方向性について
Brown nomination.jpg今春、米空軍は「electromagnetic spectrum warfare strategy」を発表する予定で、米空軍の向かうべき方向を示し、本格紛争においてどのような作戦運用が必要か、どのように資金を確保するか等を描くものとなる
また同戦略を理解しやすいように、司令部スタッフには同戦略内容が実現した際の仮想的な運用シナリオを準備するよう指示しており、同戦略に沿って2030年に到達すべき姿を理解しやすくし、空軍全体で取り組んでより早く達成できるよう考えている。その想定は中国を相手にしたものになろうが、我が目指すレベルに中国よりも早く到達することを望んでいる

空軍の戦略は、アフガンやイラクでの20年の戦いの中で、我々が電子戦を無視してきた流れと決別するものであり、従来の防御的な電子戦から攻撃的な姿勢への大転換を図るもので、決して小さな改善ではない
背景には、我々が必要なレベルで敵対者を抑止できていないとの危機感がある。中国やロシアのサイバー部隊は、宣戦布告なしに米国を侵略しており、情報誘導工作や偽情報作戦で世論操作を行っているが、米国がそれらを抑止できていない現状がある

EA-18G capability.jpgこのまま好きにさせるわけにはいかない。我らは大転換を図る必要がある。従来通りの少しづつ変化していく方法では、我々はシンプルに敗北する。湾岸戦争後30年間、電子戦分野で我々は居眠り運転してきたと考えるべきだ
空軍の戦略は昨年10月末発表の国防省電子戦戦略と完全にリンクしており、Hyten統合参謀本部副議長が3月にまとめ、初めて4軍の役割を指示することになる同国防省戦略ロードマップとも連携を図って進めている

電磁スペクトラム戦での優越はもはや可能ではない。航空優勢は一部の地域で確保可能だろうけれど・・・。電子戦能力を必要な場所と時間に提供できなければならない。しかしこれは、多くの通過点があるゴールがない終わりなき戦いで、我の優位を維持し続ける取り組みであ
単にステルスや自己防御ジャミングと言った防御的なものではない。過去25年使い続けてきたような装備では将来は戦えない。米空軍は電子戦分野で機動し攻撃する攻撃的な態勢を目指

Brown2.jpg投資面での最大の変化は、ハードやプラットフォームからソフト重視への変化である。確かに目に見えにくく、効果確認が難しいいオープンソースなソフト導入のような事業は、米議会の理解を得るのが難しい
一方でソフト投資はミサイル等と比較して安価で効果も期待できる。その点で電子戦の非破壊的な能力確保は、コストで押しつぶされる恐れを減少させてくれる。また一方で、ソフトは最新手法をコードで表現すれば効果を実現でき、数で圧倒してくる中国にも対抗できる

同盟国等をこの電子戦戦略に巻き込むことに米空軍は取り組み、最初から含めておくことで装備が協力的に使用できなくなることを避ける。全ての関連能力を融合して活用できるようにしたい
すでに米空軍は、新たな電子戦戦略やコンセプトを編み出すために、一連の実験演習や仮想ウォーゲームに取り掛かっている。しかし米空軍はあるべき状態にはなっていない。米議会から遅れを指摘され、尻を叩かれている状態であり、困惑することもあるが、叱咤激励が力であることも確かである
///////////////////////////////////////////

EA-18G Clark3.jpg対中国では、電磁スペクトラム優勢確保はその性格上可能ではない・・・と言い切り、航空優勢も一部地域(localized)でのみ達成可能だろうとハッキリ述べる姿勢は、50億円を投入したシリア兵士養成で、「5-6名」しか前線で活動していないと率直に認めたオースチン国防長官とも通じるものがある気がします

中国軍の電子戦能力がすごいので、防御だけではとても太刀打ちできない・・・やられる前にやっつけなくては・・・との主張だと思います

ハードやプラットフォームより、ソフトで勝負・・・との意味が体で感じられていませんが、まぁそういう時代なのでしょう。湾岸戦争当時から変わっていない状況を、米議会から厳しき指摘されていることを、認めざるを得ない厳しい立場です。Brown大将は・・・

国防省の電子戦戦略と空軍の動き
「さわり国防省電子戦戦略」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03
「電子戦とサイバーと情報戦を融合目指す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03

関連のC4ISRnet記事
https://www.c4isrnet.com/electronic-warfare/2020/11/17/us-air-force-sets-sights-on-new-spectrum-warfare-wing/

第16空軍の関連記事
「新設第16空軍の重要任務は2020年大統領選挙対策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「遅延中、ISRとサイバー部隊の合併」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-24
「米空軍がサイバー軍とISR軍統合へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3

ロシアの電子戦に驚愕の米軍
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

EW関連の記事
「国防省EW責任者が辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-19
「ACC司令官が語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-19
「米空軍がサイバーとISRとEwを統合」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3
「電子戦検討の状況は?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-13
「エスコート方を早期導入へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27
「米空軍電子戦を荒野から」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1
「ステルス機VS電子戦攻撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12

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フロリダ水道施設にハッカー:薬品投入量操作 [サイバーと宇宙]

スーパーボール開催地近傍の都市水道施設
外部からマウスを操作し水酸化ナトリウム量を100倍に
人的被害は無し・・・

Oldsmar.jpg8日、フロリダ州Oldsmar市を管轄する保安官が記者会見し、5日に同市の上水道管理システムにハッカーが侵入し、水道水に投入する水酸化ナトリウムの量を既定の約100倍にする操作を行ったことが検知されたが、水道局員が怪しい外部からのマウス操作を察知し、直ちに正常な設定値に修正して上水道への影響はなかったと発表しました

同市は7日にスーパーボウルが開催されたタンパ市に隣接する人口15000名の小規模な都市ですが、同時案発覚後、直ちに周辺の水道管理施設間で情報が共有され、外部からのアクセス遮断やシステム監視の強化などの措置が取られたということです

