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Cope North GuamでF-35とF-16が不整地離着陸を [米空軍]

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ACE(Agile Combat Employment)訓練の一環として
グアム島Northwest Fieldを活用する模様
パラオ国際空港とアンガウル島でも何か訓練(空自機も)

Sloane2.jpg26日、グアム島の米空軍アンダーセン基地司令官&第36航空団司令官であるJeremy T. Sloane准将が、1月末から2月に米日豪軍共同(HADR部分に仏軍も参加)で実施する「Cope North Guam21」について、今年の目玉として、米空軍F-35とF-16が荒れた滑走路や設備の飛行場で離着陸や再発進準備訓練を行うと米空軍協会のバーチャルイベントで明らかにしました

実際の訓練は、アンダーセン基地の北西に位置する「Northwest Field」と呼ばれるWW2当時の飛行場、普段は人が維持管理していないジャングルに囲まれた8000フィート以下の滑走路と限定的な駐機施設しかない場所で計画されているようで、同基地司令官は「no-kidding remote environment:冗談じゃなく本当の僻地環境だ」と表現しています

Northwest Field3.jpegこのような訓練は、対中国などの本格紛争で、アンダーセン基地等の拠点根拠基地は敵からのミサイル攻撃等で被害を受ける可能性が高いことから、戦闘機などを普段は使用しない設備不十分な周辺飛行場に分散して運用するACE(Agile Combat Employment)作戦構想実現に向けたものです

ACE構想実現には、同盟国や友好国の飛行場施設利用承諾、展開先で使用する航空機用の地上機材や燃料弾薬の確保事前備蓄、緊急時の所要人員や機材の輸送力確保、展開先において限られた人員で航空アセットをケアする多能力人材の育成などの多くの課題がありますが、米空軍はアジア太平洋だけでなく、世界各地で同様の取り組みを行い、共通の手順等を確立しようとしているところです

「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-13
「中東派遣F-35部隊も挑戦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19

Palau1.jpgなお、今回目玉の不整地使用訓練との関係は不明ですが、「Cope North Guam21」にはパラオ共和国の国際空港や離島(アンガウル島)も訓練場所に含まれており、Sloane准将はコロナワクチン接種での便宜供与や災害対処等で、これら地域との関係強化を図り拠点確保につなげる重要性まで語っています

26日付米空軍協会web記事によれば
Cope North Guam21を統括するSloane航空団司令官は、今回の本訓練で、アラスカから参加のF-35と三沢から参加のF-16が、従来C-130やヘリしか使用したことのない不整地飛行場(rough airfield)での訓練に参加するとともに、小規模な緊急展開チームが航空機到着直前に移動して滑走路を整え、緊急時の移動式バリアを設置し、給油体制を整える訓練も行うとと説明した
Sloane.JPGまた同司令官は「中国やロシアからの脅威はますます高まっており、設備が充実した飛行場依存から脱却しなければならない。長距離爆撃機が我らの弱点を補ってくれるが、足の短い戦闘機等の運用確保ができなければ、良い結果は得られないだろう」とACE構想の重要性を説明した

更に「アンダーセン基地は太平洋地域で最も西側に位置しており、(対中国作戦の)カギとなる位置にある。しかし一方で、攻撃目標になりやすいことも意味している」と危機感を表現した
昨年9月、中国空軍がH-6爆撃機搭載ミサイルでアンダーセン基地を攻撃する挑発的な模擬映像を公開し、これに対して太平洋空軍が「地域に対する脅迫・恫喝行為だ」と非難したが、同基地司令官は「ACE構想の重要性や分散拠点を提供してくれる同盟国等との関係構築の重要性を再認識させてくれるものだ」と言及した

Northwest Field.JPGそして「我々はカギとなる太平洋島嶼国家との積極的関与に努めなくてはならないし、現実的で意味ある関係強化を進めること、つまりコロナワクチン接種支援であったり、話題にならない規模における災害対処支援等を通じて、アクセス確保に取り組む必要がある」と語った
なお今年のCope North Guam21には、米空軍と航空自衛隊と豪空軍から約100機と2500名の人員が参加する予定である。なお昨年の同訓練では、パラオで、F-22がエンジンを回したままC-130から燃料補給を受ける「hot-pit refueling」が行われた
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1月15日付のCope North Guam21関連の航空自衛隊発表によれば、訓練は大きく2つ、日米豪軍の「戦闘戦術訓練」と、日米豪仏軍による「HADR:人道支援・災害対処訓練」から構成されており、両方の訓練がグアム島とパラオの国際空港&アンガウル島で実施されることになっています。ということは、自衛隊機(戦闘機か輸送機)もパラオに着陸して訓練するのでしょう

Palau.jpgまた、「HADR」訓練には空自のC-2輸送機と基地警備教導隊員約10名が参加となっています。「HADR」活動を想定し、活動地域周辺の警備訓練を行うのでしょうか・・・それとも・・・

米軍がグアムの基地の被害を想定して一生懸命訓練しているのですから、日本だって当然何か考えているのでしょうし、考える必要があります。ちなみにパラオには昨年8月、米国防長官として初めてエスパー国防長官が訪問し、関係テコ入れを図りました

1月15日付の航空自衛隊訓練参加発表
千歳F-15と築城F-2と浜松AWACSと美保C-2で約250名
(基地警備教導隊員約10名も含む)
1月18日(月)~2月28日(日)
https://www.mod.go.jp/asdf/news/houdou/R2/20210115.pdf

対中想定の分散運用ACE関連記事
「米空軍若手がACEの課題を語る」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-13
「中東派遣F-35部隊も挑戦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「三沢でACE訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08

グアム関連の話題
「中国空軍がグアム攻撃動画」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23
「エスパー長官がパラオ初訪問」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-25
「グアムにイージスアショア熱望」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-23

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バイデン大統領がトランスジェンダーの米軍勤務再許可 [オースチン国防長官]

オバマ政権時2016年7月に認められた措置復活
2017年7月にトランプ大統領が出した禁止令を撤廃
Transgenderとは生まれながらの性に違和感を持つ人

Biden executive order.jpg25日バイデン大統領が、2017年7月26日にトランプ大統領が出した「トランスジェンダーの米軍勤務を認めない」指示を撤回し、オバマ政権時のカーター国防長官が2016年7月から採用した「トランスジェンダーの米軍兵士としての採用を妨げず、性転換医療を提供する」状態に戻すとの大統領令を出しました

2017年7月26日にトランプ大統領が「米軍勤務を認めない」指示をツイッターで発表した際はMattis長官が休暇中で、その直前に当時のMattis国防長官が「認めない指示」の影響や必要措置を十分検討評価する必要があるから2017年12月1日まで変更凍結指示を出した直後のツイートだったこともあり、大統領と国防長官の不一致を白日の下にさらすこととなりました

Trump transgender2.jpg「採用を妨げない」指示が出た2016年にRAND研究所が出したレポートは、米軍が把握していない(公表していない?)トランスジェンダーの人数を「1320名~6630名の間」と推測し、その一部が性転換措置を希望すると見積もって、その医療費(Active component health careまたはtransition-related careと呼称)を負担すると3億円から9億円の医療コストが毎年発生すると推計しています

また、2016年に国防省は「トランスジェンダー者が米軍に勤務しても、作戦遂行や部隊団結上の大きな影響はない」とのレポートを出し、2018年の米議会証言で当時の4軍制服トップはそろって「部隊団結上の問題を感じていない」と述べてたようです

2016年7月から「○」で、2017年7月に「×」になり、2021年2月に再び「○」のジェットコースター状態で、2017年7月時点で米軍内で勤務していたトランスジェンダー兵士がどのような扱いを受けたか把握していませんが、「多様性」を打ち出す民主党バイデン政権の一つの一貫した姿勢ですので、公式発表を中心にご紹介しておきます

25日付米空軍協会web記事によれば
Biden executive order2.jpgバイデン大統領の大統領令を受けホワイトハウスは声明を出し、「バイデン大統領は、性同一性が軍務に服する妨げになってはならないとの信念を持っており、米国の強みは多様性に基づくものだと考えている」、「基準を満たした全ての米国民が軍務に服す権利を有することは、我々の価値観の核心である。米国は包容力を持つことで、国内外でより強くなる。米軍も例外ではない。包容力ある軍はより効果的な軍であり、基準を満たした全ての米国民が軍務に服すことで、米軍や米国はよりよくなる」と述べている

大統領令を受けオースチン国防長官も直ちに声明を出し、「トランスジェンダーだと認識している者は、自身が認識する性別で米軍に入隊し、任務に就くことができる」、「自身が認識する性別(gender identity)により、何人も差別されたり、除隊を命ぜられたり、採用を拒否されたりすることはない」と明示した
Austin transgender.jpgまた「全ての性転換医療(transition-related care)が米軍人に提供される」とも同長官は声明で明らかにし、「我々の基準を満たして能力があり、かつ軍務に服する意志ある者が排除されるようなことがあれば、我々の任務遂行能力は低下する」、「これは正しく、賢明な措置である」と声明は記している

ホワイトハウスは国防省に、大統領令から60日後に、同大統領令の遂行状況を報告するよう求めている
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2017年7月26日にトランプ大統領が「米軍勤務を認めない」指示をツイッターで発表した際は、「米軍の将軍たちや軍事専門家と協議した結果、トランスジェンダーが米軍で勤務することを、どのような形であれ認めないこととした」、「わが軍は決定的で圧倒的な勝利のために集中すべきであり、トランスジェンダーが軍内に存在することで生ずる混乱や医療コストを負担すべきでない」とバッサリ断言しています

Trump transgender.jpgまさにジェットコースターです。想像力に乏しいまんぐーすには米軍前線部隊の状況が想像できないのですが、米軍陸上競技会とか水泳競技会とかが開催された場合、トランスジェンダーの方の性別はどのような扱いになるのでしょうか・・・枝葉末節の話ですが・・・

それにしても、性転換措置の医療費(Active component health careまたはtransition-related care)を負担するとは太っ腹です。巷の手術希望者望者が入隊し、手術後にさっさと除隊するケースも出てくるのでしょう。前線部隊指揮官は大変ですねぇ・・・

昨年の大統領選挙直後の予想記事
「バイデン政権で国防政策はどう変わるのか」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-09

ジェンダー関連と米軍
「トランプ大統領、米軍でトランスジェンダー認めない発言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-28-2
「同性愛者の陸軍長官」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01
「同性愛者対応の変更に関するゲーツ国防長官メッセージ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-01

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英新型空母と米駆逐艦が空母攻撃群を編成し作戦行動へ [安全保障全般]

艦載機F-35を必要数購入できない英軍と
F-35搭載可能な強襲揚陸艦火災損失の米海軍
悲哀に満ちた「win-win」関係とも考えられ・・・

Queen Elizabeth.jpg18日、英海軍の新型空母エリザベスと米海軍の駆逐艦Sullivansが空母攻撃群を編成し、空母エリザベスの指揮のもと、2021年後半から作戦行動を行う旨の合意文書に、米国防長官(20日退任のMiller臨時長官)とBen Wallace英国防大臣が署名しました。具体的には、今年後半に英国ポーツマス港から艦隊として行動を開始する予定だそうです

この米英混合編成の空母攻撃群については、昨年11月に英国のジョンソン首相が、「空母エリザベスが英国と同盟国の空母攻撃群をリードし、最近20年間余りで最も期待に満ちた作戦行動を開始する」、「我々はより多くの海軍アセットを世界で最も重要な地域に派遣し、我が国を支える海上交通路を守る」、更に「地中海やインド洋や東アジアで任務に就く予定」で、英米同盟のさらなる深化を象徴するものだと説明していたところです

Sullivans USS.jpgちなみに空母エリザベスは、2017年春に進水し、昨年2018年夏から秋にF-35B搭載試験を米東海岸沖で3機の英軍F-35Bで開始し、2020年の秋は更に搭載機数や運用レベルを上げて「作戦能力試験:Operational Trials」を終了させ、2020年12月に初期運用態勢を宣言したばかりの英海軍新型空母です

