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米空軍:予算で将来連接性を重視しアセット予算削減 [米空軍]

約3兆円を伝統アセットから連接性へ
Wargameを経て連接性重視が効果大と確信
軍種間の予算シェア論争には加わらず

Goldfein2.jpg27日、シンクタンクCNASのイベントでGoldfein米空軍参謀総長は2021年度予算案取りまとめに当たってエスパー国防長官とも相談して決めた4つの重視テーマを説明し、特に就任以来強調してきた「統合の連接性・データ共有の迅速性、指揮統制の円滑化」予算に、伝統的な空軍アセット予算を犠牲にして資源を投入する決定を行ったと語りました

同参謀総長は、徹底的なシュミレーションwargamesとその分析の結果、伝統席な航空アセットを増強するより、連接性を高めたほうが効果的だとの結論に至ったと語り、「2030年を想定したWargameで「連接性」を改善することで、やっと機能するようになった」、「勝つことが出来た」と語って予算案の方向性の正当性を説明し、更に連接性以外の3つのポイントにも触れています

2021年度予算案の4つの重視テーマとは
---Inter-service connectivity for “the joint fight.”
---Investment in space operational capability
---Investment in stand-in and standoff capabilities
---Investment in logistics

聴衆のメディアからは、最近米海軍トップが行った「陸海空軍の予算シェアを見直すべき」、「海軍はかつて38%だっと」等の発言や、これを受け陸軍長官が「米陸軍は24%程度しかない」「地域コマンドから最も要求が多いのは陸軍戦力だ」等と語った件について質問があったようですが、「その議論には加わらない」と大人の対応を見せ、大きな考え方について国防長官の了解を得ていると述べるに留めています

27日付米空軍協会web記事によれば
Goldfein.jpg●27日、CNASの「fireside chat」で空軍参謀総長は、当日の朝にエスパー長官と「素晴らしい会談」をして2021年度予算案の方向性について同意を得たと述べ、米空軍予算案の方向について4つの重視事項を示して説明した
●まず同参謀総長は、現在と近未来のリスクは甘受する覚悟で航空アセット予算から約3兆円を捻出し、将来の戦いにおける勝利に大きく貢献する軍種内及び軍種間の連接性向上に投資することにしたと説明した

●そしてそのような結論に至った過程で、徹底的にwargamesをやって分析を行い、センサーとシューターの連接を、米空軍内だけでなく統合レベルで改善することが、多くのプラットフォームを購入する事よりも寄与度が高いとの結論に至ったと述べた
●同参謀総長は具体的に、「強度の強い厳しい環境でのwargamesを長くやっておらず、最近再開した結果は良くなかった」、「しかし2030年想定で、米空軍が提案する連接性改善を行った米軍で戦ったところ、我々は勝利した。我々の提案が機能したのだ」とwargamesについて語った

米空軍の提案した伝統的アセットの「犠牲」部分については、国防省やホワイトハウスからの押し戻しによって多少妥協したが、ほぼ原案通りだと同大将は説明した

Space Fence3.jpg他の3つの重視事項についても同参謀総長は触れ、宇宙について、「宇宙で互いに戦った場合、勝者はなく、双方が大きな損失を被る」とwargamesの分析に触れ、「宇宙で米国を攻撃した場合、相手も大きな被害を受けることを知らしめ、相手を抑止しなければならない」、「級数的に新たな宇宙防御力を増やし、巨大で撃たれ強い宇宙ネットワークを構築して、相手の攻撃を難しく効果を低下させる」と予算施策の方向性を説明した

●またwargamesの結果、現状の突破型やスタンドオフ型のアプローチが良く機能しなかったことから、「stand-in and standoff capabilities」を強化する投資を盛り込んだと説明した

4つ目の「兵站:logistics」に関しては、米軍のリーダたち皆が「我々にアクセスの自由はもはや存在しない」点で意識を共有していると述べ、2021年度予算では「兵站能力強化とその防御確保」を重視すると述べ、「勝利するために移動することを目的とする」事をスローガンに、米空軍は戦線への移動に際し「足跡を消す:less footprint」方向を目指すと表現した

軍種間の「縄張り争い」に関する質問に答え
Goldfein3.jpg●米海軍人トップと陸軍長官の間で行われた軍種別予算シェアに関する発言の応酬については、誰かの発言に応酬を繰り返すのは時間の無駄だと語り、「そのような中には加わらない」とコメントするにとどめた

●また、米陸軍が超超音速兵器開発について、「米陸軍は、(現在は米空軍の専従任務である)航空阻止やSEADや敵地深くへの攻撃も可能になるだろう」と表明したことに関しては、「軍種間の役割を定めた1948 Key West agreementを議論することにはやぶさかではないが、予算議論に結びつけない範囲でだ」とコメントし、
●予算内で可能なら重要な任務兵器が重複することは悪くない、と述べる一方で、発見・識別・追尾・撃破の流れの中で、撃破部分だけ議論されるのは不適切だと述べ、更に陸軍の長射程攻撃力がB-21爆撃機の調達削減に可能性については、核抑止やNPRの観点から影響は受けないとコメントした

宇宙軍との関係については、結婚か離婚かと問われることがあるが、空軍と宇宙軍は信頼と自信によって共存していると述べ、また2つが離れて米軍の任務遂行はできない関係だと言及した。一方で、宇宙軍は成長の余地があり、自身の文化を育てる必要があるとコメントした
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「exhaustive analysis and wargames:徹底的なwargamesとその分析」の結果、次世代制空機(PCA、第6世代戦闘機というと怒られます!)はどの様な扱いになったのでしょうか?

昨年11月、米空軍の戦略計画部長が次世代制空機NGAD検討は急がない(急げない)と講演していましたが、参謀総長の強い思いが背景にあったものと考えられます

F-2.jpg日本では、自衛隊出身の国会議員も旗を振って、「日の丸戦闘機再び!」と叫びながらF-2戦闘機の後継議論が行われていますが、どのように日本の軍事環境を分析し、戦闘機の役割を位置付けているのかも良くわからない中で、とっても心配です

Goldfein米空軍参謀総長が、様々な抵抗勢力を抑えつつ、自らの信念を貫き、伝統的アセット(恐らく戦闘機や爆撃機)予算を削減してまで、統合運用に資する連接性を追求している真摯な姿を目にすると、足元がとっても寒く感じる今日この頃です・・・

迷走(?)又は意思決定先延ばしの次期制空機PCA
「次期制空機検討は急がない、急げない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-19
「米空軍が次期戦闘機検討でギャンブル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05

空軍参謀総長の信念とRoper次官補の行動力で推進中
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「空軍資源再配分の焦点は連接性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-08
「マルチドメイン指揮統制MDC2に必要なのは?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24

米陸軍の目指す長距離攻撃能力
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15

2021年度予算案を巡りドロドロの争いの予感
「米海軍トップが予算シェア見直し訴え、陸軍長官が反発」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-16

日本を含む西太平洋地域の現実
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
「嘉手納基地で防空・航空機避難訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-15

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1年遅れで海洋監視版グローバルホークMQ-4Cグアムに [Joint・統合参謀本部]

2018年9月の胴体直陸大事故で配備遅れる
2021年の初期運用態勢確立に向け2機到着

MQ-4C Guam.jpg27日米海軍は、グアム島アンダーセン基地に2機のMQ-4Cトライトン大型海洋監視用無人機が26日到着したと発表し第7艦隊隷下で同基地所在のVUP-19無人機運用飛行隊により運用されると発表しました

MQ-4Cは、米空軍が運用する高高度無人偵察機RQ-4グローバルホークを海洋監視用に改良した機体で、海洋監視用のセンサーで高高度から広範囲の海面監視も可能ですが、低空で艦艇の状況を把握するため、他航空機との衝突防止システムや翼への着氷対策等々を施され、2013年に初飛行している機体です

米海軍は、有人機であるP-8哨戒機とMQ-4Cとを組み合わせた海洋監視を構想しており、大まかには、広範囲をMQ-4Cに監視させて怪しい目標を絞り込み、P-8が怪しい目標を引き継いで細かな対処を行う方式をイメージしているようです

米海軍は最初の配備先であるグアム島にVUP-19無人機運用飛行隊を2016年10月に編成、2018年4月には2018年末までに2機をグアム島に配備すると発表していました

MQ-4C.jpgしかし2018年9月にカリフォルニア州で試験飛行中だったMQ-4Cが、トラブルで帰投途中にエンジンが停止し、何とか飛行場までたどり着いたものの着陸用の車輪が出ないトラブルも重なり、胴体着陸して事故区分「Class A」の大事故を起こしました

その結果、事故調査や対策が米海軍システムコマンドとNorthrop Grummanを中心に行われ、米海軍初の部隊配備が2018年末予定から2020年1月末にずれ込んだものです。

ただ米海軍は、胴体着陸事故前に設定していた2021年初期運用態勢確立の予定を変更していないと報道されており、昨年12月には追加のMQ-4Cを3機約280億円で契約もしています

27日付米海軍協会web記事によれば
●2機の到着に際し、米海軍全体の哨戒機部隊司令官であるPeter Garvin少将は、「初めてとなるMQ-4Cトライトンの部隊配備は、その優れた海洋監視能力からの情報で、前線艦隊司令官の状況認識能力を強化するだろう」、「米海軍航空システムコマンドや企業群に支えられたVUP-19飛行隊は、米海軍初の無人機飛行隊として、米海軍のニーズに答えるため懸命に訓練して継続的ISR提供の態勢を確立すべく訓練していく」と声明を出している

MQ-4C 3.jpg●またVUP-19飛行隊を配下に置くTask Force (CTF) 72司令官のMatt Rutherford海軍大佐は、「第7艦隊の作戦エリアへのMQ-4Cトライトンの導入は、米海軍の西太平洋におけるISR部隊の活動範囲を拡大する」、「MQ-4Cの能力と、実績あるP-8、P-3、EP-3の能力を組み合わせることで、海洋状況把握を改善し、地域および国家の安全保障目標を支援する」とコメントしている

●更に、米海軍航空システムコマンドの哨戒無人機計画責任者であるDan Mackin海軍大佐は、「2機のグアムへの配備は、MQ-4Cの海外配備に尽力したチームの努力のたまものであり、トライトンが持つ複数センサーによる同時情報収集と即時分配配信応力は、継続的な海洋監視分野に革新をもたらすだろう」と期待の高さを表現した
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ちなみに、米海軍はMQ-4Cを計68機調達し、常続的に5か所で哨戒点を維持する構想を持っているようですが、昨年11月に御用研究所のハドソン研究所は、中国海軍艦艇搭載の対艦ミサイルの射程や精度が格段に向上し、米海軍がより遠方からの作戦を求められることから、MQ-4Cトライトンや衛星による敵艦艇の把握では不十分だと警告し、艦艇搭載可能な無人ISRアセットなどの装備を導入せよと提言しています