Oldsmar3.jpg現時点で誰が上水道管理システムに侵入したのか判明しておらず、追跡は困難と言われているようですが、専門家はハッカー初心者が腕試しでサイバーセキュリティが脆弱なシステムに侵入するケースが大半だと指摘する一方で、昨年5月にはイスラエルの水道システムにイランからの組織的侵入があり、塩素投入量の操作が試みられた事例もあると注意喚起しています

また米国では、2013年に同じくイランからニューヨークのダムシステムへのハッキングが行われた事例や、最近ではロシア政府起源と見られるハッカーによる相次ぐ発電送電や製造プラントシステムに侵入事案が報告されており、まさに「今そこにある危機」として米国社会に警鐘を鳴らす事案となったようです

Oldsmar市事案について9日付Military.com記事は
フロリダ州Oldsmar市の水道局員が、5日の朝8時に操作システムを見ていた際、少し変わった動きをする外部アクセスを見つけたが、いつものように同僚がリモートでアクセスしているのだろうと気にしなかった
Oldsmar2.jpeg同日13時30分、同じ水道局員が、再び誰かがシステムにアクセスしたのを認めたが、今度は外部から誰かがマウスを操り、水処理工程の水酸化ナトリウム投入量を変更したのを察知した

外部からの侵入者は、3-5分間システム内で行動した後に退去したが、通常あり得ない数値設定に驚いた水道局員は、直ちに水酸化ナトリウム設定値を通常設定に戻した
当局は本件に関し、仮に水道局のシステム監視者が外部からの侵入や設定値操作を見逃したとしても、定期的に水質検査が行われており、住民に提供される水道に影響が出る前に察知できる体制だと説明した
本件については、地元保安官事務所に加え、FBIとSecret Serviceが協力して操作を行っている

ITセキュリティー会社の専門家は、水処理など工業的プラントへのハッカー侵入事案が頻発しており、多くは組織的でなく実質的な被害もない単発のいたずら事案だが、小規模施設や地方政府管理施設におけるサイバーセキュリティーへの意識の低さが外部侵入を招いていると警告している

Oldsmar4.jpgまた別の専門家は、Oldsmar市のケースは複雑な事案とは考えにくく、ハッカー初心者が腕試しに脆弱なシステムに侵入を試みたもののように見えると評価しつつも、水道管理当局や企業に対し、システム管理の重要性を再認識させる事例だと警鐘を鳴らした
そして、国家レベルが関与するハッカー集団が、電源や水道などの重要社会インフラにダメージを与える可能性が身近に迫っていることに改めて注意を促した
/////////////////////////////////////////////////////

素人ですが、水道管理のシステムなど、外部と遮断すればよいと思うのですが、色々と外部と情報のやり取りが必要な部分があるのでしょうか・・・?

本当に怖い世界です。最近は大規模な情報漏洩も当たり前になりつつあり、非常に多くの不審メールを受信する日々に慣れっこな自身の状態にも改めて恐ろしさを感じます

最近のサイバー関連の記事
「ロシア発:驚愕の大規模サイバー攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-18
「誘導工作の拠点完成!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-08
「過去最大のサイバー演習を完全リモート環境で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-22
「海兵隊サイバー隊が艦艇初展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-08
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
「米国務省のサイバー対策はデタラメ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-27
「やっとサイバー部隊に職務規定が」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-13
「喫緊の脅威は中露からではない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-16
「ハイブリッド情報戦に備えて」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-05
「ドキュメント誘導工作」を読む→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1
「サイバー攻撃に即時ミサイル反撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-11-1
「NATOが選挙妨害サイバー演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13
「サイバーとISR部隊が統合して大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「ナカソネ初代司令官が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17
「大活躍整備員から転換サイバー戦士」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-3

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バイデン大統領指示:4か月で対中国軍事態勢見直し [安全保障全般]

大統領として初のペンタゴン訪問で発表
取りまとめは元大統領副補佐官で現長官の中国担当補佐官

Biden pentagon5.jpg10日、バイデン大統領がハリス副大統領を伴って就任後初めてペンタゴンを訪問し、今後4か月以内に対中国軍事戦略のレビューを行うと発表しました

同レビューのとりまとめはEly Ratner中国担当国防長官補佐官(元バイデン大統領の安全保障担当副補佐官)が行い、国防長官室や統合参謀本部、地域コマンドや情報機関から、文民と軍人を合わせ15名程度で構成される「China Task Force」が検討を担当するとのことです

Biden pentagon6.jpg国防省発表の同レビュー「Fact Sheet」によれば、レビューでは、軍事戦略、作戦運用コンセプト、装備近代化や投資対象技術の優先順位、戦力配備や基地配備の在り方、情報態勢、同盟国との関係などに焦点を当て、広範な検討が試みられる模様です

ただ、このレビュー結果は「No final public report is anticipated」ということで、公にはならないようで、米議会にはしかるべく報告されるようですが、今後の関連政策や予算配分から、なんとなく雰囲気を想像するしかなさそうです。

関連報道によれば
Biden pentagon4.jpgバイデン大統領は国防省ブリーフィング室で本レビューに関し、「今後数か月で、国防省のChina Task Forceが、中国関連問題についての対応方針を明確にするため、新たな優先順位と決定すべき点(decision points)の検討を行う」
また「対中国戦略は、政府を挙げての取り組みとなり、米議会超党派の支持や同盟国等からの協力が必要となる。これが、中国の挑戦に対して如何に米国が立ち向かうかの基本だ」と語った

国防省発表の「Fact Sheet」は「China Task Force」が議論対象となる重要事項検討に「疾走:Sprint」すると表現し、短期間での集中的な取り組みであることを強調している