ただし同空母は35機のF-35B搭載可能な設計になっていますが、厳しい財政事情から英軍は現時点でも最大24機の調達計画した打ち出せず、昨年夏時点で17機しか入手できていない状況です。その穴を埋めるかのように、米海兵隊F-35Bを同空母で運用させる枠組み作りや訓練が実施され、実際に昨年9月の同空母最大能力発揮試験は、10機の米海兵隊F-35Bが同空母に展開支援して米東海岸沖で行われたと記憶しております

F-35B.jpg米英力軍はこの試みを、単なる「相互運用性: interoperability」ではなく、相互に保有アセットを入れ替えても作戦運用可能な「戦力互換性:interchangeability」を目指す取り組みだと「美辞麗句」で表現していますが、英軍F-35機数不足加え、F-35搭載に向け改修中だった米海兵隊強襲揚陸艦Bonhomme Richardが昨年7月の火災で再起不能となり、F-35搭載可能艦艇の不足に悩む米海軍海兵隊にとっても「頼みの綱」の空母エリザベス様・・・状態となっています

もちろん、難しい空母運用を異なる国のアセット混合で行うことは非常にハイレベルな作戦運用であり、「戦力互換性:interchangeability」との一段高いレベルが米英同盟本領発揮の象徴であることは疑う余地がないのですが、互いの苦しい台所事情を慰めあう悲哀に満ちた「win-win」関係とも表現できましょう

20日付Military.com記事によれば
18日、米国防省は合意文書への両国の署名を受け、「この合意は、米国防戦略NDS実行のカギとなる米英同盟の強固さと相互運用性が、更に進化していることを裏付けるものである」との声明を出している
Wallace UK.jpgWallace英国防大臣も、「英国が21世紀の空母攻撃群を保有できたことを喜びとするとともに、これを可能にしてくれた過去10年余りにわたる米国の揺ぎ無き支援や協力に感謝する」と語った

米海兵隊の元航空部隊司令官であるSteven Rudder退役中将は本件に関し、空母エリザベスへの米海兵隊F-35の搭載運用について、「新たな運用形態標準:new normとなるだろう」と述べている
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「戦力互換性:interchangeability」確保に向けて努力されてきた米英両軍の皆さんにとって、少し失礼な表現の紹介となってしまったことを反省しております

Queen Elizabeth2.jpg日本が導入予定のF-35Bも、「新たな運用形態標準:new norm」への参加を打診されるのでしょう・・・。少なくとも訓練レベルでは

この法的整理は難しいでしょうねぇ・・・。作戦運用面では、航空自衛隊のパイロットが操縦ですから、海軍海兵隊式の運用になれることも容易ではないと思います

英空母エリザベスの悲しき現実
「コロナ下で800名乗艦で最終確認試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-01
「英空母エリザベスは米軍F-35B部隊と一体運用へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-26-1
「英海軍と英空軍共有のF-35Bが初任務」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-27
「米海兵隊F-35が英空母へ展開へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-09
「米軍F-35Bを英空母に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16
「英空母が航空機不足で米軍にお願い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

F-35搭載改修終了直前の惨事(放火)
「強襲揚陸艦Bonhomme Richard火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15

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核兵器禁止条約でごたごた言う前に [ふと考えること]

日本と核兵器について改めて考える
茂田宏氏の10年前の論考を再掲載

TPNW2.jpg1月22日に核兵器禁止条約が発効したことで、日本のメディアがパブロフの犬のように、広島や長崎市長、ICANやサーロー節子氏や反核団体のコメントを垂れ流しています

また、同条約の締約国会議に条約に参加していない国もオブザーバーとして参加可能なことから、国連軍縮担当の中満泉事務次長(立派な女性です)の「日本国内からもオブザーバー参加すべきとの意見が出ているが、ぜひそうなればいいと思う。これから条約に関する議論が始まる過程で、機会を逃さずにとらえていくことは、唯一の戦争被爆国の役割かもしれないと思う」との言葉を掲げ、「オブザーバ」参加を訴える報道が流布されています

核兵器保有国が参加していない条約について、このような片手落ちの報道だけに触れ、日本の将来を担う若者や次世代のリーダーが育つことに何ともいたたまれない気持ちになっていた今日この頃、日本と核兵器の問題について、わかりやすく解説されていた10年以上前の論考を思い出しました

茂田宏.jpg以下にご紹介する「核兵器の問題」との論考は、約10年前に茂田宏氏がご自身のブログ「国際情報センター」(Yahooブログ終了に伴い2019年12月に消滅)に掲載されたものです

茂田氏は、外交官として国際協定課長、ソ連課長、ソ連・韓国公使、国際情報局長、総理府PKO事務局長、イスラエル大使、対テロ担当大使などを歴任され、現在は岡崎久彦氏が亡くなった後の岡崎研究所の理事長&所長を務める方です

少し長い論考ですが、核兵器禁止条約発効の機会をとらえ、日本人としてぜひ原点に返ってこの問題を考えていただきたいと思い、茂田氏が10年以上前にブログに掲載された論考「核兵器の問題」を再度ご紹介いたします。

核兵器の問題

1、 日本は核兵器の威力を身をもって体験した唯一の核被爆国である。私はこれまで広島、長崎を何度も訪ね、原爆の破壊力、その非人道性を見てきた。広島、長崎への原爆投下は軍事目標ではなく、都市を攻撃したもので、戦争法上、違法であると考えている。

1996年7月に国際司法裁判所は、核兵器の使用および威嚇の合法性に関する勧告的意見(一般的に国際法、特に人道に関する国際法に違反。しかし国家存亡の危機の使用は合法か違法か、結論を出せない)を出しているが、それが今の国際社会の意見であろう。

2、核兵器について広島、長崎で私が考えたことは、日本国民がこういう惨禍に再び見舞われてはならない、それが何よりも重要である、ということである

3、 日本の戦後の核兵器政策は、国是と言われる非核3原則である。しかしこの政策は、日本が再び核の惨禍に見舞われるのを阻止するのに資する政策かというと、そうではない。核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずというのは、広島、長崎の経験を踏まえた反核感情に沿う政策であるが、国際政治の現実を踏まえた国家安全保障政策として、適切であるのか疑問である

戦後の日本では、核兵器の問題を安全保障政策上の問題として討議することはタブーになってきた。広島、長崎での原爆の悲惨さが語られることがあっても、何故今も核兵器が引き続き多くの国の安全保障政策の中で重要な位置付けを占めているのかについての真面目な議論はない。これはあたかも戦争の悲惨さを語ることに熱心であるが、戦争がなぜ起こるかを研究しない戦後の日本に支配的な姿勢と軌を一つにしている。

ある時NHKの討論番組で、ある高名な国際政治学者が、日本が核保有することには何のメリットもなく、マイナスばかりであると発言していた。国際政治学者の意見とはとても思えない発言である。

米が1945年にこの兵器を開発した後、1949年にソ連が、1952年に英が、1960年に仏が、1964年に中が、1974年にインドが、1988年にパキスタンが、2006年に北朝鮮が核兵器を実験した。イスラエルと南アも核兵器を保有した。南アは黒人政権成立直前に廃棄した。イラン、リビヤ、シリヤ、イラクも開発しようとした。中華民国(台湾)も開発を試みたが、米の要求を受け入れ、やめたことを2007年に公表した。韓国も朴政権時代に開発しようとした

ブラジルとアルゼンチンも、1990年に共同で核開発停止を発表するまで開発努力を続けた。中立国であるスエーデン、スイスも核兵器開発を行っていたが、スエーデンは1970年に核不拡散条約署名とともに開発計画を放棄し、スイスは1988年に放棄した

れらの国は、自国の安全保障のために核兵器の保有が必要であると、一時的にではあれ判断した。この国際政治学者の言うように、核兵器保有が何のメリットもなく、マイナスばかりであるのなら、なぜかくも多くの国が核のオプションを考えたのか、説明がつかない。国際政治の議論は現実をよく見て、それに基づきなされなければならない

核兵器の保有はその国にとり大きな安全保障上のメリットがあると言う考え方は十分に成り立つ。にもかかわらず、それを断念すると言う決断をすることもありうる。それは周辺からの脅威や核保有同盟国の有無など、諸要因を考えて決めるべき問題である

ドゴールが米と同盟しつつ、何故独自の核保有を必要と判断したのか。毛沢東が「上策は核をすべてなくすこと、中策は他国も持っているから持つこと、下策は他国が持っているのに自分だけ持たないことであるが、中国は中策を選ぶ」とした判断をどう考えるか。英国でトライデント潜水艦更新時に毎回繰り返される、米の核の傘に頼るだけで十分で独自核は要らないのではないかとの論争と、それが毎回独自核保有は必要と言う結論になることをどう考えるか。そういう議論をよく踏まえた上で、かつ周辺の状況もよく見た上で、日本も議論をすべきであると考える。単にタブー視して、議論を避けるのは責任ある態度ではない。

4、 日本は不幸なことに核兵器保有国に取り囲まれている。同盟国の米に加え、中・露・北朝鮮がある。再び日本が核の惨禍に見舞われないために、これらの国、特に北朝鮮による核兵器攻撃はしっかりと抑止する必要がある。そのためには、今は米の核の傘しか頼るものがない

米の核の傘については、二つの事例をよく考える必要がある。

第1:1975年にソ連が欧州の都市攻撃が出来る中距離弾道ミサイルSS-20をソ連欧州部に配備した。ドイツの当時のシュミット首相はこの兵器は米と欧州の安全保障をディカプリングする(切り離す)効果があると主張した。シュミットが言ったのは、「米国がベルリンを守るために米国から反撃したら、ソ連はニューヨークやワシントンを攻撃するだろう。しかし米国がベルリンを守るためにニューヨークやワシントンを犠牲にすることはないであろうから、したがって欧州より発射される核ミサイルで反撃するしかない。」ということであった。それで、欧州へのパーシングIIと核弾頭搭載巡航ミサイルの配備をすること、同時にソ連とこのミサイルを撤去する交渉を行うことになった。結局この問題は、1987年に中距離核戦力全廃条約が米ソ間で締結され、パーシングIIと巡航ミサイルおよびSS-20が廃棄されることになった。 極東地域に配備されていたSS-20も廃棄された。日本ではディカプリングの議論は起きなかった。

この事例で注目すべきことは、米国がシュミットの議論を受け入れたことである。米本土が攻撃を受けることを覚悟しベルリン攻撃に反撃するのか否かについて、不確定性があることを米は認めたのか。私は米国の当局者にこの点を何度か質問したことがある。答えは核の使用は状況によるが、シュミットの論を受け入れたわけではない、しかしシュミットは重要同盟国の首脳であるので、彼の懸念には配慮すべしということであった、との説明であった

中国は核戦力を増強し、米ソが廃棄した中距離核ミサイルを保有するほか、今や米本土攻撃能力を持ってきている。東京への攻撃に反撃するためにロス・アンジェルスやサンフランシスコを犠牲にする用意が米にあるのかが、シュミット式の考えをすれば問題になる。 更に北のミサイルが米本土攻撃能力を持つ日は近付きつつある。 そういう中で、米の核の「持ち込み」を排除する非核3原則の第3原則は大きな問題をはらむ。 現に韓国では、米戦術核の再導入が議論されている。

第2:NATOでは、核共有の制度がある。これにはベルギー、ドイツ、イタリー、オランダなどが入っている。同じようなシステムを日米でも作り、米の核使用について日本も発言権を持っておくべきではないかという問題がある

日本が再び核攻撃を受けないために、どうすればよいのかを現実を踏まえて考えることが求められている。核不拡散条約のこともあるが、反核感情に配慮するだけでこの問題を済ますわけにはいかない

5、 戦後の国際政治において、核兵器が果たした役割は大変大きい。この兵器は人間の戦争と平和に対する考え方に大きな影響を与えた。フルシチョフが平和共存政策を打ち出した背景には、核戦争が人類の滅亡につながるとの認識があり、マルクス・レーニン主義の帝国主義勢力との戦争不可避論の転換であった。エジプトのサダトがイスラエルとの戦争はもうできないと考えた背後にはイスラエルの核があった

