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10周年の米空軍GSCが大変革の方向を目指す [米空軍]

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年末年始のためお休みを頂き、1月6日まで定期更新は行いません
皆様、良いお年を!!!

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2009年に戦略空軍からGSC(Global Strike Command)に改編
核兵器(ICBMとミサイル・爆弾)更新の膨大な任務に備えつつ
更に宇宙、サイバー、電子戦の時代に備えて

Ray2.jpg10周年を迎えたGSCのTimothy Ray司令官(大将)が米空軍協会機関誌のインタビューを受け10月18日に非公開で決定した「GSC新戦略計画」や同計画を基に検討中の「作戦運用コンセプト」の背景や方向性について語っています

ソ連との冷戦を戦略原潜と共に核抑止で支えた戦略空軍時代からの流れを引きづって来たGSCですが、ここにきて2018NDSが指摘したように、宇宙やサイバーや電子戦ドメインも戦略的な意味を持ち始め、超超音速兵器の出現などと併せ、脅威の変化への対応を迫られています

加えて延々と先送りにしてきた核兵器の近代化更新にもやっと着手し始めたものの、膨大な「試験や認証業務」が控えているようで、3.2万人規模のGSCは、予算厳しき中で、一層の業務効率化も求められています

更に「長年にわたり放置され顧みられることがなかった」ICBM部隊では、士官クラスも含めたカンニングや勤務中の飲酒問題、更に自殺の多発など、部隊を支える人の面にまで立ち返った対応が求められるなど、厳しい現実に直面しています

具体的な内容を含むインタビューではありませんが、日本も「傘の下」で生きている身ですので、ご紹介しておきます

11月27日付米空軍協会web記事によれば
B-52 2.jpg2009年に戦略空軍からGSCに改変された部隊であるが、最後に核兵器が使用されてから70年、冷戦終了後から30年が経過し、核兵器だけでなく宇宙やサイバーや電子戦や超高速兵器などに脅威が拡大する中、GSCは新たな時代の抑止を担うための変革を迫られている
●同コマンドは10月18日、同コマンドの歴史上最大の方向転換と表現される非公開の「新戦略計画」を定め、今後数十年の方向性を内部に明らかにした

「新戦略計画」の中には9つの主要目標が示されているが、GSC戦略の運用をつかさどる統合の米戦略コマンドに対し、2018NDSに沿った戦力を如何に提供するかを考慮したものとなっている

Ray.jpg●そして同司令官はこの新戦略計画を受け、「今後6-9か月間で作戦運用コンセプトを作成する」と語り、その検討に資するため、秋に米戦略コマンドや英豪加と共に実施した「Global Thunder」演習では、冷戦後取り組んだことがなかったような想定を置いて訓練し、教訓を得た
「超超音速ミサイルや弾道ミサイル、潜水艦、宇宙やサイバーなど、我の行動を妨げるあらゆる状況を設定し、かつてないより現実的な場の設定で演習を行った」、「より正しい状況下で」で行い、今後数十年で新たに導入するB-21、GBSD(ICBM迎撃ミサイル)、LRSO、改良B-21核爆弾、MH-139へり、指揮統制技術をシームレスで使用できるよう戦略コマンドとの連携の資となったと同司令官は語った。

●また同司令官は、米空軍が希望ベースで作成した「Air Force We Need」計画のような爆撃機部隊規模が実現できるとは考えていないと述べ、新型のB-21と年齢100歳のB-52が共存する部隊の運用も、それぞれを貴重な戦力として共存するよう考える必要があるとも述べた
ICBM.jpg最近RAND研究所が発表したレポートでは、厳しい財政状況下で部隊の近代化を進めるには、戦闘コマンドACCの経験も参考に、新旧ICBMや爆撃機の移行マスター計画を策定すべきと指摘し、また「今後予期される核兵器の試験と認証規模は、過去数十年経験のない膨大な業務を必要とするが、この業務はスタッフ数と経験の少ないGSCに割り振られる」と危惧している

●これらの指摘に対しGSC司令官は、「アセット毎に担当を固定するのではなく、 cross-functionalなチームを編成して多様な課題に対処させる」等の対処案に言及し、GSC内だけでなく、国防省や他政府機関も交えた最近の成果として、爆撃機運用基盤整備コストをB-52とB-21で半額以下に抑えることに成功したと説明した
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飛行部隊である爆撃機部隊と、全く性格の異なるICBM部隊を一つのコマンドの下で管理するのは、さぞかし大変な任務だと思います

サイバーや宇宙ドメインが加わって、「抑止」の概念がどう変化するのか勉強していないのですが、変わらないのは「自らの国民を犠牲にすることが出来る国」を抑止することは難しい・・・ということでしょう

核兵器は70年間使用されていませんが、明日のことはわかりません

GSC関連の記事
「弾薬庫航空機を継続検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-05
「B-1早期引退でB-21推進案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-19
「爆撃機ロードマップ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2

米軍「核の傘」で内部崩壊
「ICBMサイト初のオーバーホール」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-15
「屋根崩壊:核兵器関連施設の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-23
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27

「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29

戦術核兵器とF-35記事など
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ICBM後継に関する記事
「ボーイング怒りの撤退」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-27
「提案要求書RFP発出」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-18
「次期ICBM(GBSD)企業選定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-27-1
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1

オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13
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プーチン:露は超超音速兵器を配備した唯一の国だ [安全保障全般]

「米が露の背中を追う近代史上で前例のない状況になった」

Putin.jpg24日、ロシアのプーチン大統領がロシア軍首脳との会議で訓示し、改めて、世界で初めてロシアが超超音速兵器の開発に成功して部隊配備を開始しており、「米が露の背中を追う近代史上で前例のない状況になった」と表現して軍事力をアピールしました

プーチン大統領は、2018年3月の年次一般教書演説でも、数々の新型核兵器や超超音速ミサイルの開発を明らかにしていましたが、より明確に「世界で唯一」とか「米国より優位に立っている」と表現して見せました

米国のエスパー国防長官は今年8月、超超音速兵器開発を最優先事項と語り、「完成までに恐らくcouple of years必要だろう」と述べていますが、そのような米国を見下すようにプーチン大統領は、長射程の大陸間超超音速兵器を今月部隊に配備し、射程2000㎞級は既に配備部隊が運用を開始していると述べたようです

エスパー長官は中国も開発している(hypersonic missiles being developed by Russia and China)と表現していますが、プーチンは世界で唯一ロシアだけが超超音速兵器を部隊配備していると表現しており、この辺りの差が気になるところです

25日付Military.com記事によれば
Avangard.jpg24日、プーチン大統領はモスクワで軍首脳たちに訓示し、「米が露の背中を追う近代史でユニークな状況になった。ロシアを除いて超超音速兵器を保有している国はなく、ましてや我が国のように大陸間射程の同兵器を配備する国は存在しない」と語った ●そして、史上初めてロシアが、米国の後追いでなく、世界の兵器開発をリードする立場になったと語り、更に、冷戦期に核兵器や戦略爆撃機やICBM開発で米国に後れを取った時代からの変化を強調した

具体的にプーチン大統領は、速力マッハ10、航続距離2千キロとされる航空機搭載型の極超音速核ミサイル「キンジャールKinzhal」が既に運用を開始し、大気圏内をマッハ20で飛べるという大陸間飛翔ミサイル「アバンガードAvangard」装備部隊が今月12月から任務体制につくと明らかにした

●「アバンガードAvangard」についてプーチンは、飛翔中にコースや高度を変化させて敵の迎撃を困難にすると説明し、「これは未来の兵器だ。現存するものだけでなく、将来のミサイル防衛システムを突破する能力を持っている」と強調した
Kinzhal.jpg射程2000㎞の「キンジャールKinzhal」については、Mig-31に搭載する空中発射型として2018年に運用を開始し、地上目標と艦艇の両方を攻撃可能とアピールした

●プーチン大統領はまた、NATO軍がロシア国境に近い東欧に部隊を増強してることや、米国によるINF全廃条約からの脱退を、ロシアに対する脅威だと訴え、「これは引き分けの無いゲームであり、ロシア技術は西側より優れていなければならず、鍵となる分野で達成可能だ」と訓示した

ロシアのSergei Shoigu国防相は同じ会議で、2019年にロシア軍は143機の新造機と潜水艦1隻、8隻の水上艦艇等を調達し、2020年にも同様のペースで戦力増強を続け、航空機106機、潜水艦3隻、水上艦艇14隻、ICBM22発等を導入すると述べている

Avangard2.jpgプーチンはその他の重要開発兵器として、新型大陸間弾道ミサイルICBMのRS-28 「サルマトSarmat」、ポセイドン核推進魚雷、Burevestnik核推進巡航ミサイルの開発に取り組んでいると言及した
●なお、核推進巡航ミサイルは冷戦期に米ソが共に開発に取り組んだが、あまりにも汚染拡大リスクが高いとして開発を中止した経緯がある。またBurevestnik核推進巡航ミサイルについては、8月の試験中に爆発事故を起こし、研究者など7名が死亡した模様である