また本発表前に軍事力に関する大統領の所信を述べ
Biden pentagon3.jpg私は、必要時に軍事力の使用を躊躇することは決してないが、軍事力の使用はあくまで最終手段(tool of last resort)である
求められれば戦って勝利を収める態勢を保持しつつ、敵の侵略を抑止することが任務の中心である

我が国は、「力の例示」ではなく、「例示の力」によって、より安全に強くなる。米国は今世紀の課題に対峙するにあたり、安全保障について優先順位を再考する必要がある
中国は特に「growing threat」であり、新技術を生かし、サイバー能力を高め、宇宙での競争にも立ち向かう

(かつて、現役時代のオースチン国防長官の下でイラクに大尉で従軍した息子(米国内で事故で死亡)を例に出し、)バイデン一家は軍人家族である。志願して国のために勤務する皆さんに、大きな責任を負っていることを感じている。我が政権は決して、皆さんの名誉を傷つけたり、皆さんに政治的な行動を求めたりしない
/////////////////////////////////////////////////////////////////

大統領選挙期間中に、中国寄りだ、中国に弱みを握られている・・・等々のうわさが飛び交ったバイデン大統領ですので、それを打ち消すため、中国に対する厳しい姿勢を各所で表現しています

Biden pentagon7.JPG話は飛んで恐縮ですが、でも最終的には、日本はどうするのか? 覚悟はあるのか?・・・に行きつきますので、きちんと正面から情勢を見つめることが必要なのでしょう

アーミテージ氏が最近投げかけた、「日本は、中国に対してタフになる心構えは出来ているのか?」との問いに、答えることができるのか・・・です

関連の記事
「オースチン長官が米軍態勢見直し指示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-06
「国防副長官が所信を述べる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-03
「バイデン政権で国防政策はどう変わるのか」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-09
「新政権がトランスジェンダー勤務許可」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-26

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75年ぶり米軍爆撃機がインド訪問 [米空軍]

インド航空ショーでインド戦闘機のエスコートを受け飛行
C-5輸送機も同航空ショーに:米印関係を示す

B-1 India.jpg8日付米空軍協会web記事は、75年ぶりに米空軍爆撃機(今回はB-1)がインドを訪問し、同国航空ショーでインド空軍戦闘機のエスコートを受けた展示飛行を実施するなど、米印関係強化を示すイベントになったと紹介しています

記事は、トランプ政権が退任直前の1月13日に秘密扱いを解除して公開した「インド太平洋戦略」の方針に沿うものだとB-1爆撃機訪問を取り上げ、同戦略が「インドを、豪州、日本、韓国と合わせた4か国枠組みの一員に加え、中国に対抗する地域の盾」としての位置づけ、「米国は、インドの軍事能力を自国防衛だけでなく、インド洋を超えた地域での活動パートナーとなるよう目指す」と表現していると紹介しています

また同戦略が、上記狙いを達成するため、「軍事貿易を拡大」し、また、米国と日本がインドの「finance projects」を支援し、地域国家の軍事力を連接するために協力していくと表現していることに言及しています

8日付米空軍協会web記事によれば
B-1 India4.jpg3日、米空軍のB-1爆撃機がインドで開催された「Aero India trade show」でインド空軍Tejas戦闘機のエスコートを受けて飛行し、1945年以来初めてインドに降り立った。また同航空ショーにはC-5M大型輸送機も参加し、地上展示を行った

同飛行の前日にDon Heflin駐インド米国大使は、「インドはインド太平洋地域のキープレーヤーである。米印協力は、ルールに基づく国際秩序で全ての国の繁栄と安全を推進するビジョンを広めるものだ」と語った
B-1爆撃機を派遣した米第8空軍司令官のMark E. Weatheringtons少将は、「(B-1派遣は)両国の協力関係を示すだけでなく、「Bomber Task Force concept」の訓練の位置づけでもある」「将来に向けた歴史的な意義を持つ爆撃機の参加だ」と表現した

B-1 India3.jpgまた爆撃機訪問の機会をとらえ、両国国防当局者が協議を行い、両国政府と両国空軍の関係強化に向けた舞台を整えた
インド空軍が戦闘機選定を開始しているが、米国からはロッキードがF-16を生産ラインのインド移転を含め提案し、ボーイングがF-15EXを売り込んでいる
////////////////////////////////////////////////////

この航空ショーには、コロナにもかかわらず1.6万人が参加したようです

滑り込みでトランプ政権が公開して物議をかもした「インド太平洋戦略」ですが、このような動きは継続して進めていただきたいものです

少しは関係のある記事
「インド海軍にFA-18提案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-31
「アジアに第1艦隊編成へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-20

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米空軍の優先研究に「よく考えろ!」提言 [米空軍]

言いたい放題の一般論提言ではありますが・・・
各所で研究課題に挑戦する皆様のヒントになれば・・・

Skyborg3.jpg米空軍が「優先研究項目」として指定し、資源や人材を投入して短期間での実用化を目指す「Vanguard計画」(2019年11月開始)に対し、外部有識者で構成される「米空軍科学諮問評議会:Air Force Scientific Advisory Board」が提言し、より具体的に、広い視野で活用分野を探り、ダメそうなら諦め、よりベンチャー的に取り組め・・・等々との言いたい放題の報告書をまとめた模様です

「Vanguard計画」自体は2019年春に立ち上がりましたが、研究対象を絞り込むのに半年以上がかかり、6つの対象項目で公表されているのは「無人機ウイングマン:Skyborg構想」、「無人機の群れ:Golden Horde構想」、「新たな航法衛星3」の3つだけですが、主導する米空軍研究所AFRLに研究の自由度を保証する代わりに、評価もきちんとやる姿勢で米空軍幹部が臨み、同評議会に開始1年目の評価を依頼したようです

Gremlins swarming.jpg同評議会の提言は言いたい放題で、米空軍研究所やそれを指導する米空軍マテリアルコマンドや空軍省革新能力造成室にとっては「そこまで言うか!」的な内容ですが、お役所研究機関や日本の大企業の研究組織にも当てはまりそうな内容なので、とりあえずご紹介しておきます