米ソの冷戦が熱戦にならなかったのは、米ソ間で核の破壊力への恐怖に基づく戦争抑止があったからである。この問題は避けて通るには大きすぎる問題であろう

6、 私はこの夏、「終戦史録」を読み返した。 広島、長崎の人々は原爆の犠牲になることにより、一億玉砕も辞さずという軍の戦争継続論を圧倒し、戦争をやめさせた。我々がいま生きているのはこの尊い犠牲によるということがよくわかった。我々は彼らに感謝しなければならない。 広島や長崎の人々は広島、長崎の被爆の実相を世界に伝えることに努めている。これはこの非人道的な核兵器が人々に対し使われないようにするために役立つことであり、今後も続けるべきであろう。 しかし国際政治の現実をみると、核兵器をなくすのはほぼ不可能である。人間は一度得た知識を忘れ去ることはできないし、核保有国が核を全部廃棄することは近い将来考えられない。我々は核兵器と共存せざるを得ない。核兵器が抑止機能のみを果たし、実際に使われないようにすることが大切である
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もう一つ、議論の要素として核兵器導入に必要な予算や人的資源のことも頭に入れる必要があるでしょう。最低でも維持管理施設やインフラ整備に等の整備に、一声10兆円は必要と考えておいてよいのではと思います

TPNW.jpg末尾にご紹介するように、ブログ「東京の郊外より」では、過去何回も「国際情報センター」の内容を取り上げさせていただきました。Yahooブログ終了に伴い2019年12月に「国際情報センター」が消滅してしまい、もっと掲載されていた記事を残しておけばよかったと後悔しております

2011年12月が最後の更新で、当時から情勢が変化したものもありますが、基本的な考え方は今でもとても参考になります。なによりも、「的確な国際情勢判断をする国民、それが国の進路を誤らない最大の担保です」との冒頭の言葉が強く印象に残っております

茂田宏:岡崎研究所理事長&所長のご紹介
(同研究所webサイトより)
http://okazaki-institute.org/about/shigeta

茂田宏氏「国際情報センター」関連の記事
「国際情報センター終了へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2011-12-18
「ロシア社会の停滞と憂鬱」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-15
「INF条約を廃棄すべき」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-18
「韓国への戦術核再導入議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-18-1
「元モサド長官イラン攻撃は」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-12
「インテリジェンス 機密から政策へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-22
「アラブに民主主義がなぜ少ない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2011-02-02-1
「武器輸出3原則の偽善」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2010-09-15-2
「核密約と抑止(後編)」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2009-12-30
「核密約と抑止(前編)」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2009-12-29

茂田氏推薦紹介のオバマ大統領ノーベル平和賞受賞スピーチ
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22日米議会がオースチン国防長官を承認:直ちに職務開始 [オースチン国防長官]

ふたを開ければ上院承認投票は93-2の圧倒的支持

Austin3.jpg22日、米議会上院はLloyd Austin元中央軍司令官(67歳)の国防長官就任を、賛成93票、反対2票で承認しました。報道によれば、当日午後(または23日)にも就任の宣誓を行い、直ちに職務を開始するとのことです

元軍人が国防長官に就任するには、退役後7年経過を求める規定がありますが、昨年12月にAustin退役大将が候補者に挙がった際は、この規定の例外を米議会が認めないだろうとの論評が多くみられました

トランプ政権のMattis初代国防長官も、この規定の適応除外を求める必要がありましたが、この時はトランプ氏が安全保障の見識がないことから軍事や国防省をよく知る人物が国防長官就任が望ましいとか、米議会がMattis氏の人柄をよく知り信頼感があった等の理由で承認がスムーズでした

Mattis4.jpg一方でAustin元大将が候補に挙がったタイミングでは、トランプ政権が元軍人を多数国防省の文民ポストに登用していたことや、過去2例しかない元軍人の国防長官がMattis氏から時間を空けず再び誕生することに「シビリアンコントロール上問題がある」、「軍需産業の経営にかかわっていた人物はふさわしくない」との声が民主党内から強く上がり、有力議員から「絶対阻止」との声も上がっていたことから、仮に議会承認を得られるにしても手続きに長時間必要だろうと危惧されていました

それがバイデン大統領就任から僅か2日で新国防長官の承認です。ワシントンDCの細かな政治力学を把握していないまんぐーすですが、やはりトランプ支持派の議会乱入事件を受けて議会の雰囲気が一変し、また同事件を受け国防省主要幹部の相次ぐ退陣で相当現場が混乱していたこともあり、米議会も一転して国防長官を早期に確定して「安定」「事態鎮静化」を図る方向に傾いたものと推測しています

このような背景を受けAustin氏は19日の議会ヒアリングで
Austin7.jpg国防長官就任を承認していただけたなら、全ての国防省職員や米軍兵士のために、差別やハラスメントや憎しみのない職場環境を構築する。国家の安全を守る国防省内に、内なる敵を抱えていては任務が果たせない
性的暴力防止に正面から立ち向かう。過激思想や人種差別的な動きを排除する。国家のため勤務しようとする全ての志ある者が、尊厳をもって勤務できる環境を構築する

また、バイデン政権が中国寄りとの各方面からの懸念を察知し
●世界的には、アジアが国防省の業務の焦点でなければならないと理解している。私は中国が特に国防省にとって迅速に対応すべき課題だと考えている
●(バイデン大統領も希望しているが、過去3代の大統領が追及したが成しえなかった、アフガンからの米軍撤退について、)米軍を引き続きアフガン内に残す選択肢も含め検討すべき課題

なお、Austin氏が2016年に陸軍退役後、4年間に渡り巨大軍需産業レイセオンの役員を務めてきた経緯から、国防長官在任中は、同社関連の国防省議論や判断に一切関わることができません。(同社装備品の選定や導入や評価に関する一切の会話や会議や決定に関与できない)

Austin氏の就任に反対の雰囲気だった議会の声
新任のJack Reed上院軍事委員長(民主党)
(黒人長官の誕生は)非常に大きな歴史的瞬間だ。米軍に多くのアフリカ系米国人やラテン系などが含まれる中、その中から国防省リーダーが誕生した瞬間を目の当たりにしたのだ
Smith2.jpg●Adam Smith下院軍事委員長(民主党)
トランプ政権下の4年間で、国防省では臨時を含め6名も長官が入れ替わっている。これがもたらした国防省内の混乱と無秩序は甚大な被害をもたらしており、米議会は早期に国防長官を承認して事態を収拾し、国防省があるべき形に戻らせることが必要だった。切迫した状態だった

Austin国防長官のご経歴概要
Austin退役陸軍大将は、1953年8月アラバマ州生まれでジョージア州育ち。典型的な南部の出身の67歳。1971年陸軍士官学校卒業で歩兵部隊士官として勤務し、2016年に中央軍司令官を最後に退役し、大手軍需産業Raytheon取締役等の民間企業役員やコンサルファームの経営を行っていた
米陸軍式幕僚大学や米陸軍大学卒業。1986年のアラバマ州アーバン大学で教育カウンセラー修士号、1989年にウエブスター大学からMBAを取得している

Austin.jpgオバマ氏が大統領に当選した2008年、イラク駐留多国籍部隊の司令官を務めており、その後、2010~2011年の間、その一つ上のイラク駐留米軍司令官を務め、オバマ政権(バイデン副大統領)の下で困難な対IS作戦の正面で指揮官を務めた
2011年12月、同大将は黒人初の陸軍副参謀総長に就任し、そのわずか1年後の2013年3月から米中央軍司令官を務め、2014年のモスル奪還など対IS作戦を指揮し、2016年4月に退役した

寡黙で、メディアの前でインタビューに答えることもほとんどなかったし、大衆の目を避けるように行動するタイプだが、強いリーダーシップを発揮する、誠実で知性あふれる人物として知られている
ただ一方で、米議会など証言の機会を与えられると率直な物言いで知られ、ISが北西イラク地方に侵攻を企てた際、イラクのスンニ派がイラク政府支援を拒否するだけでなく、ISの味方をして便宜を図ったと率直に語ったり

Austin2.jpg約50億円を投入した対ISのためのシリア反政府勢力教育訓練の成果を、当時のマケイン上院議員に「養成した要員が何名ぐらい前線でISと戦っているのか?」と質問され、「4-5人です」と正直に回答し、マケイン議員から「30年上院軍事委員会にいて、こんなにばかげた話を聞いたことがない」と酷評されるほど率直・正直な人物として知られている
それでもオバマ政権下で同大将は高い評価を得ていたが、オバマ大統領が決定した2011年12月のイラクからの米軍撤退について反対姿勢を示している
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「トランプ支持派の議会突入」で一気に雰囲気が変わった印象ですが、大本命だったフロノイ女史が「ワシントンDCの闇の力学」で国防長官に成れず、難航しそうだった国防長官選定が早期に決着したことは朗報です

Austin5.jpg個人的には、軍人ほど「シビリアンコントロール」について学び、勤務の中で体感し、最前線の苦闘の中でその在り方を考えてきた人材は他に世の中に存在せず、口先だけで「文民統制」を語る政治家の方がよほど危険だと思います

あまり好きになれない三浦瑠璃さんですが、著書「21世紀の戦争と平和」(副題:徴兵制はなぜ再び必要とされているのか)の中で、近年の戦争指導で、軍事や安全保障に無知な政治家による混乱した「シビリアンコントロール」が大きな犠牲を生んでいる点を指摘されており、その点では同感です

「多様性」との言葉がしっくりと体になじまない世代のまんぐーすですが、Lloyd Austin新国防長官には何の問題も感じません。黒人が米軍社会で上り詰めるには相当の困難がある中で、中央軍司令官まで務めた能力は間違いなく、そのご活躍を祈念申し上げるのみです

オースチン新国防長官関連
「オースチン国防長官候補をご紹介」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-08
「Austin元大将が国防長官になる為の高いハードル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-02

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2月5日失効目前:新START条約5年延長提案 [安全保障全般]

27日、ロシア議会は新START条約の5年延長を承認。プーチン大統領はこれを「正しいステップだ」と歓迎の意を公式の場で表明。
ロシア政府は、数日後に延長手続きが完了すると。

トランプ政権時は「1年延長。加えて条約以外の核開発も含めて1年間凍結」案で戦っていたが、バイデン政権は「無条件」で延長を選択しました
片手落ちの条約でも「ないよりまし・・・」との判断でしょうか・・・
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最新の追記情報
Biden8.jpgバイデン大統領は21日(日本時間22日)、2月5日に期限が切れるロシアとの新START条約について、5年間の延長を目指す意向を明らかに
サキ大統領報道官は記者会見で、「条約で認められている通り、米国は新STARTの5年延長を求める意向だ」と発表。「ロシアとの関係が現在のように敵対的なときにこそ、この延長がより大きな意味を持つ」と表現

提案を受けたロシアのDmitry Peskov報道官は「われわれは条約の延長を歓迎するのみだ」とし、条約の延長をするかどうかの判断は「提案の詳細次第だ」

→→→(まんぐーす注)トランプ政権時の昨年10月頃は、米側が「とりあえず1年延長、その間は(New START範囲外の核兵器も含め)現状変更しない」との条件を付けていたことを受けた発言と推測
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バイデン政権誕生の翌日にロシアに提案か
延長歓迎ムードも、条約外で中露が好き放題状況を忘るべからず

New START3.jpg20日各種メディアが、核兵器管理の最後の枠組みである米露間の新START条約について、10年間の有効期限が切れる2月5日を前に、誕生直後のバイデン政権がロシア側に、現行条約の規定にある5年間延長の申し出を行ったと報じています

当初WP紙が最初に報じた内容を、Defense-Newsが独自ルートで匿名の政権関係者に確認したところ、バイデン大統領就任式翌日の1月21日午後に、バイデン大統領のJake Sullivan安全保障担当補佐官が在米Anatoly Antonovロシア大使に対し、5年間延長を提案したとのことです

missile_defense.jpgこの提案が真実であれば、NATOや米国同盟国から歓迎されるだろうと報じられており、例えばNATOのJens Stoltenberg事務総長は21日記者団に、「核弾頭について(条約が失効して)制限がなくなることは避けるべき。このままでは新START条約が失効してしまう」との危機感を示し、米国とロシア双方に、まず同条約を延長手続きを行い、その後に条約の枠組み拡大など発展的な改定を検討すべきと訴えているようです