米国防省も新たな長射程兵器として最優先で取り組んでいるが、8月にエスパー国防長官が「完成までに恐らくcouple of years必要だろう」と述べている
●同時に国防省は、超超音速兵器の脅威を繰り返し訴え、米本土や海外展開米軍部隊を防護するためには、宇宙に重層的なセンサーを配備し、迅速な探知と発射後の進路変更を追尾できる体制が必要だと主張し、併せて迎撃用ミサイル等を宇宙に配備して、発射直後のブースト段階で対処する必要があるとの考えを展開している
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ICBMサルマト、核巡航ミサイル、核魚雷についても、ロシアは実験や開発に成功したと主張しているようですが、米国の専門家の間では、いずれの兵器も技術上の問題で実戦配備に至っていないとの見方が多いようです。

Kinzhal2.jpg24日のプーチン発言について米国防省報道官は、「特にコメントすることはない」と対応しているようですし、昨年3月にプーチンが一般年度教書演説で超超音速兵器開発や配備について明らかにした際も、、ロシアによる核戦力の拡充は核態勢見直しNPRにも織り込み済みで「驚くにあたらない」とし、一連の新型兵器にも「米国は対抗できると確信する」と強気でしたが、何となくむなしく響く感じがします

超超音速兵器に関していえば、陸海空軍がバラバラに開発を始め、全てが予算不足でとん挫し、最近になって国防省が音頭を取って絞り込んだ開発に着手した状況です。
中国にしてもロシアにしても、兵器開発には「独裁国家」の腕力が必要ということでしょうか・・・残念です

2018年3月のプーチンの年度教書演説
「ロシアが続々新型戦略兵器開発主張」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-03-1

超超音速兵器開発で中国が優位だと認め、バラバラな米国を嘆く米軍幹部
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-27-1

プーチンが公式表明した核魚雷の関連記事
「米NPRも露核魚雷に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13-1
「露が戦略核魚雷開発?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-06

CMや超超音速ミサイル対処
「CMから米本土を守る3つの方策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-30
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31
「露の巡航ミサイルへの防御無し」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「超超音速兵器への防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1

ミサイル防衛関連の記事
「ミサイル防衛見直し発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-19
「グリフィン局長の発言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-1
「米ミサイル防衛の目指すべき道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「BMDRはMDRに変更し春発表予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24-1
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他基地のF-35シュミレータと連接してシム訓練可能に [亡国のF-35]

まず戦術研究の中心Nellis空軍基地へ
他機種シュミレータとの連接も将来可能に

DMT2.jpg3日、フロリダで開催された軍事シュミレーションと訓練関連展示会&会議で、F-35を製造するロッキード社幹部が来春にも米空軍Nellis空軍基地に納入予定の複数基地のF-35シュミレータを連接して使用するシステムについて紹介し、F-22やF-16シュミレータとの連接試験にも同社内では成功しているとアピールしました

ネバダ州Nellis空軍基地に新型シュミレータが納入されることで、例えばユタ州やフロリダ州の空軍基地のF-35シュミレータで「同じ感覚」の訓練が可能かどうか、など細部は不明ですが現在は同じ基地内のF-35シュミレータ4台しか連接できないところ、他基地からも各最大4台のシュミレータが訓練に加われるようになるそうです

DMT(Distributed Mission Training)と呼ばれる新型シュミレーション装備はまず米空軍に提供され、米海軍や海兵隊も既に導入契約を結び、英国も購入を決定しているとのことですが、各軍種や国ごとにネットワークの仕組みが異なるようで、軍種間や他国との連接にはまだ時間が必要なようです。

4日付Defense-News記事によれば
DMT.jpg●3日、フロリダのオーランドで開催された「Interservice/Industry, Training, Simulation and Education Conference」で、ロッキード社のF-35訓練・兵たん担当Chauncey McIntosh副社長は、来年米空軍パイロットは他空軍基地のF-35シュミレータ操縦者と連携して大規模なシム訓練が可能になると述べた
●DMTと呼ばれるシステムは、理論上は無限大のF-35シュミレータを連接可能で、高烈度の訓練を可能にすると同副社長は述べ、「ネリス基地にまず提供出来るように試験を重ねており、1月には同基地に搬入して既存シュミレータとの連接を開始する。全てが順調だ」と述べた

「細かく述べれば、国防省からの導入承認を待っている状態だが、搬入後に現場で試験を行い、正式には来年春に納入する予定だ」と同副社長は説明した
●現在は同一基地内のシュミレータしか連接できないが、DMTはどの米空軍基地F-35シュミレーターとも同一基地4台まで連接可能となる

DMT3.jpg●同副社長は、「オーランドの我が社研究機関では、既にF-35だけでなく、F-22やF-16、更にはE-3 AWACSの連接も行っており、毎週のように新たな機種を想定した試験シナリオをソフトに追加している」とも説明した
●新型シュミレーション装備DMTは、米海軍や海兵隊、更に英国軍とも既に導入契約を結んでいるが、各軍種や国ごとにネットワークの仕組みが異なることから、米空軍のシュミレータと他軍種のシュミレータを現時点で連接はできないが、国防省F-35計画室とロッキード社は、更なる連接範囲拡大に向けたスケジュール検討を行っている
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日本にも当然売り込みがなされてるような気がしますが、「おいくら万円」するのでしょうか?

DMT4.jpgF-35の飛行時間当り維持費が、第4世代機の2-3倍ということであれば、実飛行訓練のシュミレータ訓練への置き換えも現実味を帯びてくると思いますが・・・

また、あまりにF-35の能力が高いため、実環境で訓練環境を準備できない問題も長く議論されており、その点でもDMTへの期待は大きいものがあります

5世代機とバーチャル訓練
「5世代機の訓練はシムと実機併用で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-11-24-1
「シム訓練でF-22飛行時間削減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-11-1
「F-35SIM連接の課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-05
「移動簡易F-35用シミュレーター」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-02
「5世代機はバーチャル訓練で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-28-1

F-35維持費の削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

その他の関連記事
「米空軍が人工知能シム訓練アイディア募集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-26
「5世代機のため訓練エリア拡大要望」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-12-09-1

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米軍は実態だけでなく「見せかけ」でも中国を抑止すべき [Joint・統合参謀本部]

米太平洋空軍司令官の発言です
「見せかけ」とは「deception:ぎまん」の訳です

Brown2.jpg17日、Charles Brown太平洋空軍司令官がワシントンDCで軍事記者団との朝食会に臨み中国との対峙を考える時、もちろん装備を充実させることは重要だが、同時にWW2時や冷戦時に取り組んだ「deception:ぎまん」によって、我の能力や状況を「ごまかす、だます、見誤ませる」ことにより、中国を抑止する方法にも再度着目して国防省として取り組みを開始すべきと語りました

同司令官は「gadget culture:ちょっとした装置、道具、小物」を大切に生かす工夫が必要だとも表現し、電子戦も含め、予算が厳しい中で、我の能力ややり方を「隠す、大きく見せる、誤解させる」ことで中国が自信を持つことを防ぐ事が重要だと説明しています

対中国の最前線を預かる太平洋空軍司令官が、正面装備や作戦運用の王道を語るのではなく、コッソリやるべき「deception:ぎまん」を正面から訴えるとは、予算も人も全く増加する見通しがないから、せめて「目くらまし」で中国に「モヤモヤ感」を与えて抑止しようとの「苦肉の策」のような気がしますが、日本にも重要な視点ですのでご紹介しておきます

18日付DefenseOne記事によれば
Pacific Air Forces.jpg●17日、Brown司令官は記者団に、中国に高価な装備の準備だけで対処しようとするのではなく、「deception:ぎまん」によって、我の能力や状況を「ごまかす、だます、見誤ませる」ことにも頼るべきだと語った
●また「これらの手段は我々が過去使っていた手段だ」、「国防省としてより注目していくべき方向だと私は信じている」と講演した

●中国やロシアのような大国との対峙に際し、国家防衛戦略も従来のやり方を変えるべき(changing up the playbook)と求めているが、同司令官も変革を訴える新たな将官となった
「能力の観点から、我々のやり方を別の方法から考える必要がある」と述べ、その理由として同司令官は、「中国は自身の勝利に確信が持てなければ、戦争には訴えない」と述べ、米側が「deception:ぎまん」や「decoy:おとり、模造品」で中国側に戦勝獲得への疑念を抱かせる重要性を示唆した

Brown.jpg●具体的に、「まず最初にやってみるべきことは、新たな装備を購入する際に、新装備を別の装備や異なる性能に見せかけることだ」、「我々の組織文化を変える事でもあるが、WW2時には行っていたことであるが、今や考えなくなってしまっていることである」と表現した
●また「gadget culture:ちょっとした装置、道具、小物」を大切に生かす工夫が必要、「別の視点で言えば、異なる視点でアプローチすることである」等とも表現した
●更に、電子戦も相手を混乱させる手段の一つだと述べ、「それほど予算が必要なく、相手を困惑させる効果を得ることが出来る」と同司令官は述べた