ただ具体的な研究項目には触れず、提言部分だけが報道されていますので、具体的にどの研究課題のどの部分に対する提言なのかが示されず、ストレスのたまる「言いたい放題」の紹介となっていますので、その点はご容赦ください

昨年12月18日付米空軍協会web記事によれば
NTS-3.jpg12月に米空軍幹部に提出された同評議会の提言は、「Vanguard計画」をより具体的に、広範な範囲で応用を検討し、ダメらな早めに諦めよと提言し、6項目の対象研究の3つには改善を促し、残り3つには対象から葬り(enshrine)長期的な視点で米空軍内で活用する方向を示唆した
なお、「Vanguard計画」推進に米空軍は2021年予算で約170億円を要求したが、米議会は約60億円削減する方向にあり、本計画の継続・推進にはプロジェクトの継続改善に取り組む姿勢が欠かせない側面もある

同評議会は、優先項目は4年以内にプロトタイプ試験に進めるような対象であるべきで、米空軍省高官が選定判断に関与すべきと提言し、現在の対象があまりに広範であるため絞り込む必要を指摘した。一方で、現場との接点が多い研究開発調達次官室とは緊密に連携を取り、新たなアイディア受け入れにも柔軟であるべきとしてる
Gremlins swarming2.jpgそして、世界中の空軍指揮官の要望を反映し、攻めの姿勢を重視しつつも達成可能な分野に注力し、資源投入先を絞り込む着意が重要で、この過程に米空軍副参謀総長レベルを巻き込めとしている

(優先項目の新陳対処も考慮し、)毎年の優先項目を1-2個選定して進めるべきと提言し、同時に一度選定した項目の目標変更もあり得、ハイリスクの最新技術研究では、特定の戦場環境への適用だけでなく、他の応用可能な分野への適応への方向転換も選択肢に含められるよう提言している
また、きちんとした開発計画に基づかない形で実験室から直接戦場へ提供したり、民間企業に技術の芽と一定資金を提供して研究を託す手法もオプションに取り入れるべきとしている

XQ-58A Valkyrie2.jpg更に「Vanguard計画」を管理する空軍省の革新能力造成室(Transformational Capabilities Office)には、ベンチャーキャピタルのように計画全体を管理し、「Try-anything, freeform startup culture」で革新をリードするよう提言している
問題に直面した研究項目をあきらめる重要性も指摘し、同時に研究を中断する分野でも、それまでの蓄積知識を他に活用する等、失敗を失敗で終わらせない姿勢の重要性を指摘している

最後に同評議会は、いずれにしても、「Vanguard計画」は空軍省レベルの強力な関与がないと成功しないと提言を結んでいる
////////////////////////////////////////////////////////

絞り込め、しかし柔軟に新たなアイディアを取り込め。具体的に、でもベンチャーのように挑戦して革新を・・・と言われると、事前に予算枠が示されるお役所研究所の米空軍研究所は頭を抱えるしかないのですが、米空軍幹部の裁量と強力な関与で道を開け・・・ということでしょう

9月末には、優先対象の一つ「無人機の群れ制御」に関し、(行き詰ったから)企業や学界や技術使用者の皆さんのアイディアを持ち寄って頂きたいと空軍研究所幹部がお願いするとインタビューで述べていましたが、そんな苦境解決を後押しすべく、同評議会も現場の声を拾った側面もあるのでしょう

今後厳しくなる一方の米国防予算枠の中で、この「Vanguard計画」のような構想の存続は、一つの厳しさのバロメータとなるのでしょう

Vanguard計画関連の記事
「優先項目の無人機の群れ苦戦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-30
「決定米空軍研究所が重視する3分野」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-26
「5か月経過もVanguard対象未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-30

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オースチン国防長官が米軍態勢見直し開始を発表 [オースチン国防長官]

昨年1月以前に9月末までの予定でエスパー長官が開始済
在日米軍や在韓米軍の削減・分散も視野に入っていましたが

Posture Review.jpg4日、オースチン国防長官が声明を出し、米軍の全世界的な態勢見直し「global force posture review」を開始し、配置、配置戦力、戦略、任務等のレビューを行うと述べ、統合参謀本部議長と緊密に協議しながら政策担当国防次官が取りまとめると説明しました。ただし、いつまでに見直しを行うかについては言及していません

国防長官の声明文では、同日4日にバイデン大統領が、必要な時に戦う備えは欠かせないが、リスクがあってもまず外交の場で話し合いや協議を行う労を惜しむな、と政権内に指示したことを冒頭で引用し、最後にケネディー大統領の言葉「外交と国防は相反しない。互いに補い、強化しあう。どちらか一方だけでは失敗する」を引用して、態勢見直しにあたり同盟国等との協議を重視する姿勢を強調しています

Austin7.jpg具体的に声明では、「態勢見直しにあたっては同盟国やパートナー国と協議を行う。長官就任初日に述べたように、米国単独で任務は果たせない。世界中で米国は、大小さまざまな、長い古いに関わらず様々な同盟国等と肩を並べて立ち向かわねばならない。それらの国はそれぞれにユニークな能力や知見を有しており、それらとの関係は維持尊重するに値する」と丁寧に述べており、反面、相当にタフで衝撃度の大きい再編議論が予期される雰囲気を漂わせています

ただ冒頭でも示したように、この再編検討は前政権時から始まっています。その大きな狙いは対中国や対ロシアとの本格紛争対応であり、対中国でいえば、中国兵器の射程内に大規模な米軍戦力を放置しておくことはできないとの危機感が背景にあります。つまり、西太平洋地域においては、在日米軍や在韓米軍の削減、そして米本土や後方への分散配備の方向性を強く滲ませるものと考えるべきでしょう