MQ-25.jpg具体的には、MQ-4C調達機数の増加と米空軍MQ-9の海洋使用への改修、空母艦載無人空中給油機でステルス性のあるMQ-25Aの海面ISRバージョン開発、更に周辺同盟国のISR能力強化等を提言していました

米海軍がハドソン研究所に言わせたのかもしれませんが、ステルス性のないMQ-4Cが、対中国有事に第一列島線内側で活動可能とは考えにくく、艦載の無人給油機MQ-25Aの改修案が飛び出したのでしょう

とりあえず、MQ-4Cが予定通り初期運用態勢を確立することを願いつつ、更に、海上自衛隊(まさかの航空自衛隊も)が米国から押し売りされないことを祈念したいと思います

MQ-4C関連の記事
「ハドソン研:68機体制では不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-23
「2018年末までにグアム配備?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-04-14-2
「MQ-4C飛行隊が編制完結」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-2
「誰が海軍無人機を操縦するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-14-1
「映像:MQ-4初飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-23
「グアム配備MQ-4トライトンは今」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-05
「日本導入グローバルホークの悲劇」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-22
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正式にB-52から重力投下核爆弾任務除外 [米空軍]

残るのは、B-2とF-16とF-15Eか

B-52.jpg18日付Military.comは、米空軍が昨年9月、正式に重量投下型核爆弾である「B61-7とB83-1」をB-52に搭載しないことを部隊に指示したと報じています

実際には前線部隊では、数年前から重力投下型核爆弾を使用した訓練を止めて、脅威環境からすれば自然な流れと受け止められており、核任務については、現在唯一搭載可能な空中発射巡航ミサイル「AGM-86B ALCM」から、2030年初期に配備開始予定のLRSO(Long Range stand-off weapons)に引き継いでいく計画も建てられているようです

また米空軍は、超超音速兵器(hypersonic weapon)である「AGM-183A Arrow(Air Launched Rapid Response Weapon)」ミサイルをB-52内部爆弾庫に搭載し、昨年6月初飛行試験を行っており、2050年まで使用予定の「Big Ugly Fat Fellow」なB-52に期待するところは引き続き大です

18日付Military.com記事によれば
B-52 Guam4.jpg米国科学者連盟(FAS:Federation of American Scientists)のHans Kristensen核兵器関連情報部長が13日の週にツイッターで、「B-52爆撃機は正式に重量化透過型核爆弾を運搬しなくなった」と明らかにし、米空軍の戦略爆撃機の安全に関する指示「Air Force Instruction 91-111」で「B61-7とB83-1」が搭載基準から昨年9月に削除されていると根拠示していた

●17日、この指摘について米空軍のGSコマンド報道官はメールで、「近代戦の様相は変化しており、戦術や兵器も変化している。B-52は国家安全保障のツールとして、またエアパワーのシンボルとして、多様な兵器を搭載し、スタンドオフとそうでないもの、戦略兵器と通常兵器を運搬して国家に貢献する」、
●「多用途機であるB-52は、空中発射巡航ミサイルALCMで核抑止任務を継続している。このような状況下、自然な流れの中で、B-52爆撃機の搭乗員は、B61-7とB83-1搭載・投下訓練を行っていない」とコメントを明らかにした

B-52が所属する第8空軍の広報担当は更に、「Air Force Instructionで正式化される数年前から、B-52は同核爆弾を搭載して訓練していない」と現場の実態を明らかにし、「B-52は空中発射巡航ミサイルを搭載し、引き続きスタンドオフ攻撃を担うアセットである。B-52爆撃機はB-61と B-83を今後搭載しないが、B-2ステルス爆撃機には引き続き搭載任務が付与されている」と述べている

B-52 2.jpg米空軍は75機保有するB-52の搭載兵器のグレードアップと共に、1機が8基搭載するエンジン(Pratt & Whitney TF33-P-3/103 turbofan engines)の換装を計画しており、今後5年間で約1500億円を投入して速やかに換装事業を進めたいと考えている
●ただし米議会は、換装事業計画の細部説明を受けて納得するまで、予算執行を認めない姿勢を示している
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B-52爆撃機が最後に製造されたのは1962年ですので、最も若い機体でも今年58歳を迎えます

ステルス機だ、無人機だ、超音速飛行だと騒がしい空軍の世界ですが、「Big Ugly Fat」なB-52に米空軍は、あと30年は現役で活躍することを求めています

老体に鞭打って頑張るB-52の話題を発見すると、まんぐーすは、なぜか取り上げたくなるのでした・・・

B-52に関連する記事
「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
「2018年春のBomber Vector」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2

「GSCの将来方向」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-03
「弾薬庫航空機を継続検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-05
「弾薬庫航空機に向け改修」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-13
「同構想とB-52」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-12

「B-52エンジン換装大論争」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-24
「エンジン内部破損で落下」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-08

「もっと能力向上を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-11-1
「まだまだ能力向上に投資」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-16-1
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GPS妨害時の航空機等への影響を特別組織で検証へ [米空軍]

NWL:Navigational Warfare Laboratoryです

Navi Warfare.jpg米空軍は、来年2021年5月までに「NWL;Navigational Warfare Laboratory」なる組織を立ち上げ米空軍の航空機や兵器がGPS妨害に対してどのような影響を受けるか、影響を受けるとしたらどのような対策が必要かを専従で検討検証させると発表しました

NWLは、米空軍の研究開発実験や部隊装備の検証部隊が所在するオハイオ州のライト・パターソン空軍基地に設置され、民間の契約業者も使って試験評価を行うようですが、今後5年間の予算が16億円程度と小さい活動予算ながら、今後の戦いを考える上で極めて重要な取り組みです

GPS妨害の問題はかねてから指摘されており、「今頃になってチェックですか?」との声も上がりそうですが、今やあらゆる分野や装置にGPS衛星が提供する「PNT:positioning, navigation, and timing」情報が活用されていることを考えてみると、ここでキチンと担当組織を設けて確認する姿勢が評価されるべきかもしれません

16日付米空軍協会web記事によれば
Navi Warfare4.jpg●米空軍は、GPS信号や他の位置航法時刻(PNT)システムが敵の攻撃を受けた場合に、軍用航空機や兵器がどのように対応すべきかを検討するため、「NWL;Navigational Warfare Laboratory」なる組織を立ち上げると明らかにした
●米空軍はwebサイト上で、「将来のPNTシステムへの脅威を探り、評価する研究組織を目的としている」、「そこでの試験評価は、再検証可能な厳格に管理された環境で行われ、文書化され報告される」と紹介している

●試験評価では、GPS、装置内部の航法装置、GPS受信機、妨害対処アンテナ、商用の航空機受信機などなどを対象として取り扱い、「典型的な試験では、将来の妨害電波環境で空軍航空機や兵器搭載の航法装置などの性能発揮状況を確認することが含まれる」と空軍webサイトで説明している
●米空軍は、NWLが試験評価で得た知見を、現有装備の改修や将来装備の開発に反映し、妨害下でも問題なく動作するGPS信号や受信機に結びつけることを期待している

Navi Warfare3.jpg●また、チェックされた米空軍航空機や兵器が十分な妨害対処能力を備えていないと判明した場合、NWLが当該装備の管轄部署を支援し、仕様改修や設計変更に向けた動きを助けることになる
●NWLは、オハイオ州のライト・パターソン空軍基地に2021年5月までに設置され、今後5年間で約16億円の予算を活用して任務を遂行する
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ちなみにGPSが機能喪失した場合、民間分野で被害が最も大きいのは、種まきや収穫に自動操縦の大型機械を使用する農業部門だとのレポートを、以前ご紹介したことがありました。それだけ、当然に存在する公共インフラとしての性格を帯びているのがGPSです

地上部隊でも、GPSに頼らず、地図とコンパスを活用した移動訓練を再び基礎段階で重視し始めたとの話も耳にしたことがあります

Navi Warfare2.jpgNWLは来年2021年5月までに活動を開始する(lab, which is slated to be up and running by May 2021)とは、ちょっとのんびりしている気もしますが、無人機運用の生命線だとも思いますので、しっかりやって頂きたいものです


GPS関連の記事
「5G企業とGPS関係者がLバンド電波巡り激突中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22-2
「イスラエルでGPS妨害続く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-03
「30日間停止したら民間被害は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-18
「原子時計でGPS停止に備え」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2013-11-11

「海兵隊司令官:被害に備えよ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-16
「米海軍将軍:妨害対処を徹底する」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-21
「空軍OBも被害対処を重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23-1
「被害状況下で訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23

いつの間にか大差のEW
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

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昨年12月の統合全ドメイン連接演習は大成功だった [米空軍]

28検証項目の26で機能を確認
4月の次回演習では宇宙軍を焦点に

Rooper2.jpg21日、昨年12月中旬に米空軍が主導してフロリダ沖で初めて実施された陸海空軍の各種アセットを連接した指揮統制を試みる実験演習JADC2の成果と今後について、Will Roper米空軍調達担当次官補とPreston Dunlap米空軍ABMS主席計画官が記者団に説明しました

両氏は、同実験演習が「連接」に関する挑戦的な28もの新たな試みを検証して26個が機能し、演習を視察したDavid Norquist国防副長官や演習指揮官のO'Shaughnessy北米コマンド司令官も驚くほどのデータ融合指揮統制の可能性を示せた振り返り、次回4月の演習では、宇宙軍に焦点を当てたシナリオに、戦略コマンドと北米コマンドを交えた設定を示唆し、更に今回の成功を見聞きした他軍種や同盟国や軍需産業からの新たな挑戦を大歓迎すると語りました

12月の演習テーマは「巡航ミサイルからの米本土防衛」で、米空軍のF-22やF-35のほか、米海軍のF-35Bやイージス艦、陸軍の砲兵部隊まで参加し、演習指揮官が被害状況下を想定してフロリダ州に設置の野外テントで指揮を行う実戦仕様でしたが、今後の展開が楽しみになってきました

22日付Military.com記事によれば
Dunlap.jpg12月の演習には、開発中の「連接」に係る28個のデータ収集・分析・共有・保存等の装置が投入され、1割程度の成功で十分だと考えていたが、26個の新たな挑戦が成果を収め、連接が上手くいかなかった米特殊作戦軍のロボット警備犬と人間装着のカメラも、大きな教訓を得たと両氏は説明した
例えば、Link-16を介してしか連接できなかったF-22とF-35を、双方向リアルタイムで秘匿性高く連接することに成功したボックス型の連接装置は、昨年12月では地上に設置されていたが、次回4月には「Skyborg無人機ウイングマン構想」の研究機であるXQ-58 Valkyrie等の航空アセットに搭載されることになっている