対中国やロシアの情報戦(information wars)に関してWillson前空軍長官は、「米国はこの分野で、中露にキャッチアップできていない」と嘆いていたが、この分野で米国が努力すれば、改善効果は確実にある
●10月に米空軍輸送コマンドのMaryanne Miller司令官は、中露の平時の情報収集を振り払い混乱させる(throw off)ため、輸送機の行く先をシャッフルして米軍部隊の展開を予測を困難にすると述べており、これも一つの「deception:ぎまん」であろう
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Pacific Air Forces2.jpgマティス前国防長官が就任した2017年頃から、中露を利することがないよう、新たな装備の検討や技術開発についての情報公開が極端に少なくなったように感じていますし、実際に国防省高官から情報公開を制限しているとの発言があった記憶があります

「サイバー窃盗」が横行する時代に、SNSで誰もが情報を発信できる時代に、情報公開の縛りがどれだけ効果的かは「?」ですが、「欺まん」「欺へん」といった手法の原点に立ち返り、味方も欺くつもりで取り組んでみるのは面白いかもしれません

中国が送り込んだ(又は育てた)スパイから、食い違う複数の情報を遅らせて中国を混乱させる・・・てな具合になれば面白いです

太平洋軍を巡る関係者の発言
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「アジア太平洋地域で基地増設を検討中」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-28
「中露の連携を警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-31
「対中国で米軍配置再検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1

「CSBAの海洋プレッシャー戦略」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「太平洋軍の演習場が不十分」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-29-1
「太平洋軍司令官が議会に要望」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-29
「PACAFが緊急避難訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-27

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1983年以降でロシア潜水艦がもっとも活発 [Joint・統合参謀本部]

空では最近静かと言われてましたが・・・
「水面下」ではお盛んなようです・・・

Foggo.jpg18日、欧州米海軍司令官James Foggo海軍大将が軍事記者団との朝食会で、「ロシア潜水艦隊の活動が、1983年以降でもっとも活発になっている」と語り、米軍はNATO軍と協力して対応していると説明しました

2週間ほど前、NATO軍司令官(兼ねて欧州米軍司令官)による「90日間ロシア軍機による危険接近飛行がない」との発言をご紹介し、NATOに脅威を与えてバラバラになりつつあるNATOを団結させることがない様にロシアが自重しているのでは・・・と邪推しましたが、欧米の一般国民に向け、ロシアの脅威を改めて欧州米軍司令官の部下である欧州米海軍司令官が念押し強調している構図です

欧州米海軍司令官が語っているように、「水面下」の戦いは「非対称」のドメインと分類されているようですから、「蛇の道は蛇」でロシアが力を入れているのでしょうし、中国だってそうでしょう。細かな情報はありませんが、とりあえずご紹介

19日付Military.com記事によれば
Russian submarine.jpg欧州米海軍の指揮を執るJames Foggo海軍大将が軍事記者団に対し、ロシア海軍潜水艦の活動が活発化しており、米国やNATO諸国にとって新たな脅威となりつつあると語った
●同司令官は「私が記憶している限り、少なくとも私が海軍に入った1983年以降で、もっともロシア潜水艦の活動が活発になっている」と述べ、ロシアは非対称なドメインである海中ドメインに引き続き投資を続け、その成果は着実に実っており、西側の新たな脅威になっていると表現した

ロシア海軍は今年の秋に大規模な潜水艦演習を大西洋で実施し、ロシア情報サイト「Barents Observer」は同潜水艦演習目的を分析したレポートで、ロシア軍は大西洋で8隻の原子力潜水艦を探知されずに行動させることを狙っていると分析している
●「Barents Observer」レポートはまた、「このようなロシア北大西洋艦隊潜水艦の動きは、冷戦期以降確認されていなかったものである」と記している

●(Foggo司令官は同レポートに関する質問に対し、)「かなり正確だ:fairly accurate」、「われわれが長期間確認していない規模でロシア海軍潜水艦の活動が増加している」と述べた
●同司令官は最近数年にわたり、ロシア海軍の潜水艦への投資に警鐘を鳴らし続けていたが、その結果として出現したロシアの新型潜水艦の能力や静粛性について警戒感をあらわにした

Russian submarine2.jpg米海軍の潜水艦は、依然としてロシアに対して技術的優位を保っているが、優位性を保つには継続的な研究開発と投資が欠かせず、またNATO諸国との演習訓練も極めて重要だと述べ、2014年のロシアによるクリミア併合以降、米軍と欧州軍はより大きな演習に取り組んでいると説明した

●例えば、2018年にノルウェーで行った「Trident Juncture」演習は、冷戦後最大規模の海軍演習で、艦艇70隻、航空機265機、車両1万両、参加人員5万人が参加し、プーチンに西側の大規模戦力が迅速に移動できることを印象付けた、と同司令官は述べた
●また、ロシア潜水艦の活発化を受け、昨年ノルウェー沖で、NATO加盟10カ国が対潜水艦演習を行っている、とも付け加えた
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極東方面でどうなのかが気になります。北方領土を巡る日本とロシアの駆け引きがある中ですから・・・

「NATO司令官:90日間ロシア軍機の危険接近飛行がない」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-12

ロバート・ゲーツ国防長官語録100選(https://crusade.blog.ss-blog.jp/2013-05-19)より

gates2.jpg全ての潜在的敵対者、つまりテログループ、ならず者国家、ライジングパワー、これら全てが共通に学び得たものは、米国と通常戦の手法で正面から対峙するのは賢明ではないとの認識であるhttp://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-27
国防省で制服幹部をたしなめている。陸軍は未だにフルダ・ギャップでの戦いを望むのか? 海軍はまだミッドウェー海戦を夢見ているのか? 海兵隊は仁川上陸作戦をもう一度なのか? 空軍は単に飛んでいたいのか?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02

米軍には20世紀の世界観が根強く残っており、変化を妨げている。米軍は戦闘で40年間航空機を失っておらず、朝鮮戦争以来、敵の攻撃を受けていない。しかし、21世紀の制空権は米軍の従来の想定とは全く異なるであろう→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
米軍がグレナダ、ハイチ、パナマ、バルカン半島、ソマリア、クウェート、イラクやアフガンで活動すると予期した者は居なかった。ベトナム戦以降で予想作戦地域が的中したことはなかったのである。だから私は多様な課題に対応する能力と柔軟性を持ちたいと考えるのであるhttp://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-09

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AFRLが商用ドローン基礎に2日間以上の連続飛行に成功 [米空軍]

大きさや飛行高度や飛行諸元は非公開ながら
米空軍研究所が初飛行から10ヶ月の開発で
細部が不明で良くわかりませんが・・・

Ultra LEAP.jpg13日付Military.comは米空軍研究所AFRLの発表として、商用無人機をベースに僅か10ヶ月間で改修した超長時間滞空無人機(Ultra LEAPUltra Long Endurance Aircraft Platform)が、2日半の連続飛行に成功したと紹介しました

この「Ultra LEAP」には多様なISRセンサーが搭載可能で、それなりの拡張性もあるようでようで、「遠方からの作戦の困難を克服」「商用ベースなのでコスト面で優しい」「RQ-4グローバルホークの連続飛行記録34時間を遥かに上回る」などの言葉で将来性をアピールしています

2020年早々に運用を開始する発表されているようですが、「イメージイラスト図」しか公開されていない謎の装備です。「イメージ図」ではプロペラ推進でステルス機ではないようですが、どのような運用を想定しているのでしょうか? RQ-4が1機約150億円で価格上昇が続いていると記事は言及していますが、「Ultra LEAP」の価格には言及がありませんし・・・

13日付Military.com記事によれば
Cooley.jpg●米空軍研究所AFRLの迅速革新センターは、2019年2月の初飛行から開発を続けている「Ultra LEAP」について、ユタ州のDugway試験評価場で最近飛行試験を行い、自動操縦による離発着を含む2日半の連続飛行に成功したと発表した
米空軍研究所長のWilliam Cooley空軍少将は、「米空軍が今への対応と将来への備えのバランスを重視する中、Ultra LEAPは今と将来の両方にお手頃な価格のアプローチを提供するものだ」と説明している

Ultra LEAPの大きさや飛行高度や飛行諸元は非公開であるが、イメージ図によれば浮力を得るために大きな翼を備え、グローバルホークのような姿にも見える。
米空軍研究所はUltra LEAPについて、「高性能、コストパフォーマンスに優れ、スポーツクラス商用機体」で、「妨害に強いGPSを備え、衛星を通じた高性能データリンクと指揮統制システムにより全世界で使用可能」と説明している

AFRL.jpg●また空軍研究所の幹部は、「企業と空軍研究所のチームは僅か10ヶ月間で開発を完了させ、2日半の連続飛行成功により、課題となっているISRアセットの遠距離ISR問題の克服に大きな進歩を遂げた」、「この開発は前線兵士に直ちに恩恵をもたらし、低コストで複数日連続ISRへの道を開くものである」、「多様なISRセンサーの搭載が可能な拡張性を備えている」と説明している
●更に、商用ドローンをベースとしていることから、部品の調達がより安価に迅速に可能であり、米軍は機体の信頼性を犠牲にすることなく、維持経費を節約できる