本日は、そんな大きな流れを感じさせる国防長官や米軍関係者の発言を、昨年1月から時系列でご紹介しておきます

2020年1月13日:Milley統合参謀本部議長
Milley3.jpg・(アフリカにローテーション派遣されISRや空中給油や教育訓練等々のために派遣されている約1万人の米軍兵士を)削減して資源を米本土やアジア太平洋にシフトすることも考えられる
・エスパー国防長官は、何を変えるかについて何の意思決定もしていない」と述べ、「我々は国防長官にいくつかのオプションを準備しているのだ。同盟国等と協議しつつ、選択肢を検討しているのだ
解説報道→米国はこのようなアフリカでの米軍プレゼンスを今後2-3年で削減し、中国やロシア対処に振り向けたいと考えている)

同年1月23日:エスパー長官
・地域コマンド間の兵力再編(COCOM-by-COCOM review of U.S. force posture)を計画している。次年度予算期間となる2020年10月1日までにはレビューを完了したい

同年7月21日:エスパー長官
Esper RAND2.jpg・(WSJ紙が、統合参謀本部がホワイトハウスに対し、在韓米軍削減オプションを複数案提示したとの報道に関し、否定せず、)全ての地域戦闘コマンドの状況を見ているところであり、国家防衛戦略NDS遂行のため、最適化した配置を検討している。検討は米国により柔軟性を提供することを狙いとするもの
・最近米空軍爆撃機部隊が始めた、グアム島に駐留派遣する形式ではなく、米本土の基地から必要時に長距離直接派遣を情勢に応じ柔軟に行う「dynamic force employments」方式を、海軍艦艇や地上部隊にも適用するオプションも含まれる

同年7月21日:Davidson太平洋軍司令官
・米軍がF-35など新たな高性能装備を導入する過程で、北朝鮮と今夜から対峙することになっても勝利を収めることが可能な態勢が変化することはあり得る。地域戦闘コマンド司令官として、どのような態勢が任務達成のために必要なのかを見極めることは、司令官としての責務である。どの部隊を新たに導入し、どの部隊を米本国に戻すかをのガイダンスを、情勢に応じて示す必要があ

同年7月21日:Hoffman国防省報道官
・いくつかの地域戦闘コマンドは、より効率的な米軍全体の態勢を考える上で、変更の必要性や可能性がある伝統的な任務や行動を背負っている

同年7月29日:エスパー長官
Esper5.jpeg・(トランプ大統領が6月に発表した「ドイツが国防費を増加させないことへの制裁」としての駐留米軍削減について、)大統領の指示以前から検討していた世界的な米軍再編の一環だ。当初言われていた0.95万人規模より多い約1.2万人規模の削減を計画している
・(米欧州軍司令官と共に会見で)削減する1.2万人の約半数にあたる6400名は米本土へ帰還し、他はポーランドやイタリア、バルト三国や黒海周辺地域に移動してNATO戦力配置をより東に移動させる方向で、ドイツには依然として欧州最大の24000名が残る

同年8月末:エスパー長官
・国防長官として西太平洋のパラオ共和国を初訪問し、パラオとの間で米軍が使用可能な港湾、空港、基地施設に合意

同年9月23日:Berger海兵隊司令官
Berger.jpg(中国の脅威増大を背景に、)WW2や朝鮮戦争後に形成された現在の米海兵隊の西太平洋地域での配置は、今後10年を考える時、統合戦力にとって現在の体制は良い体制(not a great posture)ではない。見直しを行っている
・グアムにも一部を置かねばならない(We have to factor in Guam)。我々は太平洋地域全体に分散した態勢を取らねばならず、これにより地域の同盟国やパートナー国と協力し、中国のような国際規範を書き換えようとする国々を抑止しなければならない

(同発言を受けた各種軍事メディア報道)
→米海軍と海兵隊プレゼンスは、西太平洋で日本に大きく依存している。空母や駆逐艦を横須賀で、強襲揚陸艦は佐世保を拠点としている。海兵隊もIII Marine Expeditionary Forceの約1.8万人を沖縄においているが、専門家は、中国からのミサイルや爆撃機攻撃に対して脆弱な固定基地に戦力が集中していることに疑問を呈している。海兵隊は今後数年(in coming years)で、数千名の兵員と家族を沖縄からグアムに移すことを計画している
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ASB6.jpg独駐留米軍1.2万人の削減については、この態勢見直しが終わるまで凍結・・との方針が示され、欧州の変化がどうなるか見えませんが、大きな流れは本格紛争への備えと分散だと思います

エアシーバトル・コンセプトが公表された10年ほど前から、在日米軍や極東米軍の中国正面からの「転進」可能性について、軍事的合理性に沿ったものだと予想してきましたが、すぐ目の前に迫ってきたということでしょう

ASEANPlus.jpgこの態勢見直しについて日本のメディアが、日本との関係について全く触れていないのがとっても不思議です。関係ないどころが、在日米軍の見直しは本丸の一つだと思いますし、だからあえてバイデン大統領の「外交重視」「協議重視」声明とタイアップして打ち出されたのに・・・

中東でのイスラエルと複数アラブ諸国との国交樹立や、この米軍の態勢見直し開始に関する日本のメディアや論壇を見ると、大丈夫か???と思います

米軍再編関連の記事
「司令官が在日米海兵隊削減を示唆」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-25
「ドイツ駐留米軍削減発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-30
「在韓米軍削減案報道に長官は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-22
「9月末までに米軍再編検討を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-14
「アジア太平洋で基地増設検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-28 
「新統合作戦コンセプトを年末までに」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-18
「太平洋軍司令官が議会に要望」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-29

在日米軍基地は有事には
「米空軍はアジアで米海兵隊と同じ方向へ!」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-25
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21

中国軍事脅威の本質は
「脅威の変化を語らせて下さい」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
「中国軍事脅威の本質を考えよう」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-12-30
「A Balanced Strategyを振り返る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2011-11-27