●また、SpaceXの衛星が宇宙から提供する商用インターネット回線を利用する「Global Lightning計画」の検証として、飛行中のAC-130の中で活用し、クラウド環境指揮統制アプリを使用し、地上指揮所でない場所で指揮統制を行うことを初めて試み機能させた

Norquist.jpgこれらの試験をDavid Norquist国防副長官が視察し、O'Shaughnessy北米コマンド司令官も演習指揮官として確認したが、各所からの多数の電話を通じ、人間が組織の接着剤となって活動する指揮所とは全く異なり、情報が円滑に流れるように必要な人間に共有提供され、人間が分析者や判断指示者の役割により集中できる環境が提供されつつあること実感できたと振り返っている

●Dunlap氏は、次回4月の演習では誕生したばかりの宇宙軍と宇宙コマンドに焦点を当て、戦略コマンドと北米コマンドも絡めたシナリオを考えていると述べ、今回試された28個以外の装備も挑戦に参加することが検討されている模様だ

●Roper次官補は、12月の実験演習の成功により、軍需産業関係者が旧式の装備をネットワーク連接することの大きなメリットをに関心を持ち、国防省が確保しているABMS(戦闘管理システム)関連開発予算を獲得すべく競争してくれることを期待すると語り、1月29日にはオハイオ州で実験演習成果を紹介する「軍需産業デー」を開催するとアピールした
●また、他軍種や同盟国等の様々な部署で進められている「連接」に関する取り組みを実験する場として、4か月ごとに実施予定で「連接演習マラソン:connect-a-thons」とも呼称されるこの実験演習を、大いに活用して教訓を得る場としてほしいと訴えた
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O'Shaughnessy2.jpg明るいニュースが数少ない中で、Will Roper米空軍調達担当次官補が登場する会見や講演での明るい話題にはいつも「癒され」ますし、Preston Dunlap米空軍ABMS主席計画官とともに、そのエネルギッシュなご様子には勇気づけられます

これだけ「連接」や「データ共有」が重視されると、中国やロシアが狙う電子戦妨害によるネットワーク分断が気になりますが、この実験演習では「low probability of detection intercept」が重視されているようですので期待いたしましょう

4月の次回演習に関する具体的な情報を楽しみに待ちたいと思います

米陸海空軍が「連接」重視で全ドメインC2演習をルーティン化
初回のテーマは巡航ミサイルからの米本土防衛
「連接演習マラソン:connect-a-thons」とも呼ばれるようです 
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-10

「MドメインC2に必要なのは」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24

Will Roper氏の関連記事
「次世代航空機はギャンブル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05
「無人配送投資で民間に貢献」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-17
「超超音速兵器ARRW開発本格開始」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-16
「24時間以内の緊急打ち上げへ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-01
「無人機ウイングマン構想」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-27
「調達担当者を活躍させる体制」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-16
「別の無人機Skyborg構想」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06
「KC-46Aの異物問題に」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「PGM不足問題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-09
「米空軍重視の9分野」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-4
「維持費削減に新組織RSO」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-23
「ソフト調達が最大の課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-01
「F-35維持費が大問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-20-1
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26 
「無人機の群れに空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30
「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1
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国防長官と米軍人トップ:アフリカ派遣兵力を削減したい [Joint・統合参謀本部]

世界的な米軍再編(COCOM-by-COCOM review)へ
そして米本土防衛や南米やアジア太平洋対処を強化
アフリカではフランスに期待を

Milley2.jpg13日付Military.comは、NATO加盟国との協議のためブラッセルを訪問したMilley統合参謀本部議長が、「何も決まっていない」と慎重な姿勢を示しつつもアフリカにローテーション派遣されISRや空中給油や教育訓練等々のために派遣されている約1万人の米軍兵士を、「削減して資源を米本土やアジア太平洋にシフトすることも考えられる」と述べたと報じています

具体的にどのような場面で誰に語ったのかハッキリしませんが、少なくとも様々な情勢を受け、国防長官から限られた資源配分・兵力配分のオプションを検討するように指示を受けているようなことを臭わせる表現もあり、中東情勢も絡んで、色々と考えさせられる発言です

同記事によれば、Milley大将の発言のタイミングで、フランスのマクロン大統領がアフリカのサヘル地域(サハラ砂漠の南縁の草原地帯)の国々(Burkina Faso, Chad, Niger, Mali and Mauritania)の首脳を集め、イスラム過激派対処を協議する場を設定しており、色々な憶測を呼んでいるようです

13日付Military.com記事によれば
Sahel.jpg●Milley統合参謀本部議長は、アフリカに派遣している米軍プレゼンスを「削減して再配分し、米本土の戦力の即応性向上や、アジア太平洋にシフトすることもあり得る」と、NATO首脳との協議のために訪問したブラッセルで述べた
●折しも同時期に、フランスではマクロン大統領が、イスラム過激派への対処を話し追うため、アフリカ・サヘル地域のBurkina Faso, Chad, Niger, Mali and Mauritania首脳を集めて協議を行うことになっている

●またMilley統参議長の発言は、トランプ大統領が6日の週にNATO諸国に対し、中東にもっと関与せよと要求した発言とタイミングが時系列的につながっている
●ただし同議長は同時に、「私の上司であるエスパー国防長官は、何を変えるかについて何の意思決定もしていない」と述べ、「我々は国防長官にいくつかのオプションを準備しているのだ。同盟国等と協議しつつ、選択肢を検討しているのだ」と慎重な表現も用いた

アフリカではイスラム過激派の活動が活発化しているが、昨年12月には、過激派対処を支援するフランス軍のヘリがアフリカのマリで衝突して仏軍兵士13名が死亡する事故が発生し、地元で仏軍反対デモが発生する事態となっており、マクロン大統領はサヘル地域の指導者に、約4500名の仏軍派遣プレゼンスを支持する姿勢を再表明するよう求めている状況にある

Milley3.jpg米国は、約7000名の特殊部隊員をローテーション派遣でアフリカに派遣し、各国の軍と協力し、イスラム過激派対処を支援している。また別に約2000名の米軍兵士が、アフリカ約40カ国で教育訓練や、仏軍によるマリでの作戦「Operation Barkhane」での兵たん支援に代表される支援を行っている
●ただ、米国はこのようなアフリカでの米軍プレゼンスを今後2-3年で削減し、中国やロシア対処に振り向けたいと考えている

●Milley統参議長は何も決定されていないし、アフリカからの完全な撤退を考えているわけではない強調しているが、例えば一つの削減オプションとして、ナイジェリア北部のAgadezにある無人偵察機基地の閉鎖が検討されているようである。ちなみに同基地維持には100億円が投入されてきたようである
Sahel2.jpgフランス大統領府関係筋は米国のこのような動きをけん制し、米国のサヘル地域への貢献は代替が効かないものだと述べ、特に偵察情報と空中給油についてその重要性を強調し、「他のパートナー国からは得られない貢献であり、情報は特に重要だ。この懸念を米国の各レベルに強調しシェアしている」と訴えた

●別件であるが、今回のNATO各国軍事指導者会合では、イラクにおけるイラク軍育成訓練任務の将来について議論が行われる。これは、イラク議会が5日に、外国軍の国外退去を求める決議を行い、トランプを怒らせ、イラクでの有志連合による努力に疑問を想起させる事態となっている事を受けてのものである
●この件に関してもMilley統参議長は、「何も保証することはできないし、何も決定していない。言えるのは、私が受けている指示は現時点で、イラクに止まるということだ」と述べるにとどめた
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23日にエスパー国防長官が本件を記者団から問われ、「地域コマンド間の兵力再編(COCOM-by-COCOM review of U.S. force posture)を計画している」、「次年度予算期間となる10月1日までにはレビューを完了したい」述べました

Esper.jpgアジア太平洋に戦力を振り向けたいとの思いは有難いのですが世界のつながりや連関が強まる中で、どのような影響が出るのか悪い影響が出ないか心配です・・・

エスパー長官もMilley統参議長も大変だと思います。また、米軍兵士の皆さんの武運長久を祈るばかりです

中東やアフリカ関連の記事
「米国がレポート「イランの軍事力」発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22
「特殊作戦軍が中露と対峙する」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-19
「B2がリビアで対ISIS攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-02
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嘉手納で統合の基地防衛&航空機避難訓練 [Joint・統合参謀本部]

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西太平洋部隊の保有装備だけで何ができるか確認とか
若手の発案から4か月の短い準備期間で

Kadena AFB.jpg13日付米空軍協会web記事が、1月10日に米空軍嘉手納基地を中心に実施された基地防衛&航空機避難演習「WestPac Rumrunner」を取り上げ現場若手幹部のアイディアから4か月余りの短期間で準備され、極めて低コストで実行された重要な演習だと紹介しています

これまでも対中国有事の際に中国からのミサイル攻撃の第1撃で機能喪失しそうな嘉手納基地関連では、作戦航空機のグアムやハワイへの緊急避難訓練や、代替飛行場としてグアム周辺の施設が不十分なサイパンやテニアン島を使用した緊急展開訓練、更には家族の緊急国外退去訓練などをご紹介してきましたが、今回は嘉手納近傍の在日米軍の海軍、海兵隊、陸軍部隊も参加したようです

KadenaF15.jpg嘉手納基地所属の第67飛行隊のBrian Davis大尉が、4か月前に南シナ海上の米海軍艦艇で「Valiant Shield」演習の準備ミーティング中に思いついき、「西太平洋に所在する米軍部隊がどんな能力を持ち、何ができるか」を実地に確認しようとの目的で実施された演習と説明されています

今頃になってそんなことを確認しているの???・・・とも突っ込みたくなりますが、現在および近い将来の中国軍のA2AD能力を踏まえると、結果的に自らの存在意義を否定しかねない現実直視の演習に取り組んだ「心意気」を讃え、ご紹介します

もちろん、作戦運用上の高度な秘匿事項でしょうから、演習の細部や教訓については一切触れられていませんので、その辺は悪しからず・・・

13日付米空軍協会web記事によれば
WestPac Rumrunner3.jpg●10日、演習計画責任者である Davis大尉は、「今日は嘉手納が自らを防御する日だ」と語り、嘉手納のほか、普天間基地や在沖縄陸軍基地から50機以上の航空機が参加した「WestPac Rumrunner」について説明した
●同演習には、嘉手納基地所属の米空軍機や特殊作戦部隊のほか、空母レーガン艦載機、普天間基地所属の海兵隊機、米陸軍からは第1大隊、第1防空連隊、等が参加した

演習では、基地の防空作戦(defensive counter-air)を中心にしつつも、海上での救難救助訓練、緊急作戦機避難展開訓練、設備不十分な前線基地での給油訓練などが行われ、全ての行動は作戦司令部との通信が途絶した状況を想定して行われた
●Davis大尉は演習の狙いや成果について、「何か示された要求事項を達成するとの進め方ではなく、どれだけ現有装備で行動できるかを確認し、結果として多くのことが実施可能だと判明した」と語った