今後米空軍研究所は、施設が不十分な展開先飛行場を想定し、「Ultra LEAP」の短距離離着陸を試験する予定である
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不十分な説明でしたが、とりあえず「Ultra LEAP:Ultra Long Endurance Aircraft Platform」との名前を覚えて置いていただきましょう

ISR無人機としての説明でしたが、通信衛星が攻撃を受け機能停止した際のバックアップも重要な任務になるのでは・・・と想像しています

通信衛星のバックアップが必要なのは
「CSBA提言 エアシーバトルのエッセンス」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-30 
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「脅威の変化を語らせて下さい」→https://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08

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米軍のドローン対処を3-5種類に絞り込む [米国防省高官]

辣腕Lord国防次官が2020年の課題と
急拡大の対ドローン市場に企業が群がる中

counterdrone7.jpg10日、記者団に対しLord調達担当国防次官は、米軍に対する大きな脅威であるドローン対処に米国防省内の研究機関や4軍がバラバラに多様な取り組みを行っているが、各対処法の特徴を見極めて「3-5個」の事業に絞り込んで資源の集中を図り、「効果や効率」を高めるべきとの考えを示しました

同次官は、中東を初めとする世界中の部隊を回って意見聴取をし、現場の状況を把握した結果としてこの発言をしたようですが、ドローン対処が国防省にとって2020年の「鍵となる優先分野」だとも強調しており、今後の動向が注目されます

counterdrone.jpgまんぐーすがこれまでご紹介したドローン対処には、妨害電波で無人機との意思疎通を遮断する方法、レーザー照射の熱で機体を破壊する方法、強力な電磁波(マイクロ波)で無人機内の電子回路を瞬時に破壊する方法などがありますが、いずれの手法でも出力に限界があり小型無人機への対処が精一杯の状況です。

それでも対ドローン兵器市場は活況を呈しており、2020年の市場規模は2000億円、2028年には3倍の6000億円規模に拡大すると予想され、主要な軍需産業のほか、スタートアップ企業も多数参入してアイディアを売り込んでおり、それほど高価でない装備であることから、米軍内では各軍種や現場が多様な装備をバラバラに導入し始めているようで、「効果や効率」の観点から交通整理の必要性が出てきたと言うことでしょう

11日付C4Isrnet記事によれば
counterdrone3.jpg●10日、Lord国防次官は、ドローン対策が国防省にとっの2020年の「鍵となる優先事項」であると記者団に語り、同時に多数ある対処プログラムを「3~5個」に絞込み、効果的に効率的に国防省全体に展開させたいと語った
●同次官は中東を初め世界中の米軍部隊や研究機関を巡って色々な意見を聴いたと述べた上で、「ここ数年、ドローン対処に各軍種や多数の研究機関が取り組んできた。何が行われ、どのような状態にあるかを確認し、効果的で効率的であるために、これら多くのプログラムを融合して絞り込む必要があると皆に話してきた」と記者団に語った

●この件に関して国防省は今後も進展を支援するが、米陸軍がドローン対処の能力開発における一体的なビジョンをまとめる「executive agent」に指名されたことを申し上げておく、と同次官は述べた
●そして米陸軍を中心とした絞込みにより、多様なタイプのドローン対処装備が配備されるのではなく、数個の証明された装備が導入されることを望むとも表現した

counterdrone4.jpg同次官のスタッフたちは、各戦闘コマンドの幕僚たちとTV会議を重ねて現場ニーズの整理を行っており、多様な対処手法の特徴と結び付けて、対処装備の絞込みに取り組んでいる
●同次官は、「3-5個の装備に絞り込むことで、規模の経済の恩恵を享受できる」とも表現した

●なお、ドローンと対処技術の開拓のため、米国防省はベンチャーキャピタルとスタートアップ企業のマッチングにも取り組んでおり数週間前には初めての「Trusted Capital program」によるマッチングイベントを開催し、39企業が12のベンチャーキャピタルの前でプレゼンを行っている
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天皇陛下の即位祝賀パレードの中継で、NHKは警備の重点として様々な「ドローン対策」が行われたと報じていましたが、同時に「細部は明らかにされていません」とも紹介していました

counterdrone5.jpg最後にご紹介した初めての「ベンチャーキャピタルとスタートアップ企業のマッチング」では、新型ドローンとドローン対処技術が同時にプレゼンされたとのことで、「いたちごっこ」の世界のようです

民生分野にも生かせる分野なので、日本の企業や頭脳にもがんばって頂きたいところです・・・

無人機対処にレーザーや電磁波
「米軍のエネルギー兵器が続々成熟中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-30-1
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24

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第2段予告編:映画トップガンの続編「Top Gun: Maverick」 [ちょっとお得な話]

劇場公開は2020年6月26日(米国内)でまだまだ先
今回は米海軍も積極協力で、再び操縦者希望者殺到に期待

Maverick5.jpg今年の7月の第1段予告編に続き、映画トップガンの続編「Top Gun: Maverick」の予告編第2段が公開されました。

第1弾予告編が公開された際に、トム・クルーズ演じる「マーベリック」がTop Gunスクールの教官として「大佐」で戻ってくることや、1986年版でのF-14に代わって今回はFA-18がハードの主役であることなどを記事でご紹介したところでしたが、第2段予告編の公開に併せ、もう少し映画の立て付けが明らかになったようです

映画の公開自体は米国でも来年6月26日で、まだまだ先の話ですが、第2段予告編公開について16日付Military.comが取り上げていますので、33年前の元祖「トップガン」(1986年公開)世代の皆様へのクリスマスプレゼントにご紹介いたします。欧米がクリスマス間近で軍事関連情報がネタ切れでもあり・・・

16日付Military.com記事によれば
Maverick4.jpgパラマウント映画(Paramount Pictures)は、(米国内で)来年6月26日に公開される映画「Top Gun: Maverick」の第2段予告編を公開したが、パイロットの退職増(民間航空会社への流出)と希望者減少に悩む米海軍が起死回生を狙い、1986年の初代版よりもはるかに積極的に協力したことから、映像的には初代よりもはるかに優れたものとなっている

1986年の初代「Top Gun」では、実際の操縦者から「嘲笑」されたような場面も多かったが、1986年版公開後の記録的な米海軍志願者増の再来を願う米海軍の熱狂的ともいえる支援により、今回は驚くべき映像が準備されている
●また、F-14やP-51 Mustangを登場させてその筋のファンをうならせる仕掛けや、開発中との想定の未公開超高速機に「マーベリック」が登場して試験を行うシーンまで含まれている

●一方で意地悪な米海軍ファンからは、33年も前に「Top Gun」スクールを卒業した大佐が、今更「Top Gun」スクールに教官として戻り、操縦桿を握っていることに違和感を覚えるとの声が上がるかもしれない
Maverick2.jpg●でもそんなことを気にする輩は少ないだろう。1986年版で「マーベリック」機の後席に搭乗し、「マーベリック」操縦中の事故で無くなった相棒「グース」の息子が「Top Gun」スクールの生徒として登場し、1986年版で「マーベリック」とロマンスを演じた「チャーリー」に代わり、Jennifer Connelly演じる魅力的な女性も登場する

かっこいいバイク姿も、ビーチでの戯れも、バーでのやり取りも、「Top Gun」スクールでのライバルたちの争いもそのままだ。
●しかし映画のヒットは、主役が若者のハートをつかめるかにかかっているトム・クルーズは33年後にも主役で良かったのか? そんな心配はパラマウント映画にして頂こう全ては来年6月末の公開時に明らかになる
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第2段予告編(2分20秒です)


メイキング映像もちらりと!


続編が制作されるまで33年も間隔が空いたのは、安易な続編制作で1986年版の価値が下がることをトム・クルーズが恐れ続編制作権を自ら買い取ったからだそうです

・・・とすると、今が続編の時なの?・・・と質問したくなりますが、トム・クルーズとして「勝負をかける時」と判断したのかもしれません

第1段予告編公開時には、「マーベリック」の革ジャンから台湾空軍のワッペンが消えたことを1986年版からの変化としてファンが指摘し、中国スポンサーからの圧力や中国市場への「付度」が懸念されるとSNSがざわつきましたが、第2弾は新たなネタを提供してくれるのでしょうか?

