WSJ誌報道の在韓米軍削減案提示に国防長官が [エスパー国防長官]
国防省報道官や太平洋軍司令官も関連発言
大統領だけの思い付きではなく、国防省も支持の印象です
21日、エスパー国防長官やDavidson太平洋軍司令官などが別々の場で、17日付WSJ誌電子版による「米統合参謀本部がホワイトハウスに対し、在韓米軍削減オプションを複数案提示した」との報道に関し発言し、情勢や新たな装備導入などに応じ、国家防衛戦略NDS遂行のため最適な態勢を追求するとして報道を否定しませんでした
WSJ誌報道の背景には、在韓米軍駐留経費の韓国負担増問題があり、米韓の実務者間では2019年の韓国負担経費額(約1200億円)から13%増で合意したものの、米国防省と国務省が「トランプ大統領が納得しない」として拒否し、経費負担割合を定める特別措置協定(SMA)が3月末で失効して、在韓米軍で勤務する韓国人のうち約4千名が無給休職に追い込まれる等の問題に発展しているところです
幸い、在韓米軍で働く韓国人職員の人件費については、2020年末まで韓国政府が全額を負担することで合意(協定では韓米8:2)しましたが、あくまで暫定措置であり、国防費が伸びないドイツに対しトランプ大統領が、制裁として「ドイツ駐留米軍3.45万人のうち約9500人を削減」して一部をポーランドに移すと指示した件もあり、単なる恫喝で終わらない可能性もあります。
元々韓国は米軍兵士にとって人気のない勤務地で、韓国側が費用の大半を負担し、米軍司令部等をソウルから南へ70㎞の場所に移すと同時に、最新設備の米軍兵士住宅をたっぷり準備するなどの措置を行ってきましたが、米軍内にも中東への長期派遣などで負担感が増しており、海外駐留部隊の削減に強い反対姿勢はない雰囲気です
21日付米空軍協会web記事によれば
●エスパー国防長官は21日、「全ての地域戦闘コマンドの状況を見ているところであり、国家防衛戦略NDS遂行のため、最適化した配置を検討している」、「(検討は)米国により柔軟性を提供することを狙いとするもの」等と表現し、
●最近米空軍爆撃機部隊が始めた、グアム島に駐留派遣する形式ではなく、米本土の基地から必要時に長距離直接派遣を情勢に応じ柔軟に行う「dynamic force employments」方式を、海軍艦艇や地上部隊にも適用するオプションも含まれると示唆した
●21日、米太平洋軍司令官のPhilip S. Davidson海軍大将は別の場で記者団に、「朝鮮半島に駐留する米軍に関する変更命令は受けていない」と述べる一方で、「米軍がF-35など新たな高性能装備を導入する過程で、北朝鮮と今夜から対峙することになっても勝利を収めることが可能な態勢が変化することはあり得る」と表現した
●そして地域戦闘コマンド司令官として、「どのような態勢が任務達成のために必要なのかを見極めることは、司令官としての責務である」とも述べ、「どの部隊を新たに導入し、どの部隊を米本国に戻すかをのガイダンスを、情勢に応じて示す必要がある」と語った
●米国防省のRath Hoffman報道官は21日の会見で、「いくつかの地域戦闘コマンドは、より効率的な米軍全体の態勢を考える上で、変更の必要性や可能性がある伝統的な任務や行動を背負っている」と語っている
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米議会からは、ドイツ駐留兵士の削減にも在韓米軍削減についても反対の声が上がっていますが、日米の専門家からは、ドイツや韓国だけでなく、中東や日本に駐留する米軍兵士も削減検討の対象になっているとの指摘もあり、韓国の状況は対岸の火事ではありません
中国(北朝鮮も含む)の弾道ミサイルや巡航ミサイルの充実度や、サイバー戦や電子戦能力を考えれば、有事に在日米軍をそのまま在日米軍基地を根拠として活動させることには限界があり、米空軍は戦力の分散運用ACE(Agile Combat Employment)構想に向けた検討や訓練しているのですが、
有事間際になって日本から在日米軍が「転進」したのでは見た目も悪いので、日本の国防費支出や駐留経費負担程度を理由に、在日米軍を平時のうちに削減することは、トランプ政治的にも純軍事的視点からも「あり得る選択肢」だとも思います。21日の国防長官らの発言ぶりを聞いて、残念ながらそう思いました
ドイツ駐留米軍削減の関連
「独駐留米軍を1万人削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-16
「移動先ポーランド大統領と会談」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-25
「米独2000名に安保アンケート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-10
在韓米軍の関連記事
「米軍基地勤務の韓国人5千名レイオフ開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-01
「在韓米軍司令部が70㎞南へ移動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-08
「韓国の米軍再編は順調」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-27
「在韓米軍は兵士に不人気?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-10-02
在日米軍基地は有事には
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