今後の公式な米国政府の発表等が待たれるところですが、ロシアが極超音速兵器や戦術核や中距離ミサイルを配備して好き放題な中、トランプ前政権が「とりあえず1年延長、その間は現状変更しない」案を出して昨年10月にはまとまりかけたのに、大統領選挙情勢等からプーチン大統領が「無条件でとりあえず1年延長」との「ちゃぶ台返し逆提案」を持ち出したドロドロの交渉経緯もありますので、少し復習しておきましょう

New START.jpg新START条約は米露間で2011年2月5日に発効したもので、双方の戦略核弾頭上限を1550発とし、その運搬手段である戦略ミサイルや爆撃機配備数上限を700に制限する条約。有効期限は10年間で、最大5年の延長を可能とし、条約の履行検証は米露両国政府による相互査察により行うこととなっている。

核兵器管理の条約には新STARTとINF全廃条約が存在していたが、1987年12月8日に米露が署名し、相互に射程500kmから5500kmの地上発射弾道ミサイルの廃棄と保有禁止を約束するINF全廃条約は、ロシアが条約を履行していないとして、トランプ政権が2019年8月2日に破棄通告

INF全廃条約破棄を受け、新START条約が核兵器管理の唯一の枠組みとなったことから、多くの専門家が同条約の延長すべきと主張も、トランプ大統領は本条約を「オバマ時代の悪いディールだ」と呼び、新START条約の延長はせず、中国も含めた米中露の3カ国で核兵器管理の合意を追及すべきだと発言

New START2.jpg一方ロシアは、新START条約の規定に沿って5年延長を提案していたが、トランプ政権提案の露中米3カ国取り決め追求については、米露と比較して少ない核兵器しか保有しない中国が、保有核兵器削減を求める可能性のある議論を拒んでいる現実を踏まえ、「非現実的だ」と突っぱねていた

条約消滅の危機が迫る中、米側は米露中での新条約案を一旦わきに置き、「とりあえず1年延長、その間は(New START範囲外の核兵器も含め)現状変更しない」案を持ち出し、2020年10月2日のジュネーブでの米露交渉ではロシア側も同意していたとトランプ政権のRobert O'Brien米大統領補佐官は主張

しかし2020年10月16日、米側の「とりあえず1年延長、その間は現状変更しない」案に対し、プーチン大統領が「無条件でとりあえず1年延長」ならOKとちゃぶ台返し反応を示し、O'Brien米大統領補佐官が「話にならない(non-starter)」「大統領選の様子見か!?」と不信感をあらわに

B-2takeoff.jpg2020年11月20日、ロシア外務省が突然、米国提案の「とりあえず1年延長、その間は現状変更しない」案を受け入れると発表し、米国務省報道官が「歓迎する。すぐにも合意手続きを進める用意がある」と反応

昨年11月20日に「とりあえず1年延長、その間は現状変更しない」案をロシア側が受け入れ、「すぐにも合意手続きを進める用意がある」と米国務省報道官が語ったとの報道があった以降、どのような動きで今年1月21日の報道に至っているのか把握していませんが、このような一筋縄ではいかない交渉案件だということです

より大きな視点で新STARTの位置づけを考えてみると中国が核弾頭搭載可能な中距離弾道ミサイルを配備し、ロシアが戦術核や核搭載可能な中距離ミサイルや極超音速兵器を実質好き放題配備する中、INFが失効して階層的な軍備管理枠組みが前提だった新STARTは米国にとって不完全な条約になっています

SSBN.jpg不完全でも基礎なのだから、新STARTはそのままにしておくべきだという議論と、不安定な基礎の上に積み上げても仕方ないから、一度更地にして土台から作り直すべきだという意見があるべきですが、世界の雰囲気には、あわただしかったトランプ時代から少し落ち着きたい・・・だからとりあえず新START延長してくれ・・・との思いが強いようです

でも、米国の「とりあえず1年延長、その間は現状変更しない」案を巡り、「ちゃぶ台返し」で「無条件」提案を返してきたロシアの姿勢を忘れてはなりませんし、仮に5年間延長がまとまったとしても、「不完全」な状態に置かれるだけだということを肝に銘じておくべきでしょう

新START期限切れ関連
「ドタキャン後にまた受け入れ表明」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-17
「延長へ米露交渉始まる!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-18-1
「Esper新長官アジアへ中距離弾導入発言と新STARTの運命」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-04
「IISS:対中国軍備管理とミサイル導入は難しい」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-09

ロシアの兵器開発とINF条約関連経緯
「第3の超超音速兵器Zircon」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-21
「トランプが条約離脱発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「露は違反ミサイルを排除せよ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-06
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15

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米軍内でコロナ感染者が多かった職域は? [Joint・統合参謀本部]

2020年9月末までの統計です
州兵や予備役でも感染が多い職種は共通とか
退役軍人は高齢者でも重症化(入院)が少ないとか

MSMR2.jpg13日付Military.comが、米軍関連医療施設が診察や入院治療を行ったコロナ患者に関する統計「Medical Surveillance Monthly Report」を取り上げ、12月号のレポートが2020米国予算年度(~2020年9月末)の統計で、米軍人にコロナ感染者の絶対数が多い職域などの統計数値を紹介しています

コロナ感染者のぼんやりとした統計での紹介になっており、各集団の母数で割った「比率」での比較まで突っ込んだ分析を避けて公表している雰囲気があり、また、2020年9月末までの統計で、昨年秋以降に感染者が急増した後の状況が含まれていない統計であることにも注意が必要ですが、貴重なデータですので断片的な報道ながらご紹介しておきます

13日付Military.com記事によれば
COVID-19 vaccine3.jpeg米軍関連医療機関でコロナ感染(その恐れも含む)と診断されたケースは5万3048名だったが、56%が正規兵、19%が兵士家族、12.8%が新規入隊者、5.8%が退役軍人、4.7%が州兵又は予備役兵士だった
(ただし、昨年9月末以降にコロナ感染者は全米で急増し、今年1月11日現在では同統計での累積患者数は18.9万人にまで増えている)
軍種別では、所属数が多い陸軍がトップで、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊の順で感染者が多かった。これは所属人数の数の順序と同じ

米軍内の職種別で感染者の比率を見てみると、正規兵(カッコ内は予備役と州兵の統計値)の感染者数は29970名(2498名)で、最も感染者が多かったのは「repair or engineering(整備や施設分野)」で28%(23.3%)、次に「intelligence or communications(情報や通信分野)」で22%(22.9%)、「combat-specific(戦闘職域)」が14%(7.3%)、その他が20%(30%)となっており、医療職域は9%(8.1%)となっている
COVID-19.jpegレポートをまとめた陸軍の免疫学専門家は、職種ごとの感染者比率について説明は困難だとコメントを避けたが、一般に、「repair or engineering(整備や施設分野)」は現場業務で在宅勤務が難しく、「intelligence or communications(情報や通信分野)」も秘密情報や機材を扱う関係からテレワークが困難な職種である

地域別では南部に感染者が多く、正規兵の感染者の62%、新規採用者の64%、州軍の64%、家族の68%、退役軍人の感染者の73%が南部で確認されている
南部に感染者が多いのは、多くの南部の州でマスク着用を義務付けるのが遅かった(ジョージアやフロリダ州では依然着用義務なし)ことが、理由の一つと考えられている

MSMR3.jpg米軍関連医療機関に入院した患者は当該期間内に1803名であったが、(高齢者が多い)退役軍人が34%を占めている。しかし退役軍人コロナ感染者が3000名以上確認された中で、退役軍人の入院患者が600名程度(感染者の約20%)で、高齢者が多い割には驚くほど低かった
退役軍人の入院者比率が低かったのは、一般に軍人は一般市民より健康で、「healthy soldier effect」と呼ばれているが、軍人が退役後も一般市民より健康な状態を維持しているからだろうと、陸軍の免疫学専門家はコメントしている
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これだけの統計数値では何とも言い難いところもありますが、現場仕事の「repair or engineering(整備や施設分野)」や、密閉空間での業務が多そうな「intelligence or communications(情報や通信分野)」で患者数が多いのは感覚的に理解できます

医療職域兵士の感染者が、全体の9%(8.1%)という数値は、全兵士数に占める医療関係兵士数の比率と比較する必要があり何とも言えませんが、恐らく多職種より多いと考えられます

COVID-19 2.jpegこの統計を全国民を対象に広げた統計を、特に日本で見てみたいですし、報道してほしいと思います。人種別とか、職業別とか・・

併せて、コロナ対応に投入されている病床数と日本全体の病床数の比率(3%程度で、欧米に比して格段に低い)なども、医師会会長の「医療崩壊」アピールよりも伝えてほしいと思います

コロナ関連の記事
「コロナでSCIF使用困難で戦闘機開発危機」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-12
「旅客機移動でコロナ感染リスク低い」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-16  
「米軍主要幹部が一斉に自主隔離」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-07
「コロナで安全保障環境は激変する」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-25 

「米国防省内の今後のコロナ対処方針」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-07
「RIMPAC、陸軍士官学校、英空母の事例」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-01
「ワクチン完成までの1年間程度は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-24
「米空軍士官学校卒業式2020」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-20
「中国やロシアの情報工作」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-15

「海空アクロチームが激励飛行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-29-1
「米国防省や米軍のコロナ対処・措置」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-19

危機に乗じた中国資本の米軍需産業への浸潤を警戒
「再びLord次官が警戒感」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-02
「米国防次官:中国資本の浸透警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-26
「中国製部品排除に時間的猶予を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
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現有ICBM(Minuteman III)の延命措置は不可能 [Joint・統合参謀本部]

複数シンクタンクの提言を真っ向否定の現職将軍
60年経過の老朽兵器には設計図も技術者も存在しないと

Richard6.jpg5日、米戦略軍のCharles Richard司令官(海軍大将)が講演し、更新兵器GBSD導入に約9兆円の予算が必要と見積もられ、バイデン次期政権関係者や一部シンクタンクが反対して延命策を提案している現有ICBM(Minuteman III)について、製造後60年経過した同兵器は設計図や技術者が既に存在せず、サイバー対処の面からもこれ以上の維持は不可能だと突っぱねました

一方で、トランプ政権下の2018年に作成されたNPR(核体制見直し)を新政権が見直す可能性に関しては、いつでも議論に応じる用意があると述べつつ、中国やロシア抑止が一層複雑な任務となりつつある点等に触れ、「核抑止の3本柱」態勢の維持の重要性を主張しました

Minuteman III 5.jpg現在米軍は「核抑止の3本柱」として、46機のB-52H爆撃機と20機のB-2ステルス爆撃機、Trident II SLBMを搭載の14隻のオハイオ級戦略原潜、そして400発のMinuteman III ICBMを保有していますが、後継ICBMとしてNorthrop Grumman社がGBSD(Ground Based Strategic Deterrent)を2029年運用開始目途で開発製造することになっています

そのほかトランプ政権下では、ロシアによる戦術核の配備に対抗して、潜水艦発射型の低出力核兵器W76-2(広島原爆の1/5程度の威力)導入が決定され、既にオハイオ級戦略原潜に搭載開始されているとの報道が出ています(米海軍はコメント拒否)

予算不足から、以前からバイデン政権は核兵器関連予算の削減に手を付けるとの予想が出ていますが、そんな動き関連の動静の一つとして、戦略軍司令官の発言を紹介しておきます

6日付Military.com記事によれば
Richard4.jpg5日、Defense Writers Group主催のZoom会議でRichard米戦略軍司令官は、複数のシンクタンクがバイデン政権にMinuteman IIIの延命措置とGBSD計画中止を提言していることに関し、「はっきりさせておきたい。Minuteman IIIの延命はこれ以上不可能である」と、米本土北西部の5か所に分散し400発保管されているMinuteman IIIについて訴えた
更に「延命は全く不可能である。兵器自体があまりに古く、箇所によっては延命を検討する際に必要な設計図さえ残っていない。6世代も前の工業規格で製造された様なもので、当時の状況をよく理解している技術者も既に存在していない」と理解を求めた