個人的には、「グース」の奥さん役だった「メグ・ライアン」の再登場を大いに期待するところですが、これまでの情報では難しいようです。来年の夏は「東京五輪」で持ちきりでしょうが、映画「Top Gun: Maverick」にもご期待ください。

第1段予告編をご紹介した過去記事
「予告編公開:映画トップガンの続編」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-20-1

FA-18関連の記事
「追加で110機購入!?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-29-1
「2016年予算FA-18追加もめ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-23
「機体疲労深刻:FA-18」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-07
「なぜ追加でF-18が必要?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-15

米空軍パイロット不足関連
「操縦者不足緩和?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
「下士官パイロット任務拡大?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10
「世も末:幕僚勤務無し管理検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-20
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アジア太平洋担当国防次官補が辞任 [米国防省高官]

2018年1月から勤務のRandall Schriver氏
政策担当次官の下にまた新たな空席ポストが

Schriver3.jpg12日、米国防省報道官が、アジア太平洋担当国防次官補であるRandall Schriver氏の辞任を発表し、「return to private life」と説明しました。

Schriver氏は2018年1月から約2年間同ポストを努め、アジア太平洋地域の関係国からの評判も悪くなかったと言われており残念ではありますが、2年間というのは政治任用ポストのローテーションで良くある期間ですので、自然な流れと考えておきましょう裏があるのかもしれませんが、把握しておりません

本日はRandall Schriver氏が在任中に取り組み、今年6月に慎重に行われた、インドアジア太平洋担当国防次官補の下で働く「次官補代理:DASD:Deputy assistant secretaries of defense」の担当区分変更、中国専任DASD設置についてご紹介いたします

具体的な影響や防衛省の担当の方の感想などご紹介できればベストなのでしょうが、そこまでの情報はありません。「伝統的な共和党の道を進む人」として知られ、お世話になったRandall Schriver氏の送別記事として、ご覧ください

12日付Defense-News記事によれば
Asian and Pacific2.jpg●12日、国防省のJonathan Hoffman報道官は、2018年1月からアジア太平洋担当国防次官補を努めてきたRandall Schriver氏が同ポストを去り、「private life」に戻ったと発表した
Schriver氏は担当地域の関係国から広く好意的に見られていた人物で、軍事・安全保障問題に関して「traditional Republican voice」な人物であるとの評価を受けていた

Schriver氏は2001年から03年まで、国務副長官だったRichard Armitage氏の政策アドバイザーやスタッフリーダーとして仕え、2003年から05年の間は、東アジア太平洋担当の国務次官補代理として勤務し、特に極東の関係国には良く知られた人物であった
●また、シンクタンク「Project 2049 Institute」のCEOとして、「2049年までにより安全なアジアを構築する」ことを目的として活動してきた

Randall Schriver氏のアジア太平洋次官補室の改革
●改革前の3名の「次官補代理:DASD」の分担区分
---Afghanistan, Pakistan and Central Asia
---Southeast Asia with India, ASEAN, Australia and New Zealand
---Japan, South Korea, Mongolia, China and Taiwan

●改革後:中国専任を設け、日本と豪州の垣根無くす
---SoutheastとEast Asiaの垣根を廃し、日本と豪州など重要国を一体で把握
---中国専任のDASDを設置 海兵隊出身のChad Sbragiaが就任
(国防省内の21名のDASDの中で、単一の国を担当するDASDは中国専任DASDのみ)
Schriver2.jpg
中国専任DASD設置について、Randall Schriverは10月に、「中国専任DASDは、米中関係全体の安定化推進担当(stabilizing force)として機能し、併せて国防省内の対中国政策を束ねる役割を担う」と説明している

10月1日付のDefense-News記事は、この改革について様々な意見を紹介しているが、地域最大の課題である中国に関する専任部署を設けることは正しい方向だと見る識者や元国防省勤務者の意見がある一方、重要な同盟国がそろっている同地域の他国との関係が維持できるのか心配する声もあった
●また、一般にどんな組織改革でもそうであるように、組織図上で美しい姿を描いても、実際に業務を行う人の配置や連携が大きく左右するといった意見や、中国に関する縦割りが進むのではないかとの懸念も聞かれた
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Asian and Pacific.jpgアジア太平洋担当国防次官補の下に、引き続き3名の「次官補代理DASD」が存在して「アジア太平洋地域」を分担しているのか、増員されているのか?、日本と韓国と豪州が一緒のDASDの下にいるのか不明ですが、とりあえずご紹介しました

アジア担当次官補が仕えている国防省の政策担当次官(John Rood)配下にあるポストでは、筆頭番頭格のDavid Trachtenberg政策担当次官補が7月に辞任してから空席が続き、10月に辞めたRobert Karem国際安全保障担当次官補と併せて大きな穴となっているようです

そして、国防省全体では、21個のDASDポストのうち、6ポストが空席になっているということです。

この空席が多いのか少ないのか語る知識がありませんが、トランプ大統領の下では、マティス国防長官もWillson空軍長官も、2年で早々に公務から離れていますので、長居したいと考える人は少ないのでしょう・・・
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Space Fenceレーダー第1号機が試験運用開始 [サイバーと宇宙]

2014年にロッキードが受注し、苦労の末
窒化ガリウム半導体を活用し10倍の探知能力
アメフトコート面分の巨大さ???

Space Fence.jpg12月10日、米空軍は地球周辺の宇宙ゴミや小型物体を把握する「Space Fence」の第1号レーダーの試験運用を、マーシャル諸島のKwajalein島(ホノルル南西1200㎞)で開始したと発表しました

試験運用の期間は不明ですが、試験後に米空軍は「operational acceptance:運用可能な状態と判断して正式受領」する予定だそうです

宇宙ドメインでの戦いを遂行するには、まず宇宙で何が起こっているかを把握することが重要で、その一環として地球周辺に漂う50~65万個もの衛星や宇宙ゴミを把握することが必要ですが、現時点では約2.5万個程度しか把握できておらず、これを「Space Fence」によって20万個程度に飛躍させようとの試みです

完成すれば、世界最大で最先端のレーダーになると関係者が豪語する「巨大Sバンドレーダー」だそうですが、過去記事等からその概要を再整理してご紹介します

これまでの経緯
Space Fence3.jpg1960年代からVHF帯レーダーを使用し、米本土内に設置された3個の発信施設と6つの受診施設で構成され運用してきた「Space Surveillance System」は、物体の5%程度しか把握できない能力と予算不足により、2013年10月に運用を停止した。
●その後継として「Space Fence」計画が打ち出され、「Sバンド帯」を使用することで「ソフトボール程度の大きさの宇宙物体を1200マイルの距離で発見でき、大きさ判読や追尾も可能」と言われるシステムを目指しスタートした。Lockheed MartinとRaytheonがシステム受注を争った結果、2014年にロッキードが約1100億円で受注した。

開発は容易で出ないと関係者や専門家はみていたが、2016年3月末に、ロッキード社は窒化ガリウム半導体を活用した「monolithic microwave集積回路技術」を用い、「Space Fence」の試験用レーダー施設をニュージャージー州で開設し、大型本格施設に先立ちハードやソフトの検証を開始した
●また並行し、第1号機設置予定のマーシャル諸島のKwajalein島では、大量のコンクリートを投入してアメフトコート面分ともいわれるセンサーの基礎工事が進められ、当初は2018年後半の運用開始宣言を目指して工事が進められた

●マーシャル諸島の第1号機は、今年3月には初期的な試験を行っており、その際は、インドが行って世界的非難を浴びた対衛星兵器実験のデブリを探知し、地球周回状況を予測した

レーダーの運用と今後の計画
Space Fence2.jpg●「Space Fence」のレーダーは、赤道近くに配置することにより東西方向に最大広角の視野を確保できる。地上固定レーダーが「フェンス」のように、地球の自転にあわせ宇宙空間を捜索カバーし、1日に150万回宇宙物体を補足追尾することにより、GPS衛星等の衝突防止に有用なデータを提供するほか、宇宙状況把握に貢献する
●(以下は2014年当時の情報であることに特に注意。今もたぶんそうでしょう)米空軍は、第2号レーダーを豪州に設置したいと考えているが、予算の関連で凍結されている。米空軍は2つのレーダー情報を融合することで宇宙状況認識能力を高めたい意向だが、第1号機の運用状況や成果を見て議論される

試験用レーダー施設がニュージャージーで運用開始した際、ロッキードの担当責任者は「宇宙状況把握や宇宙ゴミ把握能力を約10倍高めることに1歩近づいた。オープンアーキテクチャー採用により、同システムは将来の多様な目標探知追尾に適応できるだろう」と語り、その能力と拡張性をアピールしていた
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「アメフトコート面分」とのレーダーの大きさは、訳が怪しい日本語情報で自信がありませんが、どの情報ソースも「巨大なレーダー」と表現していますので、有事には脆弱な攻撃目標になるのでしょう

Space Fence4.jpgそれでも、平時からしっかりと相手の動きを把握して「敵を抑止」し、「敵の陣形を把握」しておくことで、戦いの緒戦で有利な地位を確保できるのでしょう。

過去記事等の「つぎはぎ」情報ですので、不正確な点はご容赦を・・・・。12月10日の試験運用開始で、詳しい方の解説も出てくるでしょう・・・たぶん

参考にした過去記事
「Space Fence試験レーダー完成」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-29
「米空軍のSpace Fenceを学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-28
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ついに米空軍が空中給油の民間委託を検討 [米空軍]

実戦投入が3-4年遅れるKC-46を待てない米空軍
KC-46と血みどろ機種選定を戦ったA330のレンタルも

KC-464.jpg13日付Defense-Newsは、12月17日に米空軍輸送コマンドが開催する「企業との意見交換デー:industry day」において、空中給油業務の民間委託に関する関連企業からの情報収集と意見交換が、イベントの重要な狙いになるだろうと報じました