嘉手納基地司令官も兼務する第18空軍司令官Joel Carey准将は、「我々は打たれ強く、機敏で、根拠飛行場である嘉手納基地だけでなく、分散された設備不十分な前線基地からも運用可能な能力を備えている必要がある」と語り、
WestPac Rumrunner2.jpg「数十年に渡り、米軍は根拠となる中心的な基地に戦力を集中し、そこから戦力投射する方式をとってきた。嘉手納基地はその意味で地域の安定に今も大きな貢献し、日本との関係を支えている」と述べた後、「しかし敵対者が能力を向上させる中、我々はさらに能力を向上させ、その一つの方策として、設備不十分な展開基地からの作戦遂行能力を強化しなければならない」と同演習の重要性を説明した

●第961空中管制飛行隊の作戦課長である少佐は、「様々な基地からアセットを持ち寄り、任務を遂行する訓練機会となった」、「西太平洋地域に保有しているアセットだけで、地域の統合戦力が組織的活動を遂行した」と同演習を振り返った
●また演習計画責任者である Davis大尉は、「通常この規模で演習を行えば数億円の予算が必要だが、今回は80万円程度で実施できた」と効率性の面でも成果をアピールした
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嘉手納基地司令官も兼務する第18空軍司令官が、嘉手納基地の存在意義説明に苦労する様子から、嘉手納基地所在および在沖縄所在米軍戦力が、対中国有事が迫った場合に取りうる行動をお察しください

WestPac Rumrunner.jpgグアムやハワイやアラスカや北部豪州への撤退や、サイパンやテニアン、ニューギニアやソロモンへの分散避難かもしれません最近では太平洋空軍司令官も、「中国の攻撃から、西太平洋の基地を守るのは困難だ」と明言するようになり、それはそれで現実直視で結構なことです

那覇基地に所在する航空自衛隊の戦闘機や海上自衛隊の対潜哨戒機は、そんな場合どうするのでしょうか??? 基地を守る地上要員を置き去りに、東日本へ避難するのでしょうねぇ・・・。順軍事的に考えれば・・・

太平洋軍を巡る関係者の発言
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
「アジア太平洋地域で基地増設を検討中」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-28
「対中国で米軍配置再検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1
「CSBAの海洋プレッシャー戦略」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「PACAFが緊急避難訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-27

米空軍の西太平洋対策
「担当空軍司令官がACEを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「岩田元陸幕長の発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09 

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13

グアム島の抗たん化対策
「被害復旧部隊を沖縄から避難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-28-1
「テニアンをグアムの代替に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16-1
「グアム施設強化等の現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-1

「グアムの抗たん性強化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30-1
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1
「グアム基地を強固に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12
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米国防省はF-35兵站システムALISを断念しODINへ [亡国のF-35]

新システムODIN対応装備は2020年末から提供
2022年12月までにODINで完全運用体制確立を目指す

F-35.jpg21日、米国防省F-35計画室が、大問題となっているF-35維持整備経費高止まりの元凶である「ALIS:自動兵站情報システム」の運用を諦め新たなシステムODIN(Operational Data Integrated Network)の導入を目指すと発表し、関連装備の導入を2020年末までに開始すると明らかにしました。これは大きな決断です

F-35はその構想の大きな目玉として、米軍が使用するF-35のみならず、世界各国が使用するF-35の維持整備に係るデータをALISで一元管理し、前線整備員が現場でタブレット入力する最新情報を基に、全世界規模での部品の在庫や生産や品質管理を行って部品調達コストを低減し、機体故障データから故障を未然に防止してコストを削減する予測整備を推進し、また故障箇所の自動診断機能で整備員の負担を軽減し、更に部品調達や管理に伴う事務手続きを大幅削減する等の狙いでALISを導入しました

しかしALISはその導入当初からトラブルが多発し、誤った故障アラーム、間違った部品発注、時代遅れで融通の利かない入力端末、ソフト改善が難しく不具合修正が進まないなどの問題が多発頻発し、F-35の維持整備よりALISの世話に時間がとられる等の不満が前線部隊で爆発、ALISを使用しないF-35維持整備の「裏手順」が広く部隊に普及するなど大きな問題となり、会計検査院も繰り返しその問題を指摘する事態となっていました

F-35 2.jpgこのような度重なる各所からの問題指摘にも十分な対応ができないロッキード社に業を煮やし、米国防省F-35計画室はソフト改善特別チーム「Kessel Run」を編成し、米海空軍の関連部署とも連携して、抜本的な改善に昨年あたりから取り組み始めたところでした

しかし昨年11月にはALISに蓄積される全世界のF-35データに関するアクセス権や知的財産権を巡って、ロッキードと国防省側が対立していると空軍長官等らが米議会で訴え根本的な部分で相互信頼がない状況が明らかになりお先真っ暗感が全世界の空軍に広がっていたところです

今回発表されたODINと言うシステムは、ALISを「re-branded as ODIN」と記事は表現していますが、ALISを改良したものなのか、根本から設計したものなのか細部は不明です。

2019年5月にF-35計画室長が飛行時間当たりの維持費の現状を$44000と語り、2024年時点で$34000にまで低下させる見込みだと述べ、目標である2025年の目標である$25000まで抑えることは極めて難しいと証言しましたが、どうなるんでしょうか?

ちなみにF-15やF-16など第4世代機の時間当たり維持費は15000~18000ドルで、米空軍参謀総長も「ステルス性や高度な機能を持つ第5世代機を、第4世代機レベルの維持費で稼働させるのは難しい」と「諦め」発言を昨年行っており、ODIN導入による効果については、「誤作動なく機能する」程度と考えていた方が良いのでは・・・と個人的には思いますが・・・

21日付米空軍協会web記事によれば
F-35 3.jpg●21日、米国防省F-35計画室は、ALIS(Autonomic Information Logistics System)に替えて、2020年末から、より誤作動が少なく、ユーザーフレンドリーで、サイバー攻撃に強いODINを導入すると発表した
●また発表は「ODINが新たなデータ環境を提供する」、「ODINを活用できるハードをF-35部隊に2020年末に提供し、2022年12月までにはODINによる完全運用態勢を確立する」、「ODIN導入により、F-35部隊の即応態勢と維持整備体制は大きく改善する」、「現場勤務者の労力を削減する」、「現場使用者の要望に応え、ソフト作成・改修担当者が迅速にソフト開発可能な体制が整う」とODIN導入の利点を説明している

ただし、「F-35ユーザーにODINを展開するスケジュール調整は今後行う」、「機動展開中の部隊や空母で使用されているALISのODINへの更新については、部隊が帰還してからになるだろう」とF-35計画室は説明している
●またF-35計画室は、「ODINで最も注意しているのは提供データの質であり、そのために我々は、新たなデータ融合環境を優先して整えようとしている」、「そのために、民間企業の優れたデータ管理手法を活用し、シンプルで明確な要求のもとに、信頼できるデータ収集管理を追求する」等とも説明している

F-35 4.jpgF-35計画室長のEric Fick空軍中将は、「ODINの開発は、ロッキード社の出資を受け、国防省のKessel Runチームがリードし、F-35の運用要求を満たして高い稼働率を達成するため、機敏なソフト開発と現場投入を意識して行う」とODIN発表に際してコメントし、
●更に、ALISに替えODINを導入することより、「機体状況データを自動的に収集整理蓄積し、必要な部品の在庫や調達状況を把握し、整備上の注意事項を最新に維持して迅速に提供し、世界のF-35の性能発揮を切れ目なくモニターすることが可能になる」とも説明している

Ellen Lord調達担当国防次官は、最近の記者会見で、F-35維持整備経費の削減がF-35関連の最優先課題だとし、2025年までに飛行時間当たりの維持整備費用を、現在の$35,000レベルから$25,000に削減することを目指すと述べている
ロッキード社は、$25,000にまで維持整備費を削減するするためには「performance-based logistics deal」を国防省と結び、1兆円以上の費用をロッキードが一時立て替えて取り組み、成果が出たら国防省が後に費用を出す方式は必要だと国防省に提案している
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F-35 5.jpg昨年5月に$44000とF-35計画室長が証言していた時間当たりの維持経費が、今の段階で記事が記述する$35,000レベルんい下がっているのか不確かです。ご注意を!

米国防省F-35計画室の発表は、ODINの信頼性が高く高性能と自信満々に説明しており、その出来栄えに期待したいものです。記事では、ALISがサイバー攻撃に脆弱で、国防省基準を満たすために改修が必要だったことも、ODIN導入の背景だと説明しています

記事は、ALISからODINへの変更を「re-branded as ODIN」と紹介しており、実質はALISの改修版なのかもしれませんが、「ハード」の変更がどれくらい必要なのか、誰がその費用を負担するのかが気になります

またこの辺りの予算が、航空自衛隊の来年度予算に含まれているのかも気になるところです・・・・お高いですからね・・・・

ALIS関連の記事
「ALIS問題を議会で証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-15
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02

F-35維持費の削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

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米議会で専門家を交え中国抑止を議論 [安全保障全般]

フロノイ元国防省政策担当次官等から意見聴取
「72時間」中国にリスクを与え続ける能力などを提言

Flournoy2.jpg15日、米下院軍事委員会がMichèle Flournoy元国防省政策担当次官(WestExec)やMichael McDevitt元海軍少将(Center for Naval Analyses)やAndrew Hunter元国防省緊急調達部長(現CSIS)を招き対中国を考える上でとるべき政策について意見聴取を行い、核抑止を超えた創造的な中国抑止を考えるべきとの主張が語られました

内容は広範に渡り米軍事メディアも様々な視点から「つまみ食い」紹介していますので全体像を掴むのが難しいのですが、「抑止における核兵器の位置づけ」、「海軍の355隻体制や空軍の飛行隊数増強案は時代遅れ」、「超超音速兵器の位置づけ」、「戦闘管理システムの重要性」、「中国軍の発展に伴う脆弱性」などなど興味深い視点で様々な意見が飛び交ったようですのでご紹介します

繰り返しになりますが、下院軍事委員会の議事録や事前提出資料を見たわけではなく、断片的な各種報道から推測も交えてご紹介するものですので、ご興味がある方は15日付米空軍協会web記事や16日付Defense-News記事のほか、下院のwebサイト等から正確な情報を入手されることをお勧めします

米空軍協会やDefense-News記事によれば
Flournoy4.jpgFlournoy女史は現代の抑止は冷戦時に形成された核抑止が中心となっているが、核戦力量が米国と比較して圧倒的に少なく、サイバーや宇宙能力に注力する中国には、ロシアとは異なる抑止の考え方が必要だと述べた
●また、中国が「一帯一路」構想を推進する中では、米国政府全体が多様な視点から創造的な手法で中国の安全保障感覚に働きかけていく姿勢が求められる。特に中国の指導層が何をどのように考えて意思決定しているか、他国からは把握しにくいことから、注意を要すると主張した