また「私にはまったく理解できない。Minuteman IIIの部品やケーブルなどその構造を把握しておらず、見る機会もないシンクタンクの研究者たちが、なぜ同兵器の今後について提言できるのだろうか?」と不満を示し
「製造後60年を経過した原始的な回路やスイッチ類を、サイバー脅威に対応できる現在基準にマッチしたものに更新し、指揮統制システムに追随できるようにする計画だ」と述べた

Richard5.jpg同司令官は現在の核抑止環境を冷戦時とは異なると説明し、「中国とロシアという2つの大国と同時に対峙する必要があり、それぞれに異なる抑止策を考える必要に迫られている。プーチンと習近平の世界観や判断基準は異なっている」、「脅威は常に変化している」と情勢認識を示し、
2018年のNPRを再考することに全く躊躇はないと述べつつも、バイデン政権の政権移行チームとの複数のミーティングを経て感じた懸念を示唆し、「このようなタイミングで核抑止の3本柱のどれかを廃止するようなことをすれば、中国やロシアの対応を容易にし両国に利することになる」と釘を刺した
また、低出力核兵器について新政権と議論することについても歓迎するとの姿勢を示し、「我が国政治指導者が望むことを遂行する準備ができている」と講演を締めくくった
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Minuteman III 4.jpg「複数のシンクタンク」によるMinuteman IIIの延命提言の内容を把握していませんが、継続的に機体改修や装備のアップグレードが行われてきたB-52爆撃機とは異なり、実質手つかずだったMinuteman IIIの継続使用が困難だとの現場意見は重いと思います

ただ、ICBMだけで9兆円で、その他の各関連施設の更新やB-21爆撃機開発・調達予算などを含めると、40兆とかそれ以上とかの数字を見た記憶があり、更にサイバーや宇宙ドメインを含また新抑止理論構築が求められる中で、ICBM予算削減の声は簡単に収まりそうもありません

今の雰囲気からすると、バイデン政権はトランプ政権の政策を巻き戻し、オバマ時代に戻すような小手先の変化を見据えているような印象ですが、時代は変わり脅威も変わり、機能しなかったオバマ時代に戻るだけでは立ち行かない気がするのですが・・

21世紀の抑止概念を目指す
「同司令官が中露の軍事力増強と抑止を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-01
「米議会で専門家を交え中国抑止を議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17
「新STASRT条約は延長へ!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-17
「3本柱はほんとに必要か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03

ICBM後継に関する記事
「ボーイング怒りの撤退」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-27
「提案要求書RFP発出」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-18
「次期ICBM(GBSD)企業選定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-27-1
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1

米軍「核の傘」で内部崩壊
「ICBMサイト初のオーバーホール」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-15
「屋根崩壊:核兵器関連施設の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-23
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29

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次期爆撃機B-21の初飛行は2022年半ばに [米空軍]

最速2021年12月予定が少しずれこみ
1機600億円以下は無理で、100機製造で1機800億強か

B-21 3.jpg15日付米空軍協会web記事が、米軍の優先重要プロジェクトB-21次期爆撃機の開発状況について、米空軍迅速能力開発室(RCO:Rapid Capabilities Office)のRandall Walden室長に独占インタビューを行い、おおむね順調で、初号機を2022年初旬に受領し、2022年半ばに初飛行を予定していると述べました。また、機体強度や耐久性試験を主目的とした2号機の製造も始まっていると明らかにしました

2016年2月に担当企業がB-2製造経験があるNorthrop Grummanに決定したB-21ですが、2020年代半ばに運用開始、強固な防空網を突破可能な性能(ステルス等)、80-100機製造で1機約600億円($550million)以下、無人機もあり得る(正式にはoptionaly manned)、既存成熟技術を活用し開発リスク局限等々の基本方針のみが公表され、細部性能や状況は非公開で開発が続いていました

B-21 bomber.jpgその後、2018年12月に「重要設計審査:critical design review」終了との発表があり、2019年7月には米空軍副参謀総長が講演で、初飛行は「863日後だ」(2021年12月3日)と語り開発の順調さをアピールし、2019年秋に格納庫らしき場所で撮影された写真1枚が公開されましたが、その後は再び秘密の闇に入っています

2020年8月に同じWalden室長は、コロナの影響を受けてはいるが、「全ての困難で重要な設計段階や、難しい製造問題は全て解決済みの過去の話となっている。現在は実際に機体を製造し、飛行試験に進むことに集中している」と状況を説明していました

コロナの影響に関し同室長は、例えば機体を担当する「Spirit AeroSystems社」はボーイングのB-737MAX製造中止を受け会社全体が危機に直面しているが、旅客機部門の人材をB-21に配置転換して危機に対処し、B-21のスケジュールへの影響を局限している等と説明していました

15日付米空軍協会web記事でWalden室長らは
Walden.JPG2019年7月に当時の空軍副参謀総長が述べた2021年12月初飛行との見積もりは「best-case scenario」であり、現時点では2022年半ばと想定するのが「穏当な見通し:good bet」だ。初飛行を目指す初号機はまだ最終組み立て段階にはなく、「爆撃機らしい形になってきた」段階だ
2号機も生産ラインに入ったが、この機体は機体構造の強度や耐久性を確認するために使用予定だ。曲げたり伸ばしたり、様々な負荷を機体構造に加えて試験を行う

B-21搭載システムの試験は、ロッキード社がF-35搭載システム試験にも使用してきた「CATbird」と呼ばれるビジネスジェット改良試験母機を利用して先行的に進めており、ハード面ソフト面の両方で過去2-3か月で成果が出ている

どの航空機開発にもサプライズは付き物で、エンジンの試験運用と関連試験の結果が初飛行の時期に影響を与えているが、「問題ないように修正を図っている」
B-21.jpg本件に関し下院軍事委員会のRob Wittman議員が2018年に、「B-21はエンジン推進排気や空気取り入れ関連の問題に対応している」と述べたことに関しては、「その問題は解決済で、先ほど述べたサプライズの一つだ。対応済だ」と語った

B-21関連予算について、2021年度に研究開発に3000億円強を要求し、2022年には受け入れ施設等に関し300億円を、5年間で1100億円を要求する計画だと説明したが、細部は今後変化する可能性があるとも述べた

1月14日、米空軍司令部の戦略抑止・核抑止担当部長のJames C. Dawkins中将は、B-21の運用開始(be available for service)は2026~27年だろうと述べ、それまでは核抑止任務をB-2とB-52が担うと述べている
コストに関して、米議会調査局は空軍見積もりとして100機で8兆8千億円だと2018年にレポートしている
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Walden2.JPGF-35やKC-46、フォード級空母などと比較すれば順調だと思うので期待していますが、KC-46の例からすると、このあたりから問題が多発した記憶があり、まだまだ安心はできません

政権が代わり、国防省や空軍省の調達担当幹部が変わる中、開発・導入の推進力が失われないよう祈念いたします・・・

B-21爆撃機の関連記事
「B-21の開発状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「2021年12月3日初飛行予告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-29
「初期設計段階終了」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-30
「米空軍の爆撃機体制計画」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2 
「2017年3月の状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-20
「B-21に名称決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-27

「敗者の訴え却下」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-17
「敗者がGAOに不服申し立て」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-07
「結果発表と分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-28

米空軍爆撃機の話題
「B-1の稼働機一桁の惨状」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-05
「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
「2018年春時点の爆撃機構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2

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イスラエルが欧州軍から中央軍管轄に [安全保障全般]

国防省は具体的な作戦運用の変化を語らず
兵器や弾薬の事前集積が進むのも変化の一つか?

CENTCOM.jpg15日付米空軍協会web記事は、隔年ごとに行われる地域コマンドの担当範囲見直しの一環で、従来米欧州軍の管轄エリアであったイスラエルが、大統領交代1週間前のタイミングで、米中東軍の担当エリアに変更になったと伝えています。

イスラエルは、北はシリアやレバノン、東はヨルダン、南はサウジやエジプトに囲まれている国であり、周辺の国が全て米中央軍の担当エリアになっていることからすれば、極めて自然な「米中東軍管轄」への移行ですが、それが出来なかったのが中東の政治力学でした

CENTCOM2.jpg軍事・安保の世界だけでなく、例えばサッカーW杯の地域予選でイスラエルは欧州諸国の予選リーグを戦いますが、周辺の中東諸国はアジア予選リーグを戦う組み分けになっています。地域の情勢からすれば、イスラエル対シリアや、イスラエル対イラン等の対戦を組むことが困難との配慮からだと考えられます

同じように、イスラエルが中央軍管轄だと、中央軍主催で担当エリア諸国軍との意見交換会議を開催したくても、アラブ諸国とイスラエル代表が同席する場を設定することが、アラブ諸国の国民感情的に受け入れられないことや、イスラエル軍と対話している中央軍司令官とアラブ諸国軍首脳が対話できる雰囲気になかったと考えられます

Israel.jpg今回のイスラエル中央軍管轄への移行の背景には、昨年9月に署名されたイスラエルとUAE&バーレーンの国交樹立(アブラハム合意)や、この流れに乗ったモロッコとスーダンとの国交確立があります。今後サウジやオマーンもこれに続くと考えられており、この中東変化の大きな流れが中東軍移管の背景です。アジア諸国でも、昨年12月にブータンと国交を樹立し、対立してきたインドネシアとの協議も進んでいるようです

イスラエルが欧州軍から中東軍管轄になることでの作戦運用面の変化について、国防省はコメントを避けていますが、イラン及びイランが支援するイスラム過激派を地域最大の脅威と深刻にとらえているアラブ諸国と、米中央軍を仲立ちとしたイスラエルとの実質的な軍事的協力が進むであろうことは間違いなく中東からの米軍削減が進む中で、米軍の地域での役割変化に注目です

15日付米空軍協会web記事によれば
Israel IDF.jpgイスラエルが欧州軍から中東軍管轄になることに関し米国防省は、「イスラエルとUAE&バーレーンの国交樹立(アブラハム合意)に導かれた地域の緊張緩和が、地域共通の脅威に立ち向かう米国と中東同盟国等との関係を強化する機会を与えてくれた」
「イスラエルは地域における米国の主要な戦略パートナーであり、この改編は地域の中央軍パートナー国に更なる協力強化の機会を提供するとともに、これまで構築されてきた欧州同盟国とイスラエルとの協力関係を維持するものである」と声明を発表している

米国防省は作戦運用面での変化についてコメントせず、作戦環境に応じた2年毎の見直しの一環だと述べるにとどめているが、世界で初めてF-35を実戦投入したイスラエル空軍と米空軍は、昨年10月に両国軍のF-35が参加する3度目の「Enduring Lightning」演習を行って作戦運用面での連携強化を図ってきた

Israel2.jpgイスラエルの中央軍移管を歓迎するMike Jones元中央軍参謀長は、「イスラエル関連の問題は、そのほとんどが米中央軍エリアの国との問題であり、米国の政策的視点からすれば意味あることだ」と述べ、インドがアジア太平洋軍の管轄に移行したのと同じ意味を持つと評価している
ユダヤ米国安全保障研究所は本件に関し、「より具体的に、米国防省が地域活動にイスラエルをより円滑に利用することができる。最も直接的には、例えば、米軍の装備弾薬の事前備蓄を更新することになるだろう」と評価する声明を出している
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トランプ政権が仕掛けた中東の地殻変動は、バイデン政権でどのように扱われ、どのように変化するのでしょうか? 

Israel IDF2.jpgバイデン大統領がイランとの核合意への復帰を目指すとして、イランがイスラエルとアラブ諸国との関係改善に水を差す条件を課す可能性や、トランプ政権の流れを抑える可能性があるのでしょうか?