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民間衛星で商用電波を収集し安全保障に活用 [安全保障全般]

民間会社「HawkEye 360」の衛星を利用して
中国漁船や中国の怪しげな調査船、密猟者の動きも
商用情報なので同盟国等との共有も容易

HawkEye360.jpg26日付C4ISRnetは、米国のNGA(米地理空間情報庁:National Geospatial-Intelligence Agency)が民間会社「HawkEye 360」と協力し、商用に使用されている無線やレーダー電波情報を収集して、従来分析対象だった軍事電波衛星以外の、広範膨大な商用電波情報を分析に活用する試験プログラムを開始していると紹介しています

従来安全保障当局が分析に使用していたのは、細部不明ながら限られた範囲の電波情報です。一方で今回対象とするのは民間船舶が使用する通信や海上捜索レーダー、商用衛星通信や携帯電話電波で、衛星からの情報収集で位置特定や特異な動きの兆候を察知できるようです

HawkEye3602.jpg民間会社「HawkEye 360」のwebサイトでは、中国漁船の違法操業や中国調査船の動きを捉えることが出来るとか、密輸や不正行為につながる艦船動向の察知とか、アフリカの動物保護区での密猟者の動き特定とか、武漢でのコロナ騒動を河川海上交通の動きから分析できるとか・・・商用無線通信情報の収集が様々な可能性を秘めているとアピールし、民間分野への情報提供だけでなく、安全保障機関との緊密な連携も紹介しています

軍事衛星情報との差は明確になっていませんが、商用衛星による商用電波収集で得られた情報は、同盟国等との共有に制限がなく、ややこしい情報共有や情報管理の取り決め仕組みやハード整備の必要がないことが売りで、友好国との関係強化の強いカードとして米国は重視しているようです

日本でも(株)衛星ネットワークが「HawkEye 360」のサービス提供窓口になっているようで、分かりやすいwebページが開設されていますので、一度覗いていただいてみてはいかがでしょうか

26日付C4ISRnet記事によれば
hawkeye3606.jpgこのNGAの試験プログラムは、2019年にNRO(National Reconnaissance Office)とHawkEye 360社が結んだ契約に基づくもので、これで同社が集める商用衛星による商用通信や商用電波情報が入手できることになった。そして国家機関であるNROはこれら情報を、国防省の関係機関や他の情報機関に提供している

HawkEye 360は、3個の衛星で1セットを構成する最初の衛星セットを2018年に打ち上げ、今年1月にSpaceXのFalcon 9で追加の1セットを打ち上げているが、今年後半には更なる衛星追加打ち上げを予定している
衛星セットを増やすことにより、より多くの情報を収集できることは無論だが、同じ目標の情報収集に当たる時間間隔を短くできる点で大きな効果が期待できる

HawkEye3603.jpg現在は5時間おきに再観測可能な体制だが、間もなく2時間おきの観測が可能となり、年末には1時間おきの観測間隔が実現可能となる((株)衛星ネットワークのwebサイトでは、今年から12-35分間隔の情報収集が可能と記載されている。恐らく日本周辺のサービスレベルは高いかも
また同社は地上インフラへの投資も進め、衛星情報をより迅速に顧客へ届ける体制構築も進めている

HawkEye 360社のCEOであるJohn Serafini氏は、「NGAは膨大な商用通信電波にアクセスせず、独自衛星の非常に高度な非公開情報だけで分析を行ってきたが、商用データを使用した分析結果は、同盟国やパートナー国との情報共有を容易にする」とその意味を説明した
世界中の商用電波を分析して得られる発信源の位置情報や電波の変化情報から、識別装置をオフにして活動する船舶の動きを把握したり、戦場での通信電波状況把握で兵士たちに貢献するなど、様々な活用法が考えられてい

(株)衛星ネットワークのwebサイトによれば
測定可能出力は、未知信号で5W以上で、既知信号:1W以上

HawkEye3605.jpg提供情報は ①電波発信場所の特定
②電波特性解析による対象物(船舶等)の特定
③指定電波の電波密度を測定し、対象エリアの変化を観測

●想定利用例
AIS情報の正誤判定、AIS以外の電波信号による船舶検出
不審船の追跡
電波ヒートマップからの異常検出
GPS妨害電波発信源の特定
レーダー電波発信源の特定

対象物から発信される電波(VHF、UHF、L-band、X-band 等)を受信解析し、その対象物の位置を特定
特定周波数の電波(レーダー、衛星TT&C信号、GPSジャミング信号 等)の電波密度を測定し電波ヒートマップを作成。その発信源の特定や電波パターンの変化による異常事態の発生を検知
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HawkEye 360社のwebサイト
https://www.he360.com/

(株)衛星ネットワークのwebサイト関連ページ
https://www.snet.co.jp/planet/hawkeye360/

HawkEye3604.jpg(株)衛星ネットワークwebサイトには、小型ミカン箱程度の衛星概要や、電波密度ヒートマップなどなど、様々な情報を掲載しています。日本でこの情報を誰を対象に売るのか興味深いですが、自衛隊や海上保安庁や・・・でしょうか?