●同女子は、「中国も米国も、戦争による大きなコストを理解しているので、戦争には非常に慎重なはずだ。しかし、にもかかわらず、中国首脳が米国やその同盟国の行動の意図を見誤り、突発的な行動や侵略的な行動に出る可能性は残されている」と述べ、米国防省に対し、中国が危険な一歩を踏み出さないように「明確な一線」を引いておくことが最重要だ、と語った
●そして今後10年間に双方の誤解による米中紛争が生起する可能性が最も高いと述べ、その理由として、(中国と対峙する)ヴィジョンを明らかにしておきながら、実際の装備や兵器を入手してて戦力化するまでの空白期間が最も不安定であるからと説明した

Flournoy3.jpg●更に同女史は、核戦力に大差があり、サイバーや宇宙にドメインが拡大する中では、核が基礎にありつつも、軍備管理、通常兵器による南シナ海等での悪しき行動の抑止、新たなコンセプトでの抑止が重要であり、米国防省は多額の経費が必要な核戦力の維持近代化を行うにしても、他のオプションとのバランスをよく考えるべきと主張した

●また米海軍がぶち上げた355隻体制や空軍飛行隊の増加要求などは時代遅れのアプローチであり、時間と効果の規模で抑止への貢献度を把握すべきだと述べ、例として、72時間中国海軍艦艇を脅威リスク下に置くことが出来るかどうか、との視点を提示した
●そして具体策として、短期的にはB-2ステルス爆撃機に米海軍の長射程対艦ミサイルを搭載して在空させる手法を上げ、長期的には中国を取り巻く地域に陸軍や海兵隊の長射程砲や超超音速兵器を分散して地上配備する方法を提言した
●この際、「中国海軍艦隊を1日で撃滅する能力が必要ではなく、中国に対して、侵略行動を起こせば、全中国艦隊を危険にさらすことになると知らしめることが重要だ」と説明した

McDevitt.jpg●その他、同女史は、本格紛争を強調するあまり注目度が最近薄れつつある特殊作戦部隊について、グレーゾーンでの作戦が対中国でも重要なことを注意喚起し、サイバードメインではサイバー行動規範を何らかの形で共有し、米中双方がレッドラインを意識して行動を抑制するように持ち込むべきだと語った
超超音速兵器(hypersonic weapons)に関しては、既にICBMが存在することから、あくまでも戦術兵器としてとらえるべきとの意見や、戦いの上で重要性はそれほど高くないが、敵を混乱させるのに有効だとの意見が、元海軍少将とHunter氏から出された

●元海軍少将からは、攻撃原潜の配備数を、現在想定されている8隻から15隻にまで増加することや、豪州などの国に中国のA2ADに対処する能力を強化させるべきと主張し、フロノイ女史と同様に地上配備長射程ミサイルを西太平洋地域に分散配備することの重要性が提起された

Hunter.jpg●3名の専門家だけでなく下院軍事委員会メンバーからも、多様な兵器システムを結んで有機的な作戦運用に導く指揮統制システムの重要性が主張され、下院軍事委員長も最重要の課題の一つだとの見解を示し、専門家も、サイバー戦下でも強靭で、AIを活用し、最新技術で迅速に性能向上が可能な指揮統制システムの必要性を強調した
●フロノイ女史は、約9000億円を捻出してC2システムに取り組む米空軍の努力を讃えつつも、米議会もその重要性を理解して、従来なかった新規分野であるC2システム構築に資源配分すべきだと訴えた

一方で、中国軍の近代化が急速に進む中、中国軍も目標情報の発見探知追尾や作戦指揮統制をネットワークに依存する度合いを強めており、米軍やその同盟国は、これを中国軍の弱点と捉え、電子戦や宇宙での戦いに備えるべきだと専門家たちは主張した。

Hunter2.jpg行政事務面でHunter氏は米国防省の調達事務が煩雑で鈍重であるため、最新技術の導入に時間が掛かることや、資金繰りの厳しいベンチャー企業が予算承認業務で長時間待たされること嫌って国防省との契約を避ける実態を問題視した
●また、装備品購入と研究開発費、更には部隊運用経費間の相互流用が難しいことも問題で、柔軟で機敏な技術や装備調達を妨げていると指摘した
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だらだらとご紹介しましたが、色々な面で頭の整理になり、考えるきっかけを与えてくれる専門家の議会証言だと思います

米軍事メディアの記事の訳や理解に問題がある部分も多分にあると思いますが、雰囲気をご理解いただければと思います

ご興味のある方は、リンクの張ってある15日付米空軍協会web記事や16日付Defense-News記事をご確認ください

米空軍協会記事https://www.airforcemag.com/experts-urge-us-to-develop-china-deterrence-strategy/
Defense-News記事https://www.defensenews.com/congress/2020/01/16/congress-wrestles-with-deterring-chinabeyond-nukes/

21世紀の抑止概念を目指す
「新STASRT条約は延長の危機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-21
「3本柱はほんとに必要か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03

米国核兵器を巡る動向
「今後10年の核関連予算見積が23%増」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26
「ついにINF条約破棄へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「サイバー時代の核管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02
「議会見積:今後30年で140兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02-1

超超音速兵器関連
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「超超音速兵器への防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1

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米海軍トップが軍種別予算シェア見直し要求 [Joint・統合参謀本部]

陸軍長官が大人の対応も直ちに反論
米空軍は争いに加わるのか?

Gilday.jpg14日、米海軍人トップのMike Gilday大将が米海軍協会総会で講演し、「陸海空軍が、国防省予算を1/3づつ分け合う従来のやり方を改めるべきではないか」「かつて米海軍は38%を占めていた」、「この比率を1%変えるだけで、艦艇建造予算を約8000億円増やせる」と暗黙の予定調和に異議を唱え、各方面で波紋が広がっています

すかさず15日にRyan McCarthy陸軍長官は記者団に「我々は地域コマンド司令官要求の60%を支えているにもかかわらず、予算配分は24%以下だ」、「最大の抑止力は、地に足の着いた兵力だ」、「他軍種との予算を巡る争いに加わりたくない」等々と反論し、Gilday海軍大将をけん制するとともに、冷静な議論を促しました

McCarthy 2.jpgこのような議論が持ち出され、メディアが争いを焚きつける構図になっているのは、各軍種の2021年度予算案取りまとめと国防省への提出・国防省とりまとめの時期となっている事、更にその背景に国家防衛戦略NDSが重視する中国・ロシア対処があります

こんな時にこそ、統合参謀本部があり、米軍人トップの位置に統合参謀本部議長がいるのですが、中東で実戦が20年近く継続し、ロシアや中国正面でも緊張が高まる中、「良くて昨年並み」の予算状況で、装備の老朽化が急速に進み、軍需産業基盤が崩壊しつつある中、綺麗ごとでは済まされない、黙っていられない状況に各軍種が追い込まれているシグナルとしてご覧ください

15日付Military.com記事によれば
14日、 米海軍人トップのMike Gilday大将は、主要な海軍幹部やOB、更に軍需産業首脳を前に講演(32nd National Symposiumで)し、「米国防省は、陸海空軍が、国防省予算を1/3づつ分け合う従来のやり方を改めるべきではないか」と表現し、もし増強著しい中国軍に効果的に対処しようとするなら、米海軍への予算配分を増やすべきだと訴えた
Gilday2.jpg●同海軍大将は「米海軍はより多くの予算が必要だ。もし皆さんが海洋ドメインで相手を凌駕したいと考えるなら、もし皆さんが米海軍が目指す分散型海洋作戦を遂行したいならば、もっと艦艇や潜水艦が必要であり、より多くの資金が必要だ」と訴えた

●そして同海軍トップは、「(冷戦最盛期の)1980年代には米海軍はシェア38%だったが、今は34%にまで下がっている」、「歴史から考え、米海軍の価値は評価されるべきだ。米海軍の価値について独善的に語るつもりはないが、誰かが議論を始めなければならない。陸海空軍が予算を1/3づつ分け合う事は、国家防衛戦略NDSの趣旨に沿っていないのではないか。我々が直面する脅威に対峙追随するためには、現状は必ずしもふさわしくない」と表現して訴えた
●また「この比率を1%変えるだけで、艦艇建造予算を約8000億円増やせる」、「私の最優先事業は新型の戦略原潜コロンビア級の建造調達である。現在の計画でもオハイオ級戦略原潜を42年間も使用することになってしまう。後継SSBN調達は優先事業なのだ」等々と現在の窮状を訴えた

これら 米海軍トップの発言に関し、15日にRyan McCarthy陸軍長官は記者団に、「我々は地域コマンド司令官要求の60%を支えているにもかかわらず、予算配分は24%以下だ。計算によっては22%しかない」と現状を明確に説明し、
McCarthy 3.jpg「過去1世紀の間に、アジア太平洋地域で3つの地上戦を戦ったが、最大の抑止力は、同盟国と肩を並べて存在する地に足の着いた兵力だ。そしてこの事は欧州正面でも実証済みである。そしてこのために、今年は東アジアでDefender-series exercisesのほか、プレゼンスを示す多くの活動を予定している」、「タイやフィリピンや日本のような場所で活動する兵員が増えるだろう」と陸軍力の重要性を強調した
●また陸軍長官は、「世界のこの地域(アジア太平洋)での米陸軍プレゼンスは実効的なものであり、抑止力のために必要である」、「他軍種との予算を巡る争いに加わりたくない」とも語った

●更に陸軍長官は、米陸軍省では、昨年の2020年予算編成の際から、陸軍首脳が一堂に会する「夜間検討会:night court」を開催して一つ一つの事業を精査し、3.5兆円もの資金を陸軍内で捻出して必要な近代化に再配分するなど、内部での効率的効果的予算配分に自助努力していると強調し、これ以上の削減がリスクを伴うとも示唆した
/////////////////////////////////////////////////

この議論に、米空軍首脳が加わるのか気になるところですが、各軍種のトップとしては、強い姿勢を見せつつも、統合参謀本部か国防省に最後は予算配分を采配させ、各軍種内部やOBや関連軍需産業を抑えようとしているのかもしれません

gates3.jpgところで、McCarthy陸軍長官は「boots on the ground」の重要性を主張し、今年は南シナ海地域で米本土からの大規模機動展開演習を計画しているようですが、ちなみに2011年当時のゲーツ国防長官は・・・


ロバート・ゲーツ語録100選より
https://crusade.blog.ss-blog.jp/2013-05-19
次の本格紛争には主に海軍と空軍が関与するであろう現実に、陸軍は向き合うべき。 アジアや中東へ大規模地上部隊を派遣するよう大統領に進言する国防長官が仮に現れたら、頭の検査を受けさせるべきだと思う→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
と語っていたところです。