興味津々です


中東とF-35
「政権交代前にUAEへのF-35契約署名へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-11
「イスラエルがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-26
「米大統領:UAEへのF-35輸出は個人的にはOK」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-18
「米大統領:UAEはF-35を欲している」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-21
「中東第2のF-35購入国はUAEか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-11-05
「湾岸諸国はF-35不売で不満」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-16
「イスラエルと合意後に湾岸諸国へ戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-17

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軍需産業との機密情報共有拡大に踏み出す [米国防省高官]

Lord次官最後のお仕事です
対象企業名や数は非公開ながら
もしかして軍需産業からの撤退の脅しに屈したか?

Lord.jpg4日付米空軍協会web記事は、昨年12月15日付でLord調達担当国防次官が関係企業に対し、過去数年間「pilot initiative」として取り組んできた特定企業グループとの機密情報共有拡大で兵器・装備開発を円滑にする「SAP:special-access programs」を、公式にスタートすると通知したと報じています

このSAPは、特定の兵器&装備開発にかかわる企業に、従来限定的にしか開示してこなかった担当装備品の全体像や関連装備品開発状況や関連技術を、より広範にアクセスを強化することで、各企業が持つ知見や関連技術を装備品開発に取り込もうとする狙いを持った取り組みです

Lord3.jpg秘密情報漏洩が心配されるところですが、そこは管理体制を強化するとの姿勢を示すことで目をつぶり、兵器&装備開発に国防省外部の力を呼び込もうとの狙いを先行させた施策と理解いたしまし

事柄の性質上、具体的な対象装備や関連企業名が一切明らかにされないSAPの公式スタートですが、中国に後れを取ってはならないとの必死な米国防省の取り組みの一つですので、ご紹介しておきます

4日付米空軍協会web記事によれば
Lord4.jpg12月15日付の軍需産業界へのメモでLord次官は、「世界が大国間の紛争に備える環境に戻りつつある中、国防省は国家安全保障上の課題により迅速にかつ費用対効果良く対応するため、軍需産業界との関係を強化しなければならない
一方で同時に、急速に最新技術の拡散が進む新たな現象がみられる中で、米国の技術的優位を守るため、技術情報保護のレベルを高める必要もある。この重要情報保護と緊要な情報の共有との両立を目指すSAPは、前線兵士に最新技術を組み込んだ兵器や装備を迅速に届ける上で極めて重要な意味を持つ」とその狙いを語っている

●メモによればSAPは4つの目標を掲げている
--- 企業に、彼らが取り組む事業に関するより高い透明性をSAPを通じて提供しすることで、各企業が担当分野に他の知見や手法を導入することを容易にし、技術開発と費用対効果を改善する
--- 企業に、関連している他企業とのつながりに関する基礎的情報を提供し、当該企業が開発目標を設定しやすくすることで国防システムの開発に資する
Lord2.jpg--- 秘密情報を保護するために、関連企業の情報管理スタッフに必要な情報へのアクセス権を認める
--- 企業の管理者たちにSAPへのアクセスを認めることで、企業の責務遂行を促進する
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恐らく企業側から、新技術開発における官製事業の比重が益々低くなり、国防に協力することで得られるメリットが小さくなりつつあるのだから、せめて少しでも「秘密情報」に接する機会を増やしてくれないと事業から撤退する・・・等の脅しを受けているのかもしれません

同時に、「Give contractors’ security staff the access they need to protect classified information」(秘密情報を保護するために、関連企業の情報管理スタッフに必要な情報へのアクセス権を認める)との表現など、アクセス権拡大に伴う「情報保護」強化の対策が良くわかりませんが、情報漏洩のリスクを冒してでも、開発を費用対効果良く推進したいとの強い思いがあるのでしょう

特に西側の産業界は軍需産業の引き留めが難しくなりつつあり、米国以外でもこのような動きが進むのかもしれません。でも、くれぐれも中国やロシアへの情報流出にはご注意いただきたいものです

Lord次官関連記事
「中国製部品排除に時間的猶予を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15
「半年以内に武器輸出制限を緩和したい」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-18
「中国資本の米企業への接近警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-02
「サイバー攻撃停電に備えミニ原発開発中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
「レアアース確保に米国が大統領令」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-03

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なぜ今?防研が湾岸戦争航空作戦メモ [ふと考えること]

2021年1月17日は湾岸戦争開戦30周年記念日です。
湾岸戦争は、米空軍がいわば一つの絶頂期を迎えた戦いであり、一方で今では、「その成功の犠牲者でもある」とも表現されるほど変化を迫られている米空軍の現在を形成した戦いでもあります。

この戦いの一端を、2019年7月の過去記事で振り返ります。
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同盟国の来援に期待する戦い方を学ぶため?
勃発から30年が経過し、新たな資料公開に期待なのか?

F-117-42.jpg2019年7月2日、防衛研究所国際紛争史研究室の小椿整治氏が、「湾岸戦争の航空作戦における連合作戦の実相」とのブリーフィング・メモ同研究所のwebサイト上で発表し、重要度の高い作戦はほとんど米軍が実施し、同盟国の貢献は極めて限定的だと述べつつ、作戦関連資料の開示がほとんど進んでいないと述べ、WW2以来の本格的な連合作戦となった同作戦の最終的評価はまだ時間が必要と述べています

昨年12月に、同じ研究室の柳澤潤氏の「フォークランド戦争における航空優勢」とのメモをご紹介したときは、これは明らかに「尖閣諸島」奪還作戦を意識したものだと解釈し、今日的な意味を類推しつつ取り上げさせていただきました。
実際防衛研究所も、4年かけて行った膨大な「フォークランド紛争研究」を公開しており、なんとなく頭の整理はできました

柳澤氏のメモ紹介記事https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-01-1
全12章の大作:「フォークランド戦争史」→http://www.nids.mod.go.jp/publication/falkland/index.html

F-15andFA-18.jpgしかし今回はよくわかりません。冒頭で述べたように、同盟国米国の来援を得て戦う近代航空戦の事例として教訓を抽出せよと無理やり取り組まされた可能性があり、米軍と他の連合国間の戦力差が圧倒的な戦いで、新たな資料開示もないことから、新たな教訓が得られる可能性が低いことを、要求元の防衛省や航空自衛隊に説明するための「メモ」なのかもしれません

とは言え、小椿氏が言うように、湾岸戦争航空戦を米軍に学ぼうとの視点はあれど、連合国の視点ではあまりありませんでしたので、イギリスやサウジ空軍を含めてショボかった実態を、約30年後の今も変わらないと達観して押さえておくのも一興なのでご紹介します。5ページ強のメモですので、ご興味のある方は、是非ご自身でご確認ください

小椿氏のブリーフィング・メモによれば
●湾岸戦争時の米軍から学び示唆を得ようとする試みは多いが、米軍と米軍以外との軍事力格差は大きく、示唆を反映することは困難である。(そんな中ではあるが、)本論は多国籍軍の航空作戦の状況と、連合航空作戦の実相について述べる

E-3 2.jpg指揮統制は形式的には、米国を中心とする西側諸国軍とサウジアラビアを中心とするアラブ諸国軍の連合作戦である。しかし実際には米軍が、軍事作戦運用のイニシアチブをとっており、中東を作戦地域とする米中央軍(CENTCOM)が、多国籍軍全体の運用を仕切っていた
イスラム教徒がキリスト教徒の作戦統制下に入ることは政治的に困難であったが、アラブ諸国は作戦計画作成能力が欠如しており、特に航空作戦に関しては、米中央軍航空部隊(CENTAF)が多国籍軍航空部隊を完全に統制し、アラブ諸国にもサウジアラビアを通じて作戦計画が調整付与され、実質的にCENTAFがアラブ諸国軍を統制した

航空戦力数では、中核となる戦闘機及び攻撃機に関して米軍が1700機以上で71%を占め、他国ではサウジアラビアが276機(F-15等)、イギリスが57 機(トーネード等)、フランスが44 機(ミラージュ等)、クウェートが40 機、カナダ26 機(F-18C等)、バーレーン24 機(F-16等)、カタール20 機、UAE が20 機、イタリアが8 機であった
●しかし最新のF-15を保有するサウジも、他の中東諸国と同様、西側と比して練度は低く、地上攻撃能力欠如等の問題点を抱え、整備能力も低く、米軍と比して減耗率が高かった

EA-6B 2.jpg●1990年8月2日にイラクがクウェートに侵攻したが、11日には英空軍がクウェートに展開し、9月22日に米空軍の共同訓練を行った。自国の防空強化の必要性が高いサウジは、9月12日に米軍と共同訓練を行った。一方で米英軍との共同訓練や相互運用性が不足していたフランス空軍は、10月25日になって初めて他国との共同訓練を現地で始めた
他国との共同訓練は、当初2か国間であったが、3か国や2か国での攻撃パッケージ訓練も10月中旬以降増加した

航空作戦計画ATOの連絡は米空軍と同じシステムを持たない米海軍にはフロッピーディスクで空母まで運ばれた。米空軍と同じ基地の他国軍には直接システムを介せず伝えられた
●「砂漠の嵐」作戦間の航空機の損耗は、米軍が27機、他の連合国が11機であった。しかし、米軍の37500ソーティーの飛行に対し、他連合国は4800ソーティーで、連合国の損害率かなり高かった

攻撃作戦のOCA(攻勢対航空)とAI(航空阻止)では、米軍が85-88%を占め、一方で防空が主体となるDCA(防勢対航空)は、米軍が67%、サウジ空軍が18%を担った。しかし、作戦の中核となるイラク指揮中枢や主要航空基地等の攻撃は、ほとんどが米軍機によるものであった
少数のイギリス空軍機が、OCAである飛行場攻撃に参加した事もあったが、優先順位の低い目標で、ほとんど米軍以外がOCA に参加することはなかった。またサウジ空軍もDCAなど防御的航空作戦に多く従事したが、イラク空軍の反撃がほぼなかったため、交戦機会は限定的で、交戦時もサウジ空軍操縦者はパニック状態だったと言われている。

●一方で、DCA 以外でも航空輸送に関しては、サウジが全体の空輸の8.2%、イギリスが6.3%、フランスが3.9%と比較的大きな貢献を果たした

連合航空作戦の評価
F-16D ground.jpgイラクの重心部への攻撃には、ステルス機、巡航ミサイル、精密誘導兵器、AWACS、電子戦機といった先進的装備が不可欠であった。これらのほとんどは米軍がのみが保有し、重要局面で他の連合国軍の参加の余地はほとんどなかった
●またアラブ諸国の航空機は、一部には高性能機があったものの、その練度や搭載兵器等は西側と比較し全く不十分であり、米空軍が有効性を認めたのは、英空軍ぐらいであった。しかし、それも量的には少なく、しかも当初は精密誘導兵器を使用できなかった事から、クラスター爆弾による飛行場攻撃のみが有効に機能しただけだった

4か月間の「砂漠の盾」作戦は、後に続く「砂漠の嵐」作戦の長い準備期間として、連合作戦を前提とした場合に露見した様々な問題を解消することに活用された。例えば英空軍トーネードなどは空中給油機能もなく訓練もしていなかったが、この期間に装備改修や訓練を行った。

●作戦計画であるATOが前述のように円滑に配布できなかったことから、ATO に対する急な変更が発生した場合は、迅速な対応が可能な米空軍と海兵隊の地上基地配備航空部隊に割り当てられた。米軍以外の航空部隊は、急きょ変更可能性がある攻撃任務等に関与することはほとんどなかった
B-52-UK2.jpg●当時中佐として航空作戦計画全体を担当した人物は約20年後、英空軍の貢献には言及したが、それ以外は象徴的なものであったと述べている。ただ米軍から称賛された英空軍部隊のイラク飛行場攻撃も、それほど重要だったとは評価されていない

米以外の多国籍軍が多く参加したDCA等については、交戦の機会もほとんどなく、作戦として評価する状況になかった。連合作戦で懸念される友軍相撃は空対空戦闘において一件も発生しなかったが、(完全に担当エリアを分割した)作戦形態から見れば当然でもあった。実際には連合作戦を実施する上での問題が内在していたはずだが、一方的な戦況でそれが表面化することはなかった。
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結局のところ小椿氏(防衛大学校28期生 航空自衛官)は新たな資料が出ない限り、30周年を来年8月に迎える「湾岸戦争」は研究に値しないと主張しているのでしょうか?