衛星技術の進歩や衛星打ち上げの商用化推進によってこのようなビジネスが成立するようになって来たのかと思いますが、国の予算も投入して、上手く活用して頂きたいものです

電波関連さまざま
「5G企業へのCバンド売却で電波高度計に懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-22
「炎上中:5G企業へのGPS近傍電波使用許可」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-14
「5G企業に国防省大反対の周波数使用許可へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-11
「米議会でも国防省使用の周波数議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-05
「ファーウェイ5G使用は米国との関係に障害」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-17
「軍事レーダーの干渉確認」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-05
「5G企業とGPS関係者がLバンド電波巡り激突中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22-2
「戦略コマンドが5Gとの電波争奪に懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-27
「GPSが30日間停止したら」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-18
「5G試験のため民間に演習場提供案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-14

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国防副長官候補の女性が政策方針を語る [米国防省高官]

議会承認に何の問題もないと評判の元政策担当次官
国防省業務移行チーム長だったKathleen Hicks女史
出勤初日から「即戦力」の呼び声高く

Hicks5.jpg2日、国防副長官候補のKathleen Hicks元政策担当国防次官が、議会承認を得るため上院軍事委員会ヒアリングに臨み、3時間以上に渡り重鎮議員からの広範な質問に対応しましが、予想されていたように極めてスムーズな対応で、「光速で承認されるだろう」「出勤第1日目から即戦力」とメディアは予想しています

Kathleen Hicks女史は、1996年から2006年の間に最初のペンタゴン勤務を経験し、その後2009年までCSISで国防関係研究に従事し、2009年から戦略計画担当国防次官、2021年から政策担当国防次官を務めました。2013年に退任後も複数の米議会評議会のメンバーを務めつつ、同時にCSISの研究員として活躍し、直近ではバイデン政権の国防省業務移行チーム長を務めていた実力派です

Hicks.jpg国防副長官に就任が認められれば、女性として初めて正式な国防副長官(Christine Fox女史が2013-14年に臨時副長官)が誕生しますし、実務面で国防省を引っ張ると言われる人物ですので、議会での発言からDefense-Newsが注目した発言をご紹介しておきます

2日付Defense-News記事によればHicks女史は上院で
厳しい予算配分や運用について
Hicks4.jpg--- 良くて現状維持と言われる予算状況の中、部隊装備や規模拡大が望めないと米軍内が沈滞することを防止するため、統合戦力発揮に資することを大前提に、士官の昇任枠などインセンティブには配慮し、部隊の活力を維持したい
--- また4軍への予算配分については、既得権益にとらわれず、良いアイディアを出した軍種予算を守る方針で臨みたい。また米空軍予算内ながら、実質は他政府機関に流れる部分については、空軍の主張にも耳を傾けて対応したい

米海軍の艦艇建造計画
--- トランプ政権時代にまとめられた艦艇建造計画については、大きな方向性は間違いないし、自立性自動化の導入加速、戦力の分散運用追求、現在より小型の水上艦艇指向などについては同意する
--- 一方で、艦艇建造数については、その算定根拠や見積もり手法の精査が必要と考えている。米海軍指導部の体制を早期に固め、バイデン政権のプランをまとめる

同盟国への国防費増額要求
Hicks3.jpg--- (トランプ大統領がNATOや韓国や日本に対し、国防支出を増やすように強硬に求めた件に関し、)米国は常に負担の共有を訴え、同盟国にはそのコミットメントを果たすよう求めてきたが、大きな同盟の戦略的価値を戦術的な問題が上回ることはあり得る(tactical issue that overrides the strategic value of the alliances)し、非戦略的なこともあり得
--- 同盟国に求めるコミットメントの意味を戦略的に考えるべきだ。時には支出を通じてであろうし、国防支出を通じてだろう。しかし時にはそれが他の手段であることも考えられる。コミットメントについて戦略的に考える必要がある

レイセンオン社関連案件にオースチン国防長官が関与不可
--- 国防長官就任以前にレイセオン社の役員であったオースチン国防長官は、国防長官として同社関連の案件には一切関与できないことから、国防省にとっての大きな案件である核兵器近代化事業の次期ICBMのGBSD計画やLRSO(核搭載巡航ミサイル)計画は、他のミサイル防衛システム関連事業と合わせ、副長官が一切を取り仕切ることになる。(提出書面でこの任をHicks女史が負うと説明している)

核兵器の近代化事業について
Hicks2.jpg--- 核兵器の近代化全般には賛成だが、個々の事業についての姿勢を示さなかったオースチン長官と同様に、全ての核兵器近代化プログラムを支持するとまでは言及しなかった。特に前述のGBSDやLRSOに対して民主党内や非拡散推進派から強い反対論があることを踏まえた姿勢とみられる
--- 核抑止の3本柱は良く機能しており、安定に寄与しているが、(バイデン政権が出すと言われている)「核兵器先制不使用」宣言は、高いレベルでの判断である。また核兵器の近代化等は「予算」からではなく、戦略に基づき決定されるべき
--- バイデン政権下で新たにNPR(核体制見直し)を国防省が行う。本件に関し専門家は、低出力核弾頭導入を求めたトランプ政権時のNPRとは、幾つかの点で異なった方向性を示すと見ている

政権移行作業の遅れと2022年度予算
--- (大統領選挙結果をトランプ前大統領がなかなか受け入れなかったことで、一部の前政権関係者が業務引継ぎ作業を妨げたと言われている件に関し、)一部の者が政権移行業務を難しくした。その結果として2022年度予算案の提出が遅れる可能性がある
--- 前政権が作業した2022年度案に初めて目を通したのが1月末だった。この遅れにより春には議会に提出するはずの予算編成作業が、通常より遅れる可能性があることに関し、米議会皆様にはご理解いただきたい
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Hicks6.jpgレイセオン関連の案件を全てHicks女史が仕切ることになる影響の大きさを改めて認識しました。ミサイルや誘導兵器のほとんどにレイセオンは関係しているしょうから、国防長官が参加する会議の仕分けだけでも大変そうです

日本では全く見かけない雰囲気の、とても聡明そうな方ですので期待いたしましょう。きれいな方ですね!