大統領だけの思い付きではなく、国防省も支持の印象です
21日、エスパー国防長官やDavidson太平洋軍司令官などが別々の場で、17日付WSJ誌電子版による「米統合参謀本部がホワイトハウスに対し、在韓米軍削減オプションを複数案提示した」との報道に関し発言し、情勢や新たな装備導入などに応じ、国家防衛戦略NDS遂行のため最適な態勢を追求するとして報道を否定しませんでした
WSJ誌報道の背景には、在韓米軍駐留経費の韓国負担増問題があり、米韓の実務者間では2019年の韓国負担経費額(約1200億円)から13%増で合意したものの、米国防省と国務省が「トランプ大統領が納得しない」として拒否し、経費負担割合を定める特別措置協定(SMA)が3月末で失効して、在韓米軍で勤務する韓国人のうち約4千名が無給休職に追い込まれる等の問題に発展しているところです
幸い、在韓米軍で働く韓国人職員の人件費については、2020年末まで韓国政府が全額を負担することで合意(協定では韓米8:2)しましたが、あくまで暫定措置であり、国防費が伸びないドイツに対しトランプ大統領が、制裁として「ドイツ駐留米軍3.45万人のうち約9500人を削減」して一部をポーランドに移すと指示した件もあり、単なる恫喝で終わらない可能性もあります。
元々韓国は米軍兵士にとって人気のない勤務地で、韓国側が費用の大半を負担し、米軍司令部等をソウルから南へ70㎞の場所に移すと同時に、最新設備の米軍兵士住宅をたっぷり準備するなどの措置を行ってきましたが、米軍内にも中東への長期派遣などで負担感が増しており、海外駐留部隊の削減に強い反対姿勢はない雰囲気です
21日付米空軍協会web記事によれば
●エスパー国防長官は21日、「全ての地域戦闘コマンドの状況を見ているところであり、国家防衛戦略NDS遂行のため、最適化した配置を検討している」、「(検討は)米国により柔軟性を提供することを狙いとするもの」等と表現し、
●最近米空軍爆撃機部隊が始めた、グアム島に駐留派遣する形式ではなく、米本土の基地から必要時に長距離直接派遣を情勢に応じ柔軟に行う「dynamic force employments」方式を、海軍艦艇や地上部隊にも適用するオプションも含まれると示唆した
●21日、米太平洋軍司令官のPhilip S. Davidson海軍大将は別の場で記者団に、「朝鮮半島に駐留する米軍に関する変更命令は受けていない」と述べる一方で、「米軍がF-35など新たな高性能装備を導入する過程で、北朝鮮と今夜から対峙することになっても勝利を収めることが可能な態勢が変化することはあり得る」と表現した
●そして地域戦闘コマンド司令官として、「どのような態勢が任務達成のために必要なのかを見極めることは、司令官としての責務である」とも述べ、「どの部隊を新たに導入し、どの部隊を米本国に戻すかをのガイダンスを、情勢に応じて示す必要がある」と語った
●米国防省のRath Hoffman報道官は21日の会見で、「いくつかの地域戦闘コマンドは、より効率的な米軍全体の態勢を考える上で、変更の必要性や可能性がある伝統的な任務や行動を背負っている」と語っている
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米議会からは、ドイツ駐留兵士の削減にも在韓米軍削減についても反対の声が上がっていますが、日米の専門家からは、ドイツや韓国だけでなく、中東や日本に駐留する米軍兵士も削減検討の対象になっているとの指摘もあり、韓国の状況は対岸の火事ではありません
中国(北朝鮮も含む)の弾道ミサイルや巡航ミサイルの充実度や、サイバー戦や電子戦能力を考えれば、有事に在日米軍をそのまま在日米軍基地を根拠として活動させることには限界があり、米空軍は戦力の分散運用ACE(Agile Combat Employment)構想に向けた検討や訓練しているのですが、
有事間際になって日本から在日米軍が「転進」したのでは見た目も悪いので、日本の国防費支出や駐留経費負担程度を理由に、在日米軍を平時のうちに削減することは、トランプ政治的にも純軍事的視点からも「あり得る選択肢」だとも思います。21日の国防長官らの発言ぶりを聞いて、残念ながらそう思いました
ドイツ駐留米軍削減の関連
「独駐留米軍を1万人削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-16
「移動先ポーランド大統領と会談」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-25
「米独2000名に安保アンケート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-10
在韓米軍の関連記事
「米軍基地勤務の韓国人5千名レイオフ開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-01
「在韓米軍司令部が70㎞南へ移動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-08
「韓国の米軍再編は順調」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-27
「在韓米軍は兵士に不人気?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-10-02
在日米軍基地は有事には
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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