F-117-2.jpgまぁ・・・50万人の兵力と1500機以上の航空戦力をサウジ等に派遣し、準備万端で臨んだ湾岸戦争と、まったく異なるのが対中国作戦です。

西太平洋地域には兵力を展開させる場所もなく、もちろん時間的も余裕なく、イラクと異なり弾道ミサイルを始め高度な兵器体系を保有する中国との対峙は、湾岸戦争とは軍事的に全く異なるものだと言うのが、エアシーバトルコンセプトの説明の冒頭部分で強調されていた点です。

やっぱり、エアシーバトルレポートを読み返した方が有用な気がします・・・

防研のブリーフィングメモwebページ
http://www.nids.mod.go.jp/publication/briefing/briefing_index.html

温故知新:エアシーバトルの脅威認識に学べ
「CSBA海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「CSBA提言 エアシーバトルのエッセンス」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-30 
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「脅威の変化を語らせて下さい」→https://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08 

Air-Sea Battleカテゴリー記事100本
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2301176212-1

ASB関連の記事
衝撃の台湾戦略提言→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27
ヨシハラ教授の提言日本もA2ADを→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-18

再度:陸軍にA2ADミサイルを→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-30
副理事長:陸軍にA2ADミサイルを→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
F-15andFA-18.jpgF-16D ground.jpg
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米空軍改革の旗手Roper次官補辞任へ [米空軍]

Barrett空軍長官らも政権交代に合わせ辞任
バイデン大統領就任式の前日に職務終了

Roper.jpg11日、米空軍はBarbara Barrett空軍長官が政権交代に併せて退任すると発表し、14日に離任式を行うと明らかにしましたが、同時に空軍次官や会計監査官と共に、米空軍の装備調達や兵器開発の改革を2018年から先頭になって進めてきたWill Roper調達担当次官補の退任も明らかになりました

Roper次官補は、2017年から当初は国防省のSCO(戦略能力迅速調達室)室長として「無人機の群れ技術」導入などで辣腕を率い、その後米空軍の調達担当次官補としてメディアから「調達のボス:Acquisition Boss」と呼ばれ、末尾の過去記事が示すように、米空軍が取り組む新規からトラブル中の装備も含め、全ての新規装備品調達事業を仕切る八面六臂の活躍でした

Roper3.jpg同時に、米軍全体の指揮統制の将来を握るJADC2(米空軍内ではABMS)を進めるため、先頭に立って実験演習を3回行ってその重要性アピールにも奔走していたところで、4軍の足並みが「今一つ」な中、Roper次官補の辣腕が今後ますます期待されていたところでした

そんな中で突然の退任ニュースです。もちろん、政権が代わって後ろ盾を失う以上、改革が継続できないと考えた既定路線だったかもしれませんが、その影響は甚大と言わざるを得ません。本ブログの読者の方も、名前を憶えていなくても、顔写真には見覚えがあると思いま

これまでRoper次官補が、口八丁手八丁で裁いてきた様々な事業の中で、今後が懸念されるいくつかのプロジェクトを取り上げておきます

●次世代制空機NGAD
NGAD8.jpg昨年9月に、突然、既にデジタル設計技術等の最新技術を生かし、既にデモ機が初飛行済みだと発表して関係者に大きな衝撃を与え、2020年Defense-Newsの10大ニューストップに選ばれています
一方でNGADについては、あまりに秘密情報が多く米議会から賛同を得られていない点に苦慮し、「米空軍にチャンスをくれ」と訴えていたところで、これについてもしっかり引き継いで推進するパワーのある人材が存在するのか懸念されます
8年毎に新機種導入など、陳腐化させず、多くの企業が競争する環境を作り、かつ新規参入を促進する画期的なアイディアがとん挫しそうで心配です・・・

●無人機ウイングマン構想(Skyborg)
Skyborg2.jpg無人ウイングマン構想は、中国やロシアなどの強固な防空網を持つ敵との本格紛争を想定し、現在は有人機がすべてを担っているISR偵察や攻撃を、安価で撃墜されても経済的負担が少ないながら、人工知能で任務遂行可能な無人機開発を目指すものです
昨年12月にデモ機製造企業3企業を決定し、2021年5月までにプロトタイプ初号機が提供され、同7月に試験飛行を開始する予定です。次世代制空機と合わせ、まだ具体的な調達構想に米議会説明等が必要な事業で、道半ばですので、今後の方向性が気がかりです

●レーザー兵器(エネルギー兵器)開発
Laser NG.jpg兵站支援が難しい対中国作戦を念頭に、電力さえあれば弾薬補給の必要がないレーザーなどエネルギー兵器に大きな注目が集まっている中、昨年6月Roper次官補は、米空軍内のチームが優先している戦闘機搭載自己防御レーザー兵器開発について課題が多数残っていると慎重姿勢を見せ、「レーザーがまず目指すべきは、単純だが恐れるべき脅威となっている小型無人機だ。これこそレーザー兵器が成熟すれば対処すべき脅威だ。」と投資や研究の優先順位を再考する考えを示していたところです。今後の方向性を示す人物がいるのでしょうか???

●F-35やKC-46などトラブル装備品
F-35 Greece4.jpg新たに操縦室内から空中給油操作を行う設計にしたKC-46の操作画面が要求性能を満たさず、ハードの根本見直しをボーイングに迫っているKC-46ですが、ハード対策は早くて2024年から開始とRoper次官補は語っており、コロナで瀕死状態のボーイングをどれだけ真剣に動かせるかに後任の力量が問われるところです
F-35は自動兵站情報システムALISが機能せず、後継のODIN導入が始まったところですが、まだまだ山はこれからで、量産開始もコロナによるサプライチェーンの混乱などで先延ばしになっており、心配の種尽きず・・・です

●老朽化装備を早期退役させ、最新装備を導入
A-10 4.jpg老朽化が進んで維持整備費がかさみ、対中国等本格紛争で出番がなさそうな装備を早期退役させ維持費を浮かせ、少しでも新規装備の導入を加速したい米空軍ですが、選挙区への利益誘導で早期退役に反対する議員対に直面し、A-10、RQ-4、MQ-9などの早期退役進まず・・議会との連携を含め、前進させる推進力になる人はいるのでしょうか

●調達改革全般
お役所仕事の旧来の装備品調達手法では、完成品を部隊配備する頃にはコンセプト自体が陳腐化していると問題視されている米軍調達ですが、これをオープンアーキテクチャーやアプリ更新で常に最新技術を活用できる形式に改革する真っただ中にある国防省や米軍で、Roper次官補に続く辣腕が登場するか? 国防省のLord調達担当次官も交代の可能性がある中で・・・

●新設された宇宙軍のバックアップ
出来立てほやほやの宇宙軍ですが、その話題性とは対照的に、全てが不足している状態で、いつ「SOS」が発せられてもおかしくない状態と見る向きも少なくありません。元親の米空軍の支援が不可欠ですが、予算厳しき中、一度袂を分かった宇宙軍をだれがサポートできるのか
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Roper NGAD.jpg米空軍だけでなく、米軍全体の改革の勢いにも影響が出そうですし、フロノイ女史が産軍複合体の「闇」の作用で国防長官に成れず、オースチン元将軍が国防長官に推挙されたあたりから不穏な気配がしていましたが、ついに来たか・・・の思いもします

20日に新政権が誕生しても、国防長官をはじめ多数の政治任用ポストを埋めるには、主要なポストだけでも少なくとも半年は必要ですから、いろいろ停滞するんでしょうねぇ・・・・

Lord2.jpg調達関連の改革を国防省の担当次官として推進してきたLord次官も、20日で退任が明らかになりました。強力な改革推進派だった2名の退任で、しばらく寂しくなりそうです・・・

Will Roper氏の関連記事
「SCIF使用困難で戦闘機開発危機」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-12
「U-2がAI操作員活用で初飛行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-17
「KC-46の恒久対策は2024年!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-30
「次期制空機のデモ機を既に初飛行済」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-16
「女性操縦者増加のため操縦席基準を見直し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20

「戦闘機防御レーザーから撤退へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-01
「連接演習、3回目は太平洋で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「24時間以内の緊急打ち上げへ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-01
「無人機ウイングマン構想」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-27
「調達担当者を活躍させる体制」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-16

「KC-46Aの異物問題に」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「PGM不足問題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-09
「米空軍重視の9分野」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-4
「維持費削減に新組織RSO」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-23
「ソフト調達が最大の課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-01

「F-35維持費が大問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-20-1
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26 
「無人機の群れに空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30
「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1

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中国が対艦弾道ミサイル試験に成功か [中国要人・軍事]

昨年8月、周辺に展開の米軍機や米軍艦艇に見せつけるように
DF-26BとDF-21Dを時差発射で同時目標着弾か

DF-26D 2.jpg13日付読売新聞が、関係筋情報として一面サブトップに、「【独自】中国の「空母キラー」ミサイル、航行中の船へ発射実験…2発が命中か」との記事を掲載し、2020年8月に中国軍が、「米空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイルの発射試験を行い、米軍が監視する目の前で「目標直撃」の成功を収めていたと報じています

中国軍は、射程約1500㎞の「DF-21D」と、射程4000㎞のDF-26Bとの移動する艦艇攻撃用の弾道ミサイルを保有し運用を開始していると報じられてきましたが、時速50㎞程度で海上を移動する艦艇位置をリアルタイムで把握して攻撃する能力が本当にあるのか、海上目標攻撃試験が未確認であったため、「半信半疑」な思いが西側関係者の間では交錯していました

DF-21D 6.jpgそんな中、昨年11月にDavidson太平洋軍司令官が講演で、「中国軍は動く標的に向けて対艦弾道ミサイルをテストした」と認めていましたが、実際に目標艦艇に命中させていたか等の細部については言及していませんでした

今回の読売の「関係筋情報」でも、移動する目標情報をどのようにミサイルに伝えて命中させたのか等については触れられておらず、課題と考えられてきた中国軍の「海上でのリアルタイムISR能力」については評価が難しいところですが、当該ミサイルの射程からすれば、米空母や主要な米海軍艦艇が第1列島線はおろか、第2列島線より中国大陸に近づくことのリスクが益々高くなったことに間違いはありません

DF-21D 5.jpgなお本件は、8月26日に香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)が、中国軍が8月26日朝、内陸部の青海省と沿岸部の浙江省からそれぞれ中距離弾道ミサイルを1発ずつ、南シナ海に向けて発射し、中国軍が設定した演習海域に着弾したと中国軍に近い消息筋が明らかにした、と報じていたところでもあります。(産経web報道 https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200827/mcb2008270826016-n1.htm

13日付読売新聞1面記事によれば
中国軍が南シナ海で2020年8月に行った対艦弾道ミサイルの発射実験の際、航行中の船を標的にしていたことを、中国軍の内情を知りうる関係筋が明らかにした。米軍高官もこの事実を認めている。「空母キラー」とも呼ばれるミサイル2発が船に命中したとの複数の証言もあり、事実とすれば、中国周辺に空母を展開する米軍の脅威となる

DF-26 浙江省.jpg発射実験は8月26日、海南省とパラセル(西沙)諸島の中間の海域で行われた。関係筋によれば、無人で自動航行させていた古い商船を標的に、内陸部の青海省から「DF-26B:東風26B」(射程約4000㎞)1発を先に発射。数分後、東部の浙江省からも「DF-21D:東風21D」(射程1500㎞超)1発を発射した。ミサイル2発は「ほぼ同時に船を直撃し、沈没させた」という

別の関係筋も、ミサイル2発が商船に命中したと証言した上で、海域周辺に展開していた米軍の偵察機やイージス艦に「中国軍のミサイル能力を誇示した」と明かした。中国軍が南シナ海で動く標的に発射実験を行ったのは初めてとみられる。船の位置を捕捉する偵察衛星などの監視体制、ミサイルの精密度が着実に向上していることを示す
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記事によれば、DF-26とDF-21を別々の場所から時間差で発射し、海域周辺に展開していた米軍の偵察機やイージス艦の目の前で、海南省(島)と西沙諸島の中間の海域を自動航行する古い商船に「ほぼ同時に」命中させたとの事です