米海軍の関連記事
「米国防長官が米海軍体制検討のさわりを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-18-1
「21年初に本格無人システム演習を太平洋で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-10-1 
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇推進案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10

GBSD関連の記事
バイデン政権関係者やシンクタンクのICBMミニットマンⅢの延命措置提言に、米戦略軍司令官が真っ向反論
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-07

同盟国に国防支出増を強行要求
「日本などにも2%要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-19
「国防長官が1.2万名削減計画を発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-30
「独駐留米軍を1万人削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-16
「基地勤務の韓国人5千名レイオフ開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-01

昨年の大統領選挙直後の予想記事
「バイデン政権で国防政策はどう変わるのか」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-09
オースチン国防長官のご紹介記事
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-23

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Lord次官:最後はF-35稼働率の状況説明 [亡国のF-35]

複数ある任務の一つでも可能な機体は69%
全ての任務が可能な機体は39%
ご紹介が遅くなってしまいましたが・・・ 

Lord2.jpg1月19日、20日正午に退任したEllen Lord調達担当国防次官が最後の記者会見を行い、F-35の稼働率改善状況について説明しました。

F-35の稼働率については以前から何回かご紹介してきましたが、この会見の模様を報じるDefense-News記事もコメントしているように、その発表事項の統計の範囲や数値の定義が「安全保障上の非公開事項」にあたるとして明確でないため、あまり突っ込んで議論もできないのですが、大まかな傾向としてご紹介しておきます

Mattis.jpgちなみに米軍は、当時のMattis国防長官から主要な戦闘機(F-22、F-35、F-16、FA-18)の稼働率80%を達成せよと指示されましたが、結局クリアーすることができず、Mattis長官退任後に、「単純な稼働率80%目標は、部隊任務達成度合いに比例しない」と理由をつけ、従来からの部隊ごと機種ごとの目標設定に回帰しています

そんな中で、Lord次官がF-35の稼働率について最後の会見で説明したのかよくわかりませんが、米軍が抱える調達や維持整備の問題の典型として、また史上最大の装備品調達であるF-35の状況に触れる責任を感じたのかもしれません

20日付Defense-News記事によれば
F-35 3-type.jpg19日、記者団に対しLord次官は、F-35は引き続き稼働率目標達成のために努力を続けているが、目標としている80%には到達していないと説明した
具体的に同次官は、「多数ある任務の一つでも可能:can meet at least one of its assigned missions」な機体の割合は現状で69%で、目標の80%に達していないと述べ、「全ての任務が遂行可能な機体:fully mission capable aircraft」の割合は36%で、目標50%に向け努力していると説明した

これら稼働率が改善されない主な理由として同次官は、キャノピーの表面剥離やF135エンジン関連問題があると語った
同次官は細部には言及しなかったが、キャノピーについては以前から表面のコーティング剥離が課題となっており、2019年に国防省F-35準備室報道官が製造メーカー「GKN Aerospace」と改善協議を行っていると説明していたところである

ただ、国防省としては、種々の問題を抱えつつも、F-35の稼働率は改善していると説明を続けており、例えば

●2020年7月の下院委員会でLord次官は
F-35稼働率は、2020年1月には60%であったが、同年6月には70%に上昇した。また全ての任務が可能な機体比率は、同期間で40%から50%に上昇したと説明し

●2019年11月の下院委員会でLord次官は
戦闘任務にあたる飛行部隊での稼働率は、2018年10月の55%から、2019年9月の73%に上昇した・・・等と説明してきている

F-35B.jpg一方で、この「稼働率」がどのような統計数値を基に算出されているのかは、「作戦運用上の非公開事項」であるとして不明確な部分も多く、公表数値がF-35の中でも初期に納入されて教育部隊で主に使用されている稼働率の低い機体を含めた数値である場合や、「作戦用部隊:combat-coded squadrons」の数値である場合がまちまちで、単純な比較が難しいケースもある
会計検査院GAOレポートでも、2018年度はF-35の3タイプ全てで稼働率が向上したと記載されているものの、細部データが記載されていないケースがある

また、2020年11月の会計検査院GAOレポートでは以下のような説明があるが、年度ごとの稼働率の細部は公開されず、毎月継続的に上昇しているのか、凸凹がかなりあるが上昇しているのか等の傾向は読み取れない
--- 2012年から2019年の間で、F-35Aが国防省が定めた目標稼働率を達成したのは2年のみ
--- 2013年から2019年の間で、F-35Bが同様の目標達成は1年のみ、F-35Cは2年のみ
--- 目標稼働率を達成できなかった主要な原因は、修理に必要な部品不足である。サプライチェーンが前線部隊が必要とする部品をタイムリーに提供できないのだが、加えて、部品が想定していたよりも頻繁に壊れ、また米軍内の補修能力が故障に十分対応できない点も低い稼働率の要因である
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F-35 Gilmore.jpg軍隊とすれば、重要装備品の稼働率は隠したい数値ですので致し方ないのですが、開発と部隊導入を同時に進めた結果、様々なバージョンが部隊で混在し、維持整備に困難を抱えているF-35の状態を垣間見るためにご紹介いたしました

最近F-35関連報道は減少傾向ですが、米空軍F-35の保有機数は昨年夏時点で機種別第3位(1位F-16が938機、2位A-10が281機、3位F-35Aは241機)で、今年春にはA-10を抜いて第2位になる見込みです。開発途中のF-35ですが、早くも維持整備問題が大きな課題の「亡国のF-35」です

航空自衛隊のF-35部隊の状況は不明ですが、苦労されていないことを願います

主要戦闘機の稼働率問題など
「8割目標を放棄」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-08
「海軍FA-18は何とか達成?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-25
「米空軍はF-16のみ達成可能」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-09-06
「戦闘機稼働率8割への課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-09
「マティス国防長官が指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-11

「B-1爆撃機の稼働機一桁の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-05
「2Bソフト機は稼働率4割台」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-1
「2/3が飛行不能FA-18の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-07
「世界中のF-35稼働率は5割」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-3

最近のF-35関連記事
「新型戦術核搭載飛行試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-28
「5月の事故対策改修は秘密」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-24
「ODIN提供開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-24
「中東でかく戦えり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07
「B型とC型が超音速飛行制限甘受」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-27
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

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https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

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https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

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