米空軍は、中国やロシアとの本格的紛争に備えた対応を迫られていますが、作戦基盤の少ない遠方作戦地域での任務を支える空中給油は、強固に防御を固めた相手との戦いで重要な鍵を握ります。

しかしこれまで空中給油を50年以上支えてきたKC-135sやKC-10sの老朽化が進んで維持が困難となる中、期待の最優先事業であるはずのボーイング製次期給油機KC-46A開発にトラブルが相次ぎ、「実戦投入には、あと3-4年が必要」と言われる深刻な状況です

KC-463.jpgそんな中で出てきたのが、「脅威度の低い空域での空中給油」を民間企業に委託し、米空軍給油機部隊の負担を軽減し、又は能力不足分をカバーできないか・・・とのアイディアです。

既に外国空軍に空中給油を行っている候補企業が複数ありますが、有力と噂されるのが、KC-46と血みどろの機種選定を3回もやり直しして戦い敗れた、しかし英仏豪サウジUAE等でがっちり運用実績があり信頼できるエアバスA330原型の給油機を民間企業に運用させ、給油サービスを受けようとのアイデアです

まぁ・・・なんでも有りの米軍の世界ですが、ちょっとすごい方向に話しが進むような気配がありますので、17日開催の米空軍輸送コマンド「industry day」にあわせご紹介しておきます

13日付Defense-News記事によれば
KC135R.jpg●イリノイ州スコット空軍基地で開催される米空軍輸送コマンド「industry day」は、米空軍が不足する空中給油能力の一部を民間企業に委託するために、どのような契約形態や委託方式が良いのかを探る機会になる予定
●同輸送コマンド副司令官のJon Thomas中将は10日に、「必要な情報を得る良い機会となる。仮に有効な方策や明確な道筋を見出すことが出来れば、我々は進むべきだ」と語った

●そして同副司令官は、「給油機を保有して他国空軍に空中給油を行っている企業は複数有り、彼らは、もし米空軍が本気で検討するなら、対応する用意があるといってくれている」と状況を説明した
●ただ、「現時点ではサービスを提供する企業は全てprobe and drogue方式で、米空軍が求めるBoom方式が企業参入の妨げになる可能性がある」、「他にも、米空軍機に給油するには米空軍の認証を受ける必要があり、また米国領空内で給油するには連邦航空局の認証も必要になる」と考慮すべき条件について語った

A330 tanker.jpg●同副司令官は具体的な候補企業について言及を避けたが、最近ロッキードとエアバス社が、A330型空中給油機のレンタルサービス(fee-for-service model)を米空軍向けに検討しているとアピールし始めている
6月にロッキードのMichele Evans担当事業部長は、エアバス社とロッキードの間での協力協議も色々詰めるべきところが残っており、リースやレンタルの方式についても様々なオプションがあり要検討箇所は多いが、A330型給油機のリースやレンタルについて米軍と協議しており、米輸送コマンドが興味を示していると語っていた

●また同事業部長は、米空軍が民間企業から空中給油サービスを導入しなかった場合でも、米空軍給油機部隊の能力強化のためにいくつかのオプションを提案したいと述べた
●(KC-46の開発遅延や重大トラブルの発生を受け、)米空軍はKC-46導入に併せて退役予定だったKC-135の一部を継続運用の方向にあり、2021年度予算に老朽化が進み維持が厳しくなっているKC-135を14機継続使用する予算を計上する方向で検討している
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KC-10.jpgKC-46を開発製造するボーイングにとって、これ以上恥ずかしい話はないと思いますが、「面の皮厚く」だらだらとKC-46の複数の不具合に対処していくのでしょう

しかしロッキードも抜け目ないですねぇ・・・。これをチャンスと見てA330型を引っ張ってくるとは・・・。米国内の反応が見ものです・・

エアバスA330とボーイングKC-46Aが血みどろの争い
3度機種選定をやり直したKC-46Aの「黒歴史」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25

KC-46関連の記事
「貨物ロックに新たな重大不具合」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-12
「海外売り込みに必死なボーイング」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-22-1
「米空軍2度目の受領拒否」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-1
「機体受領再開も不信感・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「米空軍がKC-46受け入れ中断」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-3
「不具合付きの初号機受領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-2
「初号機納入が更に遅れ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20
「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1

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NATO司令官:90日間ロシア軍機の危険接近飛行がない [安全保障全般]

「zero unprofessional incidents」だそうです
両軍の対話のおかげとNATO司令官は説明も・・

Wolters.jpg10日、米欧州司令官を兼務するNATO司令官のTod Wolters空軍大将が記者団との朝食会でロシア軍機による西側軍用機や艦艇に対する「危険な嫌がらせ行為:ハラスメントやunprofessional incidents」が最近90日間発生していないと語り、ロシア軍参謀総長と7月に行った会談が転換点になったと説明しています

NATOの過去のプレス発表を見直してみると、両者の会談は7月にアゼルバイジャンのバクーで行われており、その会談以降、ロシア軍作戦機による西側航空機や艦艇への危険な接近飛行が発生していないようです

米欧州司令官を兼務するNATO司令官と、ロシア軍参謀総長が会談しただけで、ロシア軍の動きが変わったとは素直に信じられずロシア軍の行動の変化の裏には別の理由があるように思いますが、その辺りは読者も皆様のご想像に任せ、とりあえず状況をご紹介しておきます

11日付Military.com記事によれば
SU-27 unprofessional.jpg10日、軍事記者団との朝食会でWolters空軍大将は、過去90日間、ロシア軍機による西側軍用機や艦艇に対する危険な接近飛行がないが、これは7月にValery Gerasimovロシア軍参謀総長と本問題について議論したからだと説明した
●Wolters司令官は、5月に前任のCurtis M. Scaparrotti米陸軍大将から任務を引き継ぎ、ロシア軍参謀総長との会談を7月に初めて行ったが、その際の主要な話題はロシア軍機による危険な接近飛行だったと会談を振り返った

●同司令官は「ロシア参謀総長も懸念していたし、私にとっても大きな懸念事項だった」と7月の会談を振り返り、会談の結果「unprofessionalな行為を海上と空中でゼロにする」ことになったと述べた
●そして結果として「衝突防止が改善された。抑止が改善したし、衝突回避につながった」とも表現した

SU-27 unprofessional2.jpg両軍のトップ会談前の6月時点でもWolters司令官は、過去にNATO軍機や艦艇にロシア軍機が接近する事例は千の単位であっただろうが、そのほとんどはルーティーン化した問題を感じない行動であり、「不安全でunprofessional incidents」は減少しつつあると語り、
●「99%の接近飛行は安全な要撃行動だ」、「過去の事案に関与したロシア軍操縦者の経験レベルから分析してみると、不安全なケースの大部分は、若い操縦者が突発的にあるべき範囲を逸脱したものと考えられる」と表現していた
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ロシア軍機による危険な接近飛行は、バルト海や黒海周辺を偵察飛行する米軍偵察機や、同海域に展開している艦艇に対し行われていましたが、多くのケースで米軍やNATO側から映像がすぐさま公開され、SNS上でも拡散されているので、Valery Gerasimovロシア軍参謀総長は大昔から認識していたはずです

そして、その行為が「血気盛んな若手ロシア軍パイロット」によることも、ロシア軍は十分把握していたともいますが、7月頃に何か変化を導くような「戦略環境の変化」があったでしょうか?

Gerasimov.jpg唯一思いついたのが12月初旬のNATO首脳会議は「大荒れ」「仲間割れ」が予想されたことから、NATO内の結束を固めるのに貢献しそうな「ロシア軍の危険飛行」は控えておこう・・・とロシア軍が考えたとの推測です

また、英国のEU離脱問題で総選挙もあり、欧州全体が「不安定化」するチャンスに、ロシア軍機が西側を刺激して、欧州やNATOの結束を固める手助けをしてはならない・・・との判断が働いた可能性もあるでしょう

忘年会とか、年末だからとか、個人的な理由をこじつけて飲みすぎの頭には、他にピンとくるものがありません・・・

欧州での米軍とロシア軍対峙
「B-52への接近飛行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-10-2
「黒海NATO演習と露軍反応」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-03
「露軍は鉄の壁arc of steelを構築中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-07
「北欧でも米軍が訓練強化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-02-29
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「Block V」SSNが攻撃原潜か水上艦艇かの議論を呼ぶ [Joint・統合参謀本部]

高価なバージニア級攻撃原潜で攻撃力を確保したいが
潜水艦による攻撃力確保には水上艦艇の2-3倍の予算が

Virginia-class3.jpg6日付Defense-Newsは、米海軍がバージニア級攻撃原潜「Block V」10隻の購入契約を結んだ機会を捉え従来の同級潜水艦から巡航ミサイル搭載能力を3倍にし、無人水中艇や特殊部隊投入能力も付加した「Block V」の概要を紹介しつつ、このような大幅な形態変更の背景にある水上艦艇の脆弱性問題と、潜水艦の高騰する価格のジレンマに言及しています

