核密約と抑止を元外務省幹部が語る(前編) [安全保障全般]

本日は前編として、「密約」の位置づけやその意味するところ、現時点での問題点等について茂田さんの雑感を紹介します。明日の後編では、米国の核拡大抑止が有事にどのように機能するか、日本は如何に対応すべきか、について茂田さんのご意見を紹介します。
●公的に引き継がれなかった密約・約束


ただし、米側ではホワイトハウスが「国防省に核抜きを納得させる材料」として使った蓋然性は高い。米政府部内で当時とその後にどう取り扱われてきたか、現在米としてどう考えるかを聞いてみれば、この密約の性質、効力を確定し得るが、米側に今も有効と言われる恐れが少しはあるので、藪蛇にならないように、慎重に取り運ぶ必要があろう。
●密約の存在が意味するもの
60年安保改定の際の核搭載艦船の寄港についてのいわゆる密約は、要するに米艦船が核を搭載して寄港しており、日本の政府当局者がそれを容認していた、しかし国会では事前協議要請がない以上、寄港していないとごまかし答弁をしたということである。寄港を持ち込みとして扱わなかった、という意味での非核3原則は守られていなかったということである。

●現時点での問題点
この密約の調査と今後の核搭載艦船の寄港問題、非核3原則の取り扱いは、別に取り扱いたいと岡田外相は述べている。これはそうすべきであろう。
米の艦船には平時には、核兵器は1991年ブッシュ声明以降搭載されていない。したがって平時においては、今では非核3原則との矛盾は生じない。
●将来の有事に向けての課題
問題は有事の場合である。これについては非核3原則を重視するか、核の傘の実効性を重視するかが問題になる。
有事と言ってもいろいろなケースがあるので、その時々に判断する、場合によっては非核3原則ではなく、核の傘の実効性を重視する余地を残しておくことが肝要であると思われる。事前協議には、イエスもノーもあるという姿勢を取っておくべきであろう。
本日はここまでとします。
明日の後編では、米国の核拡大抑止が有事に機能するか、日本は如何に対応すべきか、について茂田さんのご意見を紹介します。
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