「米陸軍は2020年に南シナ海大規模機動展開演習」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-30

コロンビア級SSBN計画の関連
「NKのおかげSSBNに勢い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-2
「コロンビア級の予定概要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-27
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

艦艇の修理や兵たんの課題
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09

そのほか米海軍関連の記事
「空母1隻削減案に揺れる」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-29
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24

「空母フォード3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「攻撃原潜に新たな形態BlockⅤ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-07
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中国海軍の巨大ミサイル巡洋艦1番艦「南昌」が就航 [中国要人・軍事]

米軍アーレーバーク級イージス艦より巨大
航続距離が現主力052級の4倍で真の外洋能力獲得
空母と行動を共にすることが可能で空母攻撃群完成へ

Type 055 destroyer.jpg12日、中国海軍は1万2000トン級の新型駆逐艦「055型:Renhai class」の1番艦である「南昌」の就役式を山東省青島の軍港で行いました

中国海軍は055型を駆逐艦と呼んでいますが、排水量1万2-3000トンで全長が180mを超える規模であることから、米国防省は「巡洋艦: cruiser」と区分しています。報道では、アジア最強とか表現されていますが、この規模の巨大な軍艦を今建造している国は他にありません

同艦の構想は2009年ころにスタートしたと言われていますが、実際に衛星写真等で建造の様子が確認されたのは2014年からで、その後2017年6月28日に進水し、2019年4月23日に人民海軍成立70周年海上閲兵式に参加して大々的にお披露目されていました。

Type 055 destroyer2.jpg12日の同艦「就役式」は、文字通りであれば「任務を開始する式典」ですが、式典で艦長は「急ピッチで全システム・全科目の訓練を行い、作戦能力を形成し、戦闘体系への融合を急ぐ。南昌艦のプラットフォームとしての力を発揮し、使命と任務を果たす」と挨拶しており、艦艇に種々の装備の搭載が終わり、これから本格的に軍艦としての訓練を行って「任務遂行態勢」を確立する予定だと推測されます

この「055型:Renhai class」については、海軍駆逐艦の第3世代から第4世代への飛躍を意味するとか、アジア最強だとか、高い防空及び海上打撃能力を備えるとか、様々に表現されていますが、

以下では軍事専門誌ライターの「文谷数重」氏の評価をご紹介いたします。残念ながらまんぐーすには、この評価が正しいのかどうか判断する知見がありませんが、分かりやすかったのでご紹介します

「055型:Renhai class」に関する「文谷数重」氏の評価
055型で注目すべき点は、外洋性と汎用性の獲得だ。従来艦はそれらに難があった。それが米軍艦同等まで高まった。具体的には実用航続距離の獲得、対潜戦ほかの強化、対地攻撃能力の獲得である
Type 055 destroyer3.jpgここ10年、中国は海軍の外洋化を進めている、2008年以降は外洋展開も目指す近海・遠海海軍とされているが、実際には未だに沿岸・近海レベルである。これはハワイやインド洋まで展開する052系駆逐艦、054系フリゲートも変わらない。実用上の航続距離が短かったのが、055型では大幅に改善された。その意味で055型は、052型と054型とは世代を画する艦艇である

●その第1は大航続距離の実現である。実用航続距離は従来の主力052C/D型の4倍で、055型の実用航続距離は11000kmに達する。052型と054型とは3000km程度しかない
航続距離4倍で何ができるようになるか?空母との随伴が可能となる。空母は潜水艦警戒から戦時には常時20ノットを維持し、状況次第では25ノット以上も発揮する。その際にも055型は燃料切れを起こさず同行護衛できるのだ。つまり、055型の登場は空母機動部隊の完成も意味するのである。

第2は汎用化だ。対潜戦ほかの能力向上も055型での進歩点である。従来の対空・対水上戦への偏向が是正された。その象徴が搭載ヘリコプターの大型化だ。055型は艦載ヘリZ-18を2機搭載することが可能となった。これは13トン級の大型機で、日米のSH/MH-60系よりも大きいある。052系、054系は4トン級Z-9の1機搭載だった
●これにより、まず対潜戦が充実する。ソナブイ搭載数、ディッピング・ソーナー出力、魚雷搭載数は増加した。解析機材の充実から音響の機内解析もおそらく可能だ。ほかにも洋上哨戒やミサイル攻撃探知、救難能力も向上した。同様にレーダ、解析機材、航続距離・滞空時間の能力向上の結果だ。

対艦攻撃力も向上する。500kg以上の本格対艦ミサイルの搭載・攻撃も可能となる。もちろん完璧ではない。対潜戦でも055型とZ-18でも日米豪越の潜水艦に対抗できるかは怪しい。だが、以前に比べれば大進歩である。052系や054系ではいずれの能力もなおざりであった。

Type 055 destroyer4.jpg第3が対地攻撃能力の獲得である。055型は巡航ミサイル攻撃能力を獲得した。トマホーク相当の長剣10Aミサイルが発射可能であり、発射セル数の増加(64セルから112セルに増加)により常時一定数を搭載できるようになったためだ。
米軍に準じた第三世界への介入能力の獲得でもある。アジア・アフリカ諸国やテロ組織に対し必要に応じて巡航ミサイル攻撃が可能となった。柔軟対応の実現でもある。紛争や事件により被害が生じた。それにともなう国民感情の激昂を宥めたい。だが軍隊の損害は避けたい。そのジレンマを解決できるのだ。

以下は「文谷数重」氏の評価
では、この055型は日米の脅威となるのだろうか?全体を考えればさほどでもない。むしろ対応しやすくなった。まず055型は日米軍事力で対処可能である。多少厄介だが従来の攻撃手段で無力化できる。
●そして、その高コストは日米にとって好都合である。コストは従来艦の2倍以上であり、なにより金食い虫の空母機動部隊の整備を促進する。つまり055型は中国海軍の規模を抑制する要素となる。また水上戦力強化に中国が資源をつぎ込むことで、厄介な潜水艦が減るかもしれないのだ。

●その意味では、南昌艦の就役はむしろ歓迎すべきだ。あるいは米国は中国に空母機動部隊のノウハウを教え、あわせて中華航母と航母艦載機の充実を勧めるべきである。
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Aegis Navy.jpg今の時代、大型水上艦艇が高価な上に脆弱であることを、「文谷数重」氏は踏まえて評価をされているようですが、これは先日ご紹介したCSBAの米海軍への提言レポートでも基礎になっていた考え方です。

中国海軍が高価で脆弱な空母戦闘群の「罠にはまってくれれば・・・」とのご指摘も、潜水艦への投資が負の影響を受ければいいのに・・・との指摘も共感できる部分です。なお、この055型は既に6番艦までが進水しており、8番艦までの建造開始が確認されています

護衛艦「いずも」にF-35Bを搭載しようとの自衛隊の方向性を、我々はどのように評価すべきでしょうか???

米海軍関連の記事
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「9月までに無人艦艇運用構想作成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-04
「新編第2艦隊はロシア潜水艦対処に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-03
「CSBAの海洋プレッシャー戦略」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13

「冷静後でロシア潜水艦が最も活発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21-1
「代打の次期米海軍トップ」 →https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-19
「空母1隻削減案に揺れる」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-29
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24

「空母フォード3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「攻撃原潜に新たな形態BlockⅤ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-07
「NKのおかげSSBNに勢い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-2
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空中給油機を通信中継アセットとして [米空軍]

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長く構想はあれど、なぜか実現していない不思議
ハード面では容易も、全体構想まとまらず?

KC-135.jpg6日付C4ISRnetが、米空軍輸送コマンドや米空軍空中戦闘マネジメントシステムABMS関係者への聞き取りを踏まえ米空軍が統合戦力発揮の鍵として取り組む「統合戦力の連接強化」のオプションとして、空中給油機を通信中継ハブとして活用するアイディアについて紹介しつつ、全体構想不在のためか、強力な推進役がいないためか、なぜか盛り上がっていない状況も示唆しています

陸海空の様々な戦力をネットワークで繋ぎ、情報をリアルタイムで共有してマルチドメイン指揮統制MDC2を迅速円滑に遂行することが将来戦の鍵だと米軍は認識し、米空軍はその中核との自負から先端戦闘管理システムABMSの構築を重点として取り組み、その一環として、昨年12月から4カ月毎に統合戦力の連接演習を実施する通称「連接演習マラソン:connect-a-thons」(正式には統合全ドメイン包括指揮統制演習(JADC2))に取り組んでいます

KC-46A.jpgちなみに昨年12月の演習テーマは「米本土への巡航ミサイル対処」で、F-22やF-35、イージス艦や地上ミサイル部隊も絡め、演習指揮官の北米コマンド司令官がフロリダの陸軍テントで指揮を執るとの気合の入った設定で行われた模様です

そんな米軍内における統合戦力「連接強化」の流れの中、また中露から攻撃で被害を受けた時のバックアップとして、空中給油機を通信中継ハブとして活用する案が盛り上がりを見せているようで、煮詰まらない状況にもあるような、微妙な記事のご紹介です

6日付C4ISRnet記事によれば
米空軍輸送コマンド副司令官のJon Thomas中将は、統合戦力のマルチドメイン連接における米空軍のABMS取り組みについてアピールしつつ、空中給油機がこの実現に大きく貢献可能だと語った
KC-135 2.jpg空中給油機の連接ノードとしての利点は、まず空中給油機は一般に大型機であるため、追加で通信装置を搭載するスペースや電力供給能力を備えていること、更に作戦運用時に戦闘エリア近くで給油支援を行うことから、作戦情報の中継に適した位置で在空するアセットである点である

●同副司令官は「戦闘エリアの近くで在空する空中給油機は、適した通信装置さえ搭載していれば、戦闘エリアの多様な統合アセットと通信可能な位置にあり、更にその情報を衛星であったり、作戦エリアから離れた後方に位置するアセットや地上指揮所に中継可能である」と給油機の利点を説明した

例えば次期主力空中給油機のKC-46Aは、既に相当の通信と自己防御装置を搭載していることから、大きな改修をすることなしに通信中継アセットして活用できる可能性があると同中将はコメントしている。
●また、旧式のKC-135給油機にも、「Realtime Information to the Cockpit」と呼ばれる「Link-16」や秘匿情報を通信する機能や衛星通信機能を付加する改修予算が50億円ほどつけられ、50機ほどが同改修の対象になっているが、同副司令官は対象機数を増やすべきだと主張している