現在米海軍は攻撃型原潜として、退役しつつあるロサンゼルス級を約35隻と、2004年から一番艦が任務を開始しているバージニア級18隻を保有しており、バージニア級は更に9隻が建造中か建造開始待ち状態にあります。そして12月2日、これらに加え「Block V」10隻の購入契約が結ばれたところです

潜水艦について語る知識は心もとないですが冷戦期の攻撃原潜は敵潜水艦を探知追尾して攻撃したり、敵国重要港湾の近くに機雷を敷設したり、重要な海底ケーブルを切断したりしていたとの印象ですが、現在地域コマンド司令官は情報収集のために攻撃原潜を要求し、特にバージニア級の最新ソナーやセンサーによる優れたISR能力は大人気だそうです

Virginia-class1.jpgただ、バージニア級はロサンゼルス級の2倍の価格で毎年2隻購入するのが精一杯で、ロサンゼルス級の退役ペースに追いつかず現場は戦力不足を訴える状況にあり、更に今回契約の「Block V」は1隻当り約4000億円と「ひっくり返るくらい高い:mind-bogglingly expensive」と表現されるくらいで、専門家からは大丈夫ですか?の声が上がっています

それでも米海軍が巡航ミサイル搭載力3倍の高価な攻撃型潜水艦を追求している理由は中国の対艦ミサイルの射程や精度が飛躍的に向上し、水上艦艇が中国大陸に近づくのが困難となり、「from the sea」の攻撃能力を確保できなりつつあるとの危機感があるからです

ただ、中国の懐に飛び込める攻撃力を「Block V」で確保することは、破産を意味する選択だと記事は表現し、今後は無人艦艇を絡めた検討が欠かせないと結んでいますが、とりあえずめったに取り上げない潜水艦の話を、「Block V」を通じてボンヤリとご紹介しておきます

6日付Defense-News記事によれば
Virginia-class2.jpg●2日、米海軍はGeneral Dynamicsとバージニア級攻撃型潜水艦「Block V」の建造契約を結び、これまでのバージニア級のISR任務中心の機能に加え、攻撃能力を増強し大型無人艇の発進母艦としての能力も備えたマルチ任務対応潜水艦導入に進むこととなった
「Block V」が前バージョンと異なる点は、まず巡航ミサイル搭載能力が従来の12発から40発になることで、7連装の発射装置を4基追加搭載することでこれを可能にする。この4基追加で艦の大きさは従来より1モジュール増加する。

●この追加モジュールには巡航ミサイルの代わりに別の兵器等を搭載可能で、大口径の無人水中艇や超超音速ミサイルのほか、海軍特殊部隊の送り込みなど、格納可能なものなら何でも搭載して射出・投入することが可能となる
●「Block V」の導入により、これまでオハイオ級戦略原潜を改良して巡航ミサイル搭載型原潜SSGNとした役割を攻撃型原潜も担うこととなり、特殊部隊投入面でもSSGN任務領域までも仕事の枠を広げることとなる。SSGN導入で縮小傾向にあった攻撃原潜の任務が、冷戦期の方向に戻るとも表現できる
●「Block V」は様々な最新技術の導入により「静粛性」を更に高めており、他の艦艇や潜水艦探知能力の向上と自らの被発見性低下を実現する

以上のような設計変更により、「Block V」は搭載装備を含め1隻当り4000億円程度の価格となり、その価格は「ひっくり返るくらい高い:mind-bogglingly expensive」と外部から表現されている
●更に、今話題の超超音速ミサイルを潜水艦に搭載しようとすれば、現在想定されている垂直発射装置には収まりきらず改修が必要で、更に経費が膨らむことになる

Virginia-class4.jpg●しかし中国などに高性能で長射程の対艦ミサイルが急速に拡散していることから、米海軍はこれら敵の地上配備対艦ミサイルを攻撃するため、そして米空母などの脆弱な友軍主要アセットを守るため、より多量の攻撃手段を必要としており、突破力と兵器搭載力を備えた潜水艦への期待は、米海軍の艦艇族の間でも高まっている
●ただ、「Block V」は多くのミサイルを搭載して中露の拒否エリアに侵入し、脆弱な水上艦艇部隊の代わりに攻撃能力を確保してくれるが、中国軍の大規模戦力と対峙する前に、水上艦艇による攻撃能力構築の2-3倍予算が必要となり、米国防省を破産させる恐れがある

●このようなジレンマの中、最近米海軍首脳陣は、大規模な無人水上艦艇群コンセプトを検討し始めている。ここで無人艦艇群は、有人大型艦艇の「弾薬庫艦艇」「兵器発射艦艇」のような役割を担い、安価に攻撃力を増強する役割を期待されている
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トランプ大統領が、次期空母フォード級をその開発遅延と価格高騰面から繰り返し批判しており、就任したばかりの臨時海軍長官が「最優先課題としてより組む」と弁明に追われています。

また、主力の空母や潜水艦の新規導入型が軒並み価格2倍の仰天状態で数量を調達できず、かつ現役艦艇や潜水艦の維持費も右肩下がりで、米海軍関係の造船所や修理施設の維持が困難になる「悪循環」に陥っています

何らかの方向転換を図らないと、「ゆでガエル」になってしまいます。

攻撃原潜関連の記事
「CSBA報告書:米国の潜水艦優位が危機に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-02-13
「米攻撃原潜SSNの方向性を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2013-10-28
「バージニア級SSNの内部映像」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-10-1
「攻撃型原潜にも女性が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-20 

艦艇の修理や兵たんの課題
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09
「優秀な横須賀修理施設」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-05
「悲惨な軍需産業レポート2019」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-28

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米陸海空軍が統合全ドメインC2演習をルーティン化 [Joint・統合参謀本部]

今後4か月ごとに同様の演習をシナリオを変えて
演習指揮官は戦闘コマンド司令官が持ち回りで

JADC2.jpg6日、米空軍省の新たな戦闘管理ネットワーク責任者であるPreston Dunlap氏が講演で12月16日の週に米空軍が音頭を取り、米陸海空軍が統合の全ドメインを対象とした初めての指揮統制演習(JADC2)を行うと明らかにし、その後は4か月ごとに演習指揮官や演習テーマを変えて同様の統合演習を行うと述べました

16日の週の演習テーマは「巡航ミサイルからの米本土の防衛」で、北米コマンド司令官が演習指揮官となり、米空軍の第5世代戦闘機、海軍戦闘機、海軍イージス艦、陸軍地上レーダーやロケットシステム等などを戦力として運用する計画のようです

また16日からの演習では、演習指揮官である北米コマンド司令官の拠点であるコロラド山脈地下の立派な指揮所ではなく、米陸軍がフロリダ半島に準備する「テント」内で指揮と執るという極めて実戦的な試みも含まれているようで注目を集めています

6日付米空軍協会web記事によれば
JADC2 2.jpg●米空軍のPreston Dunlap氏は、サンタモニカで開催された「West Coast Aerospace Forum」で講演し、16日の週に計画されている初の「joint, all-domain command and control演習(JADC2)」について説明した
今後4か月おきに予定され、次回は来年3月の実施が予定される同演習であるが、初の今回は「cruise missile threat to the homeland」をテーマに、北米コマンド司令官の指揮で行われる

●米空軍は統合指揮統制を重視してこれまでも小規模な訓練を行ってきたが、今回は、これまで無線を通じてしか情報共有が出来なかった米空軍のF-35とF-22間の情報共有に新たな手法を導入する試験や、米海軍F-35やイージス艦、更には米陸軍の地上レーダーやロケットシステムも結んで、脅威状況をより幅広く正確に入手可能にする試験も行う
JADC2 4.jpg●目指すところは、様々なアセットやソースから得た秘匿区分レベルの異なる情報を融合し、指揮官から前線兵士までもがタブレットやスマホで情報共有できることだとDunlap氏は語った

16日の週の演習は今後の同演習のあり方の資を得る意味で重要な演習であり、次回来年3月の演習にその教訓が生かされる。ただ、来年3月の演習の演習指揮官が誰になるか、どんなテーマの演習になるかは明らかになっていない
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秘匿区分レベルの異なる情報を融合:pull information together from sources at different levels of classification」も、色々な壁を乗り越えて実現にこぎつけたのだろうと想像しますが、F-35とF-22の情報共有が今になって実現するのも驚きです

「JADC2」が演習名なのか、12月16日から何日間、どこで実施されるのかも記事には書かれておりませんが、今後の展開に注目したい演習です。

18-21日に行われた演習の模様
https://www.defensenews.com/air/2019/12/21/the-air-force-just-conducted-the-first-test-of-its-advanced-battle-management-system/

米空軍のMドメイン指揮統制検討
「Uberを参考に空軍が情報共有アプリ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-12-1
「米空軍がマルチD指揮統制演習を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-25
「指揮統制改革に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09
「3つの取り組み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-18
「宇宙サイバー演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-14-1
「空軍に新コンセプト期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
「米空軍の重視事項3つ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13