DF-26.jpg目標の商船の位置を商船自身が発信していた可能性とか、海南島やパラセル諸島から艦艇の位置をミサイル部隊に通報していた可能性もありますが、5000名の乗員が乗り込み、数兆円の価値がある虎の子アセットを、米軍がリスクを冒して中国大陸に接近させる可能性がさらに低下したと言えましょう

また、コロナの話題ですっかり中国の南シナ海や尖閣周辺での乱暴な行動が目立たなくなっている中、中国軍事力増強に警鐘を鳴らす意味で、重要な読売の報道です

米国防省「中国の軍事力」レポート関連記事
「2020年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-02
「2019年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-06
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1

防研の「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1
4回:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
5回:非伝統的軍事分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-22
6回:PLA活動範囲拡大→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-09
7回:中台関係→サボって取り上げてません
8回:米中関係→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-2
9回:一帯一路→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-11
10回:ユーラシア→サボって取り上げてません

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トランプ政権間にUAEとのF-35輸出契約か [安全保障全般]

UAEへのF-35輸出合意文書が、バイデン大統領就任式の数時間前に署名された模様
(ロイターが関係筋情報で報じ、Defense-Newsも別ソースで確認)
50機のF-35と18機のMQ-9などをFMS枠組みで輸出の模様
https://www.defensenews.com/global/mideast-africa/2021/01/20/just-hours-before-bidens-inauguration-the-uae-and-us-come-to-a-deal-on-f-35-sales/
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担当国務次官補が「手続きは順調」と
MQ-9や関連弾薬を含め2.5兆円規模の輸出パッケージか

F-35 Greece4.jpg8日、米国務省の政軍関係担当Clarke Cooper国務次官補が記者団に、UAEへのF-35輸出手続きの現状について、1月20日のバイデン大統領就任式までに契約署名が完了すべく「全てが順調に進んでいる:Everything is on that trajectory」と語りました

かねてから中東湾岸諸国を中心に最新兵器導入を望む声は大きく、特にイランに後押しされたイスラム原理主義の拡大の中でその声は大きくなっており、UAEは5年以上前からF-35を米国に求めていたと言われていますが、中東で「イスラエルの軍事優位を維持確保する」との大原則の前に進展がありませんでした

Israel UAE.jpgそれがトランプ政権の仲介による昨年8月のイスラエルとUAEとの国交樹立によって一気に風向きが変化し、10月にはイスラエルがUAEへのF-35輸出を黙認することを事実上表明したことで大きく動き始めます

従来はイスラエルとパレスチナの和平問題解決が中東諸問題進展の前提条件でしたが、パレスチナがイスラム原理主義勢力に支配された現状では、イスラエルとパレスチナの和平は前提とすべき条件ではなく、他の穏健アラブ諸国とイスラエルの関係改善を直接進めることの方が実態に即しているとの認識が、イスラム過激派との20年にわたる対テロ戦争の中で広く地域に共有されるに至ったからだと理解しています

US UAE Israel Ba3.jpg実際、UAEに続いてバーレーン、オマーン、モロッコなどがイスラエルとの関係改善に進み、イスラエル首相がサウジを極秘訪問したとの報道も出ている状況で、トルコ大統領もイスラエルに秋風を送る動きを見せるなど、中東世界は大きな変化を見せつつあります。日本の主流と言われる中東学者が頭を切り替えられない中で・・・

米大使館のエルサレム移転等で物議をかもしたトランプ政権ですが、今となってはオバマ時代より圧倒的に中東の安定に寄与した政権であり、オバマ時代回帰を目指すように見えるバイデン政権誕生までに、UEAへのF-35輸出を固めようとする強い意志が現政権にあるように感じます

8日付Defense-News記事によれば
UAEへの武器売却は、50機までのF-35を約1.1兆円、18機のMQ-9攻撃型無人機を3兆円、約1.1兆円の空対空及び空対地兵器などを含む総計約2.5兆円規模になると推定されている
Sea Guardian.jpgバイデン政権で国務長官となるAnthony Blinken氏は昨年10月、UEAへのF-35輸出について「この件は、極めて慎重に注意深く検討しなければならない問題だ」と述べ慎重な姿勢を示していた

実際昨年、この売却提案は、UAEが中国やロシアとの軍事面での関係を持つことや、「イスラエル軍事力の質的優位:qualitative military edge」を維持する必要性を主張する議員が多い米議会で不評であることが明らかになったが、12月の上院での輸出阻止動議は無人機と弾薬輸出の件が46-50で否決され、F-35輸出が47-49で否決されている

F-35 Gilmore.jpg7日Cooper国務次官補は、「UAEへの輸出契約は複数の様々な契約で構成されており、様々な契約書類への署名がそれぞれの製造や納品スケジュールに応じて準備されている」、「(F-35との複雑な最新システムが)様々な企業群と様々な条件の下で支えられているからだ」
「しかし、全ては完結に向けた放物線を描いていると言える。売却に向けたすべての手続きは取りまとめられ、米議会の議論も経たものとなっている」と手続きの進捗に自信を見せた
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トランプ政権は大統領選挙後にグダグダの様相を見せていますが、中東ではクシュナー補佐官の尽力でカタールとサウジ等の国交が回復されたりと、地道で着実な外交努力が実を結んでいます

US UAE Israel Ba2.jpgバイデン政権の外交・安全保障メンバーが、中東・欧州経験者で占められる方向にあり、対中国姿勢に大きな懸念がもたれていますが、トランプ政権が築いた新たな中東の動きがどのように新政権で扱われるのかも、大いに気になるところです

中東とF-35
「イスラエルがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-26
「米大統領:UAEへのF-35輸出は個人的にはOK」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-18
「米大統領:UAEはF-35を欲している」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-21
「中東第2のF-35購入国はUAEか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-11-05
「湾岸諸国はF-35不売で不満」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-16
「イスラエルと合意後に湾岸諸国へ戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-17

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米国防省が小型無人機対処戦略を発表 [米国防省高官]

国防省のJCO:Joint Counter-sUAS officeが作成
情報収集、防御体制確立、他との協力体制構築の3本柱で

CUAS3.jpg7日、米国防省が小型無人機対処戦略(Counter-Small Unmanned Aircraft Systems Strategy)を発表し、「体制整備&情報収集分析」、「防御体制確立」、「他との協力体制構築」の3本柱で取り組みを加速すると明らかにしています。担当は国防省のJCO(Joint Counter-sUAS office)で、リーダーを米陸軍のSean A. Gainey少将が務めています

背景には、急速に普及・拡散が進む無人機技術とその脅威に対処するため、各軍種各部隊がバラバラに様々な対処装備を次々と導入して「無駄」や「重複」や「混乱」が生じているとの危機感があり、調達担当次官が無人機対処兵器を数種類に絞り込みたいと昨年秋に発言するまでに至っていた事態があります

CUAS.jpg装備の絞り込みだけでなく、運用ドクトリンや運用や訓練手法なども統合レベルで統一した基準を示し、米軍として一体的な取り組みを推進することも本戦略の重要な狙いとなっています。また指揮統制システムや既存システムとの連携も重要な課題で、報道では、最も進んだTHAAD指揮統制システムとの連接が極めて重要とのGainey少将の発言も紹介されており、広がりの大きな事業であることを伺わせます

更に、無人機対処と言っても海外展開拠点の防御から国内基地の警備まで対処環境は様々で、同盟国と協力した海外敵対勢力の無人機脅威分析から、米連邦航空局と連携した米国内で使用される小型無人機の把握などまで、多様なことを考える必要のある大きな課題で、加えて同戦略は「国内技術開発への投資政策」や「対処装備の海外への売込み」までを視野において記述されており、中身「山盛り」感のあるものとなっています

昨年末の記事で、アゼルバイジャンとアルメニアの紛争で、前者が攻撃型無人機で後者を圧倒し、ロシア製最新兵器を粉砕して世界の軍事関係者に「ついに現実になったか・・・」との衝撃が走っているとご紹介しましたが、米国防省も遅ればせながら本格的に動き出した形です

CUAS2.jpg1月中に本戦略遂行のための具体的なロードマップ計画が示されるようで、その中に4月にYumaの陸軍試験場で陸空軍が協力して行う「複数の企業提案対処装備の評価実験」も含まれており、既選定済の海兵隊採用車両搭載型「Light-Mobile Air Defense Integrated System」や、Bal Chatri社製の手持ち兵器「DronebusterとSmart Shooter」に続く対処装備の選定が行われるようです

本戦略の背景や概要をご紹介しましたが、以下では戦略の3本柱である「情報収集分析:Ready the force」、「防御体制確立:defend the force」、「他との協力体制構築:build the team」の3本柱(Ready the force, defend the force and build the team)について、つまみ食いでご紹介します

7日付Defense-News記事によれば

●To prepare the force
--- 脅威分析のため、現在と将来の脅威情報収集と分析体制を確立し、具体的な情報要求や収集優先順位を設定する
--- 無人機対処技術開発のため、科学技術投資先の見極め評価基準を統制し、この活動を米本土内だけでなく、同盟国との間でも行う必要がある
--- これらを推進するため情報共有枠組みを構築する必要があり、標準化されたインターフェースや相互運用性のある仕組みが求められる。企業が提案する防御装備の評価や審査に関する評価標準も必要となる

●To defend the force
--- 平時から大規模紛争時までをカバーする作戦運用ドクトリンやコンセプト開発が必須で、装備品、訓練、政策、運用管理組織を有機的に束ねる必要がある
--- またこのドクトリンやコンセプトは投資選択の基準としても重要で、一連の対処装備をファミリーとして整備していく上での基礎ともなる

●To build a team
--- 米国内だけでなく同盟国やパートナー国を含めた作戦運用協力や技術開発協力が重要である。特に最新技術を導入するために、新たなパートナーをひきつけなければならない
--- 多様な協力関係を構築するための民間機関との協力合意形成や、法執行機関や展開先ホスト国との協力体制や共通手順の作成が重要となる
--- 作戦運用や情報収集面だけでなく、必要な装備品の売却や提供の円滑化迅速化を図る必要もある
////////////////////////////////////////////////////////////

ちなみに本戦略では、「小型無人機」の重量25㎏以下(55ポンド)のものを「小型」と定義しているようです

CUAS4.jpg小型無人機の運用に関しては、米国内でも諸外国でも法体系の整備が「道半ば」「日々変化中」で、米国防省の対応も大変そうです

5日の週には、米連邦航空局FAAが小型ドローンの登録制度を強化(?)し、米軍基地周辺を飛行する小型無人機の識別や対処に有用な情報が得られやすくなるようですが、たとえ悪意のない小型無人機であっても無害であるとは限らず、平時の対応は法執行機関との調整を必要とします

これが海外の展開先ともなれば一層困難です。在基地米軍基地周辺を小型ドローンが飛行していたとして、国土交通省のwebサイト上に識別や対処に必要な情報が公開されているかと言えば心もとない限りでしょうし、迎撃兵器を使用すれば周辺住宅への落下被害の恐れもあり・・・・複雑です

この戦略関連で様々な報道や情報が提供されており、まとまりのないご紹介となりましたが、それだけ差し迫った「Clear and Present Danger」だということです

米国防省の小型無人機対処戦略(1月7日)
Counter-Small Unmanned Aircraft Systems Strategy
→ https://media.defense.gov/2021/Jan/07/2002561080/-1/-1/1/DEPARTMENT-OF-DEFENSE-COUNTER-SMALL-UNMANNED-AIRCRAFT-SYSTEMS-STRATEGY.PDF

世界の軍事関係者に衝撃
「攻撃無人機でアゼルバイジャン圧勝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-21

無人機対処にレーザーや電磁波
「小型ドローン対策に最新技術情報収集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-20-1
「米海兵隊の非公式マニュアル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-31
「ドローン対処を3-5種類に絞り込む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-14
「米軍のエネルギー兵器が続々成熟中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-30-1
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24

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