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22日米議会がオースチン国防長官を承認:直ちに職務開始 [オースチン国防長官]

ふたを開ければ上院承認投票は93-2の圧倒的支持

Austin3.jpg22日、米議会上院はLloyd Austin元中央軍司令官(67歳)の国防長官就任を、賛成93票、反対2票で承認しました。報道によれば、当日午後(または23日)にも就任の宣誓を行い、直ちに職務を開始するとのことです

元軍人が国防長官に就任するには、退役後7年経過を求める規定がありますが、昨年12月にAustin退役大将が候補者に挙がった際は、この規定の例外を米議会が認めないだろうとの論評が多くみられました

トランプ政権のMattis初代国防長官も、この規定の適応除外を求める必要がありましたが、この時はトランプ氏が安全保障の見識がないことから軍事や国防省をよく知る人物が国防長官就任が望ましいとか、米議会がMattis氏の人柄をよく知り信頼感があった等の理由で承認がスムーズでした

Mattis4.jpg一方でAustin元大将が候補に挙がったタイミングでは、トランプ政権が元軍人を多数国防省の文民ポストに登用していたことや、過去2例しかない元軍人の国防長官がMattis氏から時間を空けず再び誕生することに「シビリアンコントロール上問題がある」、「軍需産業の経営にかかわっていた人物はふさわしくない」との声が民主党内から強く上がり、有力議員から「絶対阻止」との声も上がっていたことから、仮に議会承認を得られるにしても手続きに長時間必要だろうと危惧されていました

それがバイデン大統領就任から僅か2日で新国防長官の承認です。ワシントンDCの細かな政治力学を把握していないまんぐーすですが、やはりトランプ支持派の議会乱入事件を受けて議会の雰囲気が一変し、また同事件を受け国防省主要幹部の相次ぐ退陣で相当現場が混乱していたこともあり、米議会も一転して国防長官を早期に確定して「安定」「事態鎮静化」を図る方向に傾いたものと推測しています

このような背景を受けAustin氏は19日の議会ヒアリングで
Austin7.jpg国防長官就任を承認していただけたなら、全ての国防省職員や米軍兵士のために、差別やハラスメントや憎しみのない職場環境を構築する。国家の安全を守る国防省内に、内なる敵を抱えていては任務が果たせない
性的暴力防止に正面から立ち向かう。過激思想や人種差別的な動きを排除する。国家のため勤務しようとする全ての志ある者が、尊厳をもって勤務できる環境を構築する

また、バイデン政権が中国寄りとの各方面からの懸念を察知し
●世界的には、アジアが国防省の業務の焦点でなければならないと理解している。私は中国が特に国防省にとって迅速に対応すべき課題だと考えている
●(バイデン大統領も希望しているが、過去3代の大統領が追及したが成しえなかった、アフガンからの米軍撤退について、)米軍を引き続きアフガン内に残す選択肢も含め検討すべき課題

なお、Austin氏が2016年に陸軍退役後、4年間に渡り巨大軍需産業レイセオンの役員を務めてきた経緯から、国防長官在任中は、同社関連の国防省議論や判断に一切関わることができません。(同社装備品の選定や導入や評価に関する一切の会話や会議や決定に関与できない)

Austin氏の就任に反対の雰囲気だった議会の声
新任のJack Reed上院軍事委員長(民主党)
(黒人長官の誕生は)非常に大きな歴史的瞬間だ。米軍に多くのアフリカ系米国人やラテン系などが含まれる中、その中から国防省リーダーが誕生した瞬間を目の当たりにしたのだ
Smith2.jpg●Adam Smith下院軍事委員長(民主党)
トランプ政権下の4年間で、国防省では臨時を含め6名も長官が入れ替わっている。これがもたらした国防省内の混乱と無秩序は甚大な被害をもたらしており、米議会は早期に国防長官を承認して事態を収拾し、国防省があるべき形に戻らせることが必要だった。切迫した状態だった

Austin国防長官のご経歴概要
Austin退役陸軍大将は、1953年8月アラバマ州生まれでジョージア州育ち。典型的な南部の出身の67歳。1971年陸軍士官学校卒業で歩兵部隊士官として勤務し、2016年に中央軍司令官を最後に退役し、大手軍需産業Raytheon取締役等の民間企業役員やコンサルファームの経営を行っていた
米陸軍式幕僚大学や米陸軍大学卒業。1986年のアラバマ州アーバン大学で教育カウンセラー修士号、1989年にウエブスター大学からMBAを取得している

Austin.jpgオバマ氏が大統領に当選した2008年、イラク駐留多国籍部隊の司令官を務めており、その後、2010~2011年の間、その一つ上のイラク駐留米軍司令官を務め、オバマ政権(バイデン副大統領)の下で困難な対IS作戦の正面で指揮官を務めた
2011年12月、同大将は黒人初の陸軍副参謀総長に就任し、そのわずか1年後の2013年3月から米中央軍司令官を務め、2014年のモスル奪還など対IS作戦を指揮し、2016年4月に退役した

寡黙で、メディアの前でインタビューに答えることもほとんどなかったし、大衆の目を避けるように行動するタイプだが、強いリーダーシップを発揮する、誠実で知性あふれる人物として知られている
ただ一方で、米議会など証言の機会を与えられると率直な物言いで知られ、ISが北西イラク地方に侵攻を企てた際、イラクのスンニ派がイラク政府支援を拒否するだけでなく、ISの味方をして便宜を図ったと率直に語ったり

Austin2.jpg約50億円を投入した対ISのためのシリア反政府勢力教育訓練の成果を、当時のマケイン上院議員に「養成した要員が何名ぐらい前線でISと戦っているのか?」と質問され、「4-5人です」と正直に回答し、マケイン議員から「30年上院軍事委員会にいて、こんなにばかげた話を聞いたことがない」と酷評されるほど率直・正直な人物として知られている
それでもオバマ政権下で同大将は高い評価を得ていたが、オバマ大統領が決定した2011年12月のイラクからの米軍撤退について反対姿勢を示している
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「トランプ支持派の議会突入」で一気に雰囲気が変わった印象ですが、大本命だったフロノイ女史が「ワシントンDCの闇の力学」で国防長官に成れず、難航しそうだった国防長官選定が早期に決着したことは朗報です

Austin5.jpg個人的には、軍人ほど「シビリアンコントロール」について学び、勤務の中で体感し、最前線の苦闘の中でその在り方を考えてきた人材は他に世の中に存在せず、口先だけで「文民統制」を語る政治家の方がよほど危険だと思います

あまり好きになれない三浦瑠璃さんですが、著書「21世紀の戦争と平和」(副題:徴兵制はなぜ再び必要とされているのか)の中で、近年の戦争指導で、軍事や安全保障に無知な政治家による混乱した「シビリアンコントロール」が大きな犠牲を生んでいる点を指摘されており、その点では同感です

「多様性」との言葉がしっくりと体になじまない世代のまんぐーすですが、Lloyd Austin新国防長官には何の問題も感じません。黒人が米軍社会で上り詰めるには相当の困難がある中で、中央軍司令官まで務めた能力は間違いなく、そのご活躍を祈念申し上げるのみです

オースチン新国防長官関連
「オースチン国防長官候補をご紹介」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-08
「Austin元大将が国防長官になる為の高いハードル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-02

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