世代間や機種間リンクの記事
「F-35とF-22の間のリンク実現へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-12-1
「世代間&5世代機間リンク」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-08-24
「Red-FlagでF-22リンク問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-02
「世代間リンクに対策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-10
「世代間リンクが鍵」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-18-1
「5世代と4世代機の融合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-08

日系クマシロ空軍准将がご活躍
「マルチドメイン指揮統制MDC2に必要なのは?」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24
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中東地域から18年ぶりにE-8C Joint STARSが撤収 [米空軍]

10月1日の撤収を10月30日に米空軍が発表
なぜか12月2日に米空軍協会web記事が取り上げ

E-8C 2.jpg中東地域から米軍削減の動きが続いていますが、2001年から18年間継続して展開していたE-8C Joint STARS部隊が、10月1日ジョージア州のRobins空軍基地に帰投したそうです

2001年11月にカタールのアルウデイド基地に展開して以降、米空軍保有16機のE-8Cが交代で同基地に展開し、GMIT任務(ground moving target indication)を通じて、中央軍の指揮の下で派遣間の主要作戦全てに関与してきた経緯だそうですが、同時に何機カタールに展開していたかは不明です。

GMTI任務とは空中から地表監視用ドップラーレーダーを使用し、地上を移動する目標を把握し、味方部隊にほぼリアルタイムで敵情をリポートし、友軍の作戦を優位に導く役割です

E-8C 3.jpgE-8Cの初実戦は、クウェートに侵攻したサダムフセインをからクウェートを開放した1992年の「砂漠の嵐作戦」で、まだ開発試験段階だった機体のぶっつけ本番投入だったと記憶しています。

米空軍は長らくE-8C Joint STARSの後継機を検討し、既存のビジネスジェットにセンサーを搭載する案などが有力となっていましたが、そのような機体の将来脅威下での残存性や資源配分優先順位の議論を経て、後継機は追求せず、他ISRアセットや衛星や地上センサー情報をネットワークで結んで活用する「Advanced Battle Management Program」を追求する方向に決まったようです

Joint STARSの撤収と、米国と中東との関係を結び付けて議論するつもりはありませんが、中東作戦の一つの節目であり、Joint STARSの後継機を断念した節目でもありますので、関連記事をご紹介しておきます

2日付米空軍協会web記事によれば
E-8C 5.jpg●10月30日付の米空軍webサイトはRobins空軍基地発の情報として、2001年11月から18年間に渡り、カタールのアルウデイド基地に派遣されてきた米空軍E-8Cが、10月1日に帰国の途に就いたと紹介している
18年間に、現地から計10938ソーティーの飛行を行い、中央軍の任務を支えて11万4426時間の作戦任務飛行を行ったとRobins基地は発表した

E-8C帰国を米空軍が発表する以前の10月9日発のプレスリリースでも、今年6月以降、Joint STARSは一日おきに100回以上の任務飛行を行い、米陸軍任務に欠かせない地上を移動する敵目標情報を提供して中央軍の任務を支援してきたと紹介されている
10月1日の帰国は、対IS作戦の落ち着きを受けた米軍主力帰国の流れの中で行われたが、Joint STARSを管轄する米空軍戦闘コマンドACCは、「2018NDSを受け、同機への需要は他地域でも高い状態にあるが、必要があれば各地域のニーズに答えられるような体制を維持している」と帰国についてコメントしている

E-8C.jpg●米空軍戦闘コマンドACCは、中央軍エリアからE-8Cが撤収以降、どの地域が焦点となる作戦エリアかについてコメントを避けているが、2018NDSがロシアや中国に焦点を当てていることから、その方面への展開する可能性がある
●一方で、E-8Cが去った中央軍は、有人無人の各種アセットでISR任務を遂行しており、必要な情勢認識や戦場インテルを確保しているとコメントしている。

米空軍は地上移動目標追尾をE-8Cだけに依存している事から、MQ-9に同様のセンサーを搭載する試みに取り組み始めている
●ただし米空軍は、E-8Cを2030年代まで継続使用する方向で考えているが、旅客機B-707をE-8Cに改修する段階で相当の飛行時間を経た機体を使用していることから、今後機体の維持コストが課題となる可能性もある
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E-8C帰国後1か月が経過した後の米空軍発表や、12月に入って米空軍協会web記事が取り上げた理由が定かではありませんが、E-8Cの後継機を調達せず、他ISRアセットや衛星や地上センサー情報をネットワークで結んで活用する「Advanced Battle Management Program」を追求する方向が打ち出されたからなのでしょうか?

E-8C 4.jpgE-8Cデビューの湾岸戦争ではクウェートから撤退敗走するイラク軍部隊の状況をE-8C Joint STARSががっちり把握し、米国を中心とする多国籍軍航空機(F-16やA-10やF-15Eなど)の格好の餌食になった「死屍累々」の様子が報じられました

東欧に展開してロシア軍の動静把握に活用しては・・・とか、海面クラッター反射を除去できれば、南シナ海監視でも役に立つのでは・・・と素人ながらに思います

JSTARS後継機記事
「E-8Cの後継は無しの方向へ?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-06-17
「候補機種3機種に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-11
「2023年は新装備が集中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-14
「ACC司令官がJSTARS後継切望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-03
「女性中将が語る開発装備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-21

MDC2に向けた取り組み
「マルチドメイン指揮統制に向け」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24
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米国防省が5Gと軍事レーダーの干渉問題を確認へ [米空軍]

航空機搭載レーダーや地上レーダーとの干渉懸念
F-35基地に5G携帯電話網を仮整備し、影響確認へ
日本は大丈夫ですか?周波数 3,100-3,450 MHz

5G.jpg3日付米空軍協会web記事は、米国防省が米空軍Hill空軍基地に実験的に5G携帯電話網を整備し航空機搭載レーダーや地上配備対空監視レーダーとの電波干渉の影響について実地に確認し、併せて干渉問題へのハードとソフトの対策を検討するプロジェクトを紹介しています

Hill空軍基地を含む計4基地を対象とする5G網実験的整備プロジェクトは10月に発表されたようですが、関連の追加発表では問題となる具体的な周波数や、併せて米軍物品管理倉庫に5Gを活用した「スマート倉庫」を導入する構想も明らかにされ、IOT世界での5Gの重要性と軍事周波数との競合が大きな問題としてのしかかっている様子を伺わせます

記事自体は淡々とした事実の紹介ですが、先日ご紹介した5G技術搭載の民間通信衛星にエスパー国防長官が大反対の姿勢を示したり事例など、色々な摩擦が生じつつある現実の一つとして、ご紹介しておきます

3日付米空軍協会web記事によれば
Hll AFB.jpg10月に米国防省は、5G通信網が米軍の運用にどのような影響を与えるかを検証するため、「full-scale, fifth-generation wireless network」を導入するプロトタイプ実験を、米軍4基地で実施すると明らかにした
4つの基地は、ユタ州Hill空軍基地(F-35の主力所在)、ワシントン州の統合Lewis-McChord基地(C-17の拠点)、米海軍San Diego基地、ジョージア州海兵隊Albany補給基地である

●最近の国防省と米空軍連名の発表は、今回のプロトタイプ実験計画では、特に5G携帯電話網と軍用レーダーの使用周波数が重なる3,100-3,450 MHz周波数帯で、両者が同一周波数を共有できるようなソフトとハードの開発が必要になるとしている
●具体的には「実際に模擬の基地内限定フルスケール5G携帯電話網を整備し、航空機搭載レーダーや地上配備レーダーへの影響を評価する」、「能動的及び受動的両方の干渉防止技術を適用する」、「プロトタイプ実験から得られた成果は、軍事レーダーと5G通信網が共存するための装置やコントロール装置につながる」と発表されている

5G network.jpg●最近の発表では、ジョージア州海兵隊Albany補給基地において、5G技術を利用した「スマート倉庫」「スマート物品管理」プロジェクトを推進することも明らかにされた
「5G技術で可能になるスマート倉庫は、現状の倉庫業務を効率的に安全に遂行するだけでなく、大規模な軍事兵站業務への応用に向けた試験や評価を行う場となる」と説明されている

●国防省はこの発表に沿った計画遂行のための業者を募集し、残りの2基地(ワシントン州の統合Lewis-McChord基地(C-17の拠点)と米海軍San Diego基地)での5G関連プロジェクトの細部を今後明らかにする予定である
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5Gのイロハも理解していないまんぐーすがご紹介するのも気が引けるのですが、Hill空軍基地(F-35の主力所在)、統合Lewis-McChord基地(C-17の拠点)、米海軍San Diego基地は、米軍作戦の第一線基地であり、国防省の意気込みと危機感が伺えます

なお、元記事や国防省の発表には「干渉」との単語は使用されておらず、「共存」や「周波数シェア」の確認や試験との表現になっていますが、まどろっこしいので干渉問題と訳しています

この年末年始には、飯山陽さんの「イスラム2.0」と、何か分かりやすそうな5G関連入門書を読むことにしますかねぇ・・・

5Gに関する記事
「5G企業とGPS関係者がLバンド電波巡り激突中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22-2
「戦略コマンドが5Gとの電波争奪に懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-27
「5G試験のため民間に演習場提供案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-14
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