KC-46 2.jpg●空軍輸送コマンドと連携しつつ空中給油機の活用を検討している空軍省米空軍空中戦闘マネジメントシステムABMS責任者のPreston Dunlap氏は、SpaceX社が進める数百の低高度軌道衛星を繋いで広帯域商用インターネットを実現する「Starlink」と、KC-135を連接する「Global Lightning実験」にも既に取り組んでいると語った
一方でDunlap氏は、「実験することは良いことだが、その前に良く考えるべきことがある。どんな周波数で、どんな追加手法で宇宙空間と通信するかなどだ」と述べ、要検討事項も存在にも言及した

●また同氏は過去を振り返りつつ、「搭載スペースに余裕がある空軍航空機に穴を開けてアンテナを装着し、関連機材を搭載することは容易で、過去から様々なアイディアが出されて試されてきた。しかし我々にはそれ以上先へ進める力はない扱う情報にはそれぞれ持ち主があり、結果的に良さそうなアイディアも、大規模に導入されることはなかった」と述べ、空中アセットの利用に関する大きな構想の必要性を示唆した
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最後のDunlap氏の発言の意味するところが良く理解できないのですが、「全体構想」の必要性を訴えたものとして、意訳してご紹介しています

輸送コマンドThomas副司令官の話からすると「大いに乗り気」なようですから、次回は3月に実施の「連接演習マラソン:connect-a-thons」などを通じて、構想が煮詰まることを期待いたします

連接演習マラソン:connect-a-thons関連の記事
「全ドメイン包括指揮統制演習(JADC2)」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-10

昨年12月の演習に関するメディア報道
https://www.c4isrnet.com/air/2019/11/12/us-air-force-to-link-f-35-with-f-22-in-connect-a-thon-experiment/

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やっとサイバー防御チームの職務規定が [サイバーと宇宙]

まず「Cyber protection teams」から定義を

cyber forces4.jpg9日、米国防長官室のサイバー担当補佐官であるDennis Crall少将が講演で2018年4月にメジャーコマンドに格上げされた「サイバーコマンド」を構成する133個の「Cyber Mission Force teams」の中で、特にその職務内容を定義するのが難しい「Cyber protection teams」の職務について、国防長官名で職務内容が定義されたと明らかにし、サイバー組織強化の上で大きな勝利(big win)だと表現しています

「Unified Command」に格上げされたサイバーコマンドを復習すると、米軍の統合作戦を支えるため、その主戦力として133個の「Cyber Mission Force teams」を約6200名で編成しており(単純計算で各チーム46名程度)、その「teams」には以下の4種類が存在します

---Cyber national mission teamsは、敵の活動を察知し、攻撃をブロックして撃退する
---Cyber combat mission teamsは、世界中の地域コマンドにサイバー作戦能力を提供する
---Cyber protection teamsは、主に国防省ネットワークの防御に当たりつつ、攻勢的サイバー作戦の準備もする
---Cyber support teamsは、サイバー関連分析を提供し、「national and combat mission teams」の計画支援を行う

4つのチームの違いが判りにくいところですが、今回はこの4つの中の「Cyber protection teams」の職務が正式に定義され、大きな進歩だと国防省高官が語ったというお話です。

cyber forces.jpg今頃何を?・・・と言いたくなるところですが国防省のサイバー作戦の難しいところは敵が国家安全保障上の目標を達成するためにサイバー攻撃で狙うのは米軍や国防省だけでなく、エネルギーや交通や通信と言った社会インフラや金融インフラなど多様な中、最も米国の中で組織的活動が可能で能力もありそうな米軍サイバーコマンドが「どこまで国防省外に手を差し伸べるか?」にあります。

米軍が出しゃばると一般企業や社会から文句が出るし、かといって放置もできないし・・・とのジレンマが、「国防省ネットワークの防御が主任務」の米軍サイバーコマンドを苦しめ、その職務定義を難しくしているのかもしれません。職務の定義が明確でないと、組織編制や人材の育成、更には組織の評価も難しくなることから、今回の職務規定の正式発表を「big win」と表現したものと推測しています

またCrall海兵隊少将の話によれば、4種類のチームの中で「protection teams」の職務定義が最も難しいことから最初に取り組み、今後他のチームの職務定義に進んでいくとのことです。

以下は、「protection teams」の職務定義が出来てよかったと喜ぶ同少将のコメント等で抽象的なお話になりますが、認知されて約20年経過するサイバードメインが、依然として民主主義国家の中では取り組みが難しく、悪党に親和性の高いドメインであることを感じていただく契機となればとご紹介します

10日付fifthdomain記事によれば
cyber forces5.jpg●9日、Crall海兵隊少将は、陸海空ドメインと異なり、サイバードメイン、特にその中でも難しい「Cyber protection」は、職務内容や即応体制を定義して理解するプロセスが従来存在しなかったと述べ、我々は20年以上サイバーに取り組んでいるが、依然として新しい分野であり、その戦力、能力、手順、権限などについての考え方が変化を続けているからだと背景を説明した
●そして「我々は始めてprotection teamを定義し、何が役割で任務か、どのように評価するかを明らかにできた」と述べた

●サイバー作戦運用について国防省として正式化した以降も、国防省関係者の努力にもかかわらず、防御的サイバー分野のドクトリンは常に変化を続けてきた。この定義が困難な理由は、攻撃については過去のNSAの作戦例を雛形に考えればよかったが、防御については枠組みをゼロから生み出す必要があったからである
●また、cyber protectionの要領は最近の教訓を基に変化を続けており、数年前の手法や考え方が、あっという間に旧式化してしまう難しさが存在している。このことから、要員養成機関で教える内容は古い手法で、現場部隊で行われている手法とは異なり、新人は部隊配属後に初めて実際の手法に接することとなっている

cyber forces2.jpg●Crall少将は更に、職務定義により「個々の兵士の任務、即応体制レベルの報告、個人や部隊即応態勢レベルの指標化などが可能になり、個人や部隊の状況に応じたフィードバックやチームの再構成による戦力管理が可能となる」とも説明した
●また、戦闘機飛行隊が通常行っているように、チームの一部が前線に派遣され作戦を遂行している間に、残ったチームは教訓の整理や訓練を行って能力向上を計り、次回の前線派遣に備えるローテーションを組むことが可能になる、とも説明した。

●同少将は、職務定義が完成したことから、今後はこの定義に沿って戦力の現状規模をキチンと把握し、サイバーコマンド全体への任務要求と比較して規模(capacity)が適当なのか考える必要があると述べた
●また、職務定義から基本的な「cyber protection teams」の装備についても合意が出来たが、任務に応じて柔軟に使用装備を変更する必要もあり、人の編成や事前訓練などとあわせ、状況に応じた応用についても基本形を準備することが必要と説明した

●「protection teams」の定義が出来たことで、今後は「offensive」と「support」teamsの職務定義について検討を進める
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cyber forces3.jpg「cyber protection teams」の具体的な職務事例で、「職務定義」の重要性について説明出来ればよいのですが、事柄の性質上、具体的な事例について同少将は語っていないようです。

認知され始めてから約20年経過するサイバーの世界ですが、耳にする機会が増えたものの、自身が育った時代に存在しなかったものへの理解はなかなか進みません。特に軍組織だと、今の時代の上級指揮官クラスにはまだまだ実感として伝わっていないのでしょう。そんな事も、サイバーチームが派遣された際の仕事の困難さに繋がっているような気がします。

また冒頭で申し上げたように、依然として民主主義国家の中では取り組みが難しく、悪党に親和性の高いドメインであることを感じていただく契機となれば・・・とご紹介しました

サイバー関連の記事
「喫緊の脅威は中露からではない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-16
「ハイブリッド情報戦に備えて」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-05
「ドキュメント誘導工作」を読む→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1
「サイバー攻撃に即時ミサイル反撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-11-1
「NATOが選挙妨害サイバー演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13
「サイバーとISR部隊が統合して大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「ナカソネ初代司令官が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17
「大活躍整備員から転換サイバー戦士」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-3
「サイバー戦略がもたらすもの」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-02
「市販UAVの使用停止へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-07-1
「サイバーコマンドの課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-04
「サイバー時代の核兵器管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02

「人材集めの苦悩」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-31
「米空軍ネットをハッカーがチェック」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23
「米国政府サイバー予算の9割は攻撃用!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-31
「装備品のサイバー脆弱性に対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-02

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シンガポールにF-35B型売却許可 [亡国のF-35]

当面は4機でオプション8機を将来的には50機程度か

F-35B.jpg9日、米国務省の国防安保協力庁DSCAが、シンガポール政府から要望があったF-35B型購入を正式に承認したと発表しました。
シンガポールは昨年、Ng Eng Hen国防相が米国政府に対し、当面4機でオプションで追加8機の計12機の同機購入要請を行っていたところです

これにより、シンガポールは12番目のF-35運用国に向かうことになります。

ちなみに他の11カ国は・・・
(カッコ内の数字は購入予定機数、ちょっと古い数字も含まれます

共同開発国では、豪州(100機), Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、米国(2443)(A1763、M420、N260)
FMS購入国では、Belgium(34), Israel(19),、日本(42+100) , 韓国(40)

F-35B 4.jpg共同開発国の中でもF-35に不信感を持つカナダのトルドー首相は正式購入決定を先延ばし続けて現在も機種選定中(65機購入予定だった)で、100機購入予定だったトルコはS-400をロシアから導入したことで、共同開発国から排除されました


各種報道によれば
●米国務省の承認範囲には、同機用エンジンF135のスペアエンジン13基、電子戦及び通信システム、訓練用装備品、ALIS自動兵站情報システム、その他兵たん支援装備などが含まれている

米国務省の国防安保協力庁(DSCA:Defense Security Cooperation Agency)は承認発表声明で、「この取引は、米国の国家安全保障と外国政策目標達成に寄与するものである。シンガポールは、アジア太平洋地域の政治的安定や経済発展の推進力で、戦略的友人で主要な同盟国である」と表現し、
F-35 Buy Conutry.jpg●更に「F-35の売却により、シンガポールの航空戦力は増強され、空対地及び空対空能力が向上することで抑止力が強化され、更に他の同盟国やパートナー国との有志連合作戦にも貢献する」と述べている

シンガポール空軍はF-35Bを、現在運用している60機のF-16C/D Block 52/52+の後継機と考えており、当面12機としているF-35B購入数は更に増加する可能性が高い。(他にシンガポールは最新型F-15のF-15SGを導入中30機程度
●なおロッキード社は、シンガポールがF-35を購入することになったことで、100機購入予定だったトルコが排除された穴埋めにもなると最近コメントしている
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シンガポールは2013年当時に既に「間もなくF-35購入決定」とのニュースが流れていた国ですが、様々な駆け引きや「様子見」を経て、昨年やっと購入を決定した「策士の国」です。見習いたいものです

F-35B 2.jpg「亡国のF-35」ですが、日本が共同開発国入りを拒否されながらも、米国に次ぐ機数を購入することになった以上、少しでも多くの国と「負担を共有」したいものです

ただ米国や英国やイタリアは明らかに現在の計画数を調達することは困難であり、他国が多少頑張っても様々な面でのコスト負担増は避けられません。また、今後ますますクローズアップされるであろう維持経費の高止まり(第4世代機の2-3倍)は、各国空軍関係者を脳死に導くと思います

日本の三沢基地でも、整備員の皆さんがF-35の維持整備に大変苦労し、何回か米本土の空軍基地からF-35整備員を呼んで「整備シンポジウム」をなるものを開催し、ノウハウを得ようと努力されていると米空軍協会web記事が報じていましたが、稼働率が上がるほど自らの首を絞めるジレンマを、前線整備員を襲うのは遠いことではありません・・・

F-35関連の最近の記事
「シュミレータを他基地と連接」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-06
「英空母で米F-35運用」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-26-1
「ALISや稼働率問題を議会で訴え」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-15

F-35維持費の削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1
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CSBAが米海軍に提言:大型艦艇中心では戦えない [安全保障全般]

大型レーダー搭載の巡洋艦や駆逐艦中心ではダメ
現在指向の「分散運用」だけでは到底戦えない

CSBA taking back sea.jpg12月31日、シンクタンクCSBAが「海を取り戻せTaking Back the Seas: Transforming the U.S. Surface Fleet for Decision-Centric Warfare」とのレポートを発表し、米海軍が現在指向している大型艦艇の分散運用だけでは中国の対艦攻撃能力には耐えられないので、平時は有人で運用する(optionally manned)な中小型無人艦艇を活用し、また防空ミサイルの代わりにエネルギー兵器に投資してVLSスペースを攻撃兵器搭載用に変更して打撃力アップを図るべき等々を提言しています

米海軍は目立つ大型艦艇の脆弱性を克服するため、現在の空母周辺にイージス艦(巡洋艦・駆逐艦クラス)を集めて作戦する形から、海上アセットを分散してネットワークで結ぶ「分散型海上作戦:distributed maritime operations」を追求して敵のターゲティングを困難にしようと考えているようですが、とてもそれだけでは太刀打ちできない・・・とCSBAは指摘しています

先日は、米海軍が無人艦艇の導入を急いでいるが、米議会から無人艦艇運用コンセプトの詰めが不十分だと指摘を受け、9月までに運用構想をまとめる検討を始めたとご紹介しましたが、CSBAはさらに突っ込んで、現在の脆弱で目立つ大型イージス艦を中心の水上艦艇編成では平時にも極めて非効率で、根本的な考え方の変革が必要だと主張しています

具体的に、どの様な米海軍の艦艇数構成を考えているのかはっきりしないのですが、いつものようにつまみ食いで、適当にさわりだけご紹介しておきます。米海軍も変革を迫られています

8日付Defense-News記事によれば

CSBAの問題認識
CSBA taking back sea2.jpg米海軍首脳は繰り返し、「分散型海上作戦:distributed maritime operations」を追求して敵のターゲティングを困難にし、敵を攻撃する機会を増やすと主張しているが、現代のセンサーやミサイル技術の拡散等を踏まえれば、「分散型作戦」だけでこれに対応することは不可能である
●米海軍イージス艦が搭載する 防空&BMD用のSPY-6レーダーのような装備は、フラッシュを点灯するように敵に発見されやすく極めて脆弱なにもかかわらず、、米海軍の将来計画を含めても、水上戦力の3/4は大型の防空及びミサイル防衛用のレーダーを装備した脆弱な艦艇で、投資効率上でも大きな問題である

●またそれら大型艦艇は防空やBM対処用や多用途を目指して極めて高価にも拘わらず、平時の大部分の時間は、潜水艦対処やISR、海洋プレゼンス、対テロ策棟に対応し、艦艇寿命の縮め、大きな維持経費を発生させており、極めて非効率な運用となっている
●またこれら大型イージス艦は、防空やミサイル防衛用迎撃ミサイルのために大きなスペースをVLSに食われており、真に必要な敵攻撃兵器が限定される結果となっている

CSBAの提言する対応策概要
CSBA taking back sea3.jpg米海軍は大胆に水上艦艇の攻撃力や電子戦能力を増強する必要があり、エネルギー兵器による対艦ミサイル対処能力を増強して防空ミサイルを格納したVLSを攻撃兵器に置き換える必要がある。
●また米海軍は、大型の目立つアクティブレーダーへの依存を減らし、よりパッシブセンサーを活用する方向にシフトする必要がある

米海軍が導入を検討している有人艦艇と行動を共にするミサイルを多数搭載した大型無人艦艇LUSV(防御ミサイルを打ち尽くすと再充填のために帰港し、攻撃用艦艇の防御負担を軽減)ではなく、平時は少数(20名程度)で有人運用し、有事には無人運用可能なコルベット級DDCにパッシブセンサーや電子戦装備を搭載する。

●この平時有人艦艇DDCは、平時には対潜水艦作戦や海洋安全確保や諸国との訓練を通じての関与作戦に従事し、兵員の訓練にも貢献する。そして有事には無人運用し高い脅威下での作戦に投入する。
●なお平時有人を前提の無人艦艇DDCは、完全無人艦艇より低コストである。また、現在は機能過剰な大型艦艇を平時の作戦に投入して非効率に艦命を縮めている現在の運用よりは効率的である

CSBA taking back sea4.jpg●またこのDDCはパッシブセンサーや電子戦装備を搭載して敵により接近することが大型艦艇よりは容易で、攻撃兵器を搭載して遠隔操作でリスクある作戦にも投入が容易である
DDCは無人運用が可能であるが、有事においても有人運用も可能で、秘匿度の高い装備や兵器を搭載する場合は紛争参加時でも有人運用が好ましい場合も多い

●米海軍にはコルベット級(DDC?)が96隻必要で、中型無人艦が110隻必要である
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基礎知識不足から米海軍が現在誅求しているLUSV(大型無人艦艇)と、CSBAが提唱するDDCの違いがぼんやりとしか説明できていません
また現在主力の大型イージス艦の防空やBMD能力の代替や、エネルギー兵器の能力をどの程度に想定しているかなど、メディアの記事からはよくわかりません

ただ、現在主力の大型イージス艦が、有事に極めて脆弱で期待できない事への危機感や大部分の平時の任務において過剰な装備だとの問題認識は無視できません
また、少数の人員で平時有人運用する「optionally manned」なるDDCの発想は、非常に斬新で、作戦面と維持費面でも興味深い発想です

いずれにしても、今の中国軍を前にして、現在の西側戦力では太刀打ちできないとの危機感は強烈で、その度合いは米国発の各種情報から急速に高まっています

CSBAの当該レポートwebページ
https://csbaonline.org/research/publications/taking-back-the-seas-transforming-the-u.s-surface-fleet-for-decision-centric-warfare

最近のCSBAによる対中国作戦提案
「CSBAの海洋プレッシャー戦略」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13

米海軍関連の記事
「9月までに無人艦艇運用構想作成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-04
「新編第2艦隊はロシア潜水艦対処に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-03
「冷静後でロシア潜水艦が最も活発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21-1
「代打の次期米海軍トップ」 →https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-19
「空母1隻削減案に揺れる」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-29
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24

「空母フォード3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「攻撃原潜に新たな形態BlockⅤ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-07
「NKのおかげSSBNに勢い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-2
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米特殊作戦軍が人の感情や心情を察知するキットを [Joint・統合参謀本部]

米軍に対する外国人の反応を複数センサーで
AIも使用してデータを分析

SOFWERX3.jpg12月11日付DefenseOneが、民間技術を迅速に取り入れて前線のニーズに答える米特殊作戦軍「SOFWERX」プロジェクト主任技術者にインタビューし、様々な取り組みの中から、米軍兵士が前線で接する一般市民や拘束者の感情や心情を読み解くキットについて取り上げています

「SOFWERX」プロジェクトでは、各種センサーが埋め込まれた下着を装着することで、兵士が戦闘で負傷した場合に身体のバイタルデータや位置情報を自動送信したり、激しい敵の攻撃を受け友軍に通常の連絡手段が使用しにくい状況でも、指の小さな動きや数個の単語による指示でCAS支援要請や無人機の群れ操作を可能にする技術の研究もおこなわれているようです

プロジェクトの大きなテーマは、厳しい戦闘環境課における「human-machine interaction, data, applications, and communications」だそうですが、物理的に機械が兵士をサポートする手法がうまくい進んでいない中で、センサーとAIを結び付け、データと情報処理技術を生かした「認知能力:cognitive abilities」分野に大きな可能性感じているようです

11日付DefenseOne記事によれば
SOFWERX2.jpg「SOFWERX」プロジェクトのBrian Andrews主任技術者は、11月初旬に「前線兵士の言葉に対する外国人の受け止めをリアルタイムに評価する心理分析ツールの試験を行った」と述べ、
「幾つかのセンサーを使用した。レーダーや映像から、心拍数や体温などの身体データの他、会話の声から兵士の言葉に対する反応状況も分析できる」と説明した

●Andrews氏は、米特殊作戦軍関係者と15名の専門家を1週間集めたが、相当なレベルで「キット」収集情報に好感触を得たと述べ、「被験者に多少不愉快になるような質問を投げかけた。相手の意図まで読み解くのは現時点で難しいが、相手の表情の変化や緊張具合などの小さな変化が分析対象になる」と説明した
ISが浸透を図っている村を想定してテストを行い、キットを装着した兵士が村の長老等に話しかける様子を同キットで収集分析し、長老が兵士に何を答えたかに拘わらず、長老らが兵士の言葉にどのような感情を抱いたかをリアルタイム又は後ほど分析した、とAndrews氏は述べた。

●この様な米特殊作戦軍の取り組みは「Hyper-enabled Operator」計画と呼ばれ、今後数か月をかけて担当チームは各軍種の特殊作戦部隊を回って、厳しい戦闘環境課における「human-machine interaction, data, applications, and communications」に関する部隊ニーズを吸い上げる予定で、結果はチームが入手した新技術の種と結び付けられたり、既存のプログラムの改善に利用される
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SOFWERX SOCOM.jpg記事には、これまでの経緯や様々なプロジェクト名が紹介されており、その関係や全体の流れが良くわからないのですが、特殊作戦軍も「迅速な最新技術の取り込み」に努力している様子が伺えます

「Hyper-enabled Operator」計画の中で、機械が人間をサポートして超人的な物理的パワーを発揮することを狙った「鉄人プログラム:Iron Man program」があまり上手く行かず、その過程でデータと情報処理技術を生かした「認知能力:cognitive abilities」分野に可能性を見出したとは興味深い話です

今後のキットの成熟方向等が良くわかりませんが、「人の感情や心情を察知するキット」の存在を公にしてOKなんでしょうか? 
民間に導入されれば、採用面接の際の強力なツールになるように思いますが